徒然草枕

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白鷺館アニメ棟

METライブビューイングでヴェルディの大悲劇「運命の力」を鑑賞

朝食は新今宮界隈の人気喫茶店で

 翌朝は8時前まで爆睡してから目が覚める。目が覚めたところでとりあえずは朝食を摂りに出かけることにする。向かったのはホテル近くの「カフェ・ド・イズミ」。開店の10分前に到着したのでしばし待つことに。この店、最近とみにGoogleマップでの評価が高まっているので、口コミをみた観光客が押しかけることがあり、開店後に行ったら満席のことが多いのが難点。

新今宮の「カフェ・ド・イズミ」

 入店すると「塩チキンサンドとマイルドコーヒーのセット(530円)」を注文。朝からしっかりと頂くことにする。サンドは美味いし、コーヒーも私の好みに合う。今朝は比較的観光客が少なく、客がご近所の常連さんが多いようであるので、余所者の私としては何となくアウェイ感があるのは仕方ないところ。まあ町の喫茶店あるあるである。今日は食は進むので体調は悪くはないようだが、昨日はただ単に座り続けていただけなのに身体には思いの他のダメージがあり、どうにも身体が重くて仕方ない。しかし今日もこの後に長時間座りづめの予定になっている。とりあえず手早く朝食を済ませると店を後にする。

朝食のセット

 ホテルに一旦戻るとすぐに荷物をまとめてさっさとチェックアウトする。今日の予定は10時半から大阪ステーションシティシネマで上映されるMETライブビューイング。今回の演目はヴェルディの「運命の力」。あの劇的で哀愁漂う序曲が有名な作品。ムーティ指揮ウィーンフィルによるアンコールでの演奏が未だに心に残っている曲である。オペラ自身は以前にロイヤルオペラハウスのライブビューイングで見ているが、何とも救いのない話である。

ステーションシティシネマは今日も客が多い

 入場客はザッと50名以上はおり、なかなかの入りである。前回の「ナブッコ」の時もそのぐらい入っていたので、やはりヴェルディは人気があるということか。

 

 

METライブビューイング ヴェルディ「運命の力」

指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:マリウシュ・トレリンスキ
出演:リーゼ・ダーヴィドセン、ブライアン・ジェイド、イーゴル・ゴロヴァテンコ、ユディット・クタージ、パトリック・カルフィッツィ

 過酷すぎる運命に翻弄される男女3名の愛憎のドラマを描いたヴェルディの悲劇。なお本作を演出のトレリンスキは、ウクライナ問題なども深刻化する現代の時勢も反映した現代翻案で上演している。

 ヒロインのレオノーラを演じるダーヴィドセンは抜群の表現力を持つ実力者である。過酷すぎる運命に翻弄される薄幸のヒロインを見事に演じきっている。あえてケチを付けるとしたら、長身でガッシリした体格のダーヴィドセンは薄幸の少女というには、あまりに見た目がゴツすぎることぐらいか。

 同じく運命に翻弄されるドン・アルヴァーロを演じるのは輝かしいテノールのジェイド。生い立ちの複雑さ故に屈折もあり、やや直情的な故に運命に翻弄されてしまう悲運の主人公を魅力的に演じている。また敵役となるレオノーラの兄で偏執的なドン・カルロを演じるバリトンのゴロヴァテンコもなかなかの実力者。この3人を中心に(いささか強引さや無理さもある)大悲劇が展開することになる。

 現代翻案演出のために戦場描写などが妙なリアルさがあって迫ってくるところがある。また単に偏執的な異常者的な描写になりがちなドン・カルロについても、本作では自身のプライドや苦悩に苦しめられる彼もやはり悲劇的人物であるということが明確に描かれている。ドン・アルヴァーロも基本的にはプライドの高い男であり、結局はこの男2人のプライドの衝突だったというこのドラマの本質も描かれている。

 最終的には本作は全く救いようのない結論になるのであるが、そこで神の与えた運命を呪ってはいけないと救済的な展開に持っていくのは、いかにもヴェルディ的な宗教描写か。しかし無神論者の私としては、本作のシナリオにおいてはあまりに強引すぎる展開と共に、この無理矢理の結論は一番引っかかるところであったりする。結局は神が与えたあまりに理不尽な運命に翻弄された主人公達からすると、こんなクソみたいな神にすがっても救いもクソもないところだと思うのだが。


 音楽的には見事の一言で、やはりヴェルディのオペラは素晴らしいということは実感させられた。なお以前からネゼ=セガンは小柄だなとは思っていたが、カーテンコールで長身のダーヴィドセンとジェイドに挟まれると、ネゼ=セガンはまるで子供用に見えて、これはいささか笑いの出そうになったところではある(下野を連想した)。

 

 


 上映が終了したのは15時。休憩2回で4時間半に及ぶ長大な作品はさすがに疲れた。帰る前にかなり遅めの昼食を摂っておきたい。階下の飲食店街を覗くが、食事時は完全に外しているにもかかわらずあちこちの店が長蛇の行列でウンザリする。結局は比較的行列の短かった「美々卯」で待つことにする。

レストラン街の「美々卯」

 10分ほど待たされて入店。うどんやお造りに天ぷらがセットになった「ゆり膳(2100円)」を注文する。

ゆり膳(2100円)

 うどんはさすがに美々卯であるが、讃岐うどんのような口当たりの硬さは感じさせないにもかかわらず、しっかりと腰のあるうどんでこれは絶品。天ぷらはサクッと揚がっており、お造りもまずこんなもの。デザートにはミニ杏仁豆腐がついて満足の出来る内容である。まあ価格はそれなりに高いが、元々高級店だし、場所柄を考えても仕方のないところか。そもそも今はCPの高い店がある界隈まで出向く気力も体力ないし。

 昼食終えると新快速で帰宅の途についたのである。それにしても体力がなくなったものだ。そんなに歩いたわけでもなく、ひたすら座っていただけにも関わらす思いの他のダメージが身体にある。全くもって老化とは嫌なものである。認めたくないものだな、加齢故の衰えとは・・・。

 

 

この遠征の前日の記事

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