朝からなぜか食が進む
翌朝は7時前ぐらいに周辺がドタバタやり始めたので目が覚める。まだエンジンがかからないのでしばしゴロゴロした後、寝台から這い出すとまずは朝食に出向く。朝食は和洋複数メニューから選べるようになっていたが、とりあえず「焼魚定食」を頂くことにする。

腹を満たすとそのまま朝風呂に出向く。体も温まってようやく活動可能となったところで再び寝台におこもりする・・・。
今日はとにかく予定がない。確定しているのは15時からのPACの公演だけで、後はそれまでの間に大阪市立美術館の「妙心寺展」を訪問するだけ。時間を大幅に持て余すことは確定しているので、なるべくゆったりモードである。
チェックアウト時刻の10時前までギリギリ粘ってからホテルを後にする。ここに関してはまあ使えるなという印象。立地的に便利な場所にあるが、そもそも究極に面倒くさくなったらレストランもあるのでホテルに完全おこもりも可能である。
とりあえず地下鉄で天王寺に向かう。天王寺から美術館に向かう途中でモスバーガーで一息つく。私は基本的にハンバーガーチェーンは使わないが(特にマクドなど問題外)モスバーガーは美味いのでたまに利用する。もっともその分、価格はそれなりに高いが。

腹ごなしが終わったところで美術館に向かう。そう遠くはないがクソ重いキャリー(本業用と副業用のPC2台搭載)を引きずっているのがしんどい。
「妙心寺 禅の継承」大阪市立美術館で4/5まで

臨済宗妙心寺派の大本山・妙心寺は、関山慧玄が1337年に花園法皇の離宮御所を禅寺と改めたものである。一時足利義満によって寺領を没収されるという苦難の時期があったが、やがて中興して戦国大名たちの寄進などによって勢力を拡大した。そのために桃山絵画が多く所蔵されていることで知られているという。本展ではそのような妙心寺の至宝を展示している。
展示品で私的には一番の見どころは、まず展覧会冒頭に登場する海北友松の花卉図屏風、狩野山楽の龍虎図屏風などの大型作品。この屏風は通常の屏風よりもかなり縦のサイズが大きいのであるが、それは開いた状態で壁にかけて飾られるようになっていたからだとのこと。




また白隠慧鶴の作品なども展示されているが、これは如何にも自由奔放というか、明らかに今日の漫画のような風情の作品が多い。庶民に仏教の教えを説くために使用されたとのことで、特に「地獄極楽変相図」などは、今でいうところのあさりよしとおの「まんがサイエンス」などの学習漫画のような趣がある。
代々の名僧の座像や書の類は残念ながら私には興味なし。また螺鈿細工などの見事な工芸品の類も展示されていたが、これは感心するだけである。茶器系はこれというものはなし。
展示的に圧倒されたのは最終展示室にあった天球院の襖絵か。狩野派によるこの大作は一種のパノラマである。狩野山楽・山雪による竹林猛虎図襖などは、実際にそれに囲まれると自分が竹林の中に立っているような気分にさせられる。
また千手観音像は純粋に彫刻としてなかなかに面白かった。存在感が抜群である。

私自身は信仰心は皆無(どころか宗教には敵対する者と考えている)であるので、いわゆる信仰的ありがたみとは無縁なのであるが、純粋に美術的に興味を持てる展示品が種々。これはこれで面白かった。
展覧会の見学を終えると既に異常に疲れていることから、館内の喫茶で一服していくことにする。以前に来た時は待ち客が多すぎて入れなかったんだが、私の来訪時はたまたま空いていてすんなりと入店できる。季節のケーキにアメリカンコーヒーを合わせる。

ケーキは普通に美味いしコーヒーも悪くない。なかなかにくつろげる空間でもある。しばしマッタリと過ごしてから店を出るが、その時には既に大勢の待ち客がいる状態・・・。

もう大阪での予定は終了したので一気に西宮北口まで移動してしまう。なんだかんだで時間をつぶして西宮に到着したのは13時半頃。開演が15時で開場が14時15分なので、その間に昼食を済ませることにしよう。
と言ってもどこに行くかが大問題。西宮ガーデンズは今まで散々、CPや混雑などで入るべき店がないという状況を繰り返している。 そこで駅近くのアクタ西宮に立ち寄って、1階のレストラン街をウロウロ。昼食というものの、今日は朝食を2回摂って、喫茶にも立ち寄っているので流石にそんなに腹は減っていない。食べるとしたら麺類。それもラーメンなんて重いものでなくそばかうどん辺り。レストラン街にそば屋があったのでそこに入ろうかとも思ったが、待ち客が複数いた上に店が「そじ坊」だったことから辞めておく(そじ坊のレベルは大体知っている)。他の店を物色すると「饂飩の四國」があったのでそこに入店。「合鴨つけ汁うどん(1100円+税)」を注文する。

麺は悪くはないが、腰があると言うよりも固い麺。固いうえにかなり太いのですすれるタイプの麺ではない。イメージとしては名古屋の味噌煮込みうどんをもう少し柔らかくした感じか。嫌いではないが、単なる固い麺でなく腰があってしなやかな麺を食べたい。鴨のつけ汁は悪くない。柚子の調味料が付属しており、好みによってこれを加えて食べるようにとのこと。私は柚子はあまり好きでないので最小限しか振らないが、味変になってこれはこれで良い。最後はここに鰹出汁を足して飲むらしい。これもまずまずだが、腹がタプタプしそうなので私は半分ほどにしておく。

昼食を終えるとホールへ。今回は原田慶太楼指揮で映画音楽系のプログラム。ソリストはヴァイオリンのレイ・チェンであるからそれ目当ての女性ファンもいるだろう。結構大勢の観客が押しかけている。

PACオケ第167回定期演奏会 原田慶太楼×レイ・チェン ものがたりの音楽

指揮:原田慶太楼
ヴァイオリン:レイ・チェン
伊福部昭:SF交響ファンタジー第1番 ※当初発表より変更
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
武満徹:弦楽オーケストラのための3つの映画音楽
プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲より(抜粋)
映画音楽系のプログラムを集めたコンサート。一曲目は言わずと知れた日本特撮映画音楽の巨匠、伊福部昭の映画音楽集である。最初は超有名なゴジラから始まり、宇宙大戦争などの音楽が登場する。日本の国民学派としてアイヌの音楽を元にした作品なども手掛けていた伊福部としては、SF映画音楽作曲家としてだけ名が上がっていくことには忸怩たるものもあったらしいが、その一方で自身の映画音楽の人気については認めざるを得ず、本来は1日こっきりのコンサートのための作品のつもりだった本作を作品リストに加えることになったという。
さて原田の演奏であるが、もう初っ端からノリノリであり、ゴジラをリアルタイムで経験していない者が中心であるはずのPACオケメンバーもかなりノリノリ。とにかくノリでガンガン行く勢いの演奏となった。しかし2025年版PACオケはこういう時が一番その真価を発揮するというところもあり、なかなか高密度な演奏となり、場内も沸いた。
二曲目はハリウッド映画音楽の基礎を作った大立者として知られるコルンゴルドのクラシック作品。コルンゴルド自身はクラシック作曲家として名を成したい思いがあったらしいが、どうも保守的なヨーロッパでは「所詮はアメリカの映画音楽作曲家」と軽く見られたのと、不可解な現代音楽が全盛の時代にはロマン派の流れを汲む彼の作品は、いかにも古臭くて時代遅れと捉えられて評価を得られなかったという。近年になって行き過ぎた不可解音楽よりももっと聞きやすい音楽が好まれつつある流れもあってか、急速に再評価が進みつつある作曲家である。
レイ・チェンの演奏はとにかく雄弁である。なかなかに甘さのある曲であるのだが、それを彼が弾いたらしっとりと極めて情緒深い音楽になる。流石に女性聴衆を一撃でノックアウトしそうなイケメン演奏である。これに対してオケの方はどちらかと言えば元気が一番であるので、甘々になりすぎずに適度にバランスが取れたというところであろうか。流石にレイ・チェンは説得力のある演奏をしてくれた。
後半は武満徹の映画音楽となる。『ホゼー・トレス』『黒い雨』『他人の顔』の3つの映画の音楽とのこと。PACオケは弦楽陣のみが登場で、ムジカエテルナよろしく全員(チェロ以外)立ち上がっての演奏を披露する。
武満と言えば前衛的で不可解な音楽が多く、典型的な私の苦手なタイプの作曲家なんだが、ここに登場する作品は映画用ということもあってか、もっと普通に旋律的な曲ばかりである。特に3曲目のワルツは「これが武満?」と驚くぐらいに普通の曲。甘くてシニカルなワルツの旋律がなかなかに魅せてくれる。私としては「なんだ、こんな普通の曲も書けるんじゃないか」というところ。PACオケの演奏も集中力の高いかなり密度の高い演奏であった。
最後は映画音楽ではないがバレエ音楽。原田によるとバレエは音楽でストーリーを全て説明しないといけないから大変だとか。確かに音楽を聴くとロメジュリの劇が分かるぐらい説明的な雰囲気の強い音楽である。随所にプロコらしい泥臭さもあって、いかにもという雰囲気の作品。一貫して原田はノリノリでオケを煽っている印象。若きPACオケのパワーを引き出していたように感じる。
若き指揮者に若きオケの組み合わせで、正直なところ軽さ的なものを感じさせる部分もあったが、今回はプログラム的に深さよりもノリの良さとパワーを重視というところがあったので(特にゴジラ)、結果としてはこれで正解なんだろう。なかなかに楽しめた。

この遠征の前日の記事