大阪へ週末コンサートに
この終末はMETライブビューイングのために大阪に繰り出すことにした。さらに加えて初めてのオケのコンサートにも出向こうという欲張りな考え。
土曜日の午前中に家を出ると大阪ステーションシティシネマに直行する。ここは今までも何度も来ているが、とにかくエレベーターが異常に混雑するのが難点。それを嫌ってエスカレーターで登ったと思ったら、最後の1階がエスカレーターを使用できずに階段をキャリーを抱えて登る羽目に。
大阪は神戸の劇場よりは常に観客が多いが、今回も30人ぐらいは入っており、私の予想よりも遙かに多い。そう言えばサロメに関しては、デュトワが尾高の代演で大フィルを率いて伝説的なとんでもない演奏を聴かせてくれたことを思い出す。
METライブビューイング R.シュトラウス「サロメ」

聖書の物語の一つを題材にしたオペラであるが、内容がかなりセンセーショナルなだけに、20世紀初頭にMETで初上演した時には、非難が殺到して1日で上演打ち切りになったといういわくつきの作品である。聖書のエピソードにかなり性的な脚色をしているということが問題視されたのだという。
時代が変わって現代であるが、グートの演出もかなり露骨に性的な表現を持ち込んでおり、ヒロインであるサロメが継父であるヘロデ王から性的虐待を受けていたことも匂わせている。生育環境もあってかかなり人格的に歪なサロメが、猟奇的な愛に走るのがこの作品の本質となっている。
R.シュトラウスだけにオケピにギチギチになるような大編成のオケを駆使して、実に多彩な音色を出している。その音色は「ばらの騎士」でもあったような極めて甘美なものから、いかにもこの作品らしい禍々しくもおどろおどろしいものまで実に多彩である。
そして作品自体はヒロイン・サロメのヒーヴァーの独壇場と言ってもよい。場面に応じて彼女のソプラノが甘美にもヒステリックにも恐ろしげにも変化するのが圧巻。結局は作品全体を通じて彼女の存在ばかりが強烈すぎたせいで、最後のカーテンコールになった時に意外に大勢のキャストが出演していたことに驚いたぐらいである。
非常にインパクトの強い問題作であった。2時間とこのシリーズの上映ではかなり短い内容だが、密度が濃すぎて疲れたという感もある。
上映を終えると移動することにする。現在は13時、ホテルに荷物を置きたいがチェックインは15時である。その間に昼食を摂るのと美術館に一か所立ち寄る予定。
昼食は一階下のレストラン街を覗いたがどこも大行列で話にならない。そこで結局は西梅田駅に移動する途中の「ミンガス」に立ち寄って「カツカレー」を摂ることに。かなり間に合わせのどちらかと言えば時間を優先した選択でもある。

今の体調ではカレーはキツいのではという懸念もあったのだが、実際に食べてみると存外おいしく食べられる。私が自覚しているほどには体調が悪いということもないということだろうか?

昼食を終えると西梅田から肥後橋へ移動、目的地はここの近くにある美術館である。

「日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!」中之島美術館で8/31まで

日本美術を代表する名品が国宝に認定されるのだが、日本美術には未だに国宝に認定されていないもののそれに匹敵するレベルの名品はいくらでもある。そのような名品に光を当てようという趣旨の展覧会。
まず最初に登場するのは伊藤若冲、曽我蕭白、長澤芦雪、岩佐又兵衛などいわゆる奇想の画家と言われる絵師たちの作品。私が以前に目にしたことのある名品もあり、正直なところ「これがなんで国宝でないの?」と言いたくなる作品群。しかし伊藤若冲なども今でこそ超メジャーだが、彼が注目されたのは2000年代以降であり、それまではマイナー画家扱いだったことから国宝指定が追い付いていないとか。
いかにも彼ららしい名品(奇品?)が並ぶが、岩佐又兵衛の妖怪退治図屏風など、鮮やかな彩色でユーモアにもあふれる名品である。




次は室町水墨画で、超メジャーな雪舟にも劣らない無名の絵師たち。とはいうものの、雪村周継などは雪舟派の中ではかなりメジャーな存在だと思うのだが・・・。雪舟よりは幾分柔らかめのタッチが特徴。もう一人の式部輝忠は私も初めて聞く名で確かに未来の国宝かもしれない。精細にして伸び伸びとした筆遣いが魅力。
西洋でいわゆる非技巧的な素朴派が注目されるのは、アンリ・ルソーが評価されるようになった19世紀以降だというが、日本ではすでに室町期からいわゆるプロ絵師でない素人絵画の稚拙だが素直な表現を楽しむという文化は存在したという。次のコーナーはそのような作品。ここで登場する洛中洛外図などは、確かに金屏風の立派な作品であるにもかかわらず、その建物表現は歪で人物表現などは実に稚拙。絵心の皆無の私が見ても笑ってしまう作品だが、どことなく伸び伸びとした感じを受ける。なおこのコーナーに登場するのが元祖ヘタウマ絵師こと白隠慧鶴の作品。もっとも彼の作品は下手なのではなく、誇張がすごいものであり現代なら人気イラストレーターとかになったのではのではなどと思ったりするが。

次が歴史画のコーナーで原田直次郎、高橋由一などの明治洋画作品なども登場。ただ彼らは決してマイナー画家ではなく、なんで国宝認定されないの?ぐらいの感覚だが。木島櫻谷が学んだという菊池容斎の歴史画なども登場。
会場が第1展示室から第2展示室に移行する途中で、最重量級の茶室と最軽量の茶室というインターミッション的な作品を挟む。重量級茶室は鉄板でバキバキに固めたまさに「黒金の城」であり、シェルターにも使えるのではなんて考えが頭を過ぎる。軽量の茶室の方は単なるバラック。


第2展示室のメインは江戸から近代にかけての作品群となる。色遣いに洋画的なものを感じる狩野一信のインパクトの強い五百羅漢図、近年に里帰り評価されたという笠木治郎吉の精細な水彩画などが登場。さらには不染鉄や島成園といったインパクトの強い作品も。この辺りは国宝と言われると「?」ではあるが、存在感は非常に強い。


そして安本亀八のリアルそのものの生き人形に宮川香山の圧倒される精緻な陶芸作品、安藤緑山の唖然とする超絶木彫りといった工芸作品も非常に印象深い。

最後のコーナーは日本の造形の原点ともいえる縄文土器に、それにインスパイアされた現代芸術科の作品など。この辺りは芸術が爆発している。





果たしてどんな作品が登場するだろうかと思っていたが、思っていた以上に正統派の作品がメインだったという印象でかなり見ごたえがあった。
宿泊は新今宮の高級ホテル
美術館の見学を終えたところで今日の宿泊ホテルへ。今日宿泊するのは新今宮のホテル中央オアシス。このホテルは元々新今宮では高級ホテルの位置づけだが、あのレジオネラ万博で宿泊費高騰に拍車がかかり、特に週末はさらに高級になるので最近はほとんど使用できていなかった。今回は会社の福利厚生の宿泊補助と溜まったじゃらんポイントを併用しての宿泊。それと当初予定ではこの後には予定がなかったので、ホテルで長時間過ごすなら少しでも快適なところが良かろうという判断。

部屋は私がいつも使用している風呂トイレセパレートタイプ。やはりこのタイプでないと落ち着いて入浴できない。とりあえず荷物を置くと充電機器だけを手早くつないでから再び外出する。


カレッジオペラハウスへ
これから次のコンサートに移動である。今回出向くのがカレッジオペラハウス管弦楽団。大阪音楽大学の付属のオペラハウスの専属オケだが、一応日本オーケストラ連盟の準会員であり、立場としては奈良フィルと同じ位置づけ。以前に関西6オケ公演かあった際、尾高が「この調子でいけば数年後には8オケで」と言った時に私は「関西には後は奈良フィルぐらいしかないぞ」と言ったのだが、実はこのオケの存在を完全に失念していた次第。実際に結構特殊な立場のオケなので、今までこのオケの公演を聴きに行ったことはなかった。それがコンサートでちらしをもらってこの公演を知り、指揮は大阪交響楽団の実力を引き上げて注目の山下一史で曲目も魅力的、しかもちょうど遠征中の空き時間だったので訪問することにした次第。
会場のカレッジ・オペラハウスは阪急宝塚線の庄内駅から徒歩10分ぐらいで、大阪音楽大学の向かいの住宅街の中にある。


私が会場に到着したのは開場の10分ほど前。しかし既に50人程度の入場待ちの行列が出来ている。本公演は自由席なのでまあ予想できたこと。3500円も取るなら指定席にして欲しいところだが、そうすると券売システムが複雑になるからだろう。10分ほど外で待つことになるが、これが容赦なく暑い。10分後に後ろを見ると行列の長さは3倍ほどになっている。

カレッジ・オペラハウスは756席(オケピ使用時は652席)で2階になっている中規模ホール。3階があるように見えるが、ホール側から上がる階段がなかったことから、いわゆるスタッフスペースの模様。またオペラハウスだけあってオケピもあるようである(今日は当然のことながら上げてある)。音響はオペラハウスだけにややデッドめだが概ね良好。



観客は増加し続けて最終的にはホールの4~5割ぐらいは入る。ピアニストは大阪音楽大学の首席の才媛と言うことで、その関係者も少なくない模様。
ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団 第66回定期演奏会
指揮:山下一史
ピアノ:加古彩子
モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」
ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調
シューマン:交響曲第2番ハ長調
カレッジ・オペラハウス管は10型2管編成の中規模オケ。一曲目のモーツァルトはなかなかにまとまりの良い演奏をする。各パートは非常に安定感があり、いわゆるモーツァルト節全開のこの曲もうまくまとめてきている。もっともモーツァルト特有の茶目っ気は若干薄い気はする。
次はショパン。これは冒頭からメロメロのメロドラマにする演奏もあるのだが、山下は意外に淡々とした演奏をする。まあこのオケのキャラクターとしてはその方が合ってはいるかもしれない。弦楽セクションに安定感はあるのであるが、いわゆるネットリとした味のようなものは若干不足しているきらいがある。
その淡々とした印象はピアノソロが入った途端に変化する。加古のピアノは若者特有の表現意欲に満ちたロマンチックなものであり、起伏もあり露骨すぎないレベルの揺らしも入った表情の濃いもの。後は欲を言えばもう少し音色に色気が欲しいところか。
やや抑えめの表現のバックのオケがこのソロピアノを盛り上げてまとまりのある音楽を展開する。こういう展開についてはやっぱりこのオケがオペラハウスのオケということも影響しているかもなんてことが頭を過ぎる。最後までロマンチックななかなかの演奏であった。
20分の休憩後の後半はシューマン。山下は初っ端からバリバリと盛り上げる。非常に躍動感のある演奏だといえるが、気になるのはいささか雑にも思えること。またこのオケの音色がやや味気ないというのが響いて素っ気ない演奏でもある。特に第三楽章などのゆったりとした音楽の時にはもっとしっとりとした風情が欲しいという気がある。
総じて悪い演奏ではないし、アンサンブルの精度なども比較的高い。それだけにもう一段上のレベルを求めたくなるのではあるが、その点ではやや物足りなさを感じずにはいられないというジレンマがあるのである。
夕食は太閤ラーメン
コンサートを終えると庄内駅まで戻るが、その途中で夕食を摂ることにする。実は事前調査の際にその店は目星をつけている。帰路の途中にあるラーメン屋「秀吉」に立ち寄ることにする。

ここのラーメンはその店名のように「太閤ラーメン」「信玄ラーメン」「信長ラーメン」などがある。私は地鶏醤油ラーメンである「太閤ブラック」を大盛で注文。

真っ黒なスープに中細ストレート麺であろうかの組み合わせ。スープはその毒々しい見た目に反して意外にあっさりとしている。このスープとストレート麺の相性は良い。あっさりしながらもコクがあり、なかなかに美味いラーメンである。
夕食を終えると阪急と地下鉄を乗り継いでホテルに戻る。もう外は暑すぎて汗だくである。とりあえずまずは風呂に湯を張って入浴で汗を流す。大浴場ではないが、洗い場付きの風呂はやっぱりくつげる。今日はそんなに歩いたつもりもないのに、それでも何だかんだで1万1千歩。気が付けば足がつりそうになっている。これは脱水も影響してそう。とりあえずしっかりと体をほぐしておく。

風呂から上がるとやはりドッと疲れが押し寄せるので、しばしベッドの上でダウン。体の芯まで熱が入ってしまっている状態なので、冷房全開でとにかく体を冷やす。タブレットで漫画を読むなどグタグダと休憩をとってから、起きだして構築していた仕事環境で本日の原稿作成。そのうちに眠気が押し寄せてくるので就寝することにする。

この遠征の翌日の記事