徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

スペインADDA交響楽団はノリノリの大盛り上がりとなる

連日の大阪へ

 昨夜大阪から帰ってきたところだが、今日はまた大阪にとんぼ返りである。本来なら大阪で宿泊したいところだったが、とにかく昨今の異常なホテル代高騰とインバウンド公害で宿泊が確保できなかった次第。少々疲れるが仕方ない。

 土曜の午前中に家を出ると途中で朝食を摂ってからJRで大阪へ。さて今日の目的だが、ちょうど現在来日中のウィーンフィルのコンサート・・・に行きたいのはやまやまなんだが、なんせアホノミクスの結果の円暴落で天井桟敷の最安席で25000円と言われると、完全に予算オーバー。結局は日程の被る裏コンサート(笑)に行くしかなく、選択したのがスペインADDA交響楽団なる謎のオケのコンサート。C席(例によって3階の見切れ席であるが)で5000円という妥当な価格。というわけで、台湾フィル、カナダナショナル管、プラハフィルに次いでの「海外マイナーオケシリーズ第4弾」と相成った次第である。

 大阪に到着したのは11時過ぎ。開演が14時からなのでいささか時間がある。さてどうしてつぶしたものかと迷った時に頭を過ったのは、確かグランフロントで藤城清治展をやっていたはずとの情報。ただし今更藤城清治というのもというのが本音(今まで既に数回行っている)。そこで入場料が2000円以上だったらパスという基準を設定してグランフロントに向かう。会場近くにポスターが張り出しているので入場料を確認したらジャスト2000円。これでパス確定である。

 さてこれからどうしたものかと悩んだ時に、空中展望台を備えた梅田スカイビルが目に入る。そう言えば今まであのビルは行ったことがなかったし、確かあそこには絹谷幸二天空美術館という個人美術館があったはずと記憶を手繰り、とりあえずそちらを目指すことにする。

空中展望台を持つ梅田スカイビル

 ビルへのルートはJRの貨物駅跡を絶賛再開発中である。かつては地下トンネルで反対側に抜けた記憶があるが、今は地上が公園整備されつつある。そこを抜けると件のビルが見えてくるが、空中展望台が下から見上げても「板子一枚下地獄」感が半端なく、美術館があそこだったら嫌だなという考えが頭を過る。

下から見上げると高所恐怖症を刺激する

 幸いにして美術館はそこではなく、西館のビルの27階に普通にある模様。入場券を購入しようと思ったら2500円という数字が目に飛び込んで来て引き返そうかと一瞬思ったが、それはどうやら展望台とのセット券で、美術館単独は1300円の模様。ハルカス美術館と似たシステムである。

美術館に入館する

 

 

「絹谷幸二 平和へ」絹谷幸二天空美術館で12/7まで

 洋画家絹谷幸二が昨今の紛争相次ぐ世界を鑑みて、芸術から平和を訴える作品を提言することにしたのだとか。

シンボル作品である「祝・飛龍不二法門」

 作品は絵画と立体作品の両方があるが、とにかくインパクトが強い。9.11のテロをモチーフにしたと思われる作品や明らかに戦争をイメージしている作品など。

明らかに9.11をモチーフにした「発火激情(平和を祈る自画像)」

ノン・ディメンティカーレ(忘れないで)

 仁王や不動明王などを配した作品があるのは、人間の愚行に対する警鐘を鳴らしているのだろう。日本に再び戦争への道を歩ませようとしているような馬鹿総理は、こういうのを見て考えを改めるべきだろう。

オマージュ「平治物語絵巻」

天駆ける仁王

 

 

 立体作品もインパクト大で奇天烈であるが、龍などをモチーフにした作品が多い。

スカイビルをモチーフにした立体作品

朝陽富嶽玉取り龍 不二法門

 また絹谷幸二はフレスコ画の技法を研究してアフレスコの技法を確立している。青山の国立総合児童センター用に制作されたアフレスコ画を、同館の閉館に伴って剥がして移設した作品も展示されている。古くて新しいという印象の絵画となっている。

アフレスコ画の壁画

 どう表現してよいか分からない強烈なインパクトのある作品群だった。理解不能な点も多々あるが、まあ意外と嫌いではないというのが正直な感想。もっとも強烈故に一回り見学すると飽きてくる面もあるので、この美術館に再訪があるかは微妙なところである。

 

 

昭和レトロ風の地下レストラン街で昼食

 美術館の見学を終えるとホールに向かう前に昼食を摂ることにする。ここの地下に滝見小路なるレストラン街があるというから覗いたら、今時流行の昭和レトロの風情を再現したレストラン街となっている。もっとも昭和レトロにしては店の案内は英語が並びまくっていてインバウンド大全盛であるのが歴史設定が狂っている。

昭和レトロな風情を出している

ビクターのニッパー君が

昭和なお茶の間の復元

 一渡り店を調べてから「鉄板焼 えん」なる店に入店。当初は赤身ステーキのランチを考えたが、オージーだというので「黒毛和牛の焼肉ランチ(1200円)」を注文することにする。

鉄板焼き えん

 まあ普通の焼き肉。特に驚きもしないが失望もしない。黒毛和牛を名乗っているので脂っこいことを警戒したが、それはさして気にならない。場所のことを考えるとまずまずの昼食と言えよう。

和牛の焼肉ランチ

 昼食を終えるとホールまで歩く。まあ軽い気分転換の散策のようなもの。ホールに到着したのはちょうど開場時刻の3分前である。

開場3分前にホールに到着

 ホールに入場すると今日は少々暑いので、喫茶でアイスコーヒーを頂きながらこの原稿を執筆である。喫茶はかなりの混雑。ガラガラだったカナダナショナルやプラハと違って結構観客が来ているんだろうか?

アイスコーヒーでまったりする

 時間が来たところで席に着くが、今回は右手の見切れ席でステージ上のヴァイオリンしか見えない状態。今まで見切れ席ばかりだったが、今回は一番悪い席か。なお場内は結構入っている。一階席はほぼ満席、三階席もほぼ満席。二階正面席の中段に空席があるが、後段はほぼ満席。つまりはA席の悪い席が残っているという状態か。全体では9割近く入っている印象。

 

 

スペインADDA交響楽団

かなりひどい見切れ席である

[指揮]ジョセップ・ヴィセント
[ピアノ]マルティン・ガルシア・ガルシア
[ギター]村治佳織

ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 op.21
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
ラヴェル:ボレロ

 スペインADDA交響楽団は地中海岸のアリカンテを拠点としたオケで、現代音楽やポピュラー音楽などまで幅広いレパートリーを持つという。ヴィセントは同団の首席指揮者であるという。オケ自体はオーソドックスな12型のオケである。

 一曲目はいきなり冒頭からホルンの奏でるメロディがどうにも不安定でややずっこけるが、弦楽陣のアンサンブルは決して悪くない。また管楽陣もそう悪いというわけでもない。むしろ個々に見ていったら結構上手いように感じる。ただ音楽自体は美しくはあるが、もっと切々とした情感が欲しい気はする。

 二曲目はショパンのピアノ曲。ピアニストはいかにもラテンな感じの名前のガルシア・ガルシアであるが、もういきなりラテン的というかかなりの無手勝流の演奏であることが分かる。とにかく溜だの揺らしなどを多用する良く言うと実にロマンティックな演奏なのだが、端的に言うとバックのオケのことを全くかまっていない演奏。だからピアノセッションは情感豊かで良いのだが、元々オケとピアノの融合にやや難のあるショパンの曲の、その難点をもろに拡大したような演奏になってしまう。ピアノとオケが全く別に音楽を奏でている雰囲気。

 第2楽章以降は、ガルシアが歩み寄ったか、オケが合わせてきたのか、それとも曲調の影響かは不明だが、最初よりはまとまりは良くなる。第2楽章はガルシアが歌いまくり、そのまま怒濤の第3楽章で曲を終える。美しい音楽ではあったが、ただ最後までどことなくチグハグ感はつきまとったのである。

 ガルシアのアンコールはアルベニスのナバーラとのことだったが、これがまた凄かった。ガツンガツンとまさに怒濤の演奏で、激しくて実に奔放。これがどうやらガルシアの本領であるということがよく分かる。やはりガルシアにはオケの縛りが入る協奏曲は向かないのだろうか。

 前半はやや借りてきたもの感があり、今ひとつしっくりとこない印象を受けたが、これが一変するのが後半。

 村治のアランフェスは私自身も既にその演奏を何度か聞いたことがあるぐらいで、村治にとってはまさに自家薬籠中の曲。それだけに安定感が抜群である。

 ここで分かるのがバックのオケが基本的に非常に陽性なオケであるということ。アルトオーボエが奏でる第2楽章のメロディのように、奏者単独だと哀愁を帯びたメロディを奏でることもできるのであるが、オケの斉奏になると問答無用で音色が陽性を帯びる。この辺りがラテンなオケと言うべきか。もっともアランフェスはオケにとっても自家薬籠中の曲のようで、ようやく本領発揮というかまとまった見事な演奏を披露する。

 村治のアンコールはギターではド定番の「禁じられた遊び」。物悲しい旋律が心に沁みる演奏となっている。会場も盛上がる。

 盛上がった勢いのままに最終曲のボレロに突入する。ボレロは各楽器がソロを受け持ちながら曲を回していくが、とにかくソリストが歌いまくる。かなりノリノリなのが伝わってくる。管楽陣の技量がさく裂している。ボレロはそもそもスペインの舞踏とのことなので、彼らにとってはある種のご当地音楽ということにもなる。ボレロは終盤に向けて曲を盛り上げていくが、その盛り上がりのテンポが通常よりもやや早い印象。そしてラストはまさにホールが一体となっての大盛り上がりとなる。

 この時点で観客が大爆発の大盛り上がり。立ち上がって拍手をする観客もチラホラ。後半プログラムが軽めなのでアンコールは絶対あるとは思っていたが、その準備中に日本人らしきコンミス(どうやらフランスで活躍されている田中綾子氏がゲストコンマスだったらしい)が「大阪がやっぱり一番」という類いのトークで時間をつないでこれも盛り上がり。

 そしてアンコールがマルケスのダンソン第2番。メキシコの作曲家の現代音楽らしいが、エキゾチックなリズムでガンガンと行く曲。ヴィセントが会場内に手拍子を求めて大盛り上がりで、オケの方もブンチャカとまさに本領発揮。やはりこのオケはかなり陽性のオケである。こういう曲がまさに本領のようである。

 場内さらに爆発。ついには村治まで引っ張り出してきていきなりファリャの三角帽子の序奏というショートショート。場内爆笑と共にさらに盛り上がって収拾のつかない状態になってくる。ここでヴィセントはコンミスと「どうする?」という雰囲気でゴニョゴニョ相談。その結果、やはりこれが出ないとという「カルメン」が登場して場内手拍子の大盛り上がりになる。結局は最後はやや強引に終了ということに。

 とにかく前半はやや疑問もないではなかったのだが、後半にしっかりと帳尻を合わせて最後は大盛り上がりの大成功に持って行ったという、なかなか巧者なコンサートであった。