徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

名古屋の美術館巡りをしてから、夕食は名古屋名物ひつまぶし

名古屋に遠征する

 この週末は名古屋地区の美術館巡回を行うことにした。当初予定では金曜の夕方に名古屋に移動するつもりだったが、休暇の残りの関係で金曜の午後に半日休暇を取ることにした。金曜の午前の仕事を終えると新幹線で名古屋に移動する。

 名古屋に到着した時には当然のようにかなり昼を過ぎている。昼食がまだなので空腹だ。まずは昼食を摂りたい。金山に移動すると名鉄の駅ビルの飲食店街を巡回。何を食べたいかと考えた時、先日の大阪訪問の際に時間不足のために諦めた牛タンを食いたくなった。そこでちょうど目に入った「牛タン べろ助」に入店。「タンシチュー定食(1000円税込)」を注文する。

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金山駅ビルの「ベロ助」

 熱々のタンシチューが運ばれてくる。添えてある野菜はサラダではなくて漬け物。ご飯は当然のように麦飯である。シチューはやや濃いめの味付けであるが、私好みでご飯に合う。

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麦飯の添えられたタンシチュー

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熱々である

 名古屋でタンシチューという訳の分からないことになったが、まあ上々ではあった。腹が膨れたので最初の美術館に入館する。

 

 

「ヴェネツィア展」名古屋ボストン美術館で2/21まで

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 浅瀬の干潟に人工的に作り上げた大都市であるヴェネツィアは、ナポレオンの侵攻の前に屈するまで、独自の発展を遂げると共に煌びやかな文化を育んできた。その一端を紹介するのが本展。

 展示品は地図・写真などの記録的資料から、絵画・装飾品などまで様々。個々の作品の印象はあまり強くなく、全体としてヴェネツィアを紹介する観光案内的な意味合いが強い。実際に本展を一回りしていると、「一度実際にこの目で現地を見てみたい」という気持ちもムラムラと湧いてきたりしてしまうのである。

 絵画で見所はティツィアーノやティントレット、ヴェロネーゼなどの宗教画か。鮮やかな色彩で劇的な場面を描いた彼らの作品はさすがではある。

 

 

初めのホテルに宿泊する

 最初の美術館の見学を終えたところでこれからの巡回ルートを頭に思い描く。当初予定ではこのまま次の美術館に立ち寄るつもりだったが、キャリーを引いた状態では思いの外機動力が落ちる。まずはホテルに荷物を置きに行くことにする。

 今回の宿泊ホテルは伏見の名古屋ビーズホテル。伏見と言えば大体はクラウンホテルを使用することが多いのだが、今回は部屋が空いていなかったのと、あのホテルは週末は宿泊料が高いことなどから新たに選んだホテルである。キーポイントは大浴場と手頃な宿泊料金である。難点は駅から若干距離があること。名古屋駅から送迎があるようだが、残念ながらこの時間にはまだ送迎バスは出ていない。

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伏見のビーズホテル

 地下鉄を乗り継いでから歩くことしばし、ようやくホテルに到着するとチェックイン手続き。部屋に入ったらこのまま横になって一休みしたい気分になるが、それをしてしまうとこれからの予定が滅茶苦茶になる。精神的疲労が出てくる前にさっさと外出することにする。

 次の目的地は名古屋市美術館。この美術館も最寄り駅は伏見なのだが、残念ながらホテルとは方向違い。結構歩くことになる。

 

 

「リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展」名古屋市美術館で12/13まで

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 19世紀半ばにイギリスで登場したラファエル前派は、「自然に忠実に」をモットーに据え、ラファエロ登場以前の美術作品を理想とした独自の運動を展開する。この活動自体は比較的短命に終わったのであるが、その潮流は後の作家達に大きな影響を与え、唯美主義の登場などにつながったという。本展はリバプール国立美術館が所蔵するミレイ、ロセッティなどのラファエル前派の画家の作品から、その影響を受けた画家の作品を紹介している。

 序盤に登場するのがミレイの作品。これがまた圧巻である。その描き込みの美しさと技術の高さにため息。特に驚いたのが「ブラック・ブランズウィッカーズの兵士」のドレスの表現。女性の着たドレスの光沢と質感の表現は圧巻である。そこにまさに布地が存在しているかのようなリアルな質感には唖然とさせられる。

 さらにはラファエル前派第二世代と言われたバーン=ジョーンズの作品も印象的である。彼の作品は装飾的でもあるのが特徴的であり、その美しい画面構成はどことなく後のアール・ヌーヴォーのような雰囲気も感じさせる。

 とにかく徹底的に描き込まれた美しい絵画が多いので、私好みの展覧会でもあった。やはり絵画は綺麗が一番。

 

 なかなかに満足度の高い展覧会で久々に堪能したの感がある。さて次の目的地は松坂屋美術館だが、ここからどうやって行くかが難儀なところ。名古屋市美術館は地下鉄のどの駅からも遠いという微妙に不便な場所にある。地下鉄を使うとなると伏見駅まで結構歩いて、しかも栄で乗り換えで矢場町まで行く必要がある。それも馬鹿らしい気がしたので、直接松坂屋まで歩くことにする。

 しばしの散歩の後に松坂屋に到着する。美術館は南館の7階だが、西口から建物に入ったらちょうど反対側にあるようで、建物内をクネクネとかなり遠回りをさせられる。

 

 

「奇想天外の浮世絵師 歌川国芳展」松坂屋美術館で11/23まで

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 幕末に活躍した浮世絵師・歌川国芳は「奇想の絵師」などとも言われており、かなり大胆で個性的な作品も残している。その国芳の作品を集めた展覧会。

 最初は国芳の出世作ともなった「水滸伝」を題材にしたシリーズや、武者絵などの作品。これが実にダイナミックで動きがあって、まさに現在の劇画の原点とも言える作品。巧みにデフォルメも加えた画面構成は明らかに今日のコミックにつながっている。なかには「進撃の巨人」にしか見えないような作品もあった。

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進撃の巨人

 さらには国芳が奇想の絵師とも言われる一因ともなっているユーモラスな作品群。人を組み合わせて顔を作ったり、猫で文字を描いたり、影絵になっていたり、絵をひっくり返すと別の顔になったりなどというお遊び心満開の作品達。ニヤリとさせられながらも「まあよくも考えてあるな」と感心もさせられる。

 最後は美人画などの普通の作品もあるのだが、国芳の活躍した幕末という時代背景を反映した西洋的な表現を取り入れた絵画なども登場する。まあとにかく幅が広くて実に精力的な絵師である。

 本展では国芳の様々な作品を十二分に堪能できた。この絵師の奥の深さの一端を垣間見た気分である。この後に現れた河鍋暁斎といい、時代の激動期には異端の天才が現れるものなのか。

 

 これもなかなかに満足度の高い展覧会であった。わざわざ名古屋までやってきた価値もあったというものである。ところで国芳の時代は水野忠邦による天保の改革による庶民生活に対する大幅な干渉があり、浮世絵なども贅沢品として規制を受けたのだが、国芳はそのような忠邦を皮肉った作品も描いていた。当時の庶民達はその作品に込められたメッセージを確実に受け取って大評判になったため、幕府による処罰を恐れた版元が発禁にしてしまったとか。どうやら国芳は反骨精神もあった人物のようだ。安倍の露骨な報道弾圧にビビって安倍に媚びた大本営発表放送ばかりしているマスコミも、少しはこの精神を見習って欲しいところだ。

 

 

夕食はひつまぶしを

 さて展覧会を満喫して精神的にはお腹一杯と言うところだが、実際は物理的にはもうかなり空腹が来ている。結構歩いたせいで昼食が完全に消化されてしまったようだ。わざわざ松坂屋までやって来たのだからついでに夕食を摂ってから帰りたい。名古屋で夕食と言えばメニューは一つしか浮かばない。10階のレストラン街まで行くと「あつた蓬莱軒」に入店、「ひつまぶし(3600円税込)」を注文する。

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混雑することの多い「あつた蓬莱軒」

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ひつまぶし

 一杯目はストレートで。パリッとしたウナギの風味が体に染みる。

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シンプルなストレート

 二杯目は薬味を加えて。わさびが爽やかでこれが思いの外ウナギとマッチする。こってりしたウナギにわさびがさっぱりした風味を添え、清々しく鮮烈な味となる。

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鮮烈なる薬味入り

 三杯目はウナ茶で。これは非常にあっさりとする。こってりしたウナギをさっぱりと食べる日本人の知恵である。

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アッサリするうな茶

 さて四杯目をどうするかだが、ウナ茶が良いが薬味のみの鮮烈な味も捨て難い。そういうわけで最初の半分を薬味を加えただけで頂き、後の半分は出汁をかけてウナ茶で平らげる。うーん堪能した。満足である。

 財布には結構なダメージだが、やはり名古屋に来たからにはこれを食べておかないと悔いが残る。久々の名古屋飯を堪能したのである。私は現金なもので、うまい飯を食えるとその町に対する印象も良くなる。最初はあれだけ違和感を持ちまくった名古屋も、今ではかなり馴染んできているのを認めざるを得ないのである。偉大なりひつまぶし。

 今日の全予定は終了、夕食も食ったしホテルに戻ることにする。伏見駅から歩いてホテルまで行くが、これがまた結構遠い。結局この日はなんだかんだ1万2千歩歩いていた。まあこってり目の名古屋飯を消化するには良い運動かもしれないがとにかく疲れた。ホテルに戻ると早速大浴場でたっぷりと入浴して疲れを癒すのである。こういう時に手足を伸ばせる大浴場はありがたい。ここの大浴場は名古屋クラウンのような温泉ではないが、ジェット風呂や電気風呂があったりなど浴槽自体は凝っている。今は体のあちこちに疲労が溜まっているのでちょうど良い。

 風呂でくつろいだ後は部屋でマッタリ。と言うわけでこの原稿を打っている(笑)。しかし疲れもあるので11時前には就寝する。

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