徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

福田美術館の名品展(後期)を鑑賞してから、京響大阪公演で広上の絶好調タコ踊りを目撃

今日は美術館とコンサートの連チャン

 翌朝は7時に起床。まず入浴して体を温めると朝食へ。タイミング的にバイキング朝食の食材が減っていて、やや寂しい朝食だが、一応和洋両様で腹を膨らましておく。

ややメニューに寂しさがある

 さて今日の予定だが、大阪のザ・シンフォニーホールで14時から開催される京都市響の大阪公演を聴きに行くのがメインの目的だが、それまでの時間がかなり空く。と言うわけで本来は昨日予定していた福田美術館訪問を入れることにする。

 とはいえ、福田美術館は10時開館なのであまり早くホテルを出ても仕方ない。しかし今回はホテルの駐車場が満車でよその駐車場に車を止めているのであまりゆったりもしていられない。そこの駐車場は30分200円で、8時から20時の昼時間帯が上限800円、20時から8時の夜時間帯が上限200円という料金設定。つまり朝8時を過ぎた時から容赦なく料金カウントが始まって10時になったら上限800円という設定。結局は何だかんだで9時過ぎにチェックアウトして料金は1600円。車での遠征はとにかくこの駐車料金がボディーブローのように効いてくる。

京都プラザホテルを後にする

 途中でガソリンを補給(このガソリン代も上がる一方で下がる気配がない)すると嵐山まで突っ走る。駐車場はそこらの観光駐車場だと1日1000円が相場(本格的紅葉シーズンになるとこれがさらに上昇する)ので、少し離れた場所の時間貸し駐車場に駐車する。まだ紅葉が始まっていないせいか、それともまだ時間が若干早いのか、嵐山は馬鹿込みという状況ではない。

 

 

「開館3周年記念 福美の名品展(後期)」福田美術館で10/10まで

福田美術館

 前期に続いての福美が所蔵する日本画の名品展である。通期で展示されている作品もあるが、半分ぐらいの作品は後期になって入れ替わっている。

 最初に登場する菱田春草「青木に小禽」は暈かしを利用した葉の表現が印象に残る一品。

暈かしを活かした葉の表現が巧み

 次が下村観山の二品。「枯木鳥」は静けさの中に動きが感じられる。

静かでありながら動きを感じる

 「降魔図」は魔を討ちに向かう不動明王の従者の姿らしいが、その割には憤怒の様子もなく静かに余裕綽々に見えるのが面白いところ。

戦意漲るという印象からはほど遠い

 西郷孤月「孤鳥報朝・農夫晩帰」はザ・朦朧体というところ。独得の質感と静けさのある絵画である。

まさに朦朧体そのもの

 

 

 上村松園からは品のある美人図「花下美人図」「花のさかづき」の二品。

花下美人図

花のさかづき

 さらに伊藤小坡「雪の朝」「櫻狩の図」は上品でありながら艶やかさがある。

雪の朝

櫻狩の図

 

 

 竹内栖鳳によるバリバリ南画の「秋渓漁夫図」東山魁夷「深秋」秋野不矩「廃墟」などの印象深い作品もあり。

秋渓漁夫図

深秋

廃墟

 2階展示室には鏑木清方の逸品や伊藤深水の珍しく「媚びのない絵」が展示されていて興味深いが、この辺りは著作権の絡みか撮影禁止である。ここで印象深いのは菊池契月「紅葉美人」入江波光「水禽の図」「聖観音」(村上華岳の観音図ならしょっちゅう目にするが)。

紅葉美人

水禽の図

聖観音

 なかなかに面白い作品を多数目にすることが出来た。毎度のことながらここのコレクションは興味深い。

 

 

昼食にカレーと喫茶に立ち寄ってからホールへ

 嵐山を後にすると大阪を目指すが、京都縦貫道に乗ろうとしたところ、カーナビの地図が古かったせいで誤って福知山方面に向かってしまうというミスをして、時間と高速料金を無駄にすることに。それでなくても高速料金というのも車遠征では無視できない重い経費だというのに。

 大阪には1時間ちょっとで到着。ホールの周りを駐車場を探してウロウロ。ホールの駐車場に入れれば早いのだが、ここの駐車場は価格が高すぎて話にならない。結局は満車の駐車場をいくつもやり過ごして、安くはないが高くもない駐車場を見つけて車を置く。

 車を置くと昼食を摂りに行く。久しぶりに立ち寄ったのは「上等カレー」「トンカツカレー(1000円)」を注文。相変わらず独得のカレーである。口当たりは甘口なんだが、スパイスが結構効いている。そしてとにかく卵が良く合う。ただ現在は胃の具合が今ひとつ(原因はあからさまにストレス)なので少々胃もたれ気味。

久しぶりの上等カレー

トンカツカレー

 

 

 昼食は終えたがまだ開場までにやや時間がある。どこか喫茶でも立ち寄って時間をつぶしたい。そこで以前から少し気になっていた「高級芋菓子しみず」に立ち寄ることにする。注文したのは「芋のパフェ(1100円)」

ホール近くの高級芋菓子しみず

 あらゆる芋菓子を満載したパフェである。味自体は悪くないのだが、芋が大好きな者ならともかく、私のように「まあ好きかな」ぐらいの者には、いささか味が単調で厭きるところがある。また乳脂肪のアイスに炭水化物の芋を組み合わせると口当たりがネッチャリしすぎる感がある。むしろ食べ進めた時に出てくる下のグラノーラのパリパリした食感が救いに感じたぐらい。それだけにその奥からふかし芋が登場した時には、意表を突かれたと言うよりも軽い絶望感を抱いてしまった。不味いわけではないのだが、私にはちょっと合わないかというのが正直な印象。

実に芋尽くしのパフェ

 思ったよりも客を選ぶよなという感があった。開店時には常に大入りで入店も出来なったのが、今回覗いたら結構空いていたのは単に時間帯だけでなくて、そういう事情もあるかも何てことを感じたりする。やはりパフェとしてはフルーツなどの酸味が加わるのは、変化を付けるという意味で重要なんだなと改めて感じたり。

 喫茶を出たところでホールに入場。客の入りは正直なところ今ひとつで5~6割というところか。大阪市民で京都市響に興味がある人間は、わざわざザ・シンフォニーホールに来なくても、京都コンサートホールまで出向いているのかしれない。私の場合は久しぶりに広上が京都市響を振ると言うことで出向いてきたんだが。

ホールへ入場する

 

 

京都市交響楽団 大阪特別公演

[指揮]広上淳一
[ピアノ]アレクサンドラ・ドヴガン
[管弦楽]京都市交響楽団
ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲
ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 op.21

R.シュトラウス:交響詩 「ドン・フアン」 op.20
R.シュトラウス:交響詩「死と変容」op.24

 昨年まで常任指揮者を務めていた広上と京響の組み合わせである。今更意思の疎通云々という次元ではない。広上の楽器とも言われた京響とのツーカーの関係は今でも存在している。初っ端のウィリアム・テルからノリノリでガンガン行くが、そこには一切の乱れもなく、広上の指揮の下で整然と音楽を進める京響の安定感は抜群である。

 二曲目はショパンのマイナーな方の協奏曲だが、最近になって演奏機会が増えてきている曲。大股でキビキビと歩くドヴガンの姿が印象的であるが、そのほっそりとした体のどこにそんなパワーが潜んでいるのかと驚くほどにタッチは力強い。強音でガンガンと行くところから弱音まで実にダイナミックレンジの広い演奏である。若くして才能を開花させた早熟の天才という評があるようだが、確かにどんな難解な曲でもまるで何事もないかのようにサラッと流してしまうぐらいの技術的な高さを感じさせる。

 ただ1つ感じたのは、こういう早熟の天才に多いことなんだが、ショパンのややひねくれた陰鬱なところもあるロマンティックさを表現するにはまだ少々人生経験が浅いかなというところ。難解なフレーズも難なくサラッと弾きこなすんだが、そこにまだ陰影が薄いことを感じさせる。テクニック上位の若手にありがちな自動演奏のような無機質さにまではいっていないが、まだ精神的な意味での円熟までには若干の距離があるかなという印象。今後、彼女がさらに様々な意味での経験を踏まえてくれば、圧倒的な技術に円熟味の乗った希有な天才へと進化する余地は大きいと思われた。

 後半はR.シュトラウスシリーズ。混沌とした複雑な作品なのであるが、広上と京響のペアにかかるとそれがスッキリと非常に分かりやすい印象の演奏となる。とにかく広上の指揮は強烈にオケを制御しようという独裁制を感じさせない(客席から見るだけでは、絶好調でタコ踊りをしているだけに見える)にもかかわらず、結果として出てくる音楽は実に整然として統制が取れているというのが特徴である。R.シュトラウスの複雑な曲が全く崩れることもなく音色の多彩さを展開させるのはなかなかの圧巻である。

 結果として非常に元気で活気に満ちているけれど、随所に美しさも溢れる実にチャーミングな演奏となった。広上が鍛えた京響の実力は流石といったところ。実に気持ちの良い一時を送ることが出来たのである。


 久しぶりに広上の絶好調タコ踊りを見たような気がする。それにしても実にノリノリだった。

 これでこの終末の予定は終了。後は阪神高速を突っ走って帰宅と相成った次第。この終末もなかなかに満足の高いコンサートの連チャンであったが、いずれもその絶対レベルには差があるというものの、オケのレベルの高さを感じさせるコンサートであった。

 

 

この遠征の前日の記事

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