徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

PAC定期でフィンランドの俊英インキネンによるシベリウス

PACオケの定期演奏会に出向く・・・んだが、ちょっと与太話

 今日はPACオケのコンサートで西宮まで出向くことにした。さて交通手段だが、他にも立ち寄る予定とかがあれば車の使用なども考えるところだが、この時期は例年各美術館が展示の切り替え期になって企画が低迷する時期でもある(市展などの公募展が増える)。そういうことから今回は立ち寄り先なし。必然的に時間に余裕が出来ることから、交通費を節約して阪神を使用することにした。三宮方面向けの企画切符が諸々出ていることから、それらを購入してQR乗車である。総理の無能さに起因する高市不況が押し寄せる中、経済的に困窮に追い込まれている私としては、経費はできる限り削減したいところではある。もっともこういう連鎖で日本全体が不景気になっていくのだが。

 いつもより時間をかけてのんびりと三ノ宮到着。昔はこの時間が耐えがたかったのだが、私も年を取っていくらか気が長くなったのだろうか? まあ実はタブレットで時間を潰せるようになったのが大きい。車内では専ら「ダークサイドミステリー」の地獄の回を視聴して過ごしたのだが、私は「鬼灯の冷徹」と「聖おにいさん」のおかげでやけに地獄や天国及び仏教やキリスト教について詳しくなってしまっている。以前に某番組で東大生に「勉強になる漫画」なるアンケートを採った結果、一位には「名探偵コナン」などというおよそ勉強になりそうにない作品が挙がっていたが、私なら大本命の「はたらく細胞」の次にはこの二つの作品を挙げるところ。

私はこの作品で地獄について学んだ→購入はAmazonで

 なお私が子供の頃は、一般漫画(それこそ「ドラえもん」など)でも、今とは違って勉強になるような内容が普通に入っていた。この頃の漫画家はキチンと取材してそれを元に学習した上で漫画にしていたようである。だからこそ漫画家は一般人よりも賢いと認識されており、黒鉄ヒロシやはらたいらなんかがクイズダービーの本命枠に座っていたわけである。しかし昨今はそのような取材をしない、もしくはやっても理解できるだけの基礎学力がない漫画家が増えたのと、何よりも読者が少しでも「お勉強」の匂いがすると敬遠することもあって、漫画の馬鹿化が急激に進行した。また小学館の雑誌(「小学○年生」)とかも昔は半分ぐらいは勉強になるような文字の記事だったし、学習漫画なんかも普通に掲載されていた。この辺りからお勉強要素が完全に排除されたことが、昨今の若年層の低学力化にもろに直結しているというのが私の見解。昨今の自称推理漫画の中には、科学的に見てめちゃくちゃなトリックなどを作者がしたり顔で描いていて絶句することも多い。例えば犯人がガソリンを室内にばらまいたところでライターに火を付けて「近づいたら火を付けるぞ」と喚くとか。ガソリンは揮発性と引火性が高いので、本来ならライターに着火した時点で全員自爆である。これは読者に誤った知識を植え付けるものであり、ここまで来たらもはや有害だと断じるよりほかない(実際にこの状況で犯人が自爆して、行員が巻きこまれたと思われる金融機関強盗事件もあった)。

 なおSF漫画なんかに登場するとんでも理論(波動砲やワープとか)や格闘漫画なんかに出てくる非現実的必殺技(北斗神拳とか)は、読者も「所詮は漫画」と最初からフィルターをかけて読むのでそのまま信じる者は少ないだろうが、推理漫画は推理小説自身が本来は理論的に正しいことが前提となっているので、そこにあからさまな嘘を書かれたら騙される読者が多いと思うので、一番害が大きいと感じている。この辺りは本来は出版社が事前にチェックしておくべきなんだが、昨今は編集スタッフもレベル低下していてそれが出来ていない模様である。なお最近急浮上の危険性のあるジャンルが転生ファンタジー。この中では主人公が転生前の知識で無双するというパターンのものがあるが、そこに登場する知識がとんでもないインチキの場合が少なくないのである・・・。

 

 

開演前に昼食とお茶をする

 完全にジジイの「昔は良かった」の類いの愚痴で話が逸れてしまったが、三ノ宮に到着したのは昼頃。何はともあれ昼食を摂る必要はある。もっとも朝食がやや遅めだったのであまりガッツリと食べる気もない。阪神三宮近くののれん街の入口付近にある「酒房 灘」に立ち寄る。

三ノ宮地下の「酒房 灘」

 この店は酒房とあるように本来はおでんを肴に熱燗でもグイグイやる店である。しかし実はランチにも定評があり、私も学生時代からたまに利用している。ランチメニューの「アジフライ定食(1080円)」を注文する。

アジフライの定食

 ポッテリとした厚手のアジフライがなかなかに美味い。非常に無難な定食であり、三ノ宮界隈の場所を考えるとCPとしては悪くない。

 

 

 

 昼食を終えると阪急で西宮に移動することにする。しかしまだ開場までにかなり時間があることもあり、しばし喫茶で時間をつぶすことにする。立ち寄ったのはアクタの「珈琲館」「小豆のホットケーキ」にアイスコーヒーをつける。

西宮北口駅前アクタ内の「珈琲館」

小倉のホットケーキとアイスコーヒー

 注文を受けて焼いているらしいホットケーキが美味い。まあホッとするところである。店内が混雑していないこともあり、これを頂きながらしばしマッタリと時をつぶす(一応店内滞在90分までの時間制限はある)。一息ついた辺りで開場時刻が近づいてきたのでホールに向かうことにする。

 ホールに到着したのは開場直後。入口前には入場を待つ客の長い行列が・・・ない。ロビーも閑散としていて何となくいつもよりも客が少ない印象を受ける。インキネン指揮のシベリウスプログラムは、私的にはPACの今年のプログラムの目玉の一つと考えていたのだが、一般客には所詮は地味指揮者によるマイナー曲プログラムという扱いなんだろうか・・・などと心配もしたが、開演時刻が近づくと観客は増え、最終的には9割ぐらいは入っているようで安心した。どうやらシベリウスを好む人は私のようなセカセカした人間でなく、幽玄でユッタリとした時間の中で生きているようである。

最初は場内はガラガラだった

 

 

PACオケ第168回定期演奏会 インキネン プロコフィエフ&シベリウス

インキネンによるシベリウス中心のプログラム

指揮:ピエタリ・インキネン
チェロ:北村 陽

シベリウス:交響詩「ポヒョラの娘」
プロコフィエフ:交響的協奏曲
シベリウス:交響曲 第2番

 

 一曲目の冒頭から「おやっ」というところがある。この曲はもっと静かに始まるのが正解だと私は思うのだが、どうもPACオケは音量を絞りきれないところがある。インキネンの指揮はかなりメリハリや変化の激しいもののように感じられるのだが、どうもインキネンが意図するレベルのピアニッシモに至っていないように感じられる。ピアニッシモとフォルテッシモの間で変化を付けようとしているのが、結果としてメゾピアノとフォルテッシッシモの間で変化を付けている印象を受ける。おかげで全体的にやややかましい印象を受ける。PACオケの特に管楽陣がいささか無造作に吹いている感があるのが気になるところ。シベリウスに関しては、もう少し抑えめのニュアンスを込めた音色がふさわしいのだが、残念ながら若きPACオケではそこまでの小技は無理か。

 二曲目は私の全く知らない曲。プロコがチェロ協奏曲の第1番を魔改造して、実質的に別の曲にしてしまったものらしい。プロコらしく軽妙でありながらも派手なところのある曲である。そしてソロパートはかなりテクニカル。

 北村のチェロは硬軟自在という印象。ガリガリと弾くところはかなり力強くガツンガツンとくるが、歌わせるところでは徹底して甘く歌わせることが出来る。ともすれば単調で雑な曲になりかねないところがあるプロコに、適切にメリハリを付けている。インキネンもそれに合わせてオケをコントロールしている。

 場内大盛り上がりとなっていたが、それに応えての北村のアンコールがまた凄い。チェロの名手カザルスによるカタルーニャ地方の民謡「鳥の歌」であるが、これが実に情緒深い演奏で胸を打つ。とにかく音色が深くて美しい。

 休憩後の後半はシベリウスの恐らく一番メジャーな交響曲。これは冒頭から弦楽陣がなかなかに味わい深いアンサンブルを聴かせて印象的。ざわめくような音楽表現も決まっている。

 ただこの曲になると、インキネンがさらに激しい独自の変化を付けてくる(特に第二楽章が顕著だった)。テンポ及び強弱の変化をかなり付けているので、PACオケがそれに完全に追随できているとは言いがたく、変化の激しいところになると若干演奏がばらける感がある。おかげで全体的に演奏がガサガサして聞こえる部分がある。インキネンとしては明確な表現意図があるのであるが、PACオケがそれに完全に対応しきれていないという印象である。

 結局は最後までこの微妙な違和感が解消することはなかったというのが正直な印象。悪い演奏とまではいわないが、もう一味欲しかったというのが本音。インキネンの表現意図に100%応えるには、オケの経験や力量がややつらかったかという気もしないではない。フィンランド系の若手指揮者と言えば、マケラといいこういうオケを選ぶタイプがどうも多い気がする(インキネン自身は既に中堅の年齢に差し掛かっているが)。

 場内の歓声にこたえてインキネンのアンコールはシベリウスのカレリア組曲の第3曲。緊張が取れてリラックスムードのインキネンの元でのPAC弦楽陣が実に滑らかな良い音を出している。先ほどの演奏でこういうしなやかさが欲しかった気がする。どうもインキネンも肩に力が入り過ぎていたのかもしれない。

ようやく緊張の解けたインキネン

 これで今日の予定は終了、私鉄でのんびりと帰宅の途に就いたのである。