フランス放送フィルのコンサートのために京都に出向く
この週末は京都方面に遠征に出ることとなった。目的はフランス放送フィルの来日公演。
土曜日の午前中に起床するとかなり早い時刻から京都に出向くことにする。コンサートだけなら昼前ぐらいで余裕なのだが、例によって美術館を絡めるつもり。今回は嵐山の福田美術館に立ち寄ることを考えている。朝のうちに家を出ると新快速に飛び乗る。後はウツラウツラとしながら京都へ。
京都では山陰線方面に乗り換える。ここからは嵯峨嵐山まで移動するつもり。このルートを取るのは久しぶりである。山陰線ホームは大きなトランクを抱えたインバウンド客らで大混雑している。今日も嵐山は混でそうだと嫌な予感がする。

嵯峨嵐山は予想通りというか、インバウンドでごった返している。その中を突っ切りながら福田美術館を目指す。例によって美術館の界隈だけは別天地の趣がある。ただ今回は出し物が若冲と言うこともあってか、いつもよりもかなり観客が多い。


「若冲にトリハダ! 野菜もウリ!」福田美術館で7/5まで

伊藤若冲と言えば動植綵絵などで見られる非常に緻密な本画のイメージが一般には強いかもしれない。しかし若冲はこれ以外にも墨でサクッと興に乗せて描いた作品なども多い。そして福田美術館の所蔵品にはその手の作品もかなり多いのである。
本展展示作の中でも「群鶏図」などはいかにも若冲らしい精緻な本画である。

また「呂洞賓図」などは墨の単色の水墨画だが、若冲らしい本格的な表現力を感じさせる作品である。

一方の「小槌に宝珠図」などになるとまさに筆の向くまま心の赴くままという自由かつ力が漲る作品となる。この幅の広さがまた若冲の魅力ではある。

第二展示室に行くと、若冲を説明するときに欠かせない野菜と鶏が登場。若冲は青物問屋の旦那だったのでとにかく野菜の絵が上手い。また鶏を飼って観察していたとのことで鶏の絵が多いのも特徴。
野菜の絵は国の文化財である「菜蟲譜」のオリジナルとも見られる「果蔬図巻」を展示。とにかく野菜の表現がリアル。ただ野菜ネタで笑えるのは、釈迦の涅槃図を野菜で描いた「果蔬涅槃図」である。このユーモアこそがまさに若冲。


そして鶏については様々な鶏の姿を墨絵で描いた大作「鶏図押絵貼屏風」が登場。いったいどれだけ鶏を観察していたのやらと、驚くやら呆れるやらである。

第3展示室に同時代の画家として与謝蕪村、円山応挙、その弟子の長沢芦雪などが登場。応挙のモフ図の流れに乗った「群犬図」が展示されている。なおなぜか若冲の犬は微妙に可愛くないんだよな。


昼食は美術館内のレストランで
以上、とりあえず福田美術館の見学を終えたところで早めの昼食を摂ることにする。今日のコンサートは14時開演とかなり早いので、早め早めに予定をこなしておく必要がある。そういうわけで昼食を摂るのも美術館館内の「パンとエスプレッソと福田美術館」にする。渡月橋が見える風景の良い店内で「ビーフパストラミとカマンベールのパニーニセット」に「アイスコーヒー」を合わせる。以上で1900円というのはCPは悪いが、外のボッタクリ店の価格レベルはこんな次元ではない。

風景を眺めながら、ゆったりと大急ぎで食料を腹に詰め込む。正直、美術館を堪能した後優雅に昼食と行きたいところなんだが、今日は予定が押している。この後は嵯峨嵐山文華館にも立ち寄るつもりなので、ガンガンとスケジュールをこなしていかないと間に合わない。そういうわけでゆったりと味わうとは行かなかったが、料理自身はチーズのまろやかさがパンとよく合っており、十分に満足できるものであった。

夏の京都の灼熱地獄に不可欠の装備
手早く昼食を終えると昼の灼熱の中を嵯峨嵐山文化館に向かうことにする。この行程はほんの数分なんだが今時の京都の異常な殺人的暑さの中では想定外に消耗することは既に経験済み。そこでここで京都の暑さに耐えるためのアイテム3点セットを取り出してくる。
まずは日傘。私は昨年から日傘男子ならぬ日傘ジジイである。男が日傘なんてという向きは未だにいるようだが、この京都の尋常ならざる暑さは頭を守っただけでは不十分である。清少納言が今の京都の暑さを体験したなら絶対に「夏は日傘。帽子はわろし。」と枕草子に記したであろう。

次がこれがもっとも必須アイテムと言えるライフライン。いわゆるミネラル麦茶である。夏の炎天下で一番怖いのは熱中症。そしてその原因となるのが水分不足である。先手先手でちびちびと水分を補給するのが重要。特に年を取れば取るほど喉の渇きを感じにくくなるので、特に喉が渇いていない時にも飲むことに気をつける必要がある。全身に疲労感が出てきてからでは手遅れである。また「別に汗をかいてないから」と言う人がたまにあるが、それこそが要注意。汗は本来、かいた端から速やかに乾いて気化熱で体温を奪うというのが正常な姿である。ダラダラと汗が体表を流れるというのはむしろ汗が機能していない異常な姿。だから汗をかいていないつもりでも、かなり体内の水分を消費していることになる。これを放置したらそのうちに本当に汗が全く出なくなり、深部体温の上昇という危機的状態に直面することになりかねない。

そして今回さらに新規に導入したアイテムがネッククーラーである。この装置は首の後ろの位置にある金属板がペルチェ素子となっていて、これが首の血管を直接冷やすと共に、周囲にセットされたファンが首筋に風を送るようになっている。

これらの装備を実際に試してみると。思いのほかに快適である。日傘で体への直射日光が遮られていることを感じるし、ネッククーラーからの風が火照りやすい耳の辺りを冷やしてくれている。また後ろのペルチェも地味に全身に影響している模様。以上の装備の効果で極力消耗を押さえつつ嵯峨嵐山文華館に到着する。

「それいけ! 応挙塾 ー円山応挙とその弟子たちー」嵯峨嵐山文華館で9/27まで

福田美術館が若冲ならこちらは応挙で行くということだろう。円山応挙とその弟子である長沢芦雪、さらに孫弟子の矢野夜潮の作品を展示してある。
まず応挙はいかにも応挙らしい絢爛豪華で緻密な「牡丹孔雀図」から始まる。

そして応挙を語るに忘れるわけにいかない「猫図」・・・でなくて「虎図」。

弟子筋ではまず岸駒の大作「群仙図屏風」。実に豪華で緻密な作品であるが、曽我蕭白の同作品のような奇想性はない。


芦雪は「猿図」や「鐘馗図」など。どことなくシニカルな猿の表情が芦雪らしいか。


そして応挙の弟子の山口素絢の弟子で応挙の孫弟子に当たるのが矢野夜潮。今まで現存作品はわずかに10点足らずとされてきたのが、昨年60点に及ぶ作品や史料が一挙に発見され、その謎とされてきた画業が明らかになってきたのだという。



なかなかに面白かったが、個人的には芦雪のもう少しはっちゃけた絵が見たかったか。
これで嵐山での美術館の予定は終了。後はホールへの移動となる。これは最短距離を取って嵐電と地下鉄を乗り継ぐことにする。嵐電嵐山駅は例の如くにインバウンドのまっ最中で大混雑中である。そこを抜けて二両編成の路面列車に乗り込むことになる。

地下鉄に乗り換えてホールに到着したのは開場15分前。本日完売の上にムラタの方でもコンサートがあるらしく、ロビーはかなり混雑しており、カフェには行列が出来ているという地獄の光景。昨今足腰の衰えを感じている身としては立ち続けはしんどい・・・と思っていたらたまたま目の前でロビーの椅子が空いたのでそこに座り込んでしばし待つことに。

pomeraを開いて待つことしばし、ようやく開場時刻になると入場。今回私が確保したのは予算の関係でD席。3階サイドでステージの一部が見切れとなってしまうあまり良くない席である。

アメリカのオケは開演前からオケメンが三々五々でステージ上に集まって、ブカブカ大音響で調整しているところにコンマスが入場してきて演奏が始まるというパターンが多いのに対し、ヨーロッパのオケは開演時刻になるとステージ脇からゾロゾロとメンバーが現れるという日本と同じ様式が多いという印象があるが、このオケはその中間。最初からオケメンがステージ上に並んでブカブカやっているが、開演時刻が近づくと一斉に静かになってコンマス登場を待つというパターン。そのうちに開演時刻を告げるホールの鐘のメロディ(なんか久しぶりに聞いた気がする)が鳴るが、それが鳴り終わった途端にオケメンが鐘の名演(笑)に拍手をして、観客もそれにつられて拍手する者や笑い声を上げる者が出る一幕も。さすがにフランスのオケメンはウイットに富むようだ。
フランス放送フィルハーモニー管弦楽団 京都公演

指揮:ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン
ピアノ:藤田真央
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30
ドビュッシー:交響詩「海」
ラヴェル:ラ・ヴァルス
いきなりフランス、とことんフランスと言うところだろうか。冒頭からフルートソロがやけにニュアンスたっぷりの演奏をするなと感じさせたのだが、それはフルートだけではなかった。各管楽の名人たちが非常にニュアンスたっぷりの音色で演奏する。
それは弦楽陣にも及ぶ。完璧なアンサンブルで奏でられる弦楽陣の音色が何とも色っぽい。糸を引くようなねっとりとした音色。なかなか日本のオケでは耳にすることの出来ないものである。関西のオケでこれを聞けるとしたら、デュトワが振った時の大阪フィルと全盛期の関西フィルぐらいか。
ズヴェーデンはこれと言ったわざとらしい仕掛けはせずに、オケの持ち味であるゴージャスで艶っぽい音色を最大限に活かしているという印象。その指揮ぶりはダイナミックさもあるのであるが、殊更に自分が出しゃばったり奇をてらうという雰囲気でなく、意外にオーソドックスにも感じられる。一曲目はそのまま幻想的に終わる。まさにフランスのオケのフランスの奏者によるフランスの曲のための演奏であった。
2曲目は藤田をソリストに迎えてのラフマニノフ。開始冒頭からオケが先ほどと同様のやけに色っぽい音色を奏でる。しかしそこに藤田のピアノが乗った途端に「おやっ?」という疑問が頭に浮かぶ。どうにもバランスが悪いのである。オケが自由に鳴らしすぎて藤田のピアノを覆い隠している印象。これではマズいぞという嫌な予感が横切る。
しかしその私の嫌な予感はまもなく払拭された。オケとソロの双方が直ちに歩み寄って適度なバランスに調整してきた。こうなると背後の艶っぽいオケと、テクニック上位ではあるが決して無機質な演奏ではない藤田のソロが冴え渡り、両者の丁々発止の掛け合いは観客を自然に巻き込んでいく。
第一楽章のテクニカルなピアノのソロセクションなどは藤田の独壇場。華麗にしてテクニカルな音楽で観客を魅了する。そして音楽はそのまま絶好調でラストまでなだれ込む。
正直なところ私はこの曲については散漫でイマイチという印象を持っていたのであるが、こういう演奏に当たるとその曲に対する印象まで変化する。確かに散漫な部分があるが(特に第三楽章)、それなりに聴かせどころのある中々に魅力的な曲である。
演奏終了後の盛り上がりはかなりのものであった。藤田の熱心なファンであるのだろうか、立ち上がる観客も数人。まあ今回の演奏は藤田のファン云々抜きにしてそれだけの価値はあろう。
大盛り上がりのままで藤田のアンコールはラフマニノフのピアノソナタ第2番の第3楽章。緩急の変化も大きくて超絶テクニックを要する、まさに彼らしい華麗なテクニックをたたきつける曲。これで会場再び大盛り上がり、やまない拍手に藤田が引っ込むタイミングを失ったか、コンマスに「そろそろ引き上げて」というようなことを言っていると思われたところで、会場が強引に点灯して前半終了である。
後半はまずはドビュッシーの「海」。と言えばつい先週にタバシュニク指揮の大フィルで同一曲を聴いたばかり。フランス放送フィルの演奏は先ほどのいかにもフランス的な色気のある音色でグイグイと来る。正直なところ音色の鮮烈さでは大フィルの方が上に感じるのであるが、ズヴェーデン指揮のフランス放送フィルは明らかにそれを求めてはいない。音色のくすみさえも味や色気に変えるという演奏。こういう演奏を聴くと、私の「ドビュッシーは近代音楽で無機質」という印象を書き換えられて、ドビュッシーもつまりはフランス音楽なんだと感じずにはいられない。いかにもフランス的な情緒に富んだ曲なんだと驚かされた。
二曲目はラヴェルの「ラ・ヴァルス」。ラヴェルになると鮮やかさだけでなく、洒落人ラヴェルらしくもっとウィットのようなものが入ってくる。この辺りの空気は流石にフランスのオケは心得ていると見えて、単に煌びやかなのではなくお洒落で艶のある演奏となる。殊更に奇をてらったわざとらしい仕掛けはしないが、ポイントを押さえて盛り上げるべきところではドカンと行くズヴェーデンの指揮もあり、なかなかに魅力的な演奏となったのである。
フランスのオケならではという名演に場内大盛り上がりである。それに応えてのアンコールはまさかのニムロッド。しかしこれがねっとりしっとりのフランス放送フィルの弦楽陣にかかると、超美麗で濃厚な音楽となって心に沁みる。そう言えばデュメイが関西フィルを振る時にもこの曲をよくアンコールで取り上げていたことを思い出した。フランス的なねっとりしっとりした演奏をするオケに向いた曲ということか。
ここでさらに盛り上がり、アンコール2曲目はこれもまさかのスラブ舞曲の8番。もうここまで来るとオケもズヴェーデンもノリノリの模様で、先ほどまでの精緻なアンサンブルは放り出して、お祭りのどんちゃん騒ぎで閉めたのである。
満足してコンサートホールを後にすると、地下鉄を四条で乗り換えて阪急で大阪を目指す。そのついでに夕食を梅田で食べていくことにする。入店したのは「スエヒロ」。ビフテキの店だが私にはその金がないので「ハンバーグのセット(1600円)」を注文する。

ハンバーグについては私は巷のトレンドに疑問を感じている。まずは柔らかいのが正義という思想。若者のあごが弱くなって硬いものが食べられなくなったのか、とかく軟らかいものが好まれる風潮がある。そのせいか、ついにはレアハンバーグなどというどう考えても衛生的にヤバいだろう(挽肉の生なんて食中毒の覚悟がないと食えん)というものまで登場するトレンドは大いに疑問。

さらに肉汁こそがハンバーグの命という思想。確かにナイフを通した途端に肉汁があふれ出す光景はいかにも美味しそうに見える。しかしそれはあくまでそう見えるだけである。実際にはその肉汁でソースがべちゃべちゃになることで何とも締まらない味になるのがオチ。それにそもそも肉汁が外に出てしまったら肉の風味がなくなると思うんだが。

さてここのハンバーグだが、まず中まで火は通っている。切ってみると肉汁は全く出ない。口に含むと軟らかい。どうもつなぎの類いを使わずに肉だけをふわっとまとめている印象。素性の良さは感じるが、混ぜ物が全くないのが災いしていささか味が単調。ソースは美味いんだが、食べていて飽きるなというのが本音。恐らくステーキの廉価版というラインで考えたハンバーグであると思われる。ただそれならもう少し肉肉しさが欲しい。いっそ柔らかくせずに硬めにした方が良いかも。どうも現状は正直今一つ食べた感がない。
というわけで少々不満のある夕食となってしまった。何か腹というか気持ちに満たされないところがある。新世界にでもよって大興寿司で数缶つまむか、松屋とかでうどんでも一杯という気分なんだが、恐らくどちらも無理だろう。まあ無理で元々というつもりで覗いてみたが、いずれもインバウンドなどに占拠されていて入店不可。インバウンドのせいで新世界から私の安らぎの場所まで奪われたようだ。


諦めてファミマでパンを買ってからホテルに入る。ホテルは先週も泊まった私の定宿「ビジネスホテルみかど」。例によってここの新館を確保している。

新館のシンプルな部屋に入ると、とりあえずまずは毎度のように仕事環境を構築する。ただ今日はセーブしていたつもりだったがそれでもやはり疲労は濃く、なかなか考えがまとまらない。そこでいったん諦めてベッドの上でゴロンと横になる。


そのまましばし休憩、ようやく気力が出てきたところでシャワーで汗を流す。それからようやく仕事に取り掛かる。しばし執筆作業に勤しんだ後、疲れもあるので明日に備えて早めに就寝する。
本遠征に関するまとめ
今回の利用ホテル 私の大阪での定宿ビジネスホテルみかど。新世界の繁華街に近い新今宮にある安価なホテル。宿泊料は土曜日が7000円、平日は5000円前後
今回の使用アイテム 日傘。2000~3000円程度。非常に軽量コンパクトで遮光性を高めているもの。一応晴雨兼用だが、小さめなので雨天時は雨傘の方が良い。
今回の使用アイテム ライフラインことミネラル麦茶。まとめ買いしておいて冷蔵庫で冷やしたものを出かけにカバンに放り込んでおく
今回の使用アイテム ネッククーラー、4000円ぐらいから数万円まで様々。私のは4000円程度。首の後ろのところの金属板がペルチェ素子で冷えるようになっており、首の回りにはファンによる風が吹き出すようになっている。体感的に暑さがかなり緩和される。
この遠征の翌日の記事
