徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

京都の美術館で東山魁夷、甲斐庄楠音らの絵画を見てから、京都市響のアクセルロッドファイナルへ

京都日帰り遠征実施

 この週末は京都まで遠征することとなった。目的は京都市交響楽団。今回はアクセルロッドの首席客演指揮者としてのラストとなる。今まで数々の名演を残してくれたアクセルロッドのラストとなればやはり聞いておきたいということで、京都まで足を伸ばすことにした。ただ京都まで遠征するとなると、やはりついでの行事を盛り込んでおきたい。当然のようにそれは美術館訪問。現在福田美術館で「日本画革命」が開催中、さらに京都国立近代美術館で「甲斐庄楠音の全貌展」が開催中であるので、この2つぐらいは押さえておきたい。なお伊勢丹でミュシャ展が開催されているが、京都駅はアクセスが悪い(車で行く場合)ことから、まあこれは諦めることにする。

 コンサートが14時半からとやや早めに始まることから、福田美術館に開館の10時直後に到着することを目指す。そのために家を出たのは午前の早い内、途中で朝食を摂ると高速を嵐山目指して突っ走る。嵐山手前で渋滞に出くわして、若干の遅れが出るが、それでも嵐山には10時少し過ぎぐらいで到着する。目をつけていた駐車場には空きがなかったので周辺の駐車場を探す。美術館から結構離れたところに安い駐車場を発見、まあ運動不足だし少し運動することにするか。

桂川べりをプラプラと歩く

 美術館へは徒歩で10分程度。面倒な距離ではある。美術館周辺は相変わらず観光客がゾロゾロ。なんかこんなのでコロナは本当に大丈夫なのか?

10分ほどで福田美術館に到着

 

 

「日本画革命 ~魁夷・又造ら近代日本画の旗手」福田美術館で4/9まで

 近代日本画壇に革命を起こした画家たちを紹介とのことである。まず第1展示室の方はお約束とも言える横山大観と菱田春草が展示されている。

横山大観「東山烟雨」

菱田春草「蓬莱山図」

菱田春草「群鷺之図」

大観と春草の競作による「飛泉」

 

 

 さらに小林古径、さらにこれも絶対外せない川合玉堂など。

小林古径「鴨」

川合玉堂「瀑布」

川合玉堂「三保・富士」

 京都画壇からは山口華楊、徳岡神泉などが展示されている。

山口華楊「待春」

徳岡神泉「池」

 

 

 第2展示室では「魁夷・又造、2人の山」と銘打って東山魁夷と加山又造の作品を展示。国民画家とまで言われた魁夷の美しい作品とインパクの強い又造の作品を堪能できる。

東山魁夷「緑岡」

東山魁夷「秋深」

東山魁夷「月映」

東山魁夷「山峡朝霧」

東山魁夷「緑の朝」

 

 

加山又造「日輪」

加山又造「紅白梅」

加山又造「鶉」

加山又造「雪ノ朝」

 最後の第3展示室では、青の魁夷に対して赤の元宋の奥田元宋や小野竹喬といった辺りが登場する。

小野竹喬「四季屏風」

 全体的に私の好きなところが多い展覧会であり、なかなかに見応えがあって堪能できた。わざわざ出張ってきた価値ありである。

次回展は橋本関雪らしい

 展覧会の鑑賞を終えるとプラプラと駐車場まで戻ってくる。時間は昼前。やはり次の美術館でギリギリだろう。車を急がせるが、京都の西の端から東の端まで走るような形になるから、距離もあるし混雑もしていて予想よりも時間を要する。ようやく昼頃に美術館に到着すると駐車場に車を放り込む。

 先ほどの福田美術館もなかなか良かったのだが、そもそも展覧会の主目的としてはこちらの方がメインである。1度見たら脳裏に焼き付くような強烈なインパクトのある甲斐庄楠音の展覧会となる。

 

 

「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」京都国立近代美術館で4/9まで

京都市現代美術館

 甲斐庄楠音はまさに大正デカダンスを象徴する画家として話題となる。なおこの時に同時に話題になったのが、これまたデロリとした独得の画風の岡本神草だったという辺りが何となくこの時代の空気を伝える。

看板になっている作品は彼の作品では「綺麗」な方の絵

 彼の作品の特徴は美醜を越えたかのようなその強烈な画風。官能的と表現されることもあるが、肉感的というか何やらモデルの体臭まで感じさせるような濃厚なところがあり、グロテスクという表現さえピッタリくるようなところがある。土田麦僊が「穢い絵」と酷評したという話も残っているが、そういう解釈も理解できる。

Amazonでの画集、ここまで来ると半分以上グロい

 なお彼自身は演劇などの方にも関心が深かったようで、優男である彼自身が女形に扮した写真なども残っている。

甲斐庄楠音、明らかに優男である

 その作品のインパクトの割には今日あまり名前が残っていないのは、その後に彼自身が活動の場を映画の風俗考証に移したことによるという。展示の後半は彼の手がけた映画衣装などの展示となっているが、代表作は市川右太衛門の「旗本退屈男」シリーズの豪華で派手な衣装である。これに対して「丹下左膳」となると地味だがインパクトの強い衣装など、作品に合わせてデザインしているのが良く分かる。

 このコーナーでは往年の市川右太衛門や片岡千恵蔵などといった辺りから若き大川橋蔵、さらには若き中村錦之助(後の萬屋錦之介)、北大路欣也といった大スター揃い踏みで、別の意味で感慨深かったりする。

 甲斐庄楠音についてはその強烈なインパクトから記憶に焼き付いている(岡本神草とペアになっているが)が、その割にはどういう画家だったかということは私はよく知らなかった。そういう意味では彼の人となりやその生涯を知れたことはなかなかに興味深かった。

 

 

 大体これで美術館の方の目的は終わったが、既に1時前になっていて時間に余裕がない。とりあえずホールの方へ急ぐことにする。akippaで確保した駐車場はここからそう遠くはないので直ちに移動して車を置くと、とりあえず急いで昼食。気分的には「東洋亭」に行きたかったのだが、回転の遅い店で順番を待っている時間的余裕がないので、比較的すぐに入れそうだった「そば料理よしむら北山楼」に入店する。正直なところそばの気分ではなかったのだが、贅沢を言っている場合ではなかったのでそばのセットを頼んでこれが今日の昼食となる。

そば料理よしむら北山楼

そばのセットを頂く

 昼食を終えるともう既に開場時刻になっているのでホールへ急ぐ。客は結構来ていて場内は8割~9割の入りというところだろうか。

ホールへ

 

 

京都市交響楽団第676回定期演奏会

大編成用のセッティング

ジョン・アクセルロッド (首席客演指揮者)
三浦 文彰(ヴァイオリン)

ガーシュウィン:パリのアメリカ人
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

 メインである「春の祭典」に合わせてか、今回の京都市響は金管大幅増量の上に16型という大型編成となっている。

 最初のパリのアメリカ人はガーシュウィンによるユーモラスでウィットに富む曲なのであるが、大型オケの威力でユーモラスと言うよりはバリバリといったという印象のかなり派手目の演奏でもある。それでも随所にガーシュウィンらしい茶目っ気と官能性は一応こめられている。

 二曲目はオケの編成を一回り減らしてのコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。この曲はやや甘めの曲調なのであるが、三浦の演奏は以前よりややソリッド感が強いところがあるので、その辺りがこの曲調とはどうだろうというところがなきにしもあらず。極端に甘々にならないバランスとも言えるのではあるが。

 最後は大編成のパワーを活かしての「春の祭典」。ただアクセルロッドは単純にパワーを活かしてブイブイといった単純な演奏はしない。メリハリはかなりハッキリとつけてあるのだが、パワーでぶっ飛ばす一辺倒ではない強弱の変化に配慮した意外に細かいところに気をつけた演奏でもある。その辺りはさすが。

 もっともここ一番になると大編成オケのパワーをこれでもかとばかりに発揮してきたのは事実。特にドンガンと激しい唸りを上げる大太鼓に、つんざくような金管の咆哮はかなりの大迫力であり、そういう点でもかなり堪能できる演奏となったのは事実である。

 アクセルロッド首席客演指揮者としての最後を飾るまずまずの演奏になったという感がある。まあ今後もアクセルロッドは完全に切れるというわけではないだろうから、時折は客演で名演奏を聴かせて欲しいところである。


 これで今回の遠征は終了、夕方の渋滞の京都を帰路につくのであるが、毎度のことながらこれはかなり疲れる行程なのに、今回は京都日帰りという力技になってしまったので、自宅にたどり着いた頃には疲労困憊して何をする気力もないままに早めにバタンキューとなってしまったのである。さすがに若い頃と違って京都日帰りはキツいか。