今日が最終日
翌朝は8時まで爆睡。今日の予定であるが、15時からのPACオケがメインで、後はその前に神戸での「デ・キリコ展」に立ち寄ろうというもの。今日は比較的スケジュールに余裕があるので、チェックアウト時刻までゆったりと過ごす・・・というか、疲労が溜まっていて朝イチからバリバリ活動するという状況ではない。
10時にチェックアウトすると、とりあえず遅めの朝食にする。立ち寄ったのは「ラ・ミア・カーサ」。入店した途端に「Smoking?」と英語で聞かれていささか戸惑うが、どうやら巨大なキャリーを引きずっていたのでアジア人観光客と間違われたか。まあこの界隈もインバウンドの方が多いぐらいだから。「いや、煙草は吸いません」と答えて、玉子サンドとアイスコーヒーのセットを注文する。
シンプルなサンドイッチだが、意外にボリュームもあり美味しい。コーヒーは私の好みよりやや苦めだが悪くない。何よりこれで440円というのは、流石にこの界隈は今でもCP最強である。
昼食を終えるとJRで大阪へ移動の後に阪急に乗り換えて、一旦西宮北口で途中下車する。とにかく機動力を削ぐキャリーはどこかで預けておきたい。やはりこれからの動線を考えると西宮北口構内のロッカーに預けるのが最善。
荷物を置くと三ノ宮に移動。目的の神戸市立博物館目指して南下する。正直なところこの微妙な距離が今の体力低下著しい私にはいささか恨めしい。
「デ・キリコ展」神戸市立博物館で
ギリシャ生まれのイタリア人で、独得の世界の幻想的な「形而上絵画」を描き、シュルレアリスムに大きな影響を与えたジョルジョ・デ・キリコの作品を集めた展覧会。
最初はいきなり自画像が登場するが、あえてルネサンス風の肖像画を描いて、同時代の前衛芸術家を挑発しているらしい。なおデ・キリコが活躍した時代は前衛芸術としての抽象画花盛りであったが、デ・キリコ自身は抽象画には批判的で、あくまで具象から発した独得の世界にこだわったらしい。
パリに移住した後の1912年からイタリア広場のシリーズを描き始めるが、それが独自の歪んだ遠近感の絵画であり、これから後の形而上絵画につながっていく。
そしてデ・キリコといった時に連想する電球人間(これは私の勝手な呼び名で、正式には「マヌカン」という)の登場となる。このモチーフは後々まで微妙に形を変えながらデ・キリコの基本パターンの一つになる。
デ・キリコの作品はシュルレアリスムに大きな影響を与えるのだが、どうもデ・キリコ自身は彼らとつるむわけではなく、後に彼らと決別して独自にバロック絵画やルノワールなどの研究を行い、その影響を受けた作品なども製作している。
晩年になると、それまでの自らのモチーフを集大成したような作品を製作した。結局は時代に迎合することもなく、とにかく終始一貫独自路線を貫いた画家であったらしい。どうにも捉えどころのない画家である。
例によって昨今の展覧会らしく物販が非常に充実しているが、これは私はパス。もう既に正午を過ぎているので、昼食を摂る必要がある。三ノ宮の地下街を覗いたが、とにかく客が多すぎてゲッソリして通過する。結局は高架下の裏通りをウロウロして「第一旭」に入店することに。Bラーメンと半炒飯のセット(1100円)を注文。
ラーメンについては神戸生まれの私にとっては、美味いとか不味いとかの次元でなくて、とにかくひたすら懐かしい味。神戸にいた頃に特にこの店に来たという記憶はないにもかかわらず、「ああ、ラーメンと言ったらこういう味だよな」というイメージ通りの味である。なお炒飯についてはやや味が薄い印象。
昼食を終えるとホールに移動・・・と思ったのだが、まだ開場までに1時間以上の余裕がある。これだと向こうで時間をもてあます。とりあえず喫茶で時間をつぶしたいと考えてさんちか方面にプラプラ、「宇治園 喫茶去」を見つけたので入店、「抹茶モンブランパフェ(1430円)」を注文する。
モンブランの中身は抹茶アイスの模様。まずまず美味いパフェである。場所柄価格が高めなのは仕方ないが、円安物価高騰の今時はどこでもこんなものと言えなくもない。
喫茶で一服したところでそろそろ開場時刻が近づいてきたので、阪急で西宮に移動することにする。
このコンサートからPACの2024年度シーズン開幕となるらしい。会場は大入り、なお今回は佐渡人気に加えて亀井聖矢人気もあってか、チケットの確保がなかなか大変で、チケット争奪戦に少々出遅れた私がようやく確保出来たのは2階のバルコニー席。ここに座るのは初めてである。
開演前に佐渡のプレトークあり。今年はまた新たに13人が加わったという。なお「来年の春に万博が開催される・・・と思うが」とやや自信なげに言ったところで場内に失笑が。佐渡は万博のアンバサダーをやってるらしいが、まだ「何も聞いていない」とのことで、開幕に向けての行事さえ定まっていないようだ。
PACオケ第153回定期演奏会 佐渡裕×亀井聖矢 ショパン&ブラームス
指揮・芸術監督:佐渡 裕
ピアノ:亀井 聖矢
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番
ブラームス:交響曲 第4番
一曲目のショパンは亀井のピアノがとにかく甘い。非常に甘美なメロディを奏でる。タッチだけでなく音色にも甘美さがある典型的なイケメンピアノ。これは女性陣がメロメロになりそうである。もっとも今時の若手ピアニストらしく、技術もしっかりしており、単に甘いだけでなく硬軟使い分ける表現力の広さもあるようである。
ただいささか気になったのはバックのオケの方。どうも今ひとつのまとまりに欠ける感がある。大幅なメンバー替えがあったからまだオケとして一体感が出来ていないんだろうか? 2023年度PACオケがかなり一体でグイグイ行く感があっただけに、やや気になるところである。
演奏終了と同時に大拍手で、最前列で数人の女性が一斉に立ち上がる。まあそういうタイプの人気もある奏者のようである。もっとも今回演奏を聞いた限りでは単に人気先行のルックス売りの若手演奏家というわけではなさそうである。アンコールでは英雄ポロネーズで、表現力の広さと独得の感性をアピールしていた。今後、巨匠に向かって順調に成長してもらいたいところである。もっとも同年代前後の競争相手はかなり多い。
後半のブラームスでは前半に感じたようなバラバラ感は解消されるが、それでもまだ高次レベルでのオケの一体感というものはやや欠ける感はなきにしもあらずである。
佐渡は音楽をかなり膨らませて、第一楽章などは美しく盛り上げていき、さらにはオケの弦楽陣もそれに応えようとしてはいる。ただ贅沢を言えば単に美しいではなく、もっと切ないまでの美しさというものが欲しいのであるが、どうもそこまでは斬り込まないのが佐渡の常。
結局は最終的に可もなく不可もなくという演奏になりがちなのであった。
なお本公演は佐渡の意向で終演後の撮影可とのこと。佐渡もやりきった感は出ていたが。
ちなみに次回が下野の伊福部に次々回はカーチュン・ウォンによるマーラーの6番。これはどちらも楽しみではある。
この遠征の前日の記事