徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

神戸地区美術館巡り

ようやく社会復帰

 実は先の遠征から帰宅した翌週から体調を崩し寝込んでしまい(インフルエンザの可能性が高いが、結局病院に行っていないので不明)、その後も体調がすぐれずしばらく出社もままならずに在宅勤務を続けるという事態に陥っていた。何だかんだで二週間ほど不調で家に籠っていたが(その間に大阪フィルの西宮公演を痛恨の見送りをしている)、まだ体調がピリッとしないものの、ようやく来週から社会復帰(というか会社復帰か)する予定となった。そこでそれに備えて体調の回復度合いを測る意味も込めて、今日は神戸方面の美術館に繰り出すことにした。

 移動は車で。それはまだ電車での長時間移動がキツいのと、また病気でももらったらたまらんという考え。さらには先月に車を乗り換えてから、それに慣れるべく昨今は意図的に中距離ドライブをしていることなどによる。

 まず最初の目的地は神戸。乗り換え当初は今までのガソリンノートと全く運転感覚が異なるe-powerにかなり戸惑っていたが、ようやくe-power独自のワンペダルコントロールにも慣れてきた。またワンペダルでの運転が中心になることで、咄嗟の時にブレーキペダルが踏めなくなるということも懸念してたが、どうやら長年の運転で「非常の時はとにかくアクセルから足を離してブレーキを踏む」という動作が体に染みついていたのか、間違えてアクセルを踏み込んでしまうという危険もなさそうだということが分かってきた。ただブレーキを踏むたびに「今、運動エネルギーを無駄に熱エネルギーに変換して捨てている」という一抹の罪悪感を抱くようになってしまったのだけはどうしようもない。

 最初に立ち寄ったのは兵庫津ミュージアム。地下鉄中央市場前の最寄りに復元した初代兵庫県庁と兵庫津の歴史を紹介するひょうごはじまり館を複合した施設になっている。なおHPには「駐車場はない」と書いてあるのだが、実はすぐ北にイオンモール神戸南が隣接しており、実質的にはそこの駐車場を利用しろとのこと(3時間まで無料、後はイオンでの買い物に応じて無料がある模様)。流石に公的施設としては大っぴらにイオンの駐車場に停めてくれと言うのは憚られたか。もっとも入館の際にイオンモールアプリを使用すると、300円の入館料金が200円になる割引サービスがある。要はイオンとしても「博物館目当てのお客様もうちに立ち寄ってください」ってことなんだろう。

 

 

兵庫津ミュージアム

ひょうごはじまり館

 まずはひょうごはじまり館に入館。展示室は一階でここに兵庫津の歴史を展示してある。要は兵庫津を最初に開いたのは平清盛で、彼はここに福原京という海上交易に長けた都を作るつもりだったのだが、その計画は結局は源平合戦の中で中途でとん挫する。

兵庫津と関連した3人の偉人

クレーンのない時代、このように船を沈めて防波堤を作った

 次に兵庫津が注目されたのは、足利義満の日明貿易の拠点の一つとしてである。この時には兵庫津が明からの大型船も接岸できる港として重要性を持ったのだという。実際に明からの渡来品なども発掘されている。

日明貿易に関連した出土品

 そして次に兵庫津にまつわる重要人物として挙がっているのが工楽松右衛門。一般人にとっては「誰?」ってとこだが、実は私もつい最近まではその状態。彼について知ったのは昨年の「英雄たちの選択」に登場してから。幕末に松右衛門帆と呼ばれる高性能な帆布を開発し、兵庫津を拠点に日本の海運の発展に多大な貢献をした人物で、この番組でも蝦夷地貿易で活躍した高田屋嘉兵衛と共に扱われていたが、この博物館でも彼と並んで登場している。

tv.ksagi.work

右が高田屋嘉兵衛で左が工楽松右衛門

 明治になって文明開化の世となると、兵庫津は神戸港として海外に開かれた窓口となる。その時に兵庫の初代県知事を務めたのがミスター千円札こと伊藤博文である。

江戸時代前期の兵庫津の様子

 

 

 これでひょうごはじまり館の展示は終了。なおここの入館券が隣の復元初代兵庫県庁の入場券も兼ねているので、そちらも訪問することにする。

初代県庁舎

和風で庭園付き

知事の執務室

 いかにも新しい建物でピカピカなので、歴史建造物という感はない。正面が県庁舎で、これは知事の執務室と公舎を兼ねているような建物。意外と小さいというのが正直な印象。なお当時はまた県の制度もしっかりと定まっていなかったのか、知事というよりも奉行という雰囲気で、どうやら裁判なんかも担当していた模様(後に裁判所は行政から分離したと思う)。そのためか裏手には仮牢と番所がある。私が見学した時には、どこかの子供が元気に収監されていた(笑)。

番所と仮牢

 番小屋や取次役所なんかもあるが、前者は休憩所に後者はカフェになっていてのぞく気もせず。旧同心屋敷はイベント会場とかになっている模様。単に歴史建造物の復元でなく、多目的に使用して収益を上げようという神戸市らしいスケベ心満載の施設であるが、どことなくスベッている感が・・・。

カフェとなっている取次役所

 なお偉人と記念写真が撮れるというシステムがあったが、私のアイフォンが古すぎるせいか起動せず。もっとも私は長州の天誅テロリスト達は嫌いなので、伊藤博文と記念写真を撮る気なんて全くないが。

 

 

 ちなみにここの施設の存在は私はつい最近まで全く知らず、知ったのは春に小磯記念美術館を訪問した時に、神戸ミュージアムスタンプラリーなるイベントがなされていたのを見かけたことで。これは神戸市内のミュージアムを5グループに分けて、単色のスタンプを重ねて押していくとカラーイラストが完成するというただそれだけのもの。ただこのグループ、市立博物館やBB美術館、小磯記念美術館、兵庫県立美術館などは普通に行くのですぐに集まったが、最後のグループが「海洋博物館、北野美術館、横尾忠則現代美術館、兵庫津ミュージアム」となっており、私にはとんと縁のない施設ばっかりだった次第。この中で横尾忠則は趣味でないことから、じゃあ兵庫津ミュージアムなるところを訪問するかとなった次第。つまりはこのイベントがなかったら恐らく私はここを訪問することなく終わったと思われるので、一応このイベントは意味があったということになる。市の担当者さん、空振りではなかったですよ。

スタンプラリーカード

 ミュージアムの見学を終えると、次の目的地に向かうために車を取りに戻るが、もう既にこの時点でお昼ごろ。もうそのままイオンで昼食を摂ることにする。特に当てもないままフードコートをウロウロ。「かつ丼とんテキ豚屋とん一」なる店が目についたので、ここで「かつ丼の並(869円)」を注文する。

フードコートのとんかつ屋

 場所柄と価格を考えるとこんなものか。ただ気になったのはいささか味が濃い。今の私は体調がまだまだ(ウロウロしている間に少々胸がムカムカしてきた)ということもあり、食欲が壊滅状態。結局は完食はできずに少し残すことになる。

味が濃い目だったこともあり、体調不良で完食できず

 とりあえず昼食を終えたところで次の目的地へと向かう。次の目的地は六甲アイランドにある美術館。

 

 

「やすらぎの近代絵画-ユニマットコレクション ミレーからワイエスまで-」神戸ファッション美術館で'26.1.18まで

 ユニマットが所蔵する近代絵画を展示。ちなみにユニマットは以前は青山で美術館を運営してそれらのコレクションを常時展示していたのだが、美術館運営を担当していた役員の急死で運営が困難になったとして閉鎖されている。目下は時々このような形でコレクションの公開が適宜行われている状況。なおユニマットコレクションの白眉はシャガール作品だったのだが、その後のユニマットコレクション展でそれらを目にしたことがないことから、もっとも価値が高くて換金性も高かったそのコレクションは売却されたのではないかと私は推測している。

 さて本展の展示作だが、ミレーらバルビゾン派の絵画に始まり、デュフィやワイエスなどの20世紀に至るまでの西洋絵画を網羅している。

 第一部はコロー、ミレー、トロワイヨンなどいわゆるバルビゾン派の風景画。ただ有名な彼らの作品よりも、知名度的には劣る画家たちによる名品が印象に残る。ジラールの写実をベースにしながらも印象派的な色彩を取り入れた作品などが美しい。

アサンバール「洗濯場」

デュプレ「沼地の牛」

ジラール「散歩」

クールベ「雪の断崖」

ユトリロ「パニューの教会」

 第二部はヨーロッパ絵画の潮流としては重要な役割を果たしている裸体画。西洋絵画において裸体画は芸術の一分野として重要性が高い。本展でもペンネルやフィリペらによる美麗な裸体画が多数展示されているが、その掲載は控えておくので是非ともご自身で見に行かれたい。と言うのも、芸術を解さないAI判定のせいで、以前にモディリアーニの裸体画を掲載した記事がエロ規制に引っ掛かってGoogle AdSenseを止められるという目にあっているから。この時は判定に不服を申請して、人間による判定でエロ規制は免れたが、何だかんだで数日分の収益をふいにするという被害に遭っているので・・・。

シャバ「水浴する女達」

コロー「愛の秘密」

 

 

 第三部は人物画。端正な作品が多いが、ここにルノワールが含まれているのが白眉。またドガやデュフィといったやや変化球も。

ミレー「フェリックス=ピアネメ・ファルダンの肖像」

ローコック「屏風の前の女」

フォイエルバッハ「アレゴリー 若い時と年老いた時」

ドガ「梳る女」

ルノワール「母子像(アリーヌと息子ピエール)」

デュフィ「ルーディネスコ夫人の肖像」

 最後の第四部はワイエスの作品が展示されている。残念ながらこのコーナーは全作撮影禁止。いかにもワイエスらしいどこか冷めた空気の漂う独特の存在感のある作品群である。

 以上、展示作の特徴としてあまり前衛的な作品はなく(一番の前衛がせいぜいデュフィか)、美麗で端正な作品が多かった印象。いわゆる印象派などよりもアカデミズム寄りの作品が多かったようで、これは明らかにコレクターの趣味に根差しているものと感じられる。

次回展はこれの模様

 なお会場の問題として、額縁にガラスの入っている作品が反射で非常に見にくかったということを挙げておく必要があろう。特にミレーやコローの作品などは暗い色調が多いので、ガラスの反射のせいで絵がよく分からないといったのはかなりの問題。ガラスを外せないなら照明に工夫が欲しい。

 実のところ今回の遠征は本展が主目的。ただわざわざ車で出て来た以上、ついでに車でないと行きにくい美術館にもう一か所立ち寄ることにする。目的の美術館は住宅街の中の路地地獄の先。

芦屋市立美術博物館

 

 

「徹底解剖!浮世絵で見る江戸のライフスタイル―国貞・英泉・芳年の描いた『粋な』女たち」芦屋市立美術博物館で'26.2.8まで

 片岡コレクションによる江戸風俗を描いた浮世絵についての展覧会。作品的には江戸後期の浮世絵の美人画が中心。渓斎英泉などから始まって、歌川豊国、歌川国貞らの作品などが第一部になる。

 第二部になると幕末の歌川国芳の作品なども含まれているが、やはり美人画という性質上、やや定型的で個性が薄くなる感がある。やはり国芳は武者絵や芝居絵などが本領であると感じさせられる次第。また彼の弟子にあたる月岡芳年の作品も登場。彼の作品は「血みどろ絵」と言われる豪快で場合によってはグロテスクな作品が特徴であるが、その彼が美人画を手掛けるとどことなく退廃的なムードが濃厚に漂うのが興味深い。

 これ以外は江戸物よりは小版の上方の浮世絵が登場。長谷川貞信は私には全く初見の絵師だが、その描写力にはなかなかのものを感じる。上方絵師はどうしても知名度で江戸に劣るが、内容的には決して劣るものではないということを感じさせる。


 以上、浮世絵に関する展覧会。まあやっぱり私は描かれている風俗を細かく検証するような研究者ではないし、残念ながら作品として美人画はやはりあまり面白くないと感じずにはいられないのであった。

 

 

 これで今回の美術館の予定は終了。それにしても思ったよりも体に疲労がある。やはりまだまだ完治していないのか。体力的には本来の6割以下という印象。このまま直帰するのもしんどいので、美術館の敷地内にある喫茶店「カフェ・ド・ルポ」に立ち寄ることにする。

美術館の敷地内にある喫茶店

 展覧会とのタイアップ企画という市松模様のデザートがあるのでこれを注文。ドリンク付きで1200円。まず最初にアイスコーヒーが出てくる。私の好みから言うとミルクとシロップをもう1つずつ追加したいところだが、面倒くさいのでやめておく。

アイスコーヒー

 しばらく後にデザート登場。なかなかに見た目が楽しい。ボリュームはないがお洒落で変化があって良いと言うところか。味もまあまあである。

見た目の綺麗なデザート

 一息ついたところで車で帰宅となったのである。さて明日から仕事である。頑張る必要があるがまだまだどうも体に不安が残る。