第5回 そして至った鉄板スタイル

還暦を前にしての戦績振り返り
まず還暦が見えてきた頃の私の状況であるが、前回までに説明したように、いろいろと勉強がてら手掛けた様々な投資はトータルでマイナスで、手元に残ったのは塩漬け状態のアメリカ株のいくつかと、試行錯誤の上に残った日本株いくつか(全てミニ株である)。これらを特定口座の形で所有している。
なおこの間に私は細かい出血だけを重ねていたかの印象を受けられたかもしれないが、それは半分は本当で半分は間違いである。というのは、この間にも私が放置状態にしていた投資信託の方は着実に成果を上げていた。特に素晴らしいのはオルカンに突っ込んだつみたてNISAであり、これはちょうどコロナ禍からの回復期というボーナスステージの恩恵もあり、なんと総投資額の倍の評価額になるという華々しい成果をあげていた。もっともこれは時期が良かったというだけであり、今後はそれだけの成果はさすがに見込めない。NISA制度の変更によって、これについてはさらに積み増しは出来ない状態になったまま、期限がくるまで放置することにした。今後また上下はあるだろうが、まさか当初のコロナ禍レベル以下まで割り込むことはなかろう(と思いたい)。これは私の一種の精神安定剤でもある。
またつみたてNISAをオルカン一本にした代わりに、特定口座の方でS&P500やら先進国株やら先進国債権やらの投資信託も折に触れて購入していた。結局はREITや債券はわずかなプラスに終わったが、S&P500などの株関係は素晴らしい実績を上げ、トータルで20%程度の収益を上げていた。定年になっての退職金を迎える前にこれらを整理していくことになる。
日本株は全て整理してNISA成長枠へ
NISAが新制度に切り替わったことでつみたてNISAだけでなく、単発買いの成長投資枠も利用できるようになった。つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円であることを考えると、新NISA制度の本命はむしろこちらである。今まで特定口座で所有していた日本株は一旦ここで処分して、NISA成長投資枠に移行することにした。また今まではミニ株での購入を行っていたが、ここでは銘柄を絞り込み、単元(100株)単位での購入に切り替える(潤沢な資金を持っていない私は、当然のように100株ばかりが並ぶことになるが)。この時点での私の株式戦術は、落ちているナイフをつかんで血まみれになることを避け、高配当株を中心に長期利益を狙う戦術に切り替えている。ここで目を付けたのは世界的タイヤメーカーと、日本有数の光学機器メーカー、さらに技術者人材派遣の会社である。
特定口座の投資信託も整理してNISA成長投資枠へ
ここまで特定口座で投資信託を様々試して特にオルカンなど株関係で成果が上がっていたが、それらをいったん整理してNISA成長投資枠に移行することにする。その際、今まで実績が上がっていなかった債券、REIT関係などは一旦切り、先進国株式やS&P500に集約する。株式特化しすぎているのでリスク分散が出来ていないが、それについては退職金が入ってから検討することにして、今の時点ではとりあえず成長を重視してあえてリスクを取った。
そして体制が決まったところで万全の構えで退職金を受け取る
そうして私も還暦を迎える。幸いしてそれまでの間に私が何かしでかして会社を放逐されるとか、不況の荒波に飲まれて私の勤務先が倒産するとかのアクシデントもなく、無事に退職金を受け取ることが出来た。
なお気をつけないといけないのが、大抵のサラリーマンはこの時に人生で今まで見たこともない大金を手にすることで浮かれて浪費したり、もしくは慌ててわけの分からないまま投資詐欺にダマされて退職金をすってしまうということがある(中には満を持して用意をしていた妻に離婚届を突きつけられ、問答無用で半額を持っていかれる例もあるらしいが、私についてはこの心配だけは根本的にない)。退職金の説明をしてくれた総務の女性からも「退職金の使途は考えられていますか?」と聞かれるので、それに対しては「はい、鉄板投資でいくつもりなんで。そのために今まで金の亡者になっていろいろ勉強したから」と笑顔で答える。またメインバンクの口座に多額の金銭が振り込まれた途端に、そこからも「退職後の投資について・・・」という電話がかかってきたが、それについては「ええ、もう既に投資先は決まっていて、楽天証券でいろいろやる予定なので」とキッパリと断る。
まずは綺麗な身になろう
退職金をもらったらまず一番にやるべきこと。それは綺麗な体になることだ。つまりは借金の清算をすること。投資で少々の利益が出ても、銀行預金金利なんかとは比較にならない借金の高い金利で持っていかれたら問題外である(一度、ローンなどの金利をしっかりと銀行預金金利などと比較したら、その馬鹿らしさは一目瞭然で分かるはず)。手元に金が出来たら借金は清算するというのが一番手堅い行動となる。
私がこの時点で抱えていた借金と言えば、多くの人が抱えている住宅ローン、それにカーローンである。住宅ローンについては阪神大震災で実家が全壊という事態に直面し、「長男だから家族の面倒を見る義務がある」という両親の一方的な要請で背負わざるをえなくなったもの。まあそんなこんなが、私が現時点で配偶者のことについて考える必要がない境遇になった大きな理由でもあるが、その愚痴は別の機会にすることにする。私は立場としてはいわゆるこどおじになるのかもしれないが、そもそもその子供部屋は自分で建てたものであるということである。
話が横道にそれたが、私はローンを組んだ時点で返済終了は65歳の予定で、当然のようにまだまとまった金額の返済残高があった。そこで休日にろうきんのローン相談に出向くと、残額の現金での一括返済を申し込む。
またカーローンについては、そもそも老朽化していた車については退職金取得後にキャッシュで買い替えるつもりだったのが、それが事情で数か月早まった(早い話が事故って廃車になったんだが・・・)ので、とりあえずローンの形で先に車を購入していた次第。元々キャッシュで購入するつもりだったので、無駄にローン金利を払い続ける気などない。さっさとローン会社に連絡して残金を完済する。
満を持しての退職金出動
綺麗な体になったところで満を持しての退職金の出動となる。しかしもう既にこの時点でスタイルが決まっているので今更迷うことはない。基本はNISAの投資信託で、今までのものを買い足すことになる。成長投資枠を使用して、S&P500、先進国株式を買い足すなどをしたが、それよりはむしろ先進国債権などを買い足してのリスク分散がメイン。なおこの時にNEXT FANG+やインド株、新興国債権などのお遊びも10~20万の大失敗しても致命傷にならないレベルで仕込んでいる。また積みたてNISA枠を最大限に生かすため、月に2万円程度まで下げていた積立額を枠一杯の10万円に上げて、オルカン中心で積み立てを増やした。
さらに日本株については先の高配当株の一部を積み増しすると共に、こちらではもう少し遊ぶことにした。上手く行けば万歳ぐらいの感覚の株を数銘柄、これも100~200株という万一のことがあっても致命傷にはならないレベルで購入する。なお丸亀製麺の常連である私は、株主優待(うどん券)狙いの目的でトリドールの株式を100株仕込んでいる。これは目先の価格の上下に一喜一憂せず一生保持のスタンス(もっともトリドールが倒産危機に瀕するようなことがあれば話は別だが)。
なおアメリカ株は特定口座のまま放置である。この時点で塩漬けになっているエクソンモービルやP&Gはそのまま残っている。またその後にゴタゴタしているうちに購入したジョンソン&ジョンソン、ダウ、ファイザーなどが10万~20万レベルであり、これはいつか上がればうれしいぐらいの感覚。またこれらの株は少なくともいくばくかのドルの配当をもたらし続けてくれるはずである。
一番大事なのは現金の持ち方
このように退職金の配分は様々になったのだが、実のところを言うと現時点で退職金の半分程度は現金で手元に置いている。というのは、現時点で株を中心に勝負をかけるのは先行きが不透明(要は一番大きいのはトランプリスクだが)なので時期ではないという読みである。
今後、株を中心に暴落局面もあり得るが、そうなった時に重要なのは「握力」である。暴落時に一番避けるべきは暴落の底でのパニック売りによる損失確定。しかし理屈では分かっていても、手元に資金がなくて生活に窮するようなことになったら、損を承知で手放す必要に迫られることもあろう。そういう時に手放さずにいられる握力が重要で、そのために必要なのは当座の資金なのである。
また暴落が一段落ついたら、今度は上昇局面を迎えることが予想できる。そうなった時に勝負をかけるのに必要なのも手元の現金である。つまりは手元にある程度の現金があるのが不可欠ということ。
ただ現金を手元に置いておくと言ってもその置き方は重要である。まずタンス預金は論外。一切増えない上にそれこそトクリュウのターゲットにされかねない。タンス預金のメリットがあるのは、国税庁に収入を把握されたくない胡散臭い金儲けをしている御仁ぐらいである。当然のように銀行預金が主体となる。
とはいうものの普通にメガバンクに預け続けるのは愚策。メガバンクの金利はATM手数料1回で吹っ飛ぶぐらいの笑えるような額であり、ここに預け続けるのはインフレ下では実際には減らし続けるようなもの。そこはネット等で調べて高金利の銀行を探すのが手である。
その結果は、私はSBJ銀行の定期預金とあおぞら銀行ネット支店の普通預金に現金を二分して預けることにした。共に高金利で知られる銀行であり、増えるというほどではないまでも少なくとも目減りはしないというレベルの金利が付く。なお聞いたことのない銀行に預けるのに不安を感じる向きもあるかもしれないが、銀行の場合は預金保険機構というものがあり、万一の銀行の破綻の際にも1000万円までは元本と利息が保証される制度がある。これに加盟している銀行なら最悪の事態でも安心ということなり、当然のように両行とも加盟している。まあこの制度も日本の銀行の大半が破綻に追い込まれるような事態にでもなれば機能しない可能性もあり得るが、そんな時は既に円自体が紙切れとなっていて、生き残るには徒党を組んでバイクに乗ったモヒカンになるか、もしくは一子相伝の暗殺拳の達人になるかぐらのディスピアなので、それを心配しても始まらない。
以上、私の至った鉄板スタイルであるが、鉄板と言いつつも弱点は抱えている。まず全体的に株に偏っていること。これは収益性を狙ってのものであるが、暴落の際の危険性はある。だから実は特定口座で金の投資信託なんてもの少し買っているが、目下のところはこれは順調に赤字を垂れ流している状況である(笑)。だからこれに対する危機管理の一番は「無難に現金を手元に持っておく」ということになっている。
なお見ての通り、退職金を守ってなるべく減らさないこと(あわよくば増やしたい)というスタンスなので、若者が大きな利益を狙うというのには全く役に立たない戦術である。いくらでもやり直しの効く若者は、FXでもなんでも夢を追いかけるのも方法であり、私としてはそれを止める気はない(もっとも全力投入してしまわずに、常に退路は確保しておくようにと、一攫千金を狙って高レバレッジにし過ぎないのアドバイスはするが)。私のようにビクビクしながらも老後の資金が気になるというような方の参考にでもなればというところである。
※本記事は筆者の体験談であり、特定の投資商品を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
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