今日は気晴らしを兼ねて尾高の「復活」
この金曜日は仕事終了後に大阪に直行である。今日はフェスティバルホールで尾高指揮の大フィルによるマーラーの「復活」。そうそう演奏機会がある曲ではないのでわざわざ大阪まで出向いた次第。
それにしても世間は急激すぎる円高に伴う東証大暴落でパニック状態。かく言う私もこの一週間ほどで数十万円の損害を蒙った口である。今のところまだトータルではプラスであるが、この調子で円がさらに高騰してマイナスが出るような状況になれば私も正気でいられるかは怪しい。なお「新NISAに騙された」という阿鼻叫喚が既にSNS辺りでは登場している模様。一番悲惨なのは「どうやら新NISAでオルカンとかS&P500というのを買っておけば儲かるらしい」と周りを見ながら春頃に参戦した連中。恐らく既にかなりの含み損が出ているはずである。中には夏のボーナスで追加や新規参戦した連中もいるのでは。
それにしても税金をアメリカに貢ぐのは限界が来たから、次は新NISAで誘導して国民の金をアメリカに貢がせた岸田はえげつないことをする。流石にアメリカ国植民地日本総督である。なお私が悔しいのは、夏頃に下落するというのは読んでいたにもかかわらず、時期が予想よりも早すぎたせいで逃げ遅れてしまったこと。実は既に投資の2割程度は逃がしていたのだが、残りが逃げ損なった。しかも逃がした資本を日本株に投入したら、為替の影響で東証の底が抜けて、そちらも大変なことに。含み益を上げていた優良株は暴落してマイ転(マイナス転換)し、利益トントンぐらいをウロウロしていた低迷株は、大暴落で損切りラインさえ一瞬で遥かに超過してしまって、塩漬けにせざるを得ない状況になってしまった。なおアメリカ株については、ドルベースではいずれもプラスが出ているにもかかわらず、円ベースになるとすべてがマイナスになってしまうという惨状。
なお今後に気をつけたいことは、恐らく「新NISAで損失を受けた人を救済するための政府の支援が・・・」という類いの詐欺が登場するだろうということ。この社会状況を見て、あの類いのクズ共が目をつけないはずはないので要注意。
久しぶりにカレーを食べるが・・・
老後の先行きが不安になる状況であるが、とにかく気晴らしも兼ねて灼熱地獄の中に繰り出す。JRで大阪まで移動すると、ホールに向かう前に夕食を摂ることにする。とは言うものの、この灼熱地獄のせいで食欲はサッパリ。とにかく何も食べるものが浮かばない。そこでやむなく大阪駅地下の「ミンガス」に入店、「ロースカツカレー(910円)」を注文する。
久しぶりのミンガスのカレーだが、どうも移転してから味が落ちた気がしてならない。まあ今日は体調もかなり悪いのでどこまで自分の舌があてになるかは怪しくはあるが・・・。
夕食を終えると気分としてはデザートが欲しいんだが、通りすがりに「つる家茶房」を覗いたら「わらびもち売り切れ」の看板が出ていたので諦めてホールへ。今回の公演は大阪国際フェスティバルの一環らしい。と言ったところで普通の定期演奏会とどう違うんだって感じだが。まあマーラーの2番にはスペシャル感は確かにあるが。
入場客はかなり多そうである。開演までには時間があるので、とにかくカレーで辛くなっている口の中をアイスコーヒーで洗い流すことにする。
しばし原稿執筆などで時間をつぶしてから入場。曲目が曲目だけにオケの編成がかなり大きく、後には合唱団用のひな壇も。さらに左右の壁に隙間が空けてあるのは舞台裏で演奏する楽器があるからだろう。
大阪フィル✕尾高忠明 マーラー<復活>
マーラー:交響曲第2番<復活>
指揮:尾高忠明
ソプラノ:森谷真理
メゾソプラノ:加納悦子
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指導:福島章恭)
曲目に合わせて今日の大フィルは16型4管編成という超巨大編成。しかも舞台裏にホルン×4+トランペット×4まで伏せてあるから、今回はかなり助っ人も仰いでいることだと思われる。
この巨大オケのパワーを活かして、尾高は大音響でブイブイとぶっ飛ばす・・・かと思ったらさにあらず、全く対称的にやや遅めのテンポでドッシリとした演奏である。むしろ表現は抑え目で、場合によって狂乱の音楽になりやすいこの曲の第一楽章も、ハーモニーの美しさを前面に押し出した演奏。この曲って激しい情念の渦巻きのイメージしか持ってなかったのだが、実はこんなにも切ないほどに美しい音楽だったんだということを今回初めて気付かされた。
溜息と共に第一楽章が終了すると小休止の間に合唱団がゾロゾロと入場する。第二楽章は極めて静かに穏やかに始まる。時折音量が上がることがあっても決して荒々しくならず雑にならずでピアニッシモに細心の注意を払ったような演奏。それでいて全く弛緩せずにピンと緊張感が張りつめているのは、大フィルもかなり集中力の高い演奏をしている。また巨大編成にもかかわらず特に弦楽アンサンブルなどに乱れがみられないのには驚いた。
ややユーモアを秘めた旋律回しの第三楽章も抑え目の表現で美しさの方が前面に出た演奏。続く第四楽章でメゾソプラノが登場する。ただしこのメゾソプラノがボリューム不足か、オケの方もかなり抑え目の演奏であるにもかかわらず、どうにも抜けてこないのがやや物足りなさはある。
そして続いて最終楽章となるが、これまでに天国の音楽の方向に向かっていた演奏が、ここで究極まで極まるという印象。合唱が加わってのフィナーレは荘厳で胸打たれるものがある。今ひとつ存在感が薄かったメゾソプラと違い、ソプラノは存在感を十分に示して天国の音楽を演出してくれた印象。音楽の最後は至福の元に天に召される感が漂い、これはキリスト教徒ではない私でも胸を打たれた。
尾高の演奏は一貫して美しさが正面に出たもので、若き情熱のようなもので暴走気味に突っ走る演奏(このタイプも決して少なくないし、それが悪いわけでもない)とは対極の老成したマーラーという印象であった。フォルテッシモでぶちかますよりも、ピアニッシモの精妙さに気を使っていた演奏という印象である。表現が抑え目であるにもかかわらず最後まで物足りなさを感じさせなかったのは、その徹底して美しい音楽の所以であるとも言えるだろう。
オケの集中力がかなり高まっているのが感じられ、長時間にも関わらず緊張感を切らすことなくフィナーレまで突っ走った尾高の指揮は見事。私的にはこれは大フィルの今年度ベストにも挙げられる名演だったと感じた。当然のように終演後の盛り上がりはかなりであり、いつもの公演に比して倍以上の「ブラボー」が飛んでいた。なお私自身も思わず「ブラボー」を叫んでしまったのは数年ぶり。ただ盛上がるのは良いが、演奏終了後の拍手とブラボーがいささか早すぎのは不満。やはり指揮者が緊張を切らすまでは観客も待っているべきだろう。まあ名演だけに気持ちが盛上がったのは分からないでもないが・・・。