今日のベルリンフィルデジタルコンサートホールは生ける伝説ブロムシュテットの登板
さて、先日ロンドン交響楽団の名演を聴いてきたところであるが、今日はベルリンフィルである。と言ってもデジタルコンサートホールによる時間差ライブ配信(つくづく奇妙な言葉ではあると思うが)。
今回は現役最長老のブロムシュテットの登板である。その年齢を感じさせない若々しい指揮っぷりが特徴のクラシック界の生ける伝説、鉄人ブロム爺は名人揃いのベルリンフィルを率いてどんな演奏を聴かせてくれるか。
ベルリンフィルデジタルコンサートホール
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
シューベルト 交響曲第3番ニ長調 D 200
ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調 op. 92
恐らく現役最年長、生ける伝説とも言えるブロムシュテット指揮による公演、最近転倒事故があったと聞いたが、そのせいか指揮台に向かうは足許はやや危なっかしく、座って指揮をしているようだが、それでもまだカクシャクとした様は健在である。
一曲目はシューベルトの若き日(と言ってもそもそも彼は非常に短命だったが)の作品。彼は18才でこの曲を作曲したそうであり、早熟の天才でもあった彼の才能を伝える作品である。小編成による軽妙な曲想はモーツァルトやハイドンなどの先人に通じるところが感じられる。実際に私程度の知識の者なら「モーツァルトの初期交響曲」と言われて聞かされたら納得してしまいそう。
曲の方は若さの溢れるまさに爽やかそのものの曲。それを長老ブロムシュテットが指揮するという妙。もっとも衰えという言葉と無縁に思われる鉄人ブロムシュテットには相応しいか。小編成によるキビキビした演奏が繰り広げられる。ところどころに溢れるメロディの美しさに後のシューベルトの才能の片鱗を見るべきか。
休憩後のベートーヴェンの7番は焦らない着実なリズムで曲を進める。決して重くはならないブロム節。前半のシューベルト同様に軽妙さと爽やかさが前面に出た演奏である。歯切れが良くて楽しげであるが、余計なニュアンスは削ぎ落としたようなシンプルさがある。殊更にピリオドなどは駆使しないが、どちらかと言えば古典寄りアプローチに感じられる。
第二楽章もややアッサリ気味であまりニュアンスを含まない演奏。快速で軽快な第三楽章を経て怒濤の第四楽章。前半に反して一気にテンポを上げてきた演奏は活力に満ちている。こういうぶちかましは流石にブロム爺は若い。
殊更にわざとらしいニュアンスは含まないアッサリした演奏という印象だが、その分強弱のメリハリはかなり付けてあり歯切れの良い明快な演奏であった。全体を通じて実に活き活きとした生命感の強い演奏。ブロムシュテット健在をアピールするかのような実に若々しさに溢れた演奏であった。