徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

六甲アイランドの美術館を回ってから、佐渡オペラで「さまよえるオランダ人」

暑さに大分参っているが、遠征は最終日

 疲労で爆睡していたのだが、それでも昼前まで爆睡といかないのが老化による睡眠力低下の悲しさ。きっかり夜中の4時頃に目が覚めてしまう。こうなるとすぐに再就寝とならないのは経験上分かっているので、寝床で漫画でも読みながらグダグダとしばし過ごし、眠気が湧いてきたところで二度寝する。次に目覚めたのは7時半の目覚ましで。

 しかし体のダメージは相当のものである。目が覚めても体が起き上がれない。ゴソゴソ歩いて地味に体力を消耗しているが、やはり最たるものは熱疲労だろう。大量の発汗で水分が相当に失われている模様なのに、体の脱水に胃腸の吸収がついて行っていないのでとにかく異常にのどが渇く。いくら麦茶を飲んでも際限なく喉が渇く状態。体は軽い熱中症状態で火照っている。

 元気があればこの朝に原稿アップなども考えていたが、とてもそんな状況でないのは明らか。とりあえず昨日に購入しておいたパンを間に合わせの朝食として腹に入れるとしばしグダグダ。

 今日の予定だが、14時から西宮で開演の佐渡オペラ(こう書くといつも佐渡おけさを連想する)に行くというもの。2日続けての庶民向けオペラである。今回の出し物はワーグナーの「さまよえるオランダ人」であるので、庶民向けオペラにしては高尚な内容。

 ただ会場直行だと時間が余るので、そこは例によって美術館に立ち寄る予定。今日は六甲アイランド方面の小磯記念美術館と神戸ゆかりの美術館をはしごする。

 10時前に宿を出ると、機動力を損ねるキャリーはJR三ノ宮東口のロッカーに放り込んでおく。身軽になったところでJRと六甲ライナーを乗り継いでアイランド北口へ。六甲ライナーに乗るのは久しぶりだが、やけに揺れるのが気になる。本来は新交通システムはこんなにガタガタと揺れるべきものではない。保線管理がうまく機能していないのではという気もする。

 目的の美術館は平面距離では駅からそこだが、高さの差がかなりあるので延々と降りていく形になる。それにしても今日も凶悪な暑さである。

美術館に到着したのは良いが、とにかく死ぬほど暑い

 

 

「藤田嗣治 7つの情熱」神戸市立小磯記念美術館で9/15まで

 レオナール・フジタことパリで活躍した日本人画家・藤田嗣治の生涯にわたる創作を7つのキーワードに注目して紹介するという。

 最初のキーワードが自己表現であるが、藤田と言えば連想するあの前髪パッツンのヘアスタイルは、そもそもはファッションではなく髪が伸びてきて邪魔になったら自分でカットしていたことから始まったとか。それが知らない間に自身のトレードマークのようになってしまったとのこと。

 2つ目のキーワードが風景で、初期の藤田は各地を旅しながらその風景をスケッチしまくっていたという。その頃の作品がいくつか展示されているが、細かい描き込みに藤田らしさを感じさせるものの、傑出した特徴はまだ見られていないような気がする。もっとも藤田らしい絵があまり得意でない私から見たら、むしろ好ましく見える作品が少なくなったのであるが。

 3つ目のキーワードは前衛。これは渡欧した日本人画家がもれなく体験する通過儀礼のようなもの。当時の最先端の芸術表現に1度はかぶれてみるのである。藤田の場合はちょうどキュビズムが台頭していた時期らしく、明らかにキュビズムの影響を受けた作品が数点展示されている。ただこれに関しては藤田らしさはほとんどなく、正直なところこの路線で進んでいたら藤田は凡百の画家の中に埋もれていたろう。

 4つ目が東方と西方とのことで、藤田は自らが東洋人であることを意識し、その感覚を絵画に取り入れようとしたという。特に浮き世を意識したらしく、明快な線表現に浮世絵的な目つきの女性を描いているが、私の目には浮世絵と言うよりはエジプトの壁画表現に近いように感じられた。

 5つ目が女性で6つ目が子どもになる。この女性はまさに藤田が時代の寵児となった乳白色の下地に面相筆で繊細に書き込んだ女性像になる。これが一般的に藤田と言ったときに誰もが連想する絵画群で、藤田はこれらの作品で世界に認められることになる。さらに時代が進むと藤田の画題は女性から子どもへと変化。あの独得のクセの強い子供像でこれも藤田を象徴する作品。ちなみに私が藤田を苦手というのは、どうもこれらの作品と相性が良くないからであるが。

 最後が天国と地獄。晩年の藤田はキリスト教に入信し、宗教を題材にした絵画などを制作することになる。藤田らしい細かい筆致で天国と地獄をテーマに描いたモノクロ作品が非常に目を惹く。個人的には本展の中で一番面白さを感じさせたのがこれらの作品。

 以上、今年は藤田の生誕140年とのことで、様々な藤田絡みの展覧会が企画されているがその一環である。藤田に強い興味があるとは言い難い私であるが、それでもなかなかに興味深いものがあった。


 小磯記念美術館を後にすると南下する。しかしこの天候ではこういう行程がキツい。屋外歩行が10分を過ぎれば熱中症になりそうになる。途中でダイエーに逃げ込んだりしながら、何とか目的地へとたどり着く。しかしこうして歩くと、六甲アイランドはポートアイランドと違って店が結構いろいろあることが分かる。これはその内にポートアイランドの方はゴーストタウンになりそう。私の知っている外資系企業なんかも、生活がしやすいとのことでポートアイランドから六甲アイランドに続々と移転しているということも聞いたし。

灼熱地獄の中をようやく美術館にたどり着く

 

 

「西田眞人 日本画展 ー再生の祈りをこめてー」神戸ゆかりの美術館で9/15まで

 神戸出身の日本画家である西田眞人の作品を展示した展覧会。風景画を描いてきた彼は、阪神・淡路大震災に衝撃を受けて震災後の風景やその後の復興の姿を描いてきた。これらの作品が高い評価を受けた。なお日本画家と言うが、それは画材が日本画の画材と言うだけで、表現的には西洋絵画と大差がないといういかにも最近の日本画家でもある。

 初期の作品は普通に「映える」風景を描いている感があり、技術的なものはともかくとして精神的な深さをあまり感じさせないところがある。それが一変するのがやはり震災体験によるようである。彼が震災の廃墟を描いた風景には、そこから何かが語りかけてくるような妙な静けさが感じられ、この頃を境に彼の作品が一気に精神性を帯びてくるようになる。

 震災から復興していく町の風景などを描きながら、時には抽象的な風景を描くようにもなったようである。明らかに精神世界に傾倒していった象徴とも言える。

復興する神戸を描いた「輝く街」(2001年)

 近年では全国の一の宮を訪問して作品を描くことをライフワークとしているとのことで、まさに題材からして精神的なものが強く、独得の静けさを感じさせる絵画となっている。それと共に初期のギラギラした色彩がなくなり、モノトーンの絵画へと変化してきているのが特徴的である。

 1人の芸術家が体験を通して深まりを増して進化していく過程をまざまざと見せつけられた印象の展覧会であった。こういうのもなかなか面白い。

 

 

 これで本日の美術館の予定は終了。後は西宮に移動して昼食を摂ってからホール入りである。JR住吉から摂津本山で降りて岡本まで移動(これが今日はキツい)、後は阪急で西宮北口。この気象でなければなんてことない行程が、今日は覿面に体に響く。

 さて昼食をどうするか。妥当なところで西宮ガーデンズに向かったが、相変わらず人が多すぎてどの店も30人待ちとかいう馬鹿げたことになっている。開演が14時からなのであまりゆっくりもしていられないので、さっさと見切りを付けて駅まで戻ってくると、結局は駅北のケンタでCPの悪い間に合わせの昼食になる。どうもこのホールはこのパターンが多い。思いの外ガーデンズが使い物にならないのが原因だが(混雑を抜きにしても、ボッタクリがひどすぎる店も多い)。

間に合わせのケンタ昼食

 間に合わせの昼食を済ませるとホールへ。チケットは完売しているようなのでかなりの大勢がゾロゾロと入場である。私が確保したのは4階サイドの最安席。実際に席に着いてみると見事なまでの見切れ席である。ステージの左側の1/3ぐらいは見えない。オケだと音が聞こえれば良いが、オペラだとこれは少々キツいか。また高所恐怖症の私にはかなりツラい席でもある。

もろに見切れ席の上に高さがかなりある

 

 

ワーグナー「さまよえるオランダ人」

指揮:佐渡裕
演出:ミヒャエル・テンメ
ヨーゼフ・ワーグナー(オランダ人)、ルニ・ブラッタベルク(ダーラント)、シネイド・キャンベル・ウォレス(ゼンタ)、ロバート・ワトソン(エリック)、ステファニー・ハウツィール(マリー)、鈴木准(舵手)

 佐渡裕企画のオペラも兵庫芸文の開館20周年に合わせて20作目となったという。毎回佐渡オペラは日本人キャスト中心の回と外国人キャスト中心の回を交互で上演するが、今回は外国人キャスト中心の回となる。

 勇壮な音楽は実に分かりやすいし、上演時間も3時間ということでワーグナー作品の中では比較的手頃な感覚があるので、ワーグナー初心者に向くと言われている作品である。もっとも話自体は他の作品と同様にワーグナーらしい価値観・宗教観などが現れているので理解しにくい部分がある。正直なところ、不幸なオランダ人を献身的な愛で救った少女の物語というよりは、現実逃避して空想上の推しに入れ込みすぎた少女が、そのまま身を滅ぼしてしまった話というようにしか私には見えない。

 それはともかくとして、壮大で複雑な音楽はやはり魅力的なものがある。そして主演陣の安定性はなかなかのもので、オペラという芸術の醍醐味を観客に感じさせるには十分な公演であったようには思われた。

 陰の深いオランダ人を演じたバスバリトンのワーグナーと、財宝に釣られて脳天気に彼と娘の縁談を進めてしまうダーラントを演じたバスのブラッタベルクの対比ぶりがなかなかに興味深いところであった。そして狂気を秘めた夢想少女のゼンタのウォレスは少女の揺れ動く心というか、自己陶酔の危ない性格を表現していて興味深い。一番まともであるが故に悲劇的な存在であるエリックのワトソンは、純粋に恋人を心配する男を好演していたが、やや歌声にか細さがあるのが少々気になったところではある。

 取っつきやすい作品を中心に取り上げていた佐渡オペラとしては、珍しい重厚な企画であったがなかなかに聴き応えがあったと言える。

カーテンコールの模様

佐渡も加わって

 楽しめたのではあるが、やはりオペラは見切り席はツラいなと感じたのも事実。次に席を取るとしたら、ケチりすぎずにもう少し正面からの席にしようかと思った次第。

 

 

本遠征の前日の記事

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