高級コンサートとエコノミーコンサートの連荘
この週末はコンサートの連荘のために大阪に繰り出す。土曜日がウィーンフィルで、日曜日がPACという高級と安価の入り交じった遠征となる。
土曜日は午前中に家を出るとJRで大阪に。とりあえずは重たいキャリーを置いて身軽になる必要があることから新今宮に直行、いつもの定宿のホテルサンプラザ2ANNEXにチェックインする。リッチにウィーンフィルを聴きに行くのだから、もう少し豪華なホテルに宿泊しても良いようなものだが、まず金がないことと何よりここのホテルは何かと使い勝手が良いので選んだ次第。その使い勝手の一つが午前7時からチェックインできるということ。これは市内を回る前に荷物を置けるので、コインロッカー代が助かる。
いつものフローリング和室でさっさと布団を敷いてしばしマッタリしてから繰り出すことにする。公演は毎度のようにフェスティバルホールなので地下鉄で肥後橋に。何だかんだで到着時には昼をとっくに過ぎているので昼食を先に摂ることにする。久しぶりに「キッチンジロー」に入店。昼食時なので待ち客がいるのでしばし待たされる。その間にハンバーグとホタテのクリームコロッケのランチ(1200円)を注文する。なおフェスティバルホール友の会会員の私は、ドリンクがサービスでついてくる。
待っている間に注文を受けていたので、席に着くと同時に料理が出てくる。ハンバーグが一番の人気メニューのようだが、手作り感もあるまずまずのもの。コロッケについてはクリームコロッケといいながら結構シッカリしているが、それもまずまず私の好みに合う。それと意外に付け合わせの豚汁が美味い。
中之島美術館に行こうとしたものの・・・
昼食を終えると13時過ぎ頃。開場が14時で開演は15時である。少し余裕があるので、この間に中之島美術館にでも立ち寄ろうと考える。
しかし現地に到着すると券売所に長蛇の行列。こりゃ駄目だとウェブサイトからオンラインチケットを購入しようとしたものの、クレジットカードの認証のところでしくじってしまってからウンともスンとも反応しなくなり万事休す。そうこうしているうちに時間を浪費してゆっくりと見学している余裕もなくなってきたので、諦めて引き返すことにする。
結局は美術館まで食後の散歩になってしまった。まあいくらか運動不足の解消に貢献すると考えることにするか。ホールに到着するとフェスティバルホールの赤絨毯の脇にはクリスマスツリーが。そう言えばクリスマスって、サンタの人手不足とカップルの激減で随分昔に廃止になってなかったっけ? 何にせよ私には全く無縁の行事だが。せいぜいがケーキが高くなってケンタに行列が出来る日という程度の認識。
ウィーンフィル祭りは大賑わい
会場到着時は開場15分前。既に辺りでウロウロしている観客がいるが、これが5分前には大行列となる。全席指定でわざわざ並ぶ必要もないのに開場前に並ぶのが、昔から変わらない日本人の習性である。まあウィーンフィルぐらいになると一種の祭りのようなものであり、観客の方も気合いが入っている者が多いんだろう。そう言えば姫路のアクリエにウィーンフィルが来た時なんて、開場1時間以上前から行列が出来ていた。さながら田舎町のウィーンフィル祭りというところ。なお私が紛れ込んでいるぐらいだから、並んでいる面々には意外なほどにハイソ感はない。この辺りがオペラと違うところ。
それにして最近は、朝になるとダウンジャケットが必要なほど肌寒いのに昼になるとかなり暑い。先ほどの散歩で少々身体が汗ばんでいる。開場数分前に表ドアが開いたので、クロークにジャケットを預けてしまう。入場ゲート前には先ほど表ドア前に並んでいた連中が長蛇の列。これから何か朝礼でも始まるのですかという雰囲気。
ようやく開場時刻となるとゾロゾロと入場。ハイソな私は迷わず3階に直行(笑)。当然ながら私が確保したのは3階最後列というド貧民席である。残念ながらウィーンのS席を確保する経済力など持ち合わせていない。そもそも私などそのためにフェスティバルホール会員になっているようなもの。それでもこの席の確保は熾烈を極め、会員優先販売開始直後に瞬殺されるので、発売開始時間前からスタンバって購入できるかどうかは最後は運次第。それにしてもこの席も以前は2万円が相場だったのに、今回は2万4千円と高騰。これも亡国総理によるアホノミクス効果である。
なお場内はかなりの観客。三階席から見下ろす限りではほぼ満席に近いように感じられた(少なくとも三階席は95%以上の入り)。ウィーンフィル人気はいまだ健在である。
大和ハウス Special アンドリス・ネルソンス指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮/アンドリス・ネルソンス
ヴァイオリン/五嶋みどり
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 作品19【ヴァイオリン:五嶋みどり】
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調
一曲目は私も良く知らない曲。プロコらしい結構喧しい曲であるが、五嶋のヴァイオリンはややか細いところがなきにしもあらずだが、音色は非常に美しい。
さらに五嶋に輪をかけて美しいのがウィーンフィルのサウンド。流石に一流奏者ぞろいというか、各楽器がかなり良い音を出す。そのせいで、正直なところ曲自体は私にはさして面白いと感じられないにもかかわらず、非常に美しい音楽に聞こえる。
結局は終始五嶋の美しい演奏のおかげで夢うつつという感じの時間であったというところ。なお五嶋のアンコールはバッハの無伴奏パルティータ。これもなかなかの演奏。
さて後半はマーラーの5番。これは冒頭のトランペットから「やっぱりウィーンフィルはすごい音色を出すな」と感心させられたのだが、いざ音楽が始まってみたら「?」。ネルソンスはかなり落としたテンポでゆったりと演奏するのは良いが、この曲に付きまとう緊張感やほの暗さが全く感じられない。総じて緩くて緊張感がなく、第一楽章から何か人生に疲れた男のけだるい午後という雰囲気である。
ここで一昨年にネルソンス指揮のボストン交響楽団の来日公演で、やはり緊張感も苦悩の影も一切感じられないショスタコに強い不満を感じたことを思い出した。どうもあの時と同じアプローチのようである。かなりテンポを落としてもウィーンフィルの演奏は破綻することはなく、各楽器陣はかなり美しい音色を奏でている。ネルソンスのスタンスはこの各パートの最大限美しい音色を引き出すという方向には効いているように感じられるのだが、音楽全体としてはこちらに迫ってくるものがなく、ハッキリ言って浅い。いわゆる眠たい音楽になっている印象が強い。また各楽器を引き立てるのが災いして、旋律が錯綜してくる部分では個々の楽器が整理できずにぶつかり合っていささか喧しく感じられる。
第一~三楽章までを通じてこの空気は変わらない。第四楽章の「ヴェニスに死す」は、確かに極めて美しく、いかにも楽器の音色が立っている。しかしながらこの音楽につきものの、美しさの裏に潜んだ身を切られるような切なさというのが皆無。やはりネルソンスの音楽は根っから陽性というか、終始一貫浅さしか感じられない。
最終楽章にはややテンポを上げて盛り上げてくる。そもそも元々の曲自体が最終楽章は勝利のファンファーレのようなところがあるので、緊張感の薄いネルソンスでも違和感が少なくなるところがある。とは言うものの正直なところ私には、最後に来て帳尻を合わせてきたようにしか感じられない部分がある。
ラストに向けてそれなりに盛り上げたので、場内は大拍手。ただ私自身は頭の中が「?」で一杯でかなり不満の残る演奏である。もっとも前回のボストン交響楽団の時でも結構世間の反応は絶賛が多かったところを見ると、これはやはり私との相性の問題と言うべきなんだろうか。
場内は拍手で大盛り上がり。私も拍手をしていたが、これは演奏に対する満足ではなく、むしろ「高い金を払ってるんだから、このままで終わるなよ」というケチ臭い考えの方が本音。やはりメインに不満が残った以上、せめて本場もののウィンナワルツでも聞きたい。
で、目論見通りアンコール。ただし曲目はウィンナワルツではなくスッペの「軽騎兵」という若干の変化球。しかしそれが結果としては大正解であった。もう冒頭の金管陣の順繰りの演奏から「流石にウィーンフィルはとんでもない音を出すな」と感心させられる美麗にして華麗な音色の連発。そこにいかにもウィーンなしっとりとした弦楽陣が絡み合っての至高の音楽。それにこの曲の場合は、ネルソンスの一切影を感じさせられない陽性な解釈と言うのも全く問題が生じない。最後までウィーンフィルの美麗な音色を中心に音楽を組み立ててグイグイと押していくだけで、他にはあり得ないまさに至高のひと時である。
この「軽騎兵」に関しては全く文句なし。今までここまで格調高いこの曲の演奏は聞いたことがない。これについては流石にウィーンフィルと感心させられたのである。
結局はウィーンフィルの技量には感心しながらも、終始ネルソンスの解釈には不満が蓄積したという内容。根本的に私はネルソンスと相性が悪いようだ。今後はネルソンスの指揮のコンサートは避ける方が無難か。もっともビックネームになって一流オケを振るようになったネルソンスのコンサートなんて、貧困化著しい私が今後行く機会がありそうな気もしないが。
コンサートが終了したのは17時30分ほど。この時点で今日の予定はこれで終了が決定である。と言うのも実はこの週末からMETのライブビューイングの新シーズンが始まっており、オッフェンバックの「ホフマン物語」が上映されている。とは言っても昼の上映はスケジュール的に無理だから、もしコンサートが17時頃に終わるなら、なんばパークスに急遽移動して、18時5分からの上映に滑り込もうかという案もあった。しかし今からだとまず間に合わない。それにそもそも間に合っても夕食抜きで22時過ぎまでという強行軍。今日の疲労度合いを考えたら、やはり辞めるのが正解であろう。確かロイヤルオペラハウスでもホフマンをやるみたいだから、ホフマンはそっちに賭けるか。それにしても今年はオッフェンバックの記念イヤーか何かか?
夕食は新世界でCP最強寿司を
そういうわけなので新今宮に直帰。それにしても昼には暑かったのに、夕方になるとダウンジャケットが必要な寒さ。この寒暖差が体に響く。
ホテルに戻る前に新世界界隈で夕食を摂っておくことにする。さて内容だが、昼が洋食なので串カツはどう考えてもなし。となると寿司か。大興寿司を覗いたらまだ18時ごろなのが幸いしてちょうど空きがあるので入店する。
メニューから適当に選ぶ。たいとひらめが売り切れというのが痛いが、第一弾にハマチとカンパチとアジに赤貝を注文。この店は毎度のことだが客が多くて混雑しているので、注文した品が出てくるまでに結構待たされる。しかし待たされてようやく出てきた寿司はなかなかに美味い。
第一弾を待っている間に第二弾も注文しておいた。鉄火にホタテにマグロ。順番をろくに考えなかったせいでマグロが被ってしまったが、それでも問題なく美味い。
以上で支払いは2100円。流石にこの界隈はCP最強。まずまず満足の夕食である(エキマルシェのあそことかと比べると雲泥の差)。
夕食を終えるとローソンに立ち寄ってからホテルに戻ってくる。しばし布団の上でゴロンと休息を取ってから、とりあえず入浴である。急の寒さのせいで体のあちこちがギクシャクしているので、大浴場でしっかりと体を温めてほぐす。
入浴したら疲れが出てきたので、部屋に戻るとまたしばしゴロン。休息をある程度取ってから起き上がると原稿執筆作業である。
そのうちに夜も遅くなってきた。疲れもあることだしやや早めに就寝することにする。
この遠征の翌日の記事