徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

新年第一発目のベルリンフィルはアルゲリッチとバレンボイムの競演

新年度も波乱含みです

 さて新年度の到来である。皆様は新しい年をいかがして迎えられただろうか。私はこの年末年始は大掃除に明け暮れる予定だったんだが、その前に体力の方が尽きてしまって、結果は大掃除ならぬNo掃除になってしまって、新年早々ガラクタに埋もれている生活である。

 ちなみに今年の初夢は、一富士二鷹三茄子でいきなり富士山が登場したのは良かったのだが、その富士山が大噴火しているという縁起が良いのだか悪いのだが解釈に苦しむという夢であった。どうも今年もすんなりとはいかんということか。ちなみにお神籤は大吉だったが、内容を細かく読んでいると本当に大吉なのかと首をかしげる内容。「旅行、帰り道に思わぬ時間が掛かります」と今年も阪神高速の渋滞で苦しめられるのではという卦が出ている。

 そして世間の動向であるが、私が懸念したとおり(というかそれ以上)のコロナの感染大爆発でいきなり暗雲が漂っている。今年になってからのライブのチケットも結構押さえているのであるが、果たしてそれに行くことが可能であるかの判断が難しくなってきた。ちなみにこの週末に行くつもりでいた映画は既に流れている。私も危険群なので迂闊なことは出来ない。なおお神籤では「病気、重いが治ります」とのことで、命は助かるが死ぬ思いをしそうなことが示されている。

 こういう時は必然的に部屋でオンラインライブと言うことになる。そこで今日はベルリンフィルデジタルコンサートホールの時間差ライブ配信を視聴することに。新年第1号となる今回は、巨匠アルゲリッチとこれまた巨匠バレンボイムの共演によるウルトラセブンという濃厚なラインナップである。

 

 

ベルリンフィルデジタルコンサートホール

指揮:ダニエル・バレンボイム
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ

シューマン ピアノ協奏曲イ短調 op. 54
ブラームス 交響曲第2番二長調 op. 73

 さて一曲目のウルトラセブンことシューマンのピアノ協奏曲だが、このロマンチックな曲に対するアルゲリッチの演奏は、とにかく濃い。極めて濃厚という言葉しか出てこない演奏。ロマンチックとかそういう次元でなく、濃厚な音の塊がぶつかってくる印象。

 その演奏は無手勝流というか、自由かつ変化自在。第1楽章なんかテンポが自在すぎて、後のオケと微妙にズレることがあるのだがそんなことはお構いなしに自分の世界である。あまりに自由な演奏なので、後からコンマスの大進が「あの、これでよろしいでしょうか?」と言わんばかりにアルゲリッチの方をのぞき込む場面も。

 フジコ・ヘミングのようなテクニックが衰えてガタガタでテンポが狂うというのとはまた違う。明らかに自分の世界に入り込んでいる感じ。自在を通り越して神出鬼没という印象さえ受ける演奏である。そこから飛び出す音楽は非常に豊か。圧倒的な巨匠芸に演奏終了後は場内は総立ちの大興奮である。

 満場の喝采を浴びてアンコールはバレンボイムとの連弾でビゼーの「こどもの遊び」。ここまで来ると技術がどうこうという次元を越えてひたすら味わい深い。

 後半のブラームスは、バレンボイムは元よりオケを細かくコントロールするわけでなく、かなり自由に鳴らさせるタイプであるが、自由に鳴らさせるどころか要所で指揮棒を振る以外は休んでいることも多いという超省エネ指揮。

 それでも流石にベルリンフィルだけあって全く乱れることがなく、見事なアンサンブルでバレンボイムが指定したやや遅めのテンポでネッチョリジットリと濃厚で粘っこい音色で演奏を繰り広げる。ベルリンフィルの名人芸とバレンボイムの巨匠芸によるかなり濃厚な演奏である。それにしても第1楽章など弦楽陣を聞いていたら、どうやったらあんなに艶っぽくて色気のある音色を出せるんだろうと思うばかり。昨年のトレヴィーノ指揮大フィルの、同じくかなりゆっくり目のテンポながら、味も素っ気も感じなかった演奏を思いだし、彼我のオケの実力差もさることながら、やっぱり指揮者の存在もあるんだろうかなどと思いを致す次第。