徒然草枕

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medici.tvでヤニック・ネゼ=セガンとベアトリス・ラナによる艶っぽいシューマン

再びの引きこもりの週末はライブ配信で

 政府の無策と現実逃避が相まって再びコロナ大爆発の状況に、自衛のためにまたもやのひきこもりを余儀なくされつつある今日この頃。実は来週の週末にはアルミンクの指揮で広響のマーラーの3番を聴きに行くつもりでチケットを入手していたのだが、どう考えてもあと数日で事態が劇的に改善する可能性なんてない(逆に劇的に悪化する可能性はある)を考えると、これもまたパスせざるを得ないことになるのがほぼ確定。マーラーの3番と言えば、先に京都市響の広上ファイナルの予定が、コロナの影響で少年合唱団の出演が不可能になって急遽1番に振り替えられる(しかも私がチケットを購入した翌日に発表)というハプニングがあったが、どうも私はこの曲と縁が薄いらしい。

 さてこういう状況になるのは心を癒やすのはネットのライブ配信ぐらい。ベルリンフィルデジタルコンサートホールは現在ベルリンフィルがサマーバカンス中であるので、久しぶりにmedici.tvをチェックすることにした。するとヤニック・ネゼ=セガンと新鋭ベアトリス・ラナの組み合わせでのシューマンのピアノ協奏曲とブラームスの交響曲第2番のライブの映像が見つかったのでそれを視聴することにする。

 そう言えばシューマンのウルトラセブンについては、先に三浦謙司のやけに淡々とした無機質な演奏にいささか不満を持ったところだし、ブラームスの2番については先月の大フィルの定期演奏会のトレヴィーノによる味も素っ気も無い演奏にこれまた大不満と、共にミソが付いた曲である。果たしてこの組み合わせはどのような演奏をするか。

 

 

ヤニック・ネゼ=セガン指揮ヨーロッパ室内管弦楽団
(バーデン・バーデン、サマーフェスティバル 2022.7.10より)

指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
ピアノ:ベアトリス・ラナ

 さてまずはシューマンのウルトラセブンである。ベアトリス・ラナの演奏はこれは超ロマンティックと言っても良い演奏。端的に言えばメロメロのメロドラマである。タッチの変化は多彩で、テンポも揺らすは溜めるわで変化が激しく、後のオケが合わせるのにいささか苦労している場面があるぐらい。

 まあこういう演奏がありになるのが、シューマンのこの曲の特徴。もっともここまで極端な演奏だといささか悪趣味手前で胃がもたれる感がある。正直なところ、先の三浦謙司の硬質で淡々とした演奏には感心しなかったが、さすがにここまでやるとやり過ぎ。私の好みとしてはこの両者の中間辺りと言うことになる。

 後半のブラームスはネゼ=セガンがオケを適度にコントロールしてなかなかに情緒豊かなブラームス。この曲は最初の弦の盛り上がりでゾクッとさせて心をつかめなかったら失敗ということをトレヴィーノ指揮の大フィルの時に言った記憶があるが、さすがにそういう要所は押さえてくる。スタンスとしてはややロマンティック側に振ったバランスではあるが、バランスを崩して悪趣味に走る手前でとどめているのはネゼ=セガンの上手さと言うべきであろうか。

 ヨーロッパ室内管弦楽団の方も、なかなかに美しい音色を出したりする。そもそも室内オケなのでパワーでブイブイと行く方ではないとも思うのだが、かと言って緻密なアンサンブルで聞かせるというほどにアンサンブルの精度が極端に高いという印象は受けなかったのだが、その代わりに随所で味が出ているのは感じられた。またネゼ=セガンの指揮に対する応答性は高いので、各人の技倆はかなり高いのだろう。

 フェスティバルということもあるのかもしれないが、場内は観客がスタンディングしてものやんやの盛り上がりとなっていたが、まあそれも納得できる演奏ではある。先の公演でもこういう魂が籠もった演奏なら私も不満を持つことなどなかったのであるが。