徒然草枕

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「豊臣兄弟!」第11話「本圀寺の変」

本能寺でなくて本圀寺です

 なんなんだろうな、このタイトル。本能寺の変と早合点した奴が「えっ!もう信長死ぬの!?」と騒ぐのを狙ったんだろうか・・・なんて邪推したくなるな。実際は信長ではなく、本圀寺を宿舎にしていた将軍義昭が三好三人衆に襲撃されるという事件。

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藤吉郎が秀吉と対面

 まずは秀吉の元を信長に降った豊臣秀吉が訪れる・・・じゃなかった。曲者松永久秀です。竹中直人の存在感がありすぎて、どうも秀吉のイメージがまだ払拭されていない。まあ使う方はそれを承知であえて使ってる気もするな。とにかく松永久秀はあの戦国時代でも一番強烈なダークヒーローなんで、このぐらい存在感のある役者を起用しないと無理だろうな。それにしても立て続けに二回襲撃されるというあからさまな演出で、松永久秀がどれだけ恨みを買って胡散臭がられていたかを表わしている。

つい最近発見された、ダークヒーローとは縁遠い雰囲気の久秀像

 しかし信長は不思議なほどに彼と波長が合ったらしいことは歴史にも残っている。実力主義の信長としては彼の合理主義的なところが気に入ったのではとのことが言われている。また本作では久秀を通して堺とつながりを持って支配することを目的としていたとしている。この後、久秀は信長に対して茶器を献上して、義昭ではなくて信長に大和の統治権を認めるように依頼している。この辺り、久秀が義昭は信長の傀儡と見ていることを示している。そしてこの大和の統治権に対する執着は、後の久秀謀反の伏線にもなっている。

 

 

バカ殿ではない義昭

 とにかく久秀を迎え入れることにした信長だが、義昭の兄である義輝を殺害した主犯とされ(これは今日の研究では冤罪とされている)、大仏殿に火を放ったとも言われている(これも戦闘時の失火説が有力)極悪非道の久秀を迎えることには義昭の側近衆が猛反対。しかし当の義昭は「自分は3歳から寺に送られていたので、兄義輝との思い出などは全くなく、あるのは妬みだった」と宣って久秀のことは信長に任せるとのこと。何とも呑気な将軍だと思わせるが、本作の義昭は決してバカ殿ではない。それは後で出てくる。

 年末に義昭の元を訪れて、義昭にも茶器を献上する久秀。しかしその背に「どちらが値打ちものじゃ」と声をかける義昭。久秀が信長に対しても茶器を献上しており、恐らくそちらの方が高価であろうことが分かっていての問いである。これは暗に「お前は私に忠誠を誓うように見せかけているが、実際には信長についているんだろう」ということを指摘しているわけで、これには久秀も平静を装いつつも肝を冷やしただろうという描写が入っている。「無論、こちらにございます」と平静を装いながら答える久秀。まさに腹芸の世界である。小一郎と会った久秀は「公方さまのことを見誤っていたようだ」と思わず漏らすが、これは義昭はバカ殿ではないという意味。本作の義昭って、今までの作品の中で一番優秀な描き方をしている模様。信長を主人公にした大抵の作品で、信長に担がれただけのバカ殿扱いだし、「麒麟が来る」では善意の人ではあるが決して有能なわけではなく、鞆の浦でのんびりと釣りでもしているのが一番合っている人だった。今回は結構斬新な義昭像ではある。

 

 

戦国イケメンになった長政

 信長の元には長政が現れて、市のために小谷城に立ち寄ってくれないかと頼む。やはりお市のことを大事にしている優しいイケメンである。この時に信長から市への贈り物を受け取って帰った長政。お市が開くと鏡が。「兄から物をもらったことはほとんどなかった」と喜ぶ市を見ながら、かすかに複雑な表情を浮かべながら「すまない、私はそのようなことに気が付かなかった」と立ち去る長政だが、その懐には市のために買った鏡が。「あ、被った」と思って言い出さなかった模様。その姿を遠くから陰ながら見て「本当に優しいお方」と呟く市。最初は物足らないと考えていた長政だが、そのとことんまでのイケメンぶりに、かなりぐらついているのを示している。そして決定的なのは市が信長の鏡を大事にしているのを見て快く思わなかった家臣が、その鏡を勝手に火に放り込んだ時。市が大事にしているものだからと素手でそれを取り出して手をやけどする長政。流石にこれは市でなくてもグラッと来るだろう。最後には市が長政からもらった鏡を置くシーンを入れて、彼女が完全に長政に傾いたことを示しています。時代設定無視であり得ないようなエピソードですが、まああくまで現代劇として描いているこのドラマではありでしょう。

浅井長政

 ところで本作ではとことんイケメン描写の長政ですが、残っている肖像画は今日基準ではイケメンとは言い難く(某歴史番組では「戦国ぽっちゃり男子」などと言われていた)、戦国基準でも微妙なところだったのでは(一方の信長は戦国基準でもイケメンとされている)。ただ心はイケメンだったというのは大いにあり得、実際にお市は彼との間に一男三女を儲けているんだから、お市の心はつかんでいたと考えるべきか。

コーエーの手にかかるとこうなるらしい(信長の野望より)

 

 

本圀寺の変でなぜか奮闘する小一郎と名君義昭

 さて秀吉は久秀の紹介で堺に乗り込み、信長からの指示で矢銭2万貫の提供と鉄砲300丁の調達を命じられている。今井宗及などを紹介されて、いつもの調子の良さで堺衆と交渉する秀吉だが、堺の商人は一筋縄ではいかない。インチキ臭い関西弁でのらりくらりとはぐらかされているうちに、秀吉が調達しようとしていた鉄砲300丁は何と三好三人衆の手に。そして彼らはそれを使って本圀寺の義昭を急襲するという怒涛の展開。そして三好三人衆の傍らに見覚えのある顔がと思えば、美濃を追い出された斎藤龍興。信長からの美濃奪還を狙って何やら画策している模様。しかし本作の龍興ってとことん無能及びゲス描写されてるからな・・・。もっとも大抵の作品ではここでの龍興の存在なんて完全無視されるのがオチなんで、これはまだ扱いが良い方なのかもしれない。

 そして急襲された本圀寺で義昭を守るのは明智光秀(これは史実でもそうなっている)となぜかハニーちゃんを連れた小一郎一行(なんでやねん)。奥の蔵に義昭を隠そうとする小一郎に対し、みんなの前に姿を現して「今しばらく持ちこたえれば、必ず助けは来る」と兵の士気を鼓舞する義昭。名君じゃん・・・。あり得んわ。実際にこれやったら狙撃される危険もあるって。

 

 

名君義昭を救うために一計を案じる知将小一郎(歴史ガン無視)

 しかも蔵に籠った後ももはやこれまでと覚悟した義昭は、自分を置いて逃亡するように小一郎と光秀に言っている。いやいや、どこまで名君なんやねん。こんな人物死なせちゃいかんだろうってのは、小一郎でなくとも考えるところ。小一郎は天下の人民のためにぶざまでも生き延びて欲しいと説得する。とは言え絶体絶命の窮地。ここで本圀寺は三好が代々祀ってきた寺だと聞いた知将小一郎が一計を案じる。

 寺の外では斉藤ゲス興が三好三人衆に「寺に火を放て」と焚き付けている。流石に本圀寺に火を放つことには抵抗があった三人衆も決断を仕掛けた頃に、突然に僧衣を着た小一郎が現れて義昭に移動を願うので、寺の攻撃は止めるようにとの声をかける。小一郎の顔に見覚えのあるゲス興は「どこかで見たような」と首をひねるが思い出さないというギャグが炸裂。三人衆が本音では寺を破壊したくないことが分かっている小一郎は、あの手この手でギリギリの引き延ばし策を図り、そろそろ限界かというところで堺で浪人たちを金で雇った秀吉が駆けつけて三好三人衆は撤退、目出度し目出度しという展開。

 

 大筋の歴史事実は踏まえたうえで、その行間にあり得ないようなエピソードをてんこ盛りにしたのが今回。まあこの作品らしくはあるが、人物像とかには一貫性を持たせており、ドラマとしては上手いのでは。歴史マニアとしては「絶対あり得ない」とは感じながらも、「こんなアホな話許せん!」とはならんから(「江」の時などは逆にこれの連発だった)。ところで最後に名君義昭が光秀に「あの2人、わしのものにできぬか?」などと言っていたが、実際は光秀の方が信長に引き抜かれます(笑)。この名君が今後どういういきさつで信長と全面衝突し、どういう経緯で敗北するかの描き方も本作の一つの肝だな。

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