徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

国立博物館の「蔵王権現」をメインに奈良の美術館を駆けずり回る

いきなり体力が限界に・・・

 昨晩の寝付きが想定以上に悪すぎたせいで、目覚ましをかけた7時半に活動開始が出来ず、結局は8時過ぎまでベッドでウダウダしてしまう。どうも老化に伴う睡眠力の低下が著しい。今朝は国立博物館を中心に複数の美術館及び寺院などを早朝から回るつもりでいたんだが、起床時間からして当初予定から遅れまくり。その上に今日は小雨がぱらついている模様で機動力もそがれるのが必至、しかも体はズシンと重くて体力で補うことも不可。これは予定の大幅変更を余儀なくされそうだ。

 意を決して動き出したところで、まずは朝食。朝食は一階のライブラリーカフェの場所で。品数はさほど多くないが、一応和洋両方でいける仕様。とりあえずスクランブルエッグやソーセージなどでクロワッサンを頂いてから、ご飯と味噌汁も腹に入れておく。

朝食第一部洋食の部

第二部和食の部はご飯とみそ汁

 燃料補給をするとシャワーで体を温めて活動モードに。ここから昨晩途中で放り出していた昨日のブログの記事作成にかかるが、これが予定よりも時間を要して、結局はチェックアウト時刻の10時近くまでホテルに滞在してしまう。もう今日の予定は滅茶苦茶である。

 

 

 仕事を終えて荷物をまとめるとチェックアウト。コンフォートホテル奈良はまあ過不足のない使い勝手の良いホテルだった。広い机は作業がしやすくて良かった。難点はネットがやや遅く感じられたことか。利用が混雑したのか昨晩はWi-Fiが一時的につながらなくなったこともあったが、今朝は原稿のアップもスムーズだった。

 雨の中、キャリーを引っ張りながらの移動になる。このキャリーは近鉄奈良駅のコインロッカーに入れるつもり。当初予定では近鉄奈良駅まで歩きだったが、雨の中を小型な三つ折り傘でキャリーゴロゴロは嫌なので(間違いなくキャリーがずぶ濡れになる)、もうバスで移動することにしてしまう(距離的に250円はいかにも惜しいが)。キャリーを西口地下のコインロッカーに入れて身軽になると、目的地である国立博物館へは歩き。

 興福寺に差し掛かった辺りから大量の鹿。そう言えばこの鹿をネタにして外国人ヘイトを煽ってしのぎにしていた下劣な迷惑系YouTuberがいたな。もし出くわしでもしたら嫌だなと思っていたが、最近は別のしのぎに走っているらしく、もう鹿はどうでもよくなっている模様。

興福寺の辺りから鹿が増える

 興福寺を抜けていくと隣が目的とする国立博物館である。もう既にチケットはオンラインで入手済み。券売所の混雑を避けるためだったが、私の訪問時にはさしたる混雑はなかった。私が思っていたよりも世間的には本展は地味なのか。

ようやく国立博物館にたどり着く

 

 

「神仏の山 吉野・大峯ー蔵王権現に捧げた祈りと美ー」奈良国立博物館で6/7まで

 創作の世界では超能力を持つ人物として安倍晴明と並んで人気の役小角であるが、彼が修験道の聖地として吉野の山奥に開いたのが金峯山寺である。その金峯山寺や吉野にちなんだ仏像などを展示したのが本展。

 修験道は険しい山中で命がけの修行などを行うことで悟りに至るという、日本でも有数のマッチョな信仰である。それ故にゆかりの仏像もかなりマッチョなものが多い。金峯寺の信仰は、仏は人間とは離れたかなり遠い世界におり(仏教がそもそも外来の宗教であることが影響している模様)、その仏が人間界に影響を及ぼすべく姿を変えたのが蔵王権現などの神であるという、神仏習合、本地垂迹が基本となっている。そのせいで明治時代の愚策「神仏分離・廃仏毀釈」で一時は危機にも瀕したという。

 蔵王権現は弥勒菩薩がこの世界に降臨される遙か未来(56億7000万年先とか)までの間、人間界を守るために現れた仮の姿であるらしい。と言うわけでただのありがたい神様ではなく、世を乱す悪は成敗するという強さを持った神である。その強さを現すように、その表情には憤怒を浮かべ、右手足を上げた躍動的な姿をしている。ちなみにこの時に地面を踏みしめる左足は地上の災厄を封じ、振り上げた右足を人間を救うためのものであり、振り上げた右手は悪を滅ぼすのだとのこと。このポーズが蔵王権現の基本ポーズらしく、同じ姿をした仏像が何百も奉納されている模様。

これが蔵王権現の基本ポーズ

 こういういきさつを持つ仏像だけに、その造形は極めて力強くて躍動的であり、これは私の目にもかなり好ましく映るものである。

 後半は藤原道長が納めた埋経に関する展示など。弥勒菩薩が降臨される未来まで仏の教えを残すべく、道長は自ら写経した経文を筒に入れて金峯山寺に埋めた。これが埋経の最初だという。道長以降、多くの貴族が同じように金峯山寺に信仰を寄せたという。

 最終コーナーは吉野に潜伏して天下を窺った不屈の人・後醍醐天皇に関する展示など。さらには吉野の桜にまつわる展示など多彩。

 予想よりは遙かに面白い内容であった。個人的には金峯寺の秘仏・蔵王権現のVR映像展示が迫力満点で興味深かった。青い肌に赤い炎を背負っている仏像は、ビジュアル的にもインパクト大である。

ちなみに現代版蔵王権現はこうなる模様

 

 

 さてこの後の予定だが、時間が予定よりもかなり遅れているし、外は雨だし、昨日8000歩以上歩いているせいか思いのほか体が重い。この辺りを勘案して当初に予定していた東大寺訪問は中止とする。今年中にここにはもう一回来る予定なので、その時に回すとしよう。

 その代わりに今回はパスするつもりだった仏像館の見学をすることにする。私は仏像には全く興味がないと思っていたのだが、本展で予想外に仏像の造形に心惹かれたのは事実。また現在、金峯山寺の仁王門に安置されていた金剛力士像が仏像館に展示されているという。この際だから見ておくに越したことがないと判断した。

 

 仏像館内は撮影可と不可が入り交じっていて、その基準は不明。ここでは先ほどから撮影には持参したデジタル一眼レフを使用しているのだが、やはりこと撮影に関しては専用機材の優位性を痛感する。絵作り云々なんていう高尚な話でなく、ワンリングでズーム調整できる一眼レフは、スマホ撮影と比べて圧倒的に機動性が高くて速写性に優れている。やはり間に合わせと専用機材の差は大きい。

なんか妙に愛嬌のある獅子

伽藍神立像という神像だが、現代彫刻に通じるものを感じる

 金剛力士像は中央の展示室に展示されているが、5メートルに達する巨像である。しかも手掛けたのは運慶の弟子である康成。慶派らしく漲るような力を感じる。この巨像が上から怒りの表情で見下ろしてくるのである。これは心にやましきところある者なら、とてもではないが前に進むことは出来なかろう。

仁王門金剛力士像阿形

同じく吽形

悪を滅するこの迫力

 博物館の見学を終えた頃には12時前になっている。当初予定は既にガタガタ。この時点で東大寺を初めとする寺院系予定は全て破棄することにする。当初予定は東大寺に加えて依水園・寧楽美術館なんかも立ち寄るつもりだったんだが。元々一眼レフを持参したのはそのため。

 

 

昼食はCP最優先で

 さてとりあえず次の目的地に向かう前にそろそろ昼食を摂る必要がある。昨晩の夕食に予算を使いすぎているので、今日の昼食はコスト優先である。今はGW最中であるがカレンダー的には平日ということで、県庁の職員食堂を利用することにする。ここは本来は職員の昼食用の施設だが、観光客などにも開放されている。ただ営業が県庁の稼働日と併せて平日に限定されていたので、今まで利用することがなかった次第。まあこの手の施設は基本的にCPは良いものと決まっている(特に内部の者専用でなく、外部にも解放している場合はそれなりのレベルがあるのが普通)。

奈良県庁

県庁入口ではこの二人(浜辺美波と吉岡里帆の方が良かったな)と謎の萌えキャラがお出迎え

本館6階の職員用食堂は一般客も利用可

 食堂は県庁の本館の6階。到着したのがまだ12時の前だったので、広くて見晴らしの良い食堂は閑散としている。カレーなどのメニューもあるが、定食は2種類あり750円。かつ煮の定食を頂くことにする。

かつ煮の定食750円也

 セルフサービスで私も利用する勤め先の食堂などと雰囲気は似ているが、価格は高めでその分中身が充実しているというところ。まあ普通に美味くてこれは使える。県庁職員はまともな昼食を摂れているようである。

見晴らしの良い食堂は昼前で閑散としている

 食事をしながらしばらく調べもの等をしていたが、お昼になって職員がゾロゾロと入店してきたところで、邪魔になってもいけないのでさっさと退店する。

 

 次の目的地はこの県庁のちょうど裏にある。

この美術館はちょうど県庁の裏手

 

 

「日本の伝統文化を知る 刀と撥鏤」奈良県立美術館で6/14まで

 本展はとにかくまずタイトルが読めないんだが撥鏤とは「ばちる」と読むもので、象牙などを青や赤に染めてから、そこに細かい文様を彫り出す技法らしい。正倉院宝物などに見られるものだが、それを吉田文之氏が復活させたらしい。

撥鏤を利用した装身具

 展示の前半は刀類。奈良は社寺に奉納された刀が多かったらしい。そのために戦国などのような実用本位の刀でなく、もう少し優美なものが多い。また歴史が長いので日本刀だけでなく、古代刀のような直刀も見られる。殊更に派手な刃紋のものは少なかった印象。

備前長船の一刀

 さらに鍔なども展示。これも細工の細かいものが多く、あまり実用性を感じない(強度に問題ないか疑問なものも)ものもあった。

様々に装飾された鍔

 後半部分が撥鏤など工芸品の展示。吉田氏による作品はとにかく細工が細かいのに絶句である。なおこれ以外にも螺鈿細工も展示されていた。

吉田氏による撥鏤作品

 工芸品展示なので典型的な地味系展示。また私の専門からも少々外れる内容なので、強烈な印象を受ける作品は特になしである。

 

 ところで入館前、どことなく場違いの女子中高生の団体を見かけたが、あれはもしかして刀剣乱舞人気以降現れたいわゆる刀剣女子ってやつだろうか・・・。以前に彼女たちのせいで京都国立博物館の展示が長蛇の列でひどい目にあった記憶があるが(結局はその時は私は見学を断念した)。

 

 

奈良で「御茶」する

 これで奈良公園周辺の予定は終了、近鉄奈良駅まで降りてくる。最後の立ち寄り先は近鉄学園前駅の松伯美術館だが、とにかく今日は疲れが異常。移動の前に少し一息つきたい。小西さくら通りをフラフラと歩いていると「御茶乃子(おちゃのこ)」なる茶店を見かけたので入店する。

「御茶乃子」

 抹茶のかき氷などがそそるが、実は朝から腹の具合が良くないのと今日はそこまで暑いわけでもないことからバスして、無難に「大和茶と葛餅のセット(550円+税)」を注文する。

大和茶と葛餅

 やはり天極堂の本物などと比較すると、いささか硬すぎてゼリー感のある葛餅は所詮は「もどき感」が強いのは否定できない。しかし添えられている茶入りのシロップが美味いので、これをかけるとなかなか行ける。やや苦みのある大和茶も悪くない。葛餅を食べてしまうと、しばらくはシロップ舐めながら苦い大和茶をグビグビという形になったのである。

 

 さてようやく一息ついたところで近鉄の快速急行で学園前に移動する。ここからは目的地である松伯美術館はバスでの移動である。

 大渕橋のバス停で降りると、松伯美術館は大渕池の向こうに見える。この美術館の訪問は実に数年ぶりである。

大渕池の向こうに松伯美術館

 

 

「上村三代と京都市立芸術大学」松伯美術館で5/24まで

 上村三代はいずれもが京都市立芸術大学(前身は京都府画学校)と関わりを持っており、皆そこの卒業生だという。本展では京都市立芸術大学所蔵品と当館コレクションを併せて展示してある。

 最初の展示室には松園の師匠筋に当たる鈴木松年や竹内栖鳳などの作品が展示されている。鈴木松年の作品はいかにも教科書的な典型的な美しい日本画であり、竹内栖鳳のは彼らしい動物画である。

 後の展示室には二代目の松篁と三代目の淳之の花鳥画が展示されている。松篁の精緻さを背後に秘めた花鳥画は私にとっては非常に好ましく映る作品。

上村松篁「母子の羊」

 一方の淳之の花鳥画には以前から私はあまり惹かれない。彼の作品はどうも背景に大雑把なところと、それとこの世代の日本画家にある洋画への傾倒的なものが感じられるせいで中途半端感がどことなくあるという辺りが原因か。


 いろいろ御託を並べているが、私自身は絵画については完全に「見る専」で絵筆握ってもまともにデッサンさえできない人間なのだが。まあ「その料理人よりもおいしい料理を作れないと文句を言えない」というものではないと思うし。


 松伯美術館を一回りしたところで本遠征のスケジュールは完全終了である。後はバスで駅まで戻ると近鉄とJRを乗り継いで帰宅するのみ。結果的にこの日は1万2千歩以上を歩いていて、完全に限界突破で疲労の極みに達してしまったのである。結局は今回は途中で完全にへばってしまって、もくろんでいた予定の半分こなせたかどうかというところ。未だに年齢考えずに遠征計画に詰め込み過ぎる傾向は進化せずである。「認めたくないものだな。ジジイ故の衰えとは・・・」。

 

 

この遠征の前日の記事

www.ksagi.work