ホテルで昼前まで作業する猛烈サラリーマン(?)の私
翌朝は6時前ぐらいから周囲がドタバタし始めるが、そのまま寝続け8時前に起床する。起床するととりあえず大浴場で入浴。これで変温動物化している私も何とか活動できるようになる。
活動可能となるとまずは朝食である。朝食はバイキング。品数はやや少なめであるが味は悪くない。とりあえず朝からガッツリ頂く。どうやら今朝は体調は悪くない。
朝食を終えるとチェックアウト時刻は12時なので、それまではワークスペースに籠ることにする。私のプライベートは全く猛烈エリートサラリーマンのそれである。「遊ぶ時には真剣に、仕事は遊ぶように」これが鷺教の教義(笑)。
結局はそのまま12時前まで執筆にいそしんでからチェックアウトする。まずまずのホテル(というかサウナだが)だったと思う。問題はやはりその分価格が少々高めってことか。今回は溜まったじゃらんポイントで半分ほど補填したが、やはりまるまる正規料金はややキツい。
ホテルをチェックアウトすると西宮に行く前に美術館に立ち寄ることにする。今日は昨日と打って変わっての晴天である。とりあえず灘に移動すると、キャリーをゴロゴロ引きずりながら県立美術館へ。それにしても毎度のことながらここの美術館は無駄に歩かされる構造の悪さが、慣れれば慣れるほど腹が立つ。普通は慣れてくることで良さが見えてくるのが良い建築物なんだが、慣れれば慣れるほど使い勝手の悪さで不満が増すというのが、実用建築設計能力皆無の安藤忠雄の恐ろしいところ。朽ちる建築物の隈研吾と並んで、日本の建築界の二大害悪と思っている。
「石村嘉成展 ~いのちの色たち~」兵庫県立美術館で12/8まで
石村嘉成は2才で自閉症の診断を受けたが、高校の時に版画と出会ったことで絵画の才能を開花させ、現在はアクリル絵具を使用したインパクト抜群の動物絵画で話題となっているアーティストである。
彼の絵を見て一番強烈に印象を受けるのが、その鮮烈な色彩。その色彩は元の動物から考えて妥当な色彩を強調しているものもあるが、時にはあり得ないような色彩で描かれている場合もある。
しかしいずれも共通しているのは、強烈な生命力である。絵画の中に生命力が漲っていることを感じさせられる。
正直なところ、私には特別に好きなタイプの作品ではない。それにも関わらず強烈に惹かれるものを感じた。これについては自分でもよく分からない。
美術館の見学を終えると一旦三ノ宮に戻る。ここで昼食をと思ったが、どこの店も一杯。諦めて西宮に移動してしまうが、西宮ガーデンズを覗いたものの、ここもどこも満員で待ち客がいる状態。もう待っている時間的余裕がないので、たまたま空いていた「鶏料理 鉄板焼 かしわ」に入店する。
注文したのは「親子丼の御膳(1720円)」。ふんわりとした半熟卵の親子丼の上に、タレ焼きにしたせせりを載せているという代物。卵の半熟具合がちょうど良くて実に美味い。場所柄どうしてもCPが著しく悪いが、それに目をつぶれば料理自体は悪くない。なお全般的にメニューの価格が高め(3000円超えのメニューが大半)であり、いくら名古屋コーチンと言っても鶏料理でこの価格というのは客の方も躊躇う理由のように思われる。なおいわゆる鶏ガラスープはお代わり自由らしいが、塩気もあるようだしそんなガバガバと飲むものでもない。
昼食を終えると時間もないのでホールへ急ぐ。ホール内は結構の観客がおり、席はほぼ埋まっている印象。
PACオケ第154回定期演奏会 下野竜也×ブルネロ ドヴォルザーク&伊福部昭
指揮:下野 竜也
チェロ:マリオ・ブルネロ
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
ショスタコーヴィチ:「弦楽四重奏のための2つの小品」より 第1曲“エレジー”(弦楽合奏版)
伊福部 昭:シンフォニア・タプカーラ
一曲目は有名なドボルザークのチェロ協奏曲。ブルネロはイタリアのベテランチェリストだが、自由な表現力で定評があるとか。本公演でも巨匠芸というか、自在流というか、かなりアクの強い演奏である。
テンポの揺らしなども激しいが、時々音を抜いたような演奏をするので、背後のオケが合わせるのがなかなか大変である。下野はかなり追随していたようだが、それでもオケに乱れが現れる局面が少なからずあった。ブルネロとしては明確に表現的意図を持ってのものであるのだろうが、若いPACオケにはいささか荷が重いかという気もしないでもない。
表現的には深いものがあるので、無伴奏チェロソナタとかの曲ならかなり魅力的な演奏をすると思われる。なおアンコール曲はナレク・グレゴリオスのハヴンハヴンという珍妙な曲。後で調べたところによるとアルメニアに古くから伝わる音楽とのこと。やはり一筋縄でいかない演奏家である。
後半はまずは弦楽合奏によるショスタコーヴィチの美しい曲。オペラのアリアから転用した弦楽四重奏曲を弦楽合奏版にしたというひねりのあるもの。かなり暗めの曲ではあるが、非常に美しさを感じさせる。PACの弦楽陣もなかなかにしっとりとした演奏を聞かせた。
ラストはゴジラで知られる伊福部が、アイヌの舞踏音楽をイメージして作曲したという曲。なお音楽自体は直接にアイヌの音楽から流用したものでなく、伊福部によるオリジナルであると言う。北海道出身の伊福部は子供の頃からアイヌの文化に身近に接しており、彼らの音楽は伊福部の骨肉となっていたのかもしれない。
いきなりやや激しい調子で始まる音楽は、いわゆる純和風とはやや異なるが、それでも広い意味での日本の音楽であることを感じさせる。踊りの音楽であるだけに、自然に巻き込まれて血湧き肉躍る感覚にさせられる。なお特撮映画などで知られたいわゆる伊福部節は健在。音楽のあちこちでそれを感じさせられる。
静かな第二楽章を経て、最終楽章も怒濤のような踊りで幕を下ろす。この曲で若きPACオケはかなり力強く溌剌とした演奏を披露した。前回の公演では新生PACオケはややまとまりの悪さのようなものを感じさせたが、今回の公演ではかなり一体感が増していた。オケとしてのまとまりが出来てきたようであり、これは下野の統率力も関係しているか。
これでこの週末の遠征は終了。阪急とJRを乗り継いで帰途につくのである。
この遠征の前日の記事