METライブビューイングを鑑賞する
翌朝は7時前に自動的に目が覚める(悲しき勤め人の性である)。昨晩は爆睡していたので目覚めは良い。
目を覚ますためにシャワーで体を温めると、レストランに朝食に出向く。バイキング朝食はなかなかに充実しており、そもそもこれが私がここを定宿にしていた理由の大きなものの一つ。和洋両用でしっかりと腹に入れておく。どうやら今朝は体調は悪くはなさそうだ。


さて今日の予定であるが、とりあえず昨晩のうちに大阪ステーションシティシネマの予約は入れている。上映開始が10時5分なのでそれに間に合うように9時過ぎにチェックアウトする。

劇場には30分前に到着する。上映開始は10時以降なのか館内は閑散としている。チケットを発行するとしばし待つことに。時間になるとゾロゾロと入場するが、私の予想以上に観客が多いのに驚く。ざっと見たところ50人ぐらいは入ってそう。ここはキノシネマ神戸国際なんかよりは観客は常に多いが、これだけ入っているのは記憶にない。
METライブビューイング ジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」

指揮:ダニエレ・ルスティオーニ
演出:ニコラ・ジョエル
出演:ソニア・ヨンチェヴァ、ピョートル・ベチャワ、イーゴル・ゴロヴァテンコ
フランス革命後にロペスピエールによる粛清の嵐が吹き荒れる中、反革命的であるという汚名で死刑に処されることになった詩人のアンドレア・シェニエと、彼に心を寄せる没落した貴族令嬢・マッダレーナ、さらに彼女に思いを寄せていた元従僕で今は革命政府幹部となったジェラールのドラマである。
一途に突っ走るシェニエとマッダレーナに対し、紆余曲折や葛藤などが多い一番の難役がジェラールなので、本作はジェラールに演技力や表現力を求められる。その点でゴロヴァテンコは十二分な存在感を示している。
シェニアはひたすら甘さが求められるが、その点ではベチャワは流石である。実力者ヨンチェヴァとの絡みで圧倒的な美しさを見せてくれる。単に理不尽な処刑をされるというだけの話でなく、愛し合う二人が堂々と運命に立ち向かっていくという、かなりアクティブで強い話になっているのが、この二人の表現力、音楽、演出の全てが一体となってかなり正面に出ていたのが特徴的。あまりに堂々としていて悲劇というよりも最後が大団円に見えたのにはいささか驚いた次第。
またルスティオーニの指揮にも感心させられた。音楽に込められた意図をかなり深く読み込んで、劇を盛り上げるための適切な演奏をしていることが感じられ、この指揮者の力量に感心させられた。今後、彼についてはオペラ以外の場でも演奏を聞いてみたいと思わせられた。
上映を終えるとさっさと移動することにする。帰宅前に山王美術館で開催中の「ルノワール展」を見学しておきたい。美術館移動前に昼食をと思って一階下のレストランフロアを覗いてみたが、例によってどの店も大行列でそれを見ただけで食欲が失せる。一軒だけ行列がなくて閑散としていたのは、価格の高すぎるうなぎの店だけ(一番安いメニューでも3000円台から)。エキマルシェの方は昨日にスルーしているし、そもそも朝食をガッツリ食ったせいか腹もあまり減ってないしで、諦めて美術館に移動してしまう。

美術館は京橋でJRを降りると川の向こう側に見える。ここはホテルモントレ(ホテルクライトンが高級ホテルである私には、最早次元が違いすぎていてホテルとしての認識が出来ない)のコレクションを展示する施設。なかなかの高レベルなコレクションを誇っている。

「生誕185年 ルノワール展」山王美術館で7/31まで

山王美術館が所蔵するルノワール作品を一堂に展示し、ルノワールの生涯に渡る画業について概観する。
ルノワールは当初はモネら印象派の画家たちと行動を共にして、保守的なアカデミズム派が中心の画壇と対決しており、その頃は「未完成の未熟な絵画」などと酷評を受けていた。
しかしやがてルノワールの絵画は画壇でも認められていく。しかしそれと共にルノワール自身は印象派の技法に限界を感じていた。屋外での光を描くという目的に特化した印象派の技法は風景画には威力を発揮するが、ルノワールのように人物画を志向する画家にとっては、人物が背景と溶け合ってしまって存在感がなくなってしまうという欠点を持っていた。本展ではその頃の作品も展示されているが、確かに輪郭線を持たない印象派の技法で描いた人物画は、背景の中に溶け込んでしまっていて浮き上がってこない。
ルノワールはここから葛藤を重ねる。古代の技法なども取り入れて輪郭線を取り入れた、それまでと全く異なる技法を取り入れたりするのであるが、ようやくルノワールの柔らかい絵が受け入れられ始めた頃のこの転換は、あまり評判の良くないものであったという。この時期の作品も本展では展示されているが、確かにルノワールらしくない少々硬い絵という印象を受ける。
その後もルノワールは検討を重ね。ようやく自らの納得のできる技法にたどり着いた。ここからの絵がいわゆる「ルノワールの裸婦像」と言われた時に思い浮かぶような、あの柔らかくて質感があり、複雑な色彩が自然に溶け合った絵画となる。
幸せの画家とも言われ、画面には全く不幸の影を映さなかったルノワールであるが、実際には晩年には関節リウマチを患って、満足に筆も握れない中での制作となる。しかし回りにも支えられつつ、その不自由な手に筆をくくりつけて、あの美しくて幸福な絵を最後まで描き続けた。その創作意欲たるや驚くところである。
本展ではルノワールのキャリアの全域にわたっての作品が登場する。決して大作は多くはないのであるが、それでもルノワールの特徴を捉えることが出来る作品が並んでおり、見ていてなかなかに楽しめた。
これで今回の全予定は終了、このまま帰宅と相成り結局は昼食抜きとなってしまったのである。どうも私の遠征はこれが多い。もう少し食事について計画的に考える必要がありそう。まあ金に糸目をつけなかったら、このご時世でもそれなりの飲食店は存在するんだが、そういうわけにもいかないので自然に選択肢がなくなるんだよな・・・。
本遠征の前日の記事