徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

神戸の「テルマエ展」見学後に、関西フィルの定期演奏会でベテラン堀米の演奏を堪能

今朝も近くの喫茶店で朝食

 翌朝は寝過ごし防止用に8時にセットしていた目覚ましで叩き起こされる。少しボンヤリしている頭に活を入れると、とりあえずは朝食に。今日立ち寄ったのは「喫茶マルフク」。この界隈にある早朝から営業している喫茶店である。例によって喫煙可であるが、そもそもここのマスターが喫煙者のようだ。

裏通りの喫茶マルフク

 店内は奥にも席があって結構広い。モーニングはサンドイッチかトーストかロールパンにドリンクがついて、ホットで350円、アイスで370円と格安。私はアイスコーヒーにサンドイッチをつける。

CP最強のモーニング

 サンドイッチも美味いしコーヒーもまずまず。これでワンコイン以下なんだからCPはかなり高い。やはりこの界隈は侮れない。

 

 

 朝食を終えるとホテルに戻ってきてまずは朝風呂。腹に燃料は入れたし、体は温めたしで、何とかこれでエンジンがかかってくる。もうチェックアウト時刻が近いことから荷物をまとめる。

 さて今日の予定だが、14時開演の関西フィルの定期演奏会である。問題はチェックアウトの10時からその間をどうつぶすかだ。ここで大阪地区に適当な展覧会でもあれば良いのだが、生憎と手頃なものがない。そこで一旦神戸まで引き返して「テルマエ展」に立ち寄ることにする。神戸まで行ってからもう一度大阪に戻ってくるのだから動線的には無駄が多いが、人生もう先がそう長くない(笑)私にとっては時間が惜しい。もっともなるべく無駄な交通費は減らしたいところでもある。とりあえずJRで大阪まで移動すると、帰りの動線を考えて駅構内のロッカーにキャリーを入れて、阪急で三ノ宮まで移動する。

 阪急三ノ宮から博物館までは徒歩で結構嫌な距離がある。もっとも昨日の京都と違って風に涼しさを感じるのでその点はかなり楽である。

いささか疲れた頃にようやく博物館に到着

 

 

「テルマエ展 お風呂でつながる古代ローマと日本」神戸市立博物館で8/25まで

 最近、ヤマザキマリ氏の「テルマエ・ロマエ」の大ヒットで、お風呂文化を通して古代ローマと日本の類似性が注目されることとなったのであるが、本展ではカラカラ大浴場の復元模型等の古代ローマのお風呂文化を中心に、当時のローマ人達の生活や文化を紹介しようという展覧会である。

 博物館一階にはいきなり当時の浴場の一部が復元されている。公衆浴場ではこの中央の水盤から湯を汲んで身体を洗っていたとか。

当時の公衆浴場の一部

 第一部では有名なカラカラ大浴場を整備したカラカラ帝の胸像などが展示されている。多くの公衆浴場が皇帝などの名の下に設立されたが、そもそもそのような浴場文化が成立したのはローマが水道整備による豊富な水資源を確保できていたからであり、そのような社会的インフラの整備が根底にあったという。

カラカラ帝の胸像

 また当時の浴場は単に湯に浸かる場所ではなく、絵画や彫刻で飾られた文化的な社交場でもあったという。インフラが整えられたローマの庶民の生活レベルはかなり高い。当時のそのような人々の生活ぶりを物語る品々が展示されている。

当時のパンのレプリカ

芝居などの仮面のレリーフ

剣闘士の兜のレプリカ

千華文(モザイクガラス)の杯と皿

ワイン輸送用アンフォラ

 

 

 第二部になるといよいよ風呂関係のものとなる。当時使用された肌かき器やカミソリなどの小物から、温泉療法絡みでの医療小物なども展示されている。

ストリギルト(肌かき器)

カミソリ

治療神であるアポロ像

外科用小物

 

 

 さらには当時の水道技術を物語る吐水口やバルブなどの展示もある。水道が整備されていたローマではこのような品もかなり進歩している。

ライオンの吐水口

水道のバルブ

 そして浴場などをも飾ったモザイク画や彫刻なども。

牧神頭部のモザイク画

ヴィーナス像

 

 

 面白いのは第三部として日本の浴場文化を伝える展示があること。

ルシウスがご案内

 最初に登場するのは有馬温泉の由来を語る絵巻物だが、行基が有馬温泉を発見した経緯が記されているようである。やはり温泉は湯治によって病気の治療などにも用いられるものであり、そこには信仰なども関わっているという。

有馬温泉の由来絵巻

行基が病に苦しむ人に出会ったようである

そして仏の導きで薬効のある温泉を発見という辺りだろう

 江戸時代になると銭湯などが増加して、入浴は庶民の一般的な文化として定着したという。湯治の銭湯の様子を描いた錦絵などが登場する。

当時の銭湯の様子を描いた錦絵

 

 

 そして近代の入浴文化となるのだが、ここで登場するのが銭湯と切っても切れない関係にある「ケロリン」。銭湯の洗面器を宣伝に使用するというアイディアであるのだが、この洗面器の初期型(実は白かった)などが展示されているのが興味深い。

日本の銭湯と言えばケロリンだが、最初は白かったらしい

確かにこれは驚き

 さらには花王の前身の長瀬商店が1890年に初めて売り出した花王石鹸に、1932年に売り出したシャンプー(当時は固形である)などの興味深い展示で締めである。

花王が売り出した高級石けん

最初の固形シャンプー

 なお物販コーナーでは図録に加えて、ヤマザキマリ氏のテルマエ・ロマエに最近完結したプリニウス、さらに新シリーズである続テルマエ・ロマエなどもしっかりと販売されていたのは至極当然というところか。実のところ最初は今ひとつ趣旨がピンときていなかった展覧会なのだが、こうして見学を終えるとなかなかに納得である。

物販コーナーは当然のようにこうなる

ご苦労様でした

 

 

昼食にそばを摂ると急いで大阪にとんぼ返り

 博物館の見学を終えると三ノ宮まで戻ってくる。とりあえず昼食はこの近くで摂ることにする。何となくそばを食べたい気分であることから、最初は「正家」をイメージしていたのだが、いざ到着すると入口前に大勢の待ち客がいてげんなり。まあ元々私は更科そばよりも黒いそばの方が好きなこともあるので、瞬時に諦めて別の店を探す。結局はこの近くの「石臼挽そば 弦」に入店することにする。ただちょうど昼時に突入してしまったせいでどこの店も混雑しており、ここでもしばし待たされることに。

三ノ宮地下の「弦」

 10分以上待って、ようやく入店。注文したのは「ヘレカツ丼のセット(960円)」

ヘレカツ丼のセット

 カツ丼、そば共に悪くない。とりあえず合格点と言える内容である。ただ特に傑出していたり印象に残るレベルというわけでもない。無難に平均点と言ったところ。もっともまた次回にも利用することには抵抗はない。

 

 

 そうこうしているうちに結構時間を食ってしまった。ここからは阪神で福島まで移動することにする。三ノ宮駅に入るとちょうど特急が到着していたのでギリギリ飛び乗る。しかし飛び乗ってから時刻表を確認したところ、実はこれに乗り遅れていたら遅刻する可能性があったことを知ってぶっ飛ぶ。三ノ宮と福島の間は私のイメージよりもはるかに時間がかかる模様。何も考えずに阪神を選択したが、それは決して賢い選択ではなかったらしい。阪神の特急はとにかく停車駅が多すぎて遅いが、それに輪をかけて尼崎で乗り換えた普通列車が遅い。阪神は駅が多くて駅間が近いため、速度を上げる暇もなくダラダラと走る。そう言えば学生時代に私はこの辺りの大学に通っていたが、その時「阪神電車はバスより遅い」と揶揄されていたことを思い出した。確かに次の駅がそこに見えているような箇所もあり、強ち不当な評でもなかったようである。

 福島駅に到着した時には開演まであまり余裕のない時間帯。やや急ぎ足でホールに向かうと、何とか開演までに滑り込む。ホールの入りはざっと7割というところか。メインプログラムがややマニアックなせいか、会員席に空きがチラホラとある。

ようやくホールにたどり着く

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第347回定期演奏会

[指揮]沼尻竜典
[ヴァイオリン]堀米ゆず子
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
ブラームス(シェーンベルク編):ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 op.25(管弦楽版)


 シベリウスのヴァイオリン協奏曲は意外に難儀な曲である。と言うのも往々にしてこの曲の場合、ソリストの演奏にオケが被って聞こえなくなるということがあるからである。ソリストが繊細な弱めの演奏をするヴァイオリニストで、指揮者があまり考えずにバリバリとオケを鳴らすタイプだったために、ソリストがどこにいるのか分からないという演奏も今まで何度か耳にしてきた。そうなると最後、シベリウス特有の幽玄さがとんでもない子守歌として作用して、最強の催眠音波になる例さえあるのである。

 その点、流石にベテラン堀米の演奏は安定感もパワーも十二分。それに日本有数の音響を誇るホールの援護も巧みに取り入れて、その演奏にはオケに紛れるような弱々しさは全くない。テクニックで押しまくるというよりも、しっとりと聴かせる演奏である。それに指揮者の沼尻もオペラ指揮者としての特性が発揮されているようで、しっかりと堀米のソロが際立つような演奏をしている。協奏曲というよりも堀米のアリアを支えるかのような演奏であり、ロマンチックさを盛り上げるオペラオケのような演奏である。

 この両者の意図がかみ合って、幽玄でロマンチックな演奏が盛上がった。関西フィルもなかなかに良い音を出すのに驚いた。弦楽陣など最初の一音で「あっ、これがシベリウスの音」と思わず納得。こういう音を出せるオケは意外とない。

 演奏終了後はなかなかの盛り上がり。堀米が何度も出入りした後、場内に明かりがついてコンマスが腰を浮かせかけても拍手は鳴り止まず、堀米が再度出てきてアンコールを演奏することに。アンコールはバッハの無伴奏だったが、さすがにベテランだけあって聞かせる演奏をする。

 

 

 休憩後の後半はいささかの変化球。シェーンベルクがブラームスを編曲したという代物。シェーンベルクと言えば十二音技法の現代音楽バリバリのイメージがあるが、実際は古典に十二分なリスペクトを持った上で、その延長上に自分の音楽を据えていたとのことであり、本作もブラームスが現代ならこう作っただろうというイメージを持って編曲しているらしい。

 とは言うものの、やはり管弦楽アレンジにシェーンベルクの特性が出ているので、音楽自体はブラームスであるにもかかわらず、その響きは多分に現代音楽的である。この辺りがシェーンベルクの考えるブラームスの発展型であろうか。

 なお元の曲がピアノ四重奏曲であるために、交響曲と比すると音楽の重層度が低く、結果としてメロディラインが前面に出てきやすくなるところがあり、この辺りがブラームスの重厚壮大な交響曲とは印象の異なるところ。そしてこういう曲調となるとここでもやはり沼尻のオペラ指揮者としての特性が出てくる。旋律をたっぷりと歌わせる。そしてこれを支えるのがしっとりとした関西フィルの演奏。こうやって聴くと沼尻の演奏と関西フィルの相性の良さのようなものを感じさせられる。

 なかなかの名演といって過言はないと思う。沼尻と関西フィルの組み合わせは私は今回初めて聴いたのであるが、沼尻は巧みに関西フィルの特性を上手く引き出せるタイプの指揮者と感じた。今後もこの両者の組み合わせの演奏を聴きたいところである。


 これで今回の遠征は終了。環状線から神戸線の乗り換え時にキャリーを回収して帰途についたのである。昨日はどうしようもない身体のだるさに苦しめられたが、それについては今日にはほぼ回復しており、通常の肉体的疲労以上の不調はなくなっていた。正直なところデュトワのような「何かのウイルスへの感染」を警戒したのであるが、どうやら一過性の熱中症の線が強かったようである。

 

 

この遠征の前日の記事

www.ksagi.work