徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

福田美術館で美人画を堪能した後は、オッテンザマー指揮のPACで魅力あふれるザ・グレイト

西宮への移動の前に嵐山に立ち寄る

 その晩はかなり爆睡したようで、目が覚めたと思ったら既に9時になっていた。10時間以上爆睡していたことになる。これは最近あからさまに睡眠力が落ちて中途覚醒が多くなっていた私としては驚異的。

 爆睡したおかげか朝から体は怠いが調子は悪くない。とりあえずさっさと着替えると2階のレストランスペースに出向いて簡易朝食。ちなみにかつてはここにレストランが入居していて、朝はおばんさいバイキングがあったのだが、レストラン撤退で今ではパンだけの粗末なものになっている。景気の悪さと物価の高騰が露骨に反映しているのがこのホテル。なんかダメになっていっている日本の縮図でもある。

朝食のパンをトースターで焼きすぎてしまった

 このホテルのチェックアウト時刻は11時で、会員は12時まで滞在可能。そこで昨日全く作業が出来なかったこともあって、しばし原稿作成。しかし頭の回りがあまり良くないようで作業がはかどらない。

 さて今日の予定だが、西宮で開催されるPACオケのコンサートが15時から。ただしその前に昨日立ち寄れなかった美術館に立ち寄るつもり。12時までホテルにいたら流石に出発が遅くなりすぎるので、11時ごろにチェックアウトする。

 このホテルの一番のメリットは交通の要衝に位置すること。これから向かうのは嵐山の福田美術館なので、烏丸から阪急でダイレクトである。

 秋の行楽シーズンのせいか、嵐山はインバウンド中心にごった返している。灼熱地獄だった前回訪問時がまだ閑散としていたのとは対照的。歩道が大混雑しているせいで、キャリーを引きずりながらの移動がかなりの苦痛。

嵐山はこの調子でインバウンド大混雑

 福田美術館の前の角のカフェが異常な行列で大混雑しているが、そこを抜けた福田美術館周辺はいつものように閑散としている。

美術館周辺の一角だけが別天地

 

 

「上村松園と美人画の軌跡」福田美術館で11/8まで

 上村松園生誕150年とのことで、松園を初めとする美人画コレクションを展示する。

 第一展示室は美人画の走りと言える江戸時代の作品から始まって、上村松園の作品が一堂展示。見たことのある作品から初めてではないかと思われる作品まで様々。こうしてまとめて見てみると、描き方が定型化していると思われていた松園の美人画だが、実はモデルの顔立ちが様々であることが分かる。

勝川春章「桜下遊女之図」

上村松園「四季婦女」

上村松園「人生の花」

上村松園「かむろ」

上村松園「雨を聴く」

上村松園「初雪」

 

 

 さらには池田蕉園、島成園、伊藤小坡といったところのこのジャンルでは忘れてはならない女流画家たちも登場。個人的にはこれがなかなかの収穫。

池田蕉園「もの詣で・春の日」

島成園「舞子」

伊藤小坡「初雪」

 第二展示室は美人画と言った時に外すことはできない鏑木清方の清澄な作品、さらには個人的にはあまり好きではない伊東深水の作品が登場。残念ながら共に著作権の関係か撮影は不可。なお私が伊東深水の作品があまり好きでないのは、どことなく媚がみられるからであるが、本展展示作は深水にしては媚があまり感じられない作品が並んでおり、この深水ならまずまずいける。これ以外では門井掬水の大作屏風など当時の東京画壇を代表していた画家たちの作品。さらには京都画壇の異才、甲斐庄楠音に岡本神草と言ったクセの強い面々の作品が登場。

門井掬水「舞踏の楽屋」右隻

同左隻

岡本神草「追羽根」

甲斐庄楠音「舞之図(汐汲みを描く)」

 

 

 第三展示室は急に洋画になる。岸田劉生に始まって唐突にルノワールが来たと思えば、小磯良平に岡田三郎助、さらには東郷青児という脈絡のないラインナップである。

岸田劉生「村娘之図」

ルノワール「女の頭像」

小磯良平「婦人像(装い)」

岡田三郎助「裸婦」

東郷青児「草上の三人の娘」

 なお第三展示室は以前より窓から差し込む日光が額縁のガラスに反射して、絵が見にくいうえに撮影してもまともに映らないという難点があったのだが、本展では窓にカーテンを引いてあった。展示室内は薄暗くなってしまうがこれで正解。

 

 

 本展は嵯峨嵐山文華館が第二会場となっており、私も共通券を購入している。そこで第二会場に足を延ばす。前回訪問時はこの行程が灼熱地獄で大変だったが、まだ少々暑いとはいえ前回とは比較にならないレベルなので移動での消耗が少なくて助かる。

嵯峨嵐山文華館へ移動

 第一会場が近代美人画中心だったが、第二会場の一階展示室は江戸期の美人画中心。いわゆる肉筆浮世絵の展示である。

梅翁軒永春「雪卯模様着衣立美人図」

川又常正「見立て寒山拾得図」

東燕斎寛志「雪中美人図」

蹄斎北馬「雪月花」

円山応挙「美人図」

祇園井特「芸妓図」

 

 

 二階展示室では妓女などを描いた近代美人画を展示。第一会場でもあった上村松園、伊藤小坡らに加えて北野常富、中村貞以らの作品が登場する。

栗原玉葉「お七・お染」

上村松園「花のさかづき」

中村貞以「春粧」

中村貞以「蛇皮線」

北野常富「むすめ」

伊藤小坡「花見之図」

 以上、美人画というジャンルにこだわっての展示。同じような女性を描くにしても、画家によって描き方の個性があるのが分かって興味深いところでもあった。

 

 

 これで後は今日の予定は西宮でのコンサートだけ。とりあえず阪急で西宮北口を目指すが、昼食を摂る必要があるが例によって食欲が今一つ。面倒ということで、乗り換えの梅田駅で構内の「たちまちカレー」に立ち寄る。

阪急大阪梅田駅構内の「たちまちカレー」

 その名の通りまさにたちまちカレーが出てくるが、500円のオーソドックスなカレーは具なしの模様。どうやらこれをベースに具をトッピングしていくのがここの流儀か。ルーはやや甘口。悪くないが別段美味くもないというところ。どことなく24時間戦うビジネスマンが乗り換え時に3分チャージをしていくための店という印象が強い。

シンプルな具なしカレーがすぐに出てくる

 大阪駅から西宮北口に移動。どうも先ほどのカレーが中途半端に過ぎたので、何かを少しはらに入れたい気分。そこで駅内の宝塚線ホームにある「若菜そば」に立ち寄ってざるそばを腹に入れていくことにする。

西宮北口駅宝塚線ホームの「若菜そば」

 「当店は生麺を使用」と書いてあったが、確かに駅内のこの手の蕎麦屋にしてはすぐにそばが出てこずに数分待たされる。どうやら麺をゆでている模様。それもあってか出てきた麺は腰はまずまずである。ただ残念なことにそばの味がしない。どうも二八そばならぬ八二そばぐらいではないかという印象。私は特にそばマニアというわけではないが、それでもそばを食べた感があまりしないのが本音。

麺の色からしてそばが少なそう

 というわけで駅内で適当に食べたらそれなりでしたという話。まあ共にワンコインに収まる額というのはこのご時世にはありがたいが、やはり食事というよりはエネルギーチャージという感が強いのがいかにも。

 そばを食べ終わったころには開場時刻を過ぎているのでホールに向かう。ホールはまずまずの入りである。

 

 

PACオケ第163回定期演奏会

今回の出し物

指揮:アンドレアス・オッテンザマー
ヴァイオリン:ヴェロニカ・エーベルレ

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
シューベルト:交響曲 第8(9)番「ザ・グレイト」

 オッテンザマーはクラリネット奏者として活躍しており、つい先日には大フィルの定期でそのクラリネットの演奏を聞いたばかりであるが、今回は指揮者として登場。どうやら彼は指揮者としての活動も行っているらしい。

 一曲目はメンデルスゾーンのド定番曲。エーベルレは6歳からヴァイオリンを始め、17歳でラトル指揮のベルリンフィルとベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲で共演し、国際的に注目を浴びるようになったという才媛。多くの一流オケとの共演も重ねているという。

 流石に技術的には安定感があり、この定番曲なんてサラッと弾いてしまうから、非常に簡単な曲に聞こえてしまうというところがある。演奏自体は極端なクセのない意外にオーソドックスなもの。ただ一つだけ気になったのは、非常に強い演奏をするが故にいささか音色が固めに聞こえたこと。時折カツンカツンという感じに聞こえてくる場面があった。

 なおバックのオッテンザマーの指揮ぶりがかなり大きいので、ヴァイオリン側にグワッと接近してきて、エーベルレがいささか窮屈そうに見える場面もあったのはご愛敬。

 熱の入った演奏に大盛り上がりの場内の歓呼を受けて、アンコールではオッテンザマーがクラリネットを持ち出してメンデルスゾーンの演奏会用小品を素敵な二重奏。美しいアンサンブルに場内は再び大いに盛り上がった。

 休憩後の後半はオッテンザマーによるグレイト。シューベルトのこの交響曲はとにかく長大であるので、下手にメリハリのない演奏をしてしまうと眠気がこみあげてくる危険もある曲である。それに対してオッテンザマーの指揮は極めて快活であり、音楽が躍動するという印象。この曲は元々陽性な要素が強いのであるが、それを徹底的に陽性側に振っている印象。

 第二楽章などは演奏によってはやや哀愁を帯びた印象になるものもあるのだが、オッテンザマーの場合はとにかく明るい。ひとひねりあるコミカルな音楽という印象で響く。オッテンザマーの快活な指揮が、PACオケの若さと呼応した感がある。なかなかにオケから鮮烈な音色を引き出していた。オッテンザマーはこのオケとかなり相性が良さそうである。

 その調子で最後の最後までとにかく活気に満ちて生命感が躍るという調子の演奏であり、眠気など訪れる隙さえなかったというところ。なかなかに興味深い演奏であった。

満場の歓呼に応えるオッテンザマー

なかなかの演奏であった

 

 

この遠征の前日の記事

www.ksagi.work