嵐の中を大阪へ
この週末は関西フィルの今後を占うことになるとも考えられる重要な公演である。しかしよりによってこの時期に台風が直撃(それも二つもという異常事態)という大ハプニングが。それにしてもダブルタイフーンが格好が付くのは仮面ライダーV3ぐらいである。つい先日もやはり台風の直撃が発生しているし、とても6月とは思えない状況。これはやはりいよいよ温暖化のたがが外れてきているのを感じる。馬鹿トランプが「温暖化はデマ」とか言って現実逃避しているうちに、現実の方がのっぴきならない状況になってきた。
気になるのは公演が通常通り行われるかだが、朝の時点での関西フィルの発表は通常通り開催とのこと。関西フィルにとっても今回の公演が今後のオケの浮沈を占う重要な公演と考えている・・・というよりも、もう既に指揮者もソリストも到着してリハを始めてしまっているし、これから中止したらまるまる大損害になるという経済的事情の方が大きいのだろう。
こうなると私としては万難を排して大阪に駆けつけるしかない。ただ気になるのは交通状況である。JRが止まってしまったら万事休すだが、朝の時点では遅れはあるが運行している模様。とは言うものの今後どうなっていくかはかなり不透明である。これは行動を早めにしておくに超したことはない。開演は14時からだから、通常だと昼前ぐらいに家を出るところだが、万全を期して午前の早めに出発する。
案の定というかJRは動いてはいるものの混乱を極めていた。毎度のパターン通りに新快速は運休。新幹線は走っているのに新快速の方が止まるという状況。仕方ないので快速に飛び乗って大阪を目指すことにする。
途中で兵庫駅の手前での長時間信号待ち、尼崎駅前での信号待ち、大阪駅前での信号待ちなどを経て、大阪到着には本来の倍の時間を要した。まあ想定通りと言える。大阪到着は11時半頃、これからどうするかだが、まだ開演までいくらか時間があることからとりあえずキャリーを宿泊予定のホテルに置いておくことにする。今日の宿泊は例によっての新今宮の定宿ホテル中央オアシス。
とりあえずはいつもの定宿に荷物を置いて身軽に
大阪は全く雨が降っていないのだが、周辺地域の影響(京都や奈良がかなりひどい模様)でダイヤは滅茶苦茶、環状線も間引き運転のようになっていてホームに乗客が溢れている状況、通常よりもかなり時間を要して新今宮に到着する。

ホテルにチェックイン手続きを済ませると、もう部屋の準備が出来ているとのことで入室がOKになる。これは非常にありがたい。宿泊したのは例によってシングルセパレート。風呂とトイレが別になっているくつろげる部屋である。とりあえず荷物を置いて身軽になると、一息ついてから再び出かける。


この界隈で昼食を摂ることも考えたが、今後の様子が不透明である以上、最悪でもホールまで歩いていける範囲になるべく早く到着しておきたい。そういうことからJRで福島まで移動する。
数年ぶりのラーメン屋に立ち寄る
さて昼食をどうするかだが、頭に浮かぶ店はない。なんせ「福島やまがそば」の閉店がかなり痛い。うーんどうしたものかなと悩みながらJRの高架をくぐったところで、ふと見るといつもは昼時は大行列の「ラーメン人生JET」の前に人影が全くない。思わず「ラッキー」と呟きながら数年ぶりに訪問することにする。台風の思わぬ影響のようである。

注文したのは「鶏煮込みそば(1000円)」。かなりコクのある濃厚なスープにやや硬めに茹でられた太めの麺が入っており、これはかなり私の好み。スープの粘度が高いので自然に麺に絡むようになっている。なおスープを単独で啜ってみると、ドロッとしているうえにやや粉っぽさを感じる。やはりこのスープは単独で飲むものではなく、あくまで麺と絡めるもののようである。


昼食を終えるとホールに直行する。今回の公演はほぼ完売に近いと聞いていたが、台風の影響か開場直後のホールには人が少ない。大丈夫だろうかと少々心配になるが、私は喫茶に直行してサンドイッチとアイスコーヒーでくつろぎながらこの原稿執筆。


時間が経つにつれてホール内に人影が増えてくる。最終的には空席はチラホラあるものの(台風で断念した客だろう)、全体的にはほぼ埋まっているという状態になる。

関西フィルハーモニー管弦楽団 第365回 定期演奏会

[指揮]リオ・クオクマン
[ピアノ]小林愛実
ボロディン:だったん人の踊り(「イーゴリ公」より)
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 op.26
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47
もう最初の音からあっという声が出そうになる。音の出方が根本的に違う、かなりしまりの良い音になっており、その後にクラリネットソロが入った途端に思わず「おお、関フィル木管陣が歌っている」と感心する。ここのところ今一つ冴えの見られなかった関フィル女性木管奏者たちが遺憾なくその技量と詩情を発露している。
また最近はボワッとしまりのない音を出すことが多かった金管陣もかなり引き締まった音を出し、弦楽陣は鉄壁のアンサンブルを崩さないまま美しく歌う。これはいきなり感心した。「関フィルもこんな音が出せるんじゃないか」と驚かされる。
クライマックスは大音量でのどんちゃん騒ぎ。クオクマンはかなり煽ってきているのであるが、ここで音が割れたりアンサンブルが崩れて音が濁ったりという通常の関フィルだとありがちな惨事が発生しないのがすごい。最後は計算づくで統制された大狂乱。これが今までの関フィルにはなかったものである。
二曲目はプロコのピアノ協奏曲。これはつい先日にトレヴィーノ指揮の大フィルでアスリートのゲニューシェネの演奏で聞いたばかり。ガツンガツンとやかましくて野蛮ないかにもプロコらしい曲という印象が残っている。
しかし曲が始まった途端に「えっ」という言葉が出そうになる。先日のあのガツンガツンとしたやかましい曲と随分印象が違うのである。小林のピアノは耳当たりが美しくて非常に柔らかいキラキラとした音色である。しかし音の芯が非常に強いので決して弱弱しくなく、オケとも対等に渡り合う。
そして背後のオケを率いるクオクマンがまたこの曲に隠された抒情性を見事に引き出している。要所要所では弦楽陣にたっぷりと歌わせ、この曲に秘められた美しさを披露してくれ、またピアノソロもそれにしっかりと合わせてくる。また第二楽章で明らかなプロコによるシニカルな音楽など、その表現の幅広さを感じさせてくれて、完全に私がこの曲に抱いていたイメージをものの見事に粉砕してくれたのである。確かに粗野で激しい部分はあるものの、その奥にはかなりの抒情が漂っているということを初めて認識させてくれた。これは私のプロコ観を根底から覆すものであった。
満場の拍手にこたえての小林のアンコールは実にオーソドックスな「トロイメライ」。しかしこれがまたすごい。たかがトロイメライがこうも深く、こうも美しいのかと唸らされた次第。終始小林の表現力の見事さと、それを適切にサポートしつつ強化したクオクマン率いる関フィルの演奏に圧倒されてしまったのである。
後半は今回のメインのショスタコ。これがまた冒頭の低弦からビシッと引き締まったアンサンブルを披露してくれる。そしてそれに重なる弦楽陣のアンサンブルが美麗の極致。美しくも非常に切ないのである。まさに身を切られるような感覚。ここで注目は最初の「だったん人」では弦楽陣を徹底的に歌わせたクオクマンが、ここでは一切歌わせずに縦の線をバシッとそろえてきていること。ここでそれこそ演歌張りに歌わせてしまったら、音楽が軽くなってしまう。ショスタコではそれを避けて徹底して張り詰めた緊張感を演出しているのが分かる。
それが極限にまで発揮されるのが第三楽章。3つのグループに再編成されたヴァイオリンを中心に非常に美しくも切なく悲しいまでのメロディを歌い上げる。ここでの弦楽陣のアンサンブルの精度の高さには圧倒される。クオクマンはデュメイが鍛えた美しい音色に正確さをさらに上乗せしてきた印象である。
この第三楽章が美しくも切ないがゆえに、アタッカで続く第4楽章の暴力性が際立つ。思わずここで私はゾッとしてしまったぐらいに荒々しくも破壊的である。明らかにこれは勝利の賛歌などではなく、平和を踏みにじる暴力であることが感じられる。曲はその暴力に抗うかのように人間の心情を歌い、それが絡まりあいながらクライマックスへと投入する。ここでまたも「だったん人」で登場した完全に計算されて制御された狂乱である。完璧なまで圧倒されたのである。
場内の拍手は爆発的だった。関フィルのコンサートでは珍しいブラボーの声も上がっていた。かくいう私も演奏終了と共に思わず「うぉぉぉ」という声が上がってしまった。私は感極まってしまうと、どうしてもこの声が出てしまう。間違いなく場内の観客は圧倒されており、クオクマンの引き出した音色に新しい関フィルの可能性を感じた者も少なくないと思われる。実際に帰り際にはあちこちで「今日は良かった」とか「すごかった」という声が漏れていた。
とにかくクオクマンが本物であることはこれで証明された。やはり昨年のシェエラザードは一回こっきりのまぐれではなかったということである。とにかく今回クオクマンは、デュメイの鍛えたしなやかな関フィルサウンドに、さらにシャープなキレと正確無比なアンサンブルを上乗せしてきており、これは関フィルの潜在力を引き出す新たな地平線を見せている。願わくはこれから1年に1度の客演ではなく、来年度は1年に3度ほど登場を願いたいところである。それが可能となれば関フィル黄金時代の到来も夢ではないと確信した。
呆然としながら新今宮に戻ると数年ぶりの串カツを頂く
かなり見事な演奏にしばし呆然とした。あまりに呆然としすぎたか、福島から新今宮に向かう時に桜島方面行きに乗ってしまい、あわやUSJに行ってしまうところであった(笑)。「次は安治川口」という車内放送に「ありゃ、聞いたことのない駅名が」と思って慌てて引き返した次第。これはポリャンスキーの演奏に呆然として、帰りの車内にキャリーを置き忘れてしまった以来のポカである。
とりあえず回り道しながら新今宮に戻ってくる。関西フィルの熱演はどうやらダブルタイフーンまで吹っ飛ばしたようで雨は完全にやんでいた。もしかしたらホールからの帰りは傘が役に立たない暴風雨の中を駅まで全力疾走することになるかもと考えて、身軽になっていたのだがそれは杞憂に終わったようだ。
さて夕食であるが、じゃんじゃん横丁を散策。寿司でも良かったのだが「大興寿司」は相変わらずのインバウンド大行列。そこでたまたま待ち客のいなかった「串カツだるま」に久しぶりに入店する。

とはいうものの、未だ私の体調は万全ならずで、串カツをモリモリという状況ではない。とりあえず後で気分が悪くならない限界値を考えて9本ほど頂いて帰る。久しぶりであるが、こうして食えばそれなりに美味いものではある。

串カツ9本ではやはり腹は中途である。そこで店を出るとすぐとなりの松屋に立ち寄って250円の超ハイCPきつねうどんを頂いて帰る。これで夕食は終了、ホテルに戻ってくる。

ホテルに戻ってくるとまずは仕事環境構築、それから一息ついてから浴槽に湯を張ってしっかりとくつろぐ。ああ極楽極楽。その後は今日の感動を忘れないうちに執筆活動。こうしてこの夜は更けていく。

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今回の利用ホテル 私の大阪での定宿ビジネスホテル「ホテル中央オアシス」。新今宮駅からすぐの立地で、風呂・トイレ付きの個室(特にセパレートシングルが秀逸)でゆったり湯船に浸かれるお気に入りのホテル。宿泊料は時期によるがシングル5000円〜7000円前後
