徒然草枕

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アマオケ明石フィルの公演ではソリストの妙技がかなり光っていた

明石フィルハーモニー管弦楽団 第34回定期演奏会

明石フィルは10-8-8-8-5型編成

指揮/松井 隆司
ヴァイオリン独奏/田村 咲葉
管弦楽/明石フィルハーモニー管弦楽団

フンパーディンク/歌劇「ヘンゼルとグレーテル」序曲
M.ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番 (独奏:田村咲葉)
A.ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」

 アマオケである明石フィルは10-8-8-8-5型というやや変形構成であるため、ややヴァイオリンが弱めという傾向がある。またこれで2管編成を取っているので管が音量面でやや前面に出張る傾向がある。

 そういうオケの特性から一曲目はややゴチャゴチャした印象。しかもこれはプロオケでもありがちであるのだが、ホルンが不安定なためにところどころ危なっかしい場面が存在した。そのためにいささかぎこちなさを感じずにはいられないところである。

 二曲目はソリストの田村咲葉の演奏が実に堂々としたものであるという一言に尽きる。決して音響効果が高いとは言い難い明石市民会館で、会場中に十分に響いてオケと渡り合えるだけの音量、それでいて雑ではなくて切れ味の良い緻密な音色、さらに美しくて情感タップリに歌うべき部分は徹底的に歌える表現の幅広さと、圧倒的な力量で明らかにオケをリードしていたのが感じられた。

 正直なところ田村に引っ張られる形のオケの方は、部分的にはやや危なっかしさも見られた。管は時々ズレた音を出すし、弦のアンサンブルもギリギリのところがあった。そのように若干オケが精細を欠く部分もあったのではあるが、それらを補ってあまりある田村の圧巻のパフォーマンスであった。

 なお田村のアンコール曲については私は全く初めての曲で良く知らないのだが、やや変わった節回しのこの曲を、圧倒的な力量と表現力で田村はねじ伏せてきた印象。そこに見られる集中力の高さにはひたすら押されてしまった。

 さて15分の休憩後の後半は定番曲でもある新世界だが、この曲になった途端にオケのレベルが一段上がったのが感じられた。練習量の差なんだろうか? それとも楽団員のノリがそのまま演奏に反映されているのか。管の安定性も弦のアンサンブル密度も明らかに先ほどよりも一段高いレベルのものになっていたようである。

 指揮の松井が特別に奇を衒うタイプではないし、オケに対しても比較的安全運転の範囲でドライブしていた節が見られるので、演奏には大きな破綻はなく無難にまとめきったという印象である。アマオケとしてはまずまずの新世界だったのではなかろうか。


 明石フィル人気か、新世界人気か、はたまた田村咲葉人気のいずれかは判然としないが、明石市民会館は8割方は埋まっているというなかなかの集客であった。まあ大勢押しかけた観客もとりあえずは納得の出来だったように感じられるところである。