大阪美術館巡り開始
翌朝は7時半に目覚ましで叩き起こされた。朝から体が重くてだるいのは毎度のこと。とりあえずは入浴でエンジンをかける。さて今日の予定だが、メインは15時からの大フィルの定期演奏会がフェスティバルホールで。ただそれまでに大阪地区の美術館を回ろうという計画がある。
9時頃にホテルを出るとまずは地下鉄御堂筋線で長居に向かう。最初は久しぶりに市立自然史博物館を訪問する予定である。長居で降りるとかなり大勢がゾロゾロと私と同じ方向に向かっている。まさかこれが全員同じ目的地じゃないだろうなと驚いたが、どうやら途中のスタジアムで何かが行われる模様で、大半の歩行者はそちらの方向に。
やがて目的の博物館に到着するが、ここで行列に出くわす。結構混雑している模様で、会場内も押し合いへし合い。これは想定外。
特別展「毒」大阪市立自然史博物館で5/28まで
自分の身を守るため、もしくは餌をとらえるためなど、自然界には様々な理由で毒を持つ生物が存在するが、そのような「毒」に注目した展覧会。
まず最初は毒でありながら人間には毒と認識されていない代表として「玉ねぎ」「カカオ」などが登場する。これらのいずれも人は食用に使用するが、犬・猫などには毒であることは知られている。人は結構悪食であるようで、これらの毒を食用出来るように対応したのである。何しろかなり強い毒であるカプサイシンさえ摂取するのであるから。
巨大蛇とスズメバチの模型がいきなり登場する次のコーナーは、自然界の様々な毒を持つ生物を紹介していく。
まずは植物毒の定番のトリカブト辺りから始まって、やはり毒と言えば蛇である。中にはヤマカガシのように自身では毒を作り出せず、有毒のカエルを捕食することで毒を蓄える種もある。
ハチについては、刺された時の痛みを数値化したシュミット指数なるものが登場。ただ最強のレベル4になると、痛いというよりも遺体になりそうなのだが・・・。
毒性爬虫類からはコモドオオトカゲ。この図体で毒まで持つとはまさに凶悪なトカゲである。
海洋生物からは、やはり毒と言えばフグ。そしてイモガイことアンボイナ、そして海水浴で要注意のアカエイが登場。
さらに有毒の哺乳類としてカモノハシ。そして鳥類からは伝説の鴆毒(ちんどく)のモデルになったのではと言われているズグロモリモズが登場する。
つづいて、やはり毒キノコに毒を作り出すカビ、最後は無生物で鉱物毒まで紹介されている。
最後は愚かにも人が生み出した毒物である。マイクロプラスチックやDDTが挙げられている。
しかし自然界もさるものである。あえて毒があるものを食べることで、競合生物をなくして生存競争を生き残る戦略を取った生物もいる。有毒のユーカリを食べるコアラに、猛毒のコブラを捕食するラーテルなど。
最後は人が利用した毒。薬としても利用されたストリキニーネなどが登場。さらにアイヌの毒矢も展示されている。そして蚊取り線香なども。
そして悪食の人類は毒のある生物でさえ、無毒化して食用にしている。血液と粘液に毒性のあるウナギ(これは知らなかった)は加熱することで無毒化し、フグは毒性部位を除去することで食用にし(確かにテッサは美味い)、青酸を含むキャッサバは水にさらしてタピオカでん粉となる。
意外なほどに有毒生物は存在するのだなと感心したが、結局のところ一番毒々しいのは実は人間だったのではという結論にたどり着かざるをえなかったのである。
高島屋東別館へ
博物館を後にすると、途中でホテルに忘れ物を取りに立ち寄ってから、そのまま日本橋へ移動。次は高島屋東別館に立ち寄ることにする。ここの3階にある高島屋資料館で「FROM OSAKA~百貨店美術部モノガタリ~」という企画展が開催中とのことである。
途中で黒門市場の前を通るが、外国人観光客がゾロゾロである。なお「松本清」という幟が見えたので選挙か何かかと思ったら、「マツモトキヨシ」だった。中国人向けの看板か。
そう言えば周辺にはやけに中華料理屋やラーメン屋が多い。日本に来て和食を食べたいという中国人観光客向けなんだろう(ラーメンとカレーライスは今や和食の代表らしい)。これらを抜けて重々しい建物が見えてきたら、そこが高島屋東別館。
高島屋東別館は建物自体が文化財である。なお往年の風景の残るエレベータホールなどもある。
企画展では高島屋絡みの美術品を展示。意外に現代に近いアートが多い。目玉は北野恒富による「婦人図」のポスター原画。なお併せてコスプレ芸術家こと森村泰昌によるコスプレ作品も併せて展示されている(残念ながら撮影不可)。
資料の方にはかつての高島屋の模型などもあり、意外に面白い。展示数は決して多くはないが無料の展覧会としては十分だろう。
資料室を一回りして降りてくると、一階にフードコートのようなコーナーがあるので少し覗く。「淡路島バーガー」の看板が目に飛び込んできたので何となく惹かれてブランチと洒落込む。注文したのは淡路島バーガー(850円)+サイドとドリンクのセット(400円)。
パテはキチンと牛肉の味がするし、淡路島バーガー最大の売りであるタマネギはまろやかで良く馴染む。まあ概ね美味いバーガーと言えよう。もっともこれで850円はやはりCPが悪い。いくら美味いバーガーでも、これでモスバーガーの2倍の価値があるかと言われると・・・。
さすがに高級百貨店高島屋はフードコートも高かったようである(笑)。つくづく私は逆立ちしても百貨店の上客にはなれないタイプである。
高島屋を後にすると次の目的地へ。次は最近リニューアルオープンしたという藤田美術館。以前はかなり地味な美術館だったが、いかにも現代風にリニューアルしたとか。地下鉄と東西線を乗り継ぐと、美術館自体は大阪城北詰駅の出口からすぐだが、そこに向かうのに微妙に遠回りする必要があるのと、東西線がバカみたいに深いところを走っているせいで、延々と階段を登らされることになる。情けないことに途中で息が切れる。こりゃ体が悪くなったらくるのは無理だな。
新装なった藤田美術館はガラス張りの近代的な建物。しかし内部に入っても券売所がない。どうやら係員に声をかけてクレジットなどで決済をしてから、解説にアクセスするためWi-Fi設定やアクセス設定などをするようになっている模様。いかにも現代的だが、スマホ必需で正直なところ年配には優しくない設計である。
藤田美術館
展示室を3つに分けて、装、旅、禅とテーマを付けた展示を行っている。
まず最初の装は、肉筆浮世絵の「立美人図」から始まり、能装束などが展示されている。
また印籠や茶道具の棗などの展示もあり。
次の旅のコーナーは山水図や漁船の香合
さらに玄奘三蔵の旅を描いた国宝の絵巻や西行物語図など。
最後の禅のコーナーは日本に3つしかない曜変天目茶碗が展示。
さらに油滴天目、兎毫盞天目茶碗も併せて展示されている。
展示室はここまでで、これを抜けると藤田邸跡公園に出ることになっている。落ち着いた良い趣の美術館である。展示品見学後は茶でも頂いてマッタリしようかと思っていたのだが、喫茶には行列が出来ている状態なのでもう2時前で時間にそう余裕もないことから、諦めてホールに移動することにする。
大阪フィルハーモニー交響楽団 第568回定期演奏会
指揮/アンガス・ウェブスター
ピアノ/小林海都
曲目/ブラームス:悲劇的序曲 作品81
ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 作品21
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」
最初はブラームスの悲劇的序曲から。ウェブスターの演奏は若さ溢れるというか、最初からガンガンと行く印象である。非常によくオケを鳴らしているという感を受ける。ただし元気は良いのだが、いささか緊迫感に欠けるところがある。この曲の場合、冒頭の動機でバシッと決めて欲しいのだが、そこが決まりきらない感がある。結局は悲劇的というよりは悲劇をぶっ飛ばす曲という印象。
二曲目はショパンのマイナーな方のピアノコンツェルトである。これは小林のピアノの見事さに尽きるだろう。最初から軽快でありながら、それが軽くなりすぎず十二分な情感を秘めており、音色は甘美。実に魅力的な演奏である。当然のように演奏技術には全く危なげがないが、それをひけらかすタイプの演奏ではない。
その小林のすごさはアンコールのショパンのノクターンでさらに遺憾なく発揮された。ニュアンスを含む深い音色は観客を聞き入らせるものがあり、将来の巨匠の風格さえ感じさせた。
後半は悲愴だが、残念ながらこの曲についてはポリャンスキー/ロシア国立交響楽団やゲルギエフ/ウィーンフィルの超名演が頭に焼き付いてしまっている私にはいささかキツイというのが本音。ウェブスターは彼なりに曲に起伏をつけてメリハリを効かしているのだが、どうしてもそれが一段甘い印象。ポリャンスキーらの超名演が人生の苦悩を叩きつけてくるような演奏だとしたら、ウェブスターの演奏はせいぜい若者の癇癪レベルに聞こえてしまう。力でグイグイと押してくる第3楽章などは、持ち前の前進力溢れる演奏でまずまずだったのだが、どうしても第1,4楽章になるともう一段の緊張感が欲しいところ。さすがに若きウェブスターにそこまで完璧に大阪フィルを掌握しろというのは酷だとは思うが。
夕食は近くの定食やで
コンサートを終えるとホテルに戻って入浴。しっかり汗を流してから夕食に繰り出すことにする。ブランチがハンバーガーだったから、洋食系を食べる気はしない。ガッツリと白ご飯を食べたいという気持ち。というわけで結局はちかくの「らいらいけん」に。日替わり定食(ニラ玉にエビフライと一口カツ)を注文。
ニラ玉が美味いのが予想外。ニラは嫌いな私が言うのだから間違いない(笑)。ニラ玉がこんなに美味いとは。小鉢1つがついて800円。例によっての無敵のCPである。
夕食を終えるとホテルに戻ってくると原稿入力作業。こうしてこの夜は更けていく。
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