徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

二日目はピカソ展を見てから大フィルのコンサート、夕食は新今宮の町の洋食屋

今日は大フィルのコンサート

 昨日はホテルに戻ると疲れ切って風呂に入る余裕もないまま寝てしまった。今日は大きな予定はないのでとにかく寝るぞと意を決して、5時頃に中途覚醒しても、7時頃に回りの部屋がガソゴソとうるさくなって起こされても、一切を無視して9時頃まで爆睡。

 ようやく起き出すと昨日の帰りに買い込んでいたサンドイッチを腹に入れ、体がいささかべたつくのでシャワーで汗を流すと、昨日ほとんど何も出来なかった原稿の作成に取りかかる。

 11時を回った頃に部屋を出る。今日はフェスティバルホールで開催される大阪フィルのコンサートだが、その前に国立国際美術館で開催のピカソ展に立ち寄りたい。コインパーキングから車を出すと混雑する大阪の町を北上する。駐車場はホールの近くにアキッパで確保してある。

 車を置くと美術館に向かってプラプラと歩きながら昼食を摂る店を探す。目についたのは「牛煮炊きとおばんざい ちいやん」。どうやら大分料理がメインの居酒屋のようであるが、定食メニューもあってランチなどもあるので飯屋として利用できるようだ。

飯屋としても使える居酒屋という趣

 焼魚定食を注文。今日の焼き魚はさんまだそうな。そう言えば昨年は価格高騰の煽りを受けて、さんまを食べることがなかったような気がする。かなり久方ぶりのさんまはいささか塩っぱい。

今日の焼き魚定食はさんま

 定食メニューは野菜が豊富で美味い。特に具だくさんの味噌汁が美味。自然に野菜も摂れるようになっているなかなかに健康に良さそうなメニューである。これは良い店に当たった。

 昼食を終えると美術館に向かう。考えてみると隣の中之島美術館に来ることは多くなっているが、こちらに来るのはかなり久しぶりのように思う。元々この美術館は現代美術系の美術館なので私とあまり相性が良くないと言うこともあるが。

最近は奥の中之島美術館の方ばかりだった

 

 

「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」国立国際美術館で5/21まで

 ベルリン国立ベルクグリューン美術館は、美術商ハインツ・ベルクグリューンのコレクションを基にした美術館であるとのこと。特にピカソの初期から晩年までの作品を所蔵しており、同時代に活躍した、クレー、マティス、ジャコメッティらの作品も収蔵しているとのこと。

 ピカソについては「青の時代」から始まる。

ジャウメ・サバルテスの肖像(1904年)

 次に色彩が明るくなった「薔薇色の時代」となる。

座るアルルカン(1905年)

 そこからいわゆるキュビズムの時代に突入する。ちなみに同時代の作家としてブラックの作品が併せて展示されていたが、そちらは撮影不可。なお作品自体はピカソとかなり類似。

グラス、花束、ギター、瓶のある静物(1919年)

 両大戦間の時代となると新古典主義の時代となり、ピカソの作品はまた変貌する。古典的なカッチリした描き方の作品が多くなってきて、一時期の強烈なキュビズムはやや収まってくる。

座って足を拭く裸婦(1921年)

 

 

 さらに同時代のパウル・クレーの作品も展示されているが、これは私はあまり得意ではないところ。ちなみに一昔前のカメラならピント合わせが混乱しそうな作品がある。

パウル・クレー「夢の都市」

パウル・クレー「植物と窓のある静物」

 さらにここでマティスも登場。一目で誰の作品か分かるぐらい個性があるが、立体作品の場合は意外に普通なのが逆に驚き。

アンリ・マティス「青いポートフォリオ」

彫刻は意外に普通

 さらにいかにもマティスらしい切り紙の作品も登場。鮮やかな色彩を極めたら、油彩よりも最終的にはこっちの方が正解なのかもしれない。カラリストであるマティスの神髄とも言える。

雑誌「ヴェルヴ」の表紙図案

 

 

 さらにジャコメッティの彫刻も登場、いわゆる「針金人間」という奴だが、これもあまり私の好みではない。

ジャコメッティ「広場II」

ジャコメッティ「ヤナイハラI」

 そしてピカソの最晩年のかなりカラフルな作品が登場して終わりである。

ピカソ「闘牛士と裸婦」

ピカソ「男と女」

 個人コレクションを元にした美術館とのことだが、収蔵品のメインが本展出展作品なのか、膨大なコレクションの中から特定の画家の作品だけチョイスしたのかは定かではないのだが、前者だとしたらかなり明確なポリシーを持ったコレクションであると言える。

 ピカソと言えば、その長い生涯の中でとにかく変化の激しい画家であるのだが、その変化の様を一望することができてなかなかに興味深いところである。晩年辺りになるとかなり芸術が爆発しており、激しい色彩には先に訪問した岡本太郎を連想した次第。


 美術館の見学を終えるとフェスティバルホールへ向かう。まだ開演時間まで余裕があるので、実のところは喫茶店にでも立ち寄りたいのだが、この周辺にはとにかくあまり良い店がない(あってもやたらに価格の高い店ばかり)。そもそもこの界隈はオフィス街なので、週末になると閉めている店が多いし。結局は開場直後ぐらいに入場して、ホール内でぼんやりと開演待ちをすることに。なお客の入りは1階を見る限りでは9割方というところ。

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第565回定期演奏会

ステージ上は管楽器用のセッティング

指揮/デイヴィッド・レイランド

曲目/ストラヴィンスキー:管楽器のための交響曲
   モーツァルト:交響曲 第40番 ト短調 K.550
   リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35

 最初はステージ上には管楽器だけが並んでいる状態で、そこにレイランドが入場してきて開始である。いわゆるブラスバンド曲というイメージとは少々異なり、現代寄り音楽を管楽器だけで演奏しているという印象。なかなかに取り留めがなく、ストラヴィンスキーのもっと後の曲のようなシンプルさがない。正直なところ私にはつかみ所がない。

 一曲目が終えるとゾロゾロと弦楽陣が入ってきて10型編成になる。レイランドのアプローチはピリオドでやや早めのテンポ。ところどころアクセントを付けたエッジの効いている演奏ではあるが、全体としてはいかにも古典派モーツァルトという趣の淡々としてあっさりした印象の演奏である。モーツァルトであまり大仰に感情を込めるのは賛否のあるところだが、私的にはいささか物足りなさを感じさせるところがある。

 休憩後の後半になると、16型にオケを拡大してのシェエラザードになる。しかしこの演奏は先のモーツァルトと全く印象が一変する。エッジの立った演奏であるのは相変わらずだが、溜なども加えた非常に濃厚でコッテリした演奏である。さらにコンマスの崔氏のヴァイオリンソロが甘美極まりなく、なかなかに魅惑的なシェエラザードの表現となっている。

 金管を中心に管楽陣がバリバリと来るんだが、それが荒々しくも色っぽい。リムスキー=コルサコフによる名人芸的なオーケストレーションが、さらにより明快な色彩を帯びて一大絵巻として繰り広げられるという印象。アラビアンナイトの物語が眼前で展開するような錯覚をも抱いた。それもハリウッドの最先端SFXを駆使した大冒険活劇(の一方でメロメロのドラマも展開される)である。

 ピリオドを使用したあっさり風味のモーツァルトと対照的なコッテリ演奏には驚かされた次第。なかなかに興味深い指揮者である。それにしても大阪フィルの音色も多彩さを持ち始めたな。

 

 

夕食は町の洋食店で

 コンサートを終えるとホテルに戻ってくる。駐車場は幸いにしてホテルの近くで簡単に見つかる。車を置くとホテルに入る前に夕食を摂ることにする。新世界まで出向くのもしんどいし、串カツを食いたい気分でないしということで新今宮界隈をウロウロ、「南自由軒」なる洋食店を見つけたので入店する。「町の洋食店」と看板にあるが、典型的な「箸で食べる洋食屋」である。概して古い町のこういうタイプの店は侮れないというのが経験則。

南自由軒

 注文したのは「ビーフシチュー(1020円)」。ここの店は牛肉を使用したオムライスが有名なようだが、今日は気分的にこっちを選択。ただ出てきた料理自体はシチューというよりは、薄切り肉のソース煮込みという趣で予測と違った。しかし肉は柔らかくてなかなかに美味い。総じて味付けが巧み。ちなみに付け合わせのサラダにスープ(というにはとろろ昆布入りの奇妙なものだが)もなかなかに美味い。さすがに生活者の町、新今宮。飲食店も侮りがたいところが多い。

ビーフシチュー

 夕食を終えるとホテルに戻ると、またもグッタリ。しかし昨日は風呂に入ることもなく寝てしまったので、今日は入浴だけはとにかく済ませることにする。大浴場でゆったりと体を温めると少し体調が良くなってくるので、今朝に書きかけていた昨日の原稿を仕上げてアップする。それが終わった頃には眠気が押し寄せてきたので就寝する。

 

 

この遠征の翌日の記事

www.ksagi.work

この遠征の前日の記事

www.ksagi.work