徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

浮世絵美術館を回ってから、阪哲郎指揮関西フィルのミサ・ソレムニス

最強寒波の中を週末遠征に繰り出す

 この週末は関西フィルの定期演奏会のために大阪に繰り出すこととした。出発は土曜の早朝。今年一番の寒波の到来により積雪が予想され、交通機関の大幅な麻痺もあり得るとのことで少々警戒したが、幸いにして朝に積雪はなく(寒さは異常であるが)、JRも湖西線などは混乱しているが阪神間は通常通りの模様。やはりこれも私の日頃の行いの良さというものだろうか。予定通りに出発する。

 予定通りに大阪に到着。それにしても寒い。防寒には万全を尽くしたつもりでいたのだが、ダウンジャケットを通して寒気が染みてくる感じ。今まで大阪でここまで寒気を感じたことはない。確かに並々ならない状況の模様。

 とりあえず新今宮に直行して、いつものホテルサンプラザ2ANNEXにチェックイン。ここは朝の7時からチェックイン可能なのが売りの一つ。いつもの和室に入ると荷物を置いてから布団だけ敷いてさっさと出かける。

新今宮のいつものホテル

 今日の予定は既に決まっている。いつものように美術館巡りだが、今回は浮世絵ツアーになる。まずは地下鉄で心斎橋まで移動すると、以前に一度訪問したことがある大阪浮世絵美術館へ。

 

 

「葛飾北斎 吉田博 歌川広重 浮世絵が語る日本の名山」大阪浮世絵美術館で2/16まで

美術館はビルの3階

 山を描いた浮世絵というテーマであるが、実際のところの内容は、歌川広重の東海道五十三次と葛飾北斎の富嶽三十六景が中心。これに毛色の変わったところとして大正版画の巨匠である吉田博の富士の絵を合わせて展示していた。

 広重は例によってスナップショット的な作風であり、風景に巧みに誇張を取り入れたもの。これに対して北斎はまさに漫画というか、画面に非常に動きがあるのが特徴。

北斎で山と言えばやはりこの辺り

 異彩を放つのはやはり吉田博。洋画出身である彼の作風はそもそもから日本画とは異なる。30回以上の刷りを重ねたというその色彩のグラデーションは、明らかに洋画の趣である。そのためか富士の描き方もかなり写実的。そのことが他の絵師たちとは富士の稜線の角度の異なりとして現れている。

 

 

 浮世絵ツアー2軒目はここから10分ほど歩いた先にある初訪問の美術館。戎橋を渡ってからミナミの猥雑な書店街をプラプラ。

インバウンドでごった返す戎橋

 神戸の長田の出身である私には、キタのいかにも人工的で綺麗なだけの町並みより、ミナミの煩雑さの方が相性が良い。往年の長田の町並みの最盛期をさらに発展させたような町がミナミである。風景が当時の長田と異なるところは、インバウンドの異様な多さである。

大阪的な風情をたたえる道頓堀

 目的である美術館は法善寺のすぐ前にある。

廃材利用などをしたという個性的な建物

 

 

「敵役の魅力」上方浮世絵館で3/2まで

 上方の浮世絵を展示した美術館。上方の浮世絵は役者絵が多いのが特徴とのことで、本展でも芝居での定番の悪役を描いた作品を展示している。

 芝居においては悪役が悪役として決まらないとグダグダになる。それだけにいかにも憎々しげで主役以上に存在感があるかもしれない悪党揃いとなる。それをかなり力強く描いた作品が多数。

悪役と言えばド定番の仮名手本忠臣蔵の高師直

 ただ上方浮世絵ということで、江戸の広重や北斎に並ぶようなビッグネームはどうしてもおらず、「誰?」という絵師の作品ばかりになるのは致し方のないところ。ただそのせいでどうにも地味感は否定できないのだが。

 

 

法善寺を参拝する

 浮世絵系美術館を2軒回り終わった頃には昼時になっていた。とりあえず法善寺をプラプラと見学。といっても町中の異様に狭い寺院である。苔むした不動明王像が特徴的。

浮世絵館の向かいが法善寺

祠が2つほどのこじんまりした寺院

 とりあえず悪を払う不動明王には、今の日本を滅ぼそうとしている悪徳政治家の一掃を願う。それ以外で願うのは、私の老後が少しでも余裕があるものになるための金銭的充実である。

苔むした不動明王像

 

 

昼食は法善寺横丁で

 法善寺を通り過ぎると、昼食を摂る店を探す。立ち寄ったのはなぜか牛肉屋が多い界隈にある「牛カツ京都勝牛。開店が11時半からとのことなのでまだ10分ほど時間があるが、既に店の前には開店待ちの客が3組10人弱。とりあえず第一陣で入店可能と計算して、しばし並ぶことにする。

京都勝牛大阪1号店

 10分後に入店すると、注文したのは「牛ロースカツと牛サーロインのセット(1969円)」

二種の牛カツを組み合わせたセット

 ややあっさり目のロースと柔らかいサーロインの組み合わせを、各種ソース類で頂く。私の好みはオーソドックスなカツソース。わさび醬油も悪くはない。意外だったのは玉子。なかなかに合う。正直なところここのカツは私の好みよりはレア度が強い。なおこんな生肉食えないという人のために、焼き用の鉄板もある模様。私はそこまでする必要も感じなかったのでそのまま頂いた。

各種食べ方の説明書き

 昼食を堪能して店を出る時には既に待ち客が多数。それなりに人気の店のようだ。なおこの店は以前に新大阪駅に入っているところに行った記憶があるのだが、そこよりもこちらの方が美味いという印象。やはりテナント料はのしかかっているのか。

 

 

 昼食を終えるとなんばウォークに潜る。ここからプラプラとホールまで電車で移動と考えていたが、開場までまだ時間がある。そうした時に「MACCHA HOUSE」という看板を見たので立ち寄ることにする。

なんばウォークでお茶を

 抹茶がインバウンド人気で品薄と聴いたが、確かにあからさまにインバウンドと分かる客もやって来ている。私が注文したのは「抹茶館パフェ(1419円)」。抹茶の風味が濃厚でなかなかのパフェ。これをマッタリと頂きながらしばし原稿執筆作業にもいそしむ。

やや高めだが、なかなか美味いパフェだった

 適度な時間になったところで店を出ると、阪神とJRを乗り継いで福島へ。ホールへ入場すると来年度の年会費支払いの手続きを済ませてから喫茶を覗く。喫茶は大勢の客で満席だが、元より既に喫茶でくつろいできたところなので改めて喫茶に行く気はなし。どうやら今日は大入りであるらしいことを確認すると自分のシートへ。

ホールに到着する

 今日のプログラムは阪哲朗によるベートーヴェンのミサ・ソレムニス。初めてこのタイトルを聴いた時に私は「何?その曲」って感じだったのだが、荘厳ミサと言われて初めて納得した。宗教曲といいながら、ベートーヴェンの様々な思い入れも籠っており、未だに宗教曲か世俗曲かに議論があるとか。

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第352回定期演奏会

12型オケの背後に合唱団席が

[指揮]阪 哲朗
[ソプラノ]老田裕子
[メゾソプラノ]八木寿子
[テノール]清水徹太郎
[バスバリトン]平野 和
[合唱]関西フィルハーモニー合唱団
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

 

ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス ニ長調 op.123

 

 オペラ指揮者である阪だが、もう音楽の最初の一音でもろにそれを感じる。明らかに宗教曲ではなくてオペラの音である。これで阪のアプローチは大体推測が付く。そして予想通りのなかなかにロマンチックな音楽展開をする。

 4人の独唱者は力量十分であり、その絡みはなかなかに聴きごたえがある。ただそれに比べると残念ながら関西フィル合唱団がいささか力量的に見劣りする感じ。特に序盤に女声がかなりキンキンと不快に聞こえたのは大きなマイナス。

 阪のオペラ的な演奏はなかなかに盛り上げてくれるが、ただそれでも曲の本質がミサ曲であるので、どうも荘厳な響きの中に眠気を誘ってしまうところが多々あるのは否定できないところ。実際に辺りを見渡してみると、美しい音楽の中にそのまま夢見心地で舟を漕いでしまっている聴衆が少なからず。かく言う私も正直なところ意識が遠のいたことが何度か。

 第4部ではコンマス木村のソロの加わった美しい音楽となり、最終第5部はソリスト4人と合唱が絡みながら幽玄な世界を展開していく地上の楽園。美しくありながらその裏にベートーヴェンらしい人間性も秘めた深い音楽は荘厳な中で終了である。

 静まり返る場内で、やや早めに拍手を始めた輩が一人。しかし他の聴衆はそれに追従せずに阪の腕が完全に下まで降りるまで静寂を保ったことで、彼は公開処刑のような形になってしまったがそれも妥当。しばしの余韻の後にホールは大きな拍手に満たされたのである。

 関西フィル合唱団にやや危うさが見られたが、概ねまずまずのコンサートで阪の声楽曲の扱いの流石の上手さが光ったのである。これは彼がマーラーの声楽付き交響曲などをどう扱うかなんかも聞いてみたいという気が起こった。

 

 

 中休みなしの一気通貫コンサートだったので、1時間半ぐらいで終了した。JRで新今宮に戻ってきたのは4時過ぎ。まだかなり早めだと感じたが、またインバウンドでごった返すのも嫌なのでじゃんじゃん横丁に早めの夕食に繰り出す。立ち寄ったのは「大興寿司」。ここのところインバウンド客に妨害されて入店できなかったのでリターンマッチ。夕食時を外したのが幸いしてスムーズに入店できる。

じゃんじゃん横丁の「大興寿司」(本店)

 まずは第一陣としてヒラメ、はまち、トリ貝、鉄火、シマアジを注文。特別に美味いというほどではないが、まあ普通に美味い。そしてCPは良い。

寿司第一陣

 まだ少し腹に余裕があるので第二陣としてあん肝、貝柱、マグロ、カンパチを追加。やや変化球のあん肝が楽しい。やはりカンパチは美味い。

続けて寿司第二陣

 今日はガッツリと食ったので会計は2700円。普段よりもやや高めであるが、今日は既に1万2千歩も歩いていて燃料補給は必要だし、まあ良しとしておこう。

 

 

 夕食を終えるとまだ日の高いうちにホテルに戻って、毎度のように仕事環境を構築して原稿入力および休養(部屋に戻ってきた途端にガクッと疲れが出た)。2時間ほどその調子でゴロゴロしてから大浴場へ入浴に行く。

 入浴後は半ば執筆作業の半ば疲労でゴロゴロ。こうやってこの日の夜は暮れていく。

夜の小腹にはローソンデリのカツサンドで

 

 

この遠征の翌日の記事

www.ksagi.work