徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

最終日はPACオケの定期演奏会、スダーンのグレイトは実にグレイトだった

遠征も最終日

 翌朝は8時半に起床。朝から体はやや重い。昨日に買い込んでいたパンとおにぎりを腹に入れるととりあえずシャワーで汗を流す。後は部屋でゴロゴロしながらチェックアウトの11時前まで過ごす。原稿執筆も考えたが、疲労が結構来ていて頭が回らない状態なので諦める。

 さて今日の予定だが、15時から兵庫芸文で開催されるPACオケのコンサートに行く以外には何の目的もない。それだとあまりに時間が余る。そう言うわけで西宮市立大谷記念美術館を訪ねることにする。

 駐車場に車を入れようとするといつになく車が多い。何があったんだと思っていたら、どうやら本日は無料開館日だったらしい。今時は美術館の入場料も安くはないのでラッキーである。

 

 

「新収蔵品展」西宮市大谷記念美術館で3/19まで

大谷美術館は無料観覧日だった

 新収蔵品を中心に展示した展覧会。内容は4部構成になっていて、それぞれ全く異なる内容。

 第1部は屏風絵。新収蔵品は18世紀末の西宮出身の絵師・勝部如春斎の「四季草花図・芦雁図」。大作であってかなり勢いの感じる作品だが、個人的には特に強い印象は残らず。

 第2部は今竹七郎のデザイン類。以前からこの美術館のコレクションの中心の1つだが、今回はそこに同時代の竹久夢二などの作品が加わったようだ。今竹七郎のパッケージデザインなどは特徴的で面白く時代を感じるものであるが、面白いで終わるもので特に感心するというほどではない。

 第3部は川村悦子の草木を描いた大作。近くで見ると結構大胆な筆使いに感じられるのだが、遠くから眺めると圧倒されるほどリアルであり、空気感まで感じられるのが驚き。美術館で森林浴と銘打っていたが、確かに何となく湿っぽくてひんやりした空気を感じた。

 第4部は版画類だが、これに関しては残念ながら私の印象に残る作品はなかった。まあこれは元々私が版画にはあまり興味がないことも影響しているが、そもそも現代絵画自体があれなので。

 

 

 美術館をブラリと一周したらそれなりに疲れる。まだ時間にかなり余裕があることだし、少し一服していこうと考える。館内のカフェに立ち寄って「ワッフルセット(1000円-100円)」を注文する。

ワッフルセットを頂く

 温かくてサクサクのワッフルにアイスクリームが合わさると非常に心地よい。コーヒーはやや苦めだが、これと合わせるとバランスが取れる。大谷美術館の庭園を眺めながらしばしマッタリと落ち着いた時を過ごす。

大谷美術館は庭園も売り

 

 

昼食を摂ってからホールへ

 しばしの休息の後に美術館を後にするともう既に昼時を回っている。ホールに行く前にどこかで昼食を摂りたい。以前にも行ったことのある「キッチンキノシタ」を目当てに車で移動するが、店に到着した時には店前の駐車スペースは皆無。やはりこの人気店は週末の昼時の入店は困難か。仕方ないので通過すると他の店を物色。「そば辰」の前を通りかかった時に、ちょうど正面の駐車場が1台分空いているのを見てそこに車を入れる。

そば辰

 ここは結構有名なそば屋とのことで、既に待ち客がいる。名簿を見ると私で3番目のようなのでしばし待つことにする。待ったのは20分弱だが、その間にも続々と客が押し寄せている。なかなかの人気店のようだ。

玄関までのアプローチは風情あり

 ようやく入店するとメニューに目を通すが、セットや定食の類いが名前を書いてあるだけで中身の記述がないのでよく分からない。そこで店員に聞いてみたが、どうも私的にピンとくるものがない。そう言うわけで注文したのは「鴨そば(1980円)」

鴨そば1980円也

 しばし待った後にそばが到着。うん、普通に美味い。しかしあくまで「普通に」である。感動するとか、今まで食べた中で一番とかそういうレベルではない。正直なところこのレベルのそばなら他にもいくらでもある。私の頭の中に浮かんだ妥当な価格はmax1500円というところで、1980円はないわというのが正直な感想。これが1200円以下なら通うだろう。

 

 

 昼食を終えるとホールへ移動する。ホールに到着したのはまだ開場時刻よりも大分前。駐車場に車を入れると開場時刻まで館内の喫茶に立ち寄ることにする。さっき美術館の喫茶でコーヒーを飲んでおり、これ以上のコーヒーは胃をつぶす可能性が高いので、アイスティーを注文してこの原稿入力で時間をつぶす。アイスティーはアールグレイを用いているようでややクセがある。これなら私の場合はオーソドックスにダージリンの方が良い(ダージリンも決して私の好きな茶葉ではないのだが)。

カフェでアイスティーを頂きながら時間をつぶす

 ようやく時間が来たのでホールに入場する。客の入りは8~9割というところか。

大ホール

 

 

PACオケ第139回定期演奏会

最初はハイドン用の小編成配置

指揮:ユベール・スダーン
ピアノ:児玉 麻里

ハイドン:交響曲 第6番「朝」
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番
シューベルト:交響曲 第8(9)番「ザ・グレイト」

 最初はハイドンの曲、6型という小編成のPACオケが室内楽的なサウンドを奏でる。スダーンは古典曲をロマンティックに表現する指揮者である。その特徴は最初のハイドンから現れていて、古典的に整然とというよりは、明らかに情緒が加わっている。ハイドンについてはそういう演奏をすればロマン派の曲のように聞こえる場面があるということを最近になって気付いていたが、そのことを改めて再確認させられる。

 二曲目はいきなりオケの演奏はかなりロマンティックに始まるのだが、それに対して児玉のピアノは甘さをあまり感じさせない強いタッチによるもの。14型という通常の協奏曲よりは大編成のPACオケに音量の点でも全く遜色がない。非常に明快で毅然とした演奏という印象。決して硬質一辺倒というわけではないのだが、基本的に鋭角的で力強い演奏。これはこれで全体のバランスは取れている。

 ソリストアンコールは「エリーゼのために」。ここで児玉は甘いタッチを披露するのだが、それでもやはり基本的には強い演奏をするピアニストだということを感じさせる。堂々として安定感は抜群。

 休憩後の後半はザ・グレイト。スダーンのアプローチはやはりかなりロマンティックな方向。生命力溢れる非常に躍動感のある演奏である。この辺りがPACオケの若さと相まって活き活きした音楽になっている。とにかく一貫しているのは演奏が陽性であること。この曲がこんなに明るい曲だったのかと言うことは今回初めて認識した。第二楽章などは演奏によっては哀愁を帯びて聞こえることもあるのだが、スダーンの演奏にはそういう影の部分は微塵もなく、ひたすら美しくて明るい天上の音楽という趣。

 この曲はやや長いので、演奏によっては冗長になってしまってまさに眠気を誘う場合さえあるのであるが、今回の演奏に関してはそういう余地は全くなかった。最初から最後まで夢見心地で心地よいままにクライマックスというところ。改めてこの曲をシューマンが絶賛したという意味が分かったような気も。


 前半部分で1時間を大きく越えた上に、後半が長大なザ・グレイトだったためにコンサート終了まで2時間半近くを要することに。コンサートを終えると慌てて帰宅の途についたのである。

 

 

この遠征の前日の記事

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