徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

関西フィルの定期演奏会は、リオ・クオクマンが就任お披露目公演でいきなりスゴいものを見せつけた

今日は関西フィルの定期演奏会

 翌朝は7時前に自動的に起床。サラリーマン生活30年で体に刻み込まれた習慣はなかなか頑固な上に、そもそも老化に伴う睡眠力の低下で今は昼前まで寝通すということも不可能になっている。

 目が覚めると朝食に繰り出す。朝食メニューは昨日と全く同じ。これは長期連泊だとキツそうだ。しかしこの周辺は朝食を摂れる店もないし・・・。

昨日と内容がほとんど同じの朝食

 とりあえず腹を膨らませるとシャワーで変温動物化している体を温める。その後はチェックアウトまで原稿執筆及びアップ作業。そうこうしているうちにすぐにチェックアウト時刻の10時がやって来る。

 さて今日の予定だが、基本的には14時開演の関西フィルのコンサート以外は出たとこ勝負。まずは京都駅に移動。大阪に行く前に駅ビルの美術館で開催中の「鴨居玲展」を見学するつもり。

 それにしても暑い。まだ午前中だというのにモワッとしている。歩いているだけで体力を削られる。京都に到着した頃には体が汗ばんでいる。これは美術館よりも先に寄り道をすることにする。駅ビルの6階にある「都路里」に立ち寄る。昼とかになるとどうせ行列だろうから早めにと思ったのだが、もうこの時点で待ち客こそいないが店内は結構混雑している。

私が店を出たときには既に待ち客が出ていた

 相変わらず豪華なパフェである。これをつついている内にようやく一息つく。しばしボンヤリと時を過ごしてから店を出る時には既に待ち客が・・・。

豪華な都路里パフェ

 一息ついたところで美術館のフロアに移動する。例によってこの建物の動線設計の悪さはストレスである。

 

 

「没後40年 鴨居玲展 見えないものを描く」 美術館「えき」KYOTOで7/6まで

京都伊勢丹7階の美術館

 自身や人間の内面を見つめて、ひたすらそれに焦点当てる作品を描き続けた鴨居玲。初期の画業においてはかなりの模索の時期があり、その頃の時期の作品から展示が始まる。シュルレアリスムの影響を受けた油絵なども描いていたが、それに行き詰まってグアッシュを用いて絵画を描いてみたりなど、まさに試行錯誤が覗える。

 その間にブラジルに渡ったりなどもあって、方向性が見えてきたのが酔っ払いの絵以降か。人間の本質というものに目を向け続けてきた鴨居としては、その人間の本質がもろに表面化するのが酔っ払いの姿だったのかもしれない。人間の本質をえぐろうかとする鋭い視線が覗える。

 そして行き着くところが多数の自画像。自らの中にある葛藤などをも描こうとしたのであるが、元々厨二病的な遍歴を遂げてきた鴨居としては、ある種の当然行くつくべき先だったようにも思われた。彼の作品自体がやや演出過剰に感じられる部分もあるのであるが、そこには芸術の探求と共に、ある種の自己顕示欲のようなものも感じられる。それが自然に融合したのが自画像だったのではないかとも思われるのである。この一連の自画像のシリーズが彼の代表作となる。

人間の本質をえぐろうとするかのような鋭さのある絵画である

 自画像の次には女性の肖像画と教会を描いた作品のコーナーがあったが、彼自身は女性のヌードが上手く描けないということに困っていたとか。確かに人間の内面のドロドロしたものを表に出すタイプの芸術家である彼にとっては、女性のヌードを美しく描くというのは向いていないだろう。何か妙に無機質で生命感のない絵になっていたのが印象に残る。

 彼の教会の絵はモチーフとして宙に浮いていたりひっくり返っていたりなどの不安定さが特徴。彼自身は宗教的意識は全くなかったらしく、だからこそ教会を単なる建物のモチーフとして描いたようである。そこには何とも言えない不安感のようなものが滲む作品となっている。

 その作品からいかにも破滅型芸術家との印象を受ける鴨居であるが、やはりと言うか必然というか、その最期は自宅での排ガス自殺だったとか。創作に対する行き詰まりとその前年に患った心臓病が原因とのこと。享年57。

 

 

昼食は大阪駅前ビルの地下で

 展覧会の見学を終えたところで大阪に移動する。大阪に到着したのはちょうど昼頃。とりあえず昼食を摂る必要がある。大阪の地下街をキャリーを引きずってウロウロ。こうして動いてみると、バリアフリーのおかげでキャリーも随分動きやすくなっているような気がする。私が子供の頃など、街中はもっと無駄な段差に溢れており、ショッピングカーを引っ張るだけでも大変だった。

 結局は地下街をプラプラして駅前第二ビルの地下に到着。以前に夕方訪れた時には居酒屋ばかりで行くべきところがなかったが、昼ならランチぐらいあるだろうという読みがある。で、実際に「海鮮・寿司 まさ」がランチメニューとして「本マグロ丼定食(980円)」があるようなのでそれを注文。

駅前第二ビル地下の「海鮮・寿司 まさ」

 マグロ丼については価格を考えればこんなものかなというところ。ただごはんが白ごはんでなくて寿司飯なのは私好み。出てきたときにはボリューム不足に感じたが、いざ食べ始めるとかつてよりも食べる量が減っている今の私にはちょうどの量。

マグロ丼はともかく、鯛のあら煮が美味かった

 それよりも驚いたのは付属していた鯛のあら煮。これが抜群に美味い。どちらかと言えばこちらがメインのような食べ方になってしまった。

 

 

 昼食を終えるとホールに向かう。距離的には歩いて行けないこともないのだが、この灼熱地獄の中をキャリーを引きずってではツラい。結局は福島まで一駅だけJRに乗ることにする。それでも福島駅からホールまで歩くだけでも汗だくである。

 

 さて今日の公演だが、関西フィルの定期演奏会ではあるが、特別公演ということになっている。今年からリオ・クオクマンがアーティスティック・パートナーに就任することになったので、そのお披露目ということになる。デュメイが高齢で来日の中止が増えたりなどで今年から音楽監督を降板したので、その穴を埋めるべくとの起用であろう。

ホールには結構大勢の観客が訪れている

 クオクマンは2017年に関西フィルを振ったことがあるらしいが、私は知らないことから定期演奏会ではなかった模様。調べてみたところ、いずみホールシリーズでケガで出演キャンセルになったデュメイの代演だった模様。この時にかなり良い演奏をしたことが今回の起用につながったとのこと。なおこの時のザ・シンフォニーホールの定期演奏会の方はロッセン・ゲルゴフがデュメイの代演だったが、こちらは「若き故の未熟さがありデュメイの代演は荷が重かった」という私の評価である。なおこの前年にもいずみホールでデュメイの体調不良による出演キャンセルがあり、この時にはカーチュン・ウォンが代演しており、私は「こりゃとんでもない新星が現れた」と絶句したのが記憶に残っている。またヴァイオリニストの前田妃奈なんかも負傷したデュメイの代演で登場しており、デュメイは何かと休演が多かったが、デュメイの代演は超新星登場の場にもなっていたような気さえする。

 特別公演というだけあって、関西フィルファンの関心も高いのか結構大勢の観客が押しかけている。私はホール到着が開場よりも若干遅れたこともあり、喫茶での場所取りに苦戦することに。何とか窓際席を確保したが、カウンターで大行列。アイスコーヒーとアップルパイのセットを購入した時にはもうあまり時間がない状態に。

喫茶でくつろぐ時間的余裕はほぼなし

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第356回定期演奏会

関西フィルは14型編成

[指揮]リオ・クオクマン
[ピアノ]五十嵐薫子
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

ショスタコーヴィチ:祝典序曲 op.96【ショスタコーヴィチ没後50年記念】
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 op.43
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」op.35

 第一曲目はいかにもの華々しい曲。クオクマンの指揮はかなり煽ってくるという印象で、自分のお披露目の祝典コンサートを自らかなり華々しく盛り上げてきたというところ。その指揮っぷりはかなり大胆かつ流麗。オケの方も彼のやや煽り気味に感じられる指揮に見事に食いついている。

 私はこの曲を全く知らないので、このテンポ設定が普通なのかどうかは判断しかねるが、かなりのアップテンポの曲に管楽陣も弦楽陣もしんどそうであったが、それでも関西フィル管楽女性軍団の技倆は揺らがなかったのは関心。また弦楽アンサンブルも一体になって驀進した。

 もういきなり「やるな」という強烈な印象で始まったクオクマンのお披露目公演であるが、ソリストに五十嵐を迎えてのラフマニノフもいきなり同じような調子。そのために五十嵐は序盤はクオクマンに主導権を握られた感がある。

 しかしそのままで終わらないのが五十嵐のスゴいところ。凄まじいテクニックと力強い演奏で程なく主導権を取り戻す。その後はピアノとオケがあいまっての、華麗で美しくも叙情的でもあるというかなり緊張感の高い演奏。そのままラストまで突っ走ったのである。

 満場の拍手に答えての五十嵐のアンコールはこれまた超絶技巧の曲。聞いたことのある旋律だと思ったら、ビゼーのカルメンだった模様。ホロヴィッツとあるので、名人ホロヴィッツが自らの技倆を誇るためにアレンジした曲だろうか。それを難なく弾きこなしてしまうテクニックのほどに感心。最近はかなりのテクニックを持った日本人演奏家が多く出てきているが、これまた凄まじいピアニストが登場したなという印象。

 休憩後の後半はシェエラザードだが、もうこれは前半の演奏からある程度は予想は出来てはいたが、実際にはそれを超えるような凄い演奏が飛び出した。この音楽らしいうねるような力強い響きは、今まで関西フィルサウンドではなかったものである。さらにデュメイが鍛えた関西フィル弦楽陣はしっとりねっとりした美しいサウンドを奏でるように進化していたが、そこにやや欠けていたのが色気と茶目っ気。クオクマンは関西フィル弦楽陣にそれを加えてさらに進化させた。早くもデュメイサウンドを進化させたクオクマンサウンドを作り上げているのには驚かされた。オケのコントロール能力が抜群であり、関西フィルの音色が一変している。

 今まで関西フィルのキャラクターから行けば、こういう力でバリバリと押しながらも色気も必要という曲はあまり相性が良いとは思われなかったのであるが、クオクマンの指揮にかかるとそんな不安はどこかにぶっ飛んでしまっている。メリハリが強くて、それでいて雑にはならない煌びやかなサウンドは実に魅力的。またそのような演奏を受けてのコンマス木村悦子の演奏も実に叙情豊かな聴かせるものになっていた。

 いきなり関西フィルをこれだけ色彩的に鳴らしきったクオクマンの力量には感心するばかり、これは今後の楽しみが増えたと言える。

 

 

この遠征の前日の記事

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