徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

最終日はフェニーチェ堺でのNDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団演奏会

昼食は美術館で摂ることに

 翌朝は8時過ぎに起床。この頃になると回りの部屋が騒がしくなってくるから自然に目が覚める。とりあえず昨日買い込んだサンドイッチを朝食代わりに腹に入れると原稿執筆。

 さて今日の予定だが、15時から堺のフェニーチェで開催されるNDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団のコンサートに行くだけ。それまで大分時間に余裕があることになる。このホテルは以前はチェックアウト時刻が13時だったのでちょうど良いから選んだのだが、何とその後に11時に変更されてしまった。というわけでかなり中途半端な時間がフリータイムで生じることになってしまったのである。

 とりあえずこれではあまりに仕方ないのでとにかく一カ所立ち寄り先を作ることにする。立ち寄ることにしたのは小林美術館。堺南部の高石市にある、以前に数回訪れたことのある小規模美術館である。

小林美術館

 美術館には車で30分程度で到着。入館したが、絵を見るよりもとにかく腹が減った。昼食の方を先に摂ることにしたい。ここの喫茶に立ち寄る。

 

 

 注文したのはオムライスとミルクティー。懐かしいタイプの卵焼きで包んだオムライスである。最近はスフレと称した卵焼きを載せるだけのオムライスが増えている(この方がバイトでも作りやすいということもあるようだ)が、やはり正しいオムライスとはかくあるものである。特別に美味しいわけではないがまず満足。

懐かしいタイプのオムライス

 ミルクティーはやや味にクセがある。アールグレイでも使用しているのだろうか。私はアールグレイは苦手である。オーソドックスなアッサムやセイロンが好き(実はダージリンもあまり好きではないので、これはという好みの紅茶に出会ったことはほとんどない)。

 ティーブレイクでホッとしたところでデザートも頂くことにする。この地域の名物であるくるみ餅を注文する。白玉団子にくるみ餡をかけた極甘スイーツである。数年前に一度食べた記憶があるが、こうやって改めて食べてみると記憶にあったよりもさらに甘い。美味しく頂けるギリギリラインの甘さで、これ以上甘くなると気分が悪くなるところ。そうなると極甘という表現でなく、ゲロ甘になるところだ。

極甘のくるみ餅

 昼食と喫茶を終えると支払いついでに美術館の入場券を購入。そもそも本来の目的はこっちである。

 

 

「秋季特別展 自然を描く 実りと恵みの情景」小林美術館で12/11まで

 この美術館は文化勲章受章日本画家の作品を中心に所蔵しているが、その作品の中から自然を描いたものなどを展示。

 印象に残った作品は梶原緋沙子の美人画。彼女は菊池契月の弟子だったらしいが、まさに契月の血脈を受け継ぐ上品な美人画である。また私の好きな伊藤小坡の美人画も2点。一作の「紅葉狩り」は人物と紅葉の風景を描いた佳品。これ以外で印象に残ったのは山中の眼鏡橋を緻密に描いた岩澤重夫の「故郷の橋」など。メジャーどころでは橋本関雪は相変わらず馬が登場する絵でいかにもだった。最後の平子真理はやや絵本チック。

 二階展示室は洋画も展示。小磯良平や東郷青児といった個性の強いところもあるが、目立つのは「ルノワールが輪郭線に戻らずにあのまま印象派を突き進んだらこうなったろう」と思わせる伊藤清永の「秋粧」。

 ここには新星画家の作品も展示してあり、女性を描いた阪口芳の「ある日」はなかなか印象深い作品。また奥田元宋を思わせる藤本静宏の作品や、幻想的な杉山洋子の「秋空へ」なども印象に残る。

 点数は決して多くもないが、意外に面白い作品があったという印象。定番どころの有名画家の定番的作品よりも、私的に名前をよく知らない画家の作品に意外と心惹かれる作品があったりした。

 

 

 美術館を一回りするとホールへ移動することにする。まだ時間が早めだが、どうせ近くの駐車場は二時間ほどで一日上限まで価格が振り切れてしまうので同じである。ここからホールまではすぐ。近くのタイムズ駐車場に車を置くと、まだ開演までに2時間ほどあるので堺方面をプラプラする。

 オムライスだけだとやや腹が半端なので、軽く回転寿司屋に入店して数皿つまむ。と言うものの、この店はあからさまに寿司が美味くない。これはしくじった。

この寿司はイマイチだった

 結局はあまり時間をつぶせずにホールに戻ってくる。やむなくホール内でしばし時間をつぶすことに。

フェニーチェ堺へ

 開場開始後までしばし粘ってから入場。今回の私の席は前から2列目というクソ席。コンサートを見に行っている者なら特等席かもしれないが、私のように聴きに行っている者には音が頭の上を抜けていくクソ席である。フェニーチェは久しぶりで、今まで数回来ているが価格の関係で4階の桟敷席が多いが、1階を確保した時でもクソ席しか当たったことがない。一度などはわざわざそのために会員になって優先予約をしたにもかかわらず、1階前方端というかなりのクソ席を割り振られた。フェニーチェはよそ者にはクソ席を割り振るというルールでもあるんだろうか? 馬鹿らしくなったから、その後に会員は辞めている。ホールの入りは5割程度で後方には空席も多いのに、こんなクソ席ばかり割り振られるのは明らかに意図的なものを感じる。

なんせ舞台のもろに下

 

 

NDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団演奏会

会場の入り自体は5割程度

指揮:アンドリュー・マンゼ
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ

ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」序曲  ヘ短調 作品84
       :ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調「皇帝」作品73
       :交響曲 第3番 変ホ長調「英雄」作品55

 NDR北ドイツ放送フィルは12型の小型オケ。楽団員の平均年齢は比較的若そうだが、なかなかにまとまりの良い演奏を聞かせる。良い意味でのドイツのオケらしいドッシリした感じの音色も出すが、それよりも漲るような元気さを持っているオケである。12型という編成の小ささを感じさせないパワーを秘めている。

 指揮のマンゼは長身のハゲ親父だが、どうしてどうして、なかなかに躍動的で熱い指揮ぶりである。その熱さで一曲目のエグモントはブイブイと盛り上げる印象。オケも良く統率の取れた密度の高い演奏となっていて聴き応え十分。意外なほどに迫力のあるエグモントとなった。

 「皇帝」はまさにオピッツのピアノ演奏が「皇帝」そのもののゴージャスさ。音色が分厚くて堂々として華麗でありまさにこれこそが「皇帝」であるといわんばかり。このゴージャスなピアノを中心にオケも軽やかでありながらも落ち着いた響きを出していて見事に調和。実に充実した演奏となった。

 後半は「英雄」。さあマンゼが演奏を開始しようとした途端に客席からアラーム音のようなものがなって、それが切れるまで演奏開始が保留というトラブルが発生したが、それでもオケもマンゼも緊張感を切ることなく、仕切り直しで冒頭からぶちかます。第一楽章はとにかく力強くて活き活きとしており、これもまさしく「英雄」の姿そのもの。もっとも力強すぎて葬送行進曲は棺桶蹴飛ばしそうなところがないでもなかったが、それもご愛敬というところ。最後までズッシリとしながらも若々しい活き活きした気持ちの良い演奏で、なかなかに良いものを聴かせてもらったというのが正直な感想。

 満足した客が多かったのか、演奏終了後も拍手が止まずにマンゼの一般参賀あり。観客も一様に満足の様子であった。


 実のところ私はこのオケに最初から期待していたわけでなく、コロナが一区切り付いて来日した外来オケで、価格もまあ妥当なところだからとチケットを取ったのであるが、これはなかなかに掘り出し物というか、予想外に見事であった。演奏の絶対レベルで行けばパリ管やロンドン交響楽団に及ぶものではないが、CPという見方をしたら凌いでいるかもしれない。今年も最後近くになって思わぬ名演に当たったものである。

 これで今週末のコンサート三連荘は終了。今回はコンサートの満足度が高く、意気揚々と引き揚げたのである。

 

 

この遠征の前日の記事

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