大フィル定期演奏会の前に美術館に立ち寄る
今日は大阪まで大阪フィルの定期演奏会に出向くことにする。久しぶりに大阪に出るので(先の関西フィル定期演奏会は、仕事終了後にホールに駆けつけてトンボ返りである)、早めに家を出て数カ所立ち寄ることにする。JRで大阪まで移動すると、そこから環状線に乗り換えて京橋へ。対岸に見える美術館が最初の目的地。
「コレクションでつづる 印象派展」山王美術館で7/29まで
山王美術館が所蔵する印象派絵画を展示。展示作はミレー、コロー、クールベなどの印象派以前から始まって、シスレー、モネ、ルノワールなどの作品。コロー、クールベなどはいかにも作品が展示されているし、シスレー、ルノワールは展示数も多い。その中でも注目はシスレーの優品の数々。印象派画家の中では知名度的に一段低い感のあるシスレーであるが、いかにも印象派らしい光煌めく美しい絵画を見ることが出来る。
ルノワールに関しては若い頃の作品と晩年の作品で、かなりタッチが変わっていることを感じることが出来る。晩年のルノワールは心境の変化だけでなく、リウマチで細かい作業が出来なくなったこともあってか、かなりふわりとした人物像を描くようになっていたが、まさにそのようなタッチの作品が登場する。
併せて日本画及び日本洋画コレクションも展示。日本画の方は上村三代の作品や伊東深水の美人画、さらに多様な絵画を描いた堂本印象の日本画など。ここで印象が強いのは鮮やかなで煌びやかな色彩が目立つ杉山寧の作品。
日本洋画では「影は紫」の黒田清輝から始まって、濃厚な安井曽太郎、逆に淡い坂本繁二郎、カッチリした金山平三に小洒落た小磯良平など。特に強い印象に残ったのがルソーなどを連想される独得のタッチの岡鹿之助に独得の精緻な表現力の向井潤吉。なお最後に色鮮やかな富本憲吉の陶芸作品まで展示されていたのが興味深い。
この美術館のレベルの高いコレクションを堪能出来る展覧会で、なかなかに見応えありである。
美術展の見学を終えると一階のロビーで入館者無料のコーヒーを頂いてマッタリするが、コーヒーの味が苦味が強くて私にはキツく、結局は少し口を付けただけで止めることに。
次の目的地だが、その前にこの近辺で昼食を摂っておきたい。ツイン21MIDタワーの飲食店街に立ち寄るが、基本的に中之島はビジネス街なので土日は人気が少ない。かと言って、以前に平日の夕方に寄った時もあまり客が多そうな雰囲気もなかったが。と言うわけで飲食店街は既に死屍累々で撤退した店舗が多いようで空きスペースだらけ。その中で辛うじて生き残っていた「古潭」に立ち寄ることにする。
注文したのは「古潭ラーメン+半炒飯(1030円)」。まあオーソドックスなラーメンである。若干太めの食べ応えのある麺は私の好みにも合致する。殊更に印象に残るほど個性が強いわけではないが、何か不満を感じるようなラーメンではない。わざわざ食べにここまで来るほどでもないが、近くに立ち寄ったら再訪には全く抵抗が無いというレベルである。
昼食を終えると京阪京橋駅から中之島線で次の目的地へ。川縁のサクラはいささかピークを過ぎて葉桜のシーズンに入ってきているようだ
次の目的地は深いなにわ橋駅から上がってきたら正面に見える中之島公会堂の隣にある。しばらくリニューアル工事を実施していたが、この度ようやくリニューアルオープンである。
「シン・東洋陶磁―MOCOコレクション」大阪市立東洋陶磁美術館で9/29まで
同館が誇る「安宅コレクション」や「李秉昌コレクション」の名品を一挙展示という内容。
その中でも目を惹くのは専用ケースに展示された国宝の油滴天目茶碗。専用ケースのおかけで360度から見ることが出来るようになっているが、その煌びやかな紋様は非常に目を惹くものである。なお別室に、油滴天目をバーチャルで手にとってあらゆる方向から3DCGで見ることが出来る装置も出来ており、なかなかに面白い。ダミーによって手に重みを感じることが出来るので、いかにも国宝を手に取った感覚が楽しめる。
展示品はこれ以外にも高麗青磁、朝鮮青磁など。
さらには越前窯の大甕や江戸時代の色絵大皿など実に多彩。私の好きな織部なども展示されている。
安宅コレクションの重要文化財級の中国陶磁の秀品なども多数展示。
そして最後は現代陶芸作品で締めである。
なかなかにバリエーション豊富で楽しめる内容である。なおリニューアルで展示照明にLEDを導入したことでより鮮やかに色彩を楽しめるようになったとのことだが、残念ながら以前と比較出来るほど私はこの美術館に詳しくはない。またリューアルは主に一階のロビーなどの整備らしく、以前よりも開放的で広々とした印象になっていた。またカフェが明るくていかにも今時にリニューアルされていたのが一番印象に残る。
そろそろホールに向かう必要がある時間である。再びわざわざ深い地下鉄の駅まで潜るのも面倒臭いので、このまま散策と軽い運動を兼ねてプラプラとホールまで歩くことにする。
ホールに到着したのは開演の30分前ぐらい。とりあえずアイスコーヒーを頂きながらしばし待つことにする。それにしても毎度のことながらここのカフェは座れないのがツラい。今日は何だかんだで結構歩いているので足がダルい。
時刻になると入場。ザッと見渡したところ7~8割の入りというところか。ステージ上にはかなり多くの打楽器なども用意されており、さらには「ツァラトゥストラ」用の電子オルガンも設置されているようだ。最近は本格的なホールでもメンテナンスに費用のかかるパイプオルガンでなく、メンテナンスが容易な電子オルガンを設置するところが増えていると聞く。それもそれで情緒がないことではあるが。
大阪フィルハーモニー交響楽団 第577回定期演奏会
指揮/ミシェル・タバシュニク
曲目/モーツァルト/交響曲 第36番 ハ長調 K.425「リンツ」
ベルク:管弦楽のための三つの小品
R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30
一曲目のモーツァルトは殊更にピリオドなどは駆使しないモダンアプローチのものであるが、変に感情をこめるような感じでもない比較的淡々として整然とした演奏という印象を受ける。大阪フィルの演奏も昔に比べるとかなりまとまりが良くなったと感じるが、室内オケ的な端正なまとまりというレベルではない(12型オケではそもそもそういう演奏にはなかなかならない)。その辺りはやや中途半端である印象を受けた。
二曲目は16型大編成による派手な曲。管の方も作曲者から4管編成を指定されているとのことなので、相当に華々しい。またステージ上に様々用意されていた打楽器群もほとんどがこの曲のためのものであったようである。
とは言うものの、ベルクの無調性音楽は正直なところ私にはツラい。ガンガンとやたらにやかましいという印象で、常につきまとうのは重苦しさ。ベルクの同時期に作曲されていたあの救いがたいオペラ「ヴォツェック」に相通じるところも感じさせられる。
後半は有名な2001年。初っ端から華々しく始まる曲であるが、タバシュニクのアプローチは急ぐことのないドッシリと構えた演奏。過度に煽ることはないが、無味乾燥なわけでもない。どちらかと言えば様々なところに潜んでいる旋律が前面に出てくる印象の演奏である。
ただ派手派手なこの曲にしては、いささか地味な演奏という印象を受けるのも事実。また緊張感を強いるタイプの演奏でもないので、いさか緩いところを感じることもある。その辺りかが評価の分かれるところ。私の個人的趣味で言えば、この曲はもう少し緊張と弛緩のメリハリが欲しい感がある。
以上で本日の公演は終了である。混雑するJRで帰宅の途につく。