近くの喫茶店で朝食を摂ってから外出
翌朝は8時前に自動的に起床する。相変わらず体はやや重いが体調としては悪くはない。やはりここのしばらくの不調はメンタル的原因が大きいか。とりあえず着替えるとまずは朝食に繰り出す。
立ち寄ったのは「喫茶京」。アイスコーヒーとミックスサンド(950円)を注文。

ここはいわゆるモーニングがメニューにないので、ワンコイン前後のモーニングが定番のこの界隈の喫茶の中では価格が高めになるが、その分サンドイッチの完成度は高い。ミックスサンドが非常に美味い。なかなか良い店だが、この界隈の飲食店の常識として喫煙可なのが難点。それにしてもこの界隈の喫煙率の高さは異常だ。

ホテルに戻ってくるとシャワーで体を温めて出かける準備。とりあえず昨日の原稿をアップしてから外出する。
今日の予定は関西フィルの定期公演。ただし例によってその前に立ち寄る先がある。しばらく改装のために休館していた大阪市立美術館がリニューアルオープンで、コレクション展を実施するとのこと。

天王寺に移動すると美術館へ。以前は入口までに高い階段を登る必要があったのだが、改装で下から入れるようになっていた。京セラ美術館を思い出すような構造。障害者でなくても私のように体力の極端に低い者にはこの方が確かにありがたい。
「What’s New! 大阪市立美術館 名品珍品大公開!!」大阪市立美術館で3/30まで

リニューアル記念として市立美術館が所蔵する多岐にわたる名品、珍品をジャンル別に一堂に紹介という趣旨の模様。
第一部は近世の風俗画とのことで、江戸時代の洛中洛外図など。また写楽の役者絵なんかもある。



次は金工品。青銅細工品などが多く、中には銅鐸や銅鏡なども。小さくて精密なものも多い。



さらに考古コレクション。弥生土器や銅鏡など。銅鏡も出土品の場合はこちらになる模様。国内だけでなく中国からイタリアのテラコッタまでと多彩。



仏教絵画と経典なども展示されているが、これは今一つよく分からないものが多い。さらに続いて、中国の仏像、さらに巨大な仏頭なども。中国的なのっぺりした顔のものが多く、掘りの深いダルビッシュ仏ことガンダーラ仏の類は含まれていない。




酒器といったかなりマニアックなものもあれば、さらに竣工記念の石刻ときたらもう何のことやらマニアックすぎて私にはよく分からない。



それに比べると中国書画などはオーソドックスで分かりやすい(もっとも私は書の方には興味は皆目だが)。展示品の中にはかなり巨大なものもあり、説明に「ようやく展示できた」とあることから、あまりに大きすぎて展示室のリニューアルでようやく展示が可能となったようである。非常にダイナミックかつ精緻な絵画でこれは圧倒される。




次はもてなし用の色彩豊かな器が展示され、続いて動物画。モフモフ猿図で知られる森狙仙にその甥の森徹山によるモフ狸図が展示されている。また岸駒の有名な孔雀図も。昔から孔雀図と言えば岸駒か応挙と相場が決まっている。長谷川等伯の烏梟図も印象深いが、明治の画家森川曽文による蝦蟇仙人図が曽我蕭白的おどろおどろしさがあってインパクトが強い。







会場が移って住友コレクションによる大判日本画の額装品の展示。金島桂華、徳岡神泉、福田平八郎、上村松園、榊原紫峰、堂本印象など蒼々たる面々の秀作が並ぶが、ほとんどが撮影可だがSNS掲載は不可作品(著作権関係)。私的にはこの辺りのコーナーが一番の見どころ。


その先は富本憲吉ら人間国宝による器だが、日常用の器とのことで一般的にイメージする鮮やかな彩色の富本作品と違ってかなり地味テイスト。また黒楽茶碗や志野なども展示されている。




最後は佐伯祐三など大阪の洋画のコーナー。ここも掲載制限付き作品が少なくない。そして一番最後に本展のキャラクターでもある羽人の青銅像が。今一つよく分からん像で、これが西洋のものならガーゴイルと言われるところではと思ったりするのだが・・・。




リニューアルされたことで内部が少し綺麗になった印象。トイレが更新されていたのは大きい。この手の施設ではこういうところが実は大事。未だに和式便座しかないような施設にはそもそも訪問する気が起きないので。
茶臼山を散策
美術館の見学を終えると辺りを散策・・・というか、この美術館のちょうど北隣にある茶臼山を見学することにする。茶臼山は特に城郭というわけではないが、大坂冬の陣では家康がここに本陣を、夏の陣では真田幸村が陣をしいたというわけで、歴史ゆかりの地ではある。

私は現地訪問の前にGoogleマップで事前調査をするのが常だが、その場合にどうしても現地に来ないと分からないのが起伏。今回もいざ茶臼山を眼前にすると、意外にしっかりした丘であるのに驚いた(Googleストリートビューではほとんど平地に見えた)。こうして見ると、大坂の陣でここに陣を敷くのは至極当然であることが分かる。なお茶臼山は古墳なのではという話もあるが、確かに不自然なまでの綺麗な円形のフォルムは古墳の可能性が高いと私も感じる。

とりあえず山頂に登ってみるが、たったこれだけで足がへたる私。一体どこまで体力落ちてるねん・・・。山頂に山頂碑があり、標高は堂々の26メートル。辺りには真田幸村に関する説明看板が複数。家康には全く触れていないのは流石に大阪。真田幸村名言集なんてものまである。「戦いとは常に二手三手先を考えて行うものだ」「当たらなければ何ということはない」ってこれは幸村ではなかった(笑)。なお山頂の小高い地形からは辺りを見渡せるが、今のビルが林立する大阪では残念ながら遠目は効かない。恐らく昔なら遠くに大阪城が見えたと思うが。



茶臼山を降りてくると近くの堀越神社を参拝。聞くところによるとこの神社は一生に一度の願いを叶えてくれるとか。現在の私が願うのはただ一つ。豊かな老後を送れるだけの財力、それ以外何もない。お金だけでは人は幸福にはなれないと言うが、お金なしに幸福になるのは極めて難しい(幸福以前に昨今のご時世では生きていくこと自体ができない)のが現実。また「人の心はお金で買えない」とも言うが、「かなりの部分は買える」というのも悲しい現実。愛し合う二人でも「あなたがいればお金なんてなくったって」ってなんて甘いことを言っていられるのもせいぜい最初の一年ぐらいである。

堀越神社参拝をしてから天王寺に戻って来た時には正午頃。そろそろホールへの移動と昼食を摂る必要がある。福島に移動すると聖天通をフラフラと散策。ここの町並みは神戸出身の私には、往年の長田商店街や大正筋などを連想させる落ち着く町並み(普通の人はこの町並みを落ち着くとは言わんだろうが)。目指すはここに移転した「イレブン」。土曜のランチメニューである「ハンバーグと海老フライのランチ(950円)」を注文する。

最近のやたらに肉汁をアピールするベチャベチャのハンバーグでなく、かと言ってパサパサでもない適度なバランスが絶妙。また海老フライも豪華感は特別にはないが、食べてみるとプリプリとしてなかなか上質。贅沢さや豪華さをアビールするのではなく、普通にホッとする洋食と言うところ。まさに古き良き町の洋食屋である。そしてCPは抜群。最近はこういうところは減っている。

満足して昼食を終えるとホールまでプラプラと歩く。ホール到着時はちょうど待ち客がゾロゾロと入場中。私もそれに続いて会場に入場すると、喫茶でアイスコーヒーを頂きながらしばしマッタリと休憩。


さて今日の鈴木優人によるブルックナーだそうな。バッハを中心としたオルガニストのイメージの強かった鈴木優人だが、近年は指揮者として幅広いレパートリーを手掛けるゼネラリストという印象になっている。今回のブルックナーは本来は飯守泰次郎のブルックナーシリーズの一環だったのだが、昨年の飯守の逝去を受けての鈴木優人はいかなる演奏を披露してくれるか。
関西フィルハーモニー管弦楽団 第353回定期演奏会

[指揮]鈴木優人
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団
ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調
ブルックナーと言えば先日にアルミンク指揮のPACでまさにこの曲を聴いているが、アルミンクの演奏は軽やかで端正な印象であったが、鈴木優人の演奏もどちらか言えばそれに近い。最近は尾高指揮の大フィルのブルックナーも多いが尾高が大フィルの分厚い音色でドッシリとしながらもグイグイ躍動感のあるブルックナーを演奏するのに比較すると、残念ながら関西フィルは大フィルほどの厚みはない。だからどうしても重厚なというよりは、軽快で旋律の美しさを前に出すタイプの演奏となる。
関西フィルは今回はブルックナー用ということで、14型にホルン(ワーグナーチューバ)大幅増量の大型編成なんだが、鈴木はそれをパワーに任せてブイブイという演奏の仕方はしない。もっと繊細でゆったりとした演奏をしており、関西フィルのアンサンブルの美しさを前面に出していくような演奏。
ただあまりにゆったりとした演奏はやや緊張感に欠けるきらいもないではない。どうしても微妙に弛緩した感があり、そのせいか第二楽章などはあからさまに「魔のアダージョ」になってしまって、場内では落ちてしまった観客もという状況に。
結局は最後まで焦らずゆったりと構えた演奏だったという印象だが、残念ながら私は「いささか長いな」と感じずにはいられなかった。関西フィルの持ち味に合わせた演奏だったかもしれないが、どうもそもそもブルックナーがあまり得意でない私にはいささかしんどい演奏だったというのが事実。
途中休憩なしのコンサートが終了したのは午後3時半ごろ。まだこれからどこかに立ち寄るのも時間的には不可能ではないが、何だかんだで既に1万歩近く歩いているので体力が限界。小雨もぱらつきだしたことだし、ここは大人しくホテルに直帰することにする。

夕食は久しぶりの食堂へ
部屋に戻ると体力切れでしばしダウン。ベッドの上で休憩を取ってから大浴場へ入浴に行く。それから夕食の時間までゴロゴロ。

7時前になると夕食の時間。夕食を摂りに出かけることにする。遠出は面倒くさいし、串カツや寿司の気分でないことから、久しぶりに「らいらいけん」を訪問することにする。注文したのは「日替わり定食(850円)」に「出し巻(400円)」。小鉢一品はマカロニサラダを付ける。

普通に美味しくてホッとするメニュー。日常使いにはやはりこういう店が最強。CPも抜群に良いし。本当にこの界隈は実用性の高い店が多い。もっとも異常な喫煙率の高さだけは頂けないが。どうもたばこ税による搾取が、貧困の再生産にも貢献しているような気がする。


夕食を終えるとホテルに戻ってマッタリ。やっぱり疲労は結構あって原稿執筆などに集中できない。結局はベッドでゴロゴロしながら、たまに起き上がって机に向かい、またしばらくしたらベッドにゴロンという状況。そんなこんなで夜までウダウダしながら、最後はシャワーを浴びてから就寝とする。
この遠征の翌日の記事
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