今年は6オケ祭だ!!
この週末は大阪で開催される6オケ祭りに参加するべく遠征する。今までは大阪4オケの合同演奏会だったが、10回記念の今回は京都市交響楽団及びPACオケを加えての関西6オケ祭りに拡大されるとのこと。それだけに終演までかなりの長丁場になることが予想され、このことから開演時刻は13時からとかなり早めである。
午前中に家を出るとJRで大阪に到着したのは11時頃だった。開場が12時からなのであまり時間がない。実は諸々考えていた予定はあったんだが、とりあえずそれらをすっ飛ばしてまずは昼食を摂ることにする。ラーメンも頭を過ぎったんだが、なぜか「而今」は準備中。ちなみに帰りも準備中だったことから、もしかしてお逝きになったのか? とりあえず仕方ないので「麒麟のまち」に入店して「きりん御膳(1000円)」を注文する。
この店は鳥取のアンテナショップだから、鳥取の名物をいろいろと散りばめてある。水ダコフライは味はともかく歯ごたえがありすぎていささか噛みきれないが、ニギスの干物は普通に美味い。そしてとろろが絶品。これを十六穀米にかけて頂くのがたまらない。それにしてもこの年になってくると、やっぱり和食が一番シックリくるわ。
夕食を終えると12時前だが、開演までに一ヶ所は立ち寄っておきたい。ここから最寄りの美術館へ。出し物が浮世絵だけにかなり大勢が訪れる事態も想定して、入場待ち客のための用意までしていたようだが、幸いにしてそこまで混雑はしていなかった。とは言うものの、入場するとこの美術館で今まで見た中では最大の入り。
「北斎と広重 冨嶽三十六景への挑戦 江戸東京博物館コレクションより 」中之島香雪美術館で5/26まで
浮世絵風景版画の双璧、葛飾北斎と歌川広重の作品を中心に江戸東京博物館のコレクションからの展示。
第一部は北斎の初期の作品及び、同時代の別の絵師の作品などでその時代の空気を伝える。
第二部が北斎の代表作である富嶽三十六景の展示。超有名な神奈川沖浪裏から始まって、これも有名な山下白雨など代表作が展示される。
第三部は広重の東海道五十三次などが登場。もっとも展示についてはこれよりも江戸名所図などのほうに力を入れている。
興味深いのは第四部で、広重が名所江戸百景に描き込んだ富士の作品を。いかにもデフォルメされた北斎の急峻な富士と違い、もう少し穏やかな富士が描かれているのが広重の特長。なお広重は手前に何を置いてそれを通して背景に風景を描くという、俗に「実相寺アングル」などとも呼ばれる構図を良くとるのだが、そう言った作品も展示。
エピローグとして広重の遺品が展示されて終了。まあ北斎と広重を把握するには面白い内容だが、展示スペースの関係で展示点数が限られるのがしんどいところ。なお全面的に展示作品を変更した後期も開催される模様。なお本展はこの後に岡山県立美術館でも開催される模様であるので、そちらを訪問した方が良いかも。
美術館の見学を終わったところでもう既に開場時刻を過ぎているのでホールへ。ホールにはかなり大勢の観客が押しかけていて大入りである(最終的にはほぼ満席に近い)。今回はいつもの大阪6オケに加えてPACと京都市響も参加で関西6オケに拡大してのイベントだけに、今日は関西のプロオケの公演はここ以外はないということになる。関西一円のクラファンが集合したというところか。
なお私は3階席のチケットを購入していたつもりでいたのだが、いざチケットを確認すると1階席の結構良い場所をキープしていた。発売日辺りで何か臨時収入でもあったんだろうか?えらく奮発したものだ。とりあえず覚えていない(笑)。
開演の20分前になると各オケの指揮者が居並んでのプレトークとなる。今回は各オケ共に正指揮者が振る場合が多いが、PACだけは佐渡の予定が合わなかったとのことで下野が登場。お互い顔なじみ(藤岡と飯盛はマブダチだし)ということもあって和気藹々の雰囲気。尾高だけが年長で山下、藤岡、飯盛は同年代、下野が少し下で沖澤が圧倒的に下。山下や下野からしたら尾高は「先生」らしい。東北出身で京都に来てからもまだ1年と短く、年齢的にも圧倒的に離れている沖澤がやや浮いている感はあり。もっともこの中に関西出身者はおらず、実はなんちゃって関西人ばかりだったりする。
関西6オケ!2024
◆山下一史指揮 大阪交響楽団
曲目/R.シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲
◆尾高忠明指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団
曲目/エルガー:エニグマ変奏曲
◆下野竜也指揮 兵庫芸術文化センター管弦楽団
曲目/ペルト:カントゥス-ベンジャミン・ブリテンの思い出に
ブリテン:シンフォニア・ダ・レクイエム
◆藤岡幸夫指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団
曲目/シベリウス:交響曲第5番
◆飯森範親指揮 日本センチュリー交響楽団
曲目/ドビュッシー:「海」管弦楽のための三つの交響的素描
◆沖澤のどか指揮 京都市交響楽団
曲目/プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲からセレクション
先頭を切って登場するのは大阪交響楽団。以前より演奏技術的に他よりも一段劣った感が強かったこのオケだが、山下が就任以来はメキメキと上り調子にあることを感じる。今回のばらの騎士もまとまった弦や、色っぽい音色を出す管などが絡み合ってなかなかに魅力的な演奏をしていた。2020年度の4オケで、退屈で冗長極まりないベートーヴェン交響曲第7番を演奏した頃に比べると隔世の感がある。
演奏が終了すると山下のトークの背後でドタバタと開場の組み替えが行われる。かなり大変に思われるが、各楽団のステージ係などの裏方の連合軍で取り組んでいる模様。
ステージ組み替えが終わると2番手は尾高指揮の大阪フィル。この両者の組み合わせもかなりの年数が経っており安定感がある。曲目は尾高の得意なエルガーと言うことで手慣れた感がある。また大阪フィルのドッシリとした安定感がさすが。かなり渋い音色でカッチリと引き締まったエルガーである。
ここで20分の休憩が入る。とにかく長丁場なのでとりあえずロビーに出て休憩する観客が多く、いつもよりもロビーの混雑がひどい。
休憩後の3番手は初参加のPAC。演目はいかにも下野らしく、ほとんどの観客が聞いたことがないのではというマイナー曲を引っ張り出してきた。もっともプレトークで下野自身が言っていたように、現代音楽といっても殊更におどろおどろしいものではない。ブリテンの曲の方は日本政府の依頼で皇紀2600年奉祝曲として作曲されたとのことだが、祝典曲としてはいささか重いし、シンフォニア・ダ・レクイエムというタイトルはどうなんだというところだが、そのためか皇室非難の曲だとして日本政府から却下されたという通説がある。まあ実際は演奏拒否(というよりも、日本側がこれを演奏出来る技倆がなかった模様)されたが、委託料はしっかりと受け取った(なぜか1桁違いの額が送付されてきたとか)とのことで、ブリテンは落ち込みはしたが金にはなったようである。
さてPACは今回の参加オケの中で圧倒的に平均年齢が若いオケであるが、それが音色に現れている。とにかく元気で勢いがある。それだけにこの選曲はどうなんだろうという疑問もないではなかったが、音色の派手さのせいで陰鬱な曲になってしまわないという効果があったようである。
ドタバタとステージ組み替えがあって4番手は藤岡指揮の関西フィル。曲目は藤岡も力を入れているシベリウスである。藤岡のプレトークによると、フィンランドがロシアから解放されての祝祭曲の雰囲気があるが、内容的にはフィンランドの自然を描いたと考えられるものだとか。
確かにシベリウスの曲としては明るめだし、第二楽章などはいかにも北欧の風景を描いている曲である。藤岡もかなり力を入れての熱演だったように思われるが、残念なのは関西フィルの音色に今ひとつの幽玄さが欠けていたことである。オケの規模からして、今回の公演では弦楽陣のほぼ半数がトラによる増員にならざるを得ないこともやや祟っているか、若干音色に冴えがない印象。そのせいでいささか印象薄めの演奏となってしまった感がある。
ここでまた20分の休憩。ロビーはトイレ行列とカフェ行列でやや騒然とした感がある。行列がかなり長いので、行列の後の方の人はゆっくりとコーヒーを楽しんでいる余裕はなかったのでは。
休憩明けの5番手は飯盛の日本センチュリー。プレトークで飯盛はいろいろあったがセンチュリーもようやく軌道に乗ったという類いのことを言っていたが、今年でハイドンマラソンも完結とのことだから、飯盛のセンチュリーでの仕事も一段落したと言うことだろう。
飯盛も言っていたように、センチュリーもようやく一時の危機を脱して上昇気流に乗ってきたという感はある。なかなかに難しい曲なのであるが、それをキラキラと輝きのある演奏でなかなかに聴かせる。ドビュッシーが音楽で描いた海の煌めきを表現した演奏である。情緒深くキレもあった。
ラストは大トリで沖澤指揮の京都市交響楽団が登場。沖澤は「京都市響はやる時はやる」という主旨のことを言っていたが、それに恥じない堂々たる演奏である。やはりこうして聴くと未だに京都市響は在阪オケよりは安定感、表現力などすべての点で上回っていることを実感しないわけにはいかず、在阪オケでどうにか太刀打ち出来るのは大阪フィルまでで、それ以外は残念ながら一段劣ることは実感せずにはいられない。沖澤がこのオケから引き出した音色は、力強くありながらも雑にならず、弦楽陣にはしっとりとした粘りがあり、管楽陣には力強い輝きがあるという魅力的なもの。時には荒々しさがむき出しになることもあるプロコの曲を、美しくも迫力満点で演奏しきった。
館内の盛り上がりも爆発的であった。やはり京都市響のレベルの高い演奏に来場客も大いに満足したのであろう。
これで全公演が終了。各オケの演奏終了ごとに指揮者のインタビューとプレゼント(大抵はそのオケのコンサートチケット)の抽選会があったりなどの盛り上がり。最後は今回の公演を影で支えた全オケ裏方連合軍(ある意味で今回の公演の最重要な役割を果たしたように思われる)がステージ上に勢ぞろいして歓呼を受けるという展開もあり、盛況のうちにイベントは終了したのである。
さて今回は10回記念公演と言うことでの拡大版だったが、次回はどういう企画になるんだろうか。多分また4オケに戻すのではという気がする。さすがに6オケの5時間以上に及ぶ長丁場はいささかこちらも疲れたし、時間の関係から曲目も30分ちょっとぐらいの小曲に限られるという制約が出ることから、これからこれでというのはしんどかろう。プレトークで尾高が「このまま行けば数年後には8オケぐらい」などと与太話も出ていたが、そうなりゃ大変だが、そもそも関西にはこれ以上プロオケは後は奈良フィルぐらいしかない。隣と言うことで岡山フィルを加えるか、それとも名古屋フィルを招聘するか。8オケでベートーベンチクルスをやるなんてのも面白そうだ。1~8番までを各オケが担当し、最後に全選抜メンバーで9番を華々しく。うーん、イベントとしては面白いが、12時開演で終演は23時とかになりそう。こりゃ聞いている方の体力が持たんわ(笑)。
明日に備えて新今宮で宿泊
公演が終了すると今日は明日のMETライブビューイングに備えて大阪で宿泊することにする。宿泊先はいつものように新今宮。土曜日は新今宮も宿泊料が高騰するので、その中で比較的マシな方になるサンプラザ2ANNEXを宿泊先に選んでいる。
新今宮に到着するとホテルにチェックインする前に新世界に立ち寄って夕食・・・とおもったが、公演終了が18時を回ったせいで新今宮に到着した時には19時頃。私が夕食にと考えていた店は軒並み既に営業終了という事態。串カツとかを食う気はしないし・・・。インバウンド観光客でごった返している新世界にゲッソリして、結局は夕食を摂る店を見つけることが出来ずに撤退。仕方ないのでまず先にホテルにチェックインしてしまうことにする。
土曜日でホテルも混雑しているせいか、今回はいつもの洋室が確保出来なくて和室を確保している。今まではやはり畳の上に直接寝るのはトコジラミのリスクなども考えて敬遠していた(どうしてもインバウンドが多い地域はこのリスクがある)のだが、今回はそうも言っていられなかった状況。とりあえずこのホテルではまだトコジラミについては聞いたことがないし、事前に畳をチェックしたところも怪しい兆候は見られなかった。
とりあえず布団を敷いて、その上にゴロン。横にちゃぶ台のようなデスクがあるので、その上に仕事環境を構築。仕事をする環境としては洋室よりもむしろこちらの方が作業性は良い。
ここまで済ませたところで改めて夕食に繰り出すことにする。と言ってももう一度新世界に繰り出す元気などない。面倒臭いのでホテルの向かいに見えるラーメン屋「天龍ラーメン」を訪問する。注文したのは「天龍ラーメンと炒飯のセット(950円)」。
ラーメンはこってりとんこつ系のようだが、麺はよくある細麺ではなくてもう少し太めのしっかりした麺で、これは私の好みとも合致。また炒飯の味付けもオーソドックなものであるが私好み。セットに良くある半炒飯でなくて普通の量の炒飯が付いてきているが、これは今の私には少々多すぎ(もう少し若い頃なら喜んで完食したが)。味、ボリューム共に十二分なCPの良さを感じる。どうも私はこういうのがあるべき普通のラーメンとして頭にインプットされているせいで、最近はどこのラーメン屋に行ってもCPが壮絶に悪いように感じて困るのだが。
夕食を終えるとホテルに戻って大浴場で入浴する。しっかりと身体を温めて戻ってくると執筆作業・・・と思ったのだが、長丁場の公演の疲労はいろいろと洒落にならない状態のようで、頭がとにかく全くまとまらない。布団の上でゴロゴロしているうちにひたすら眠気が襲ってきて、結局は早めに就寝する。
この遠征の翌日の記事