台風が接近する中、小笠原関連城郭を巡る
翌朝は6時過ぎに起床した。気になるのは台風の動向だが、窓から表を見る限りでは台風接近が全く感じられないぐらいの晴天である。ただニュースによると台風9号は現在北上中で、昼頃には関東・東海方面に上陸の模様という。これから急激な天候の悪化もあり得るということだ。今日は駅レンタカーを予約しており、松本周辺の山城を攻略するつもりであるのだが、状況によっては変更の必要もありそうだ。
朝食は昨日と同じホールで7時から。オーソドックスな和定食。しかし見た目もきれいだしうまい。
朝食の後は朝風呂にする。今朝は男女が入れ替わって最上階の露天風呂付きの浴場になっている。非常に快適。特に強烈なキャラクターのない湯だが、それだけに逆に入りやすいところもある。
松本駅行のバスは8時40分頃に出るのでホテルを8時半頃にチェックアウトする。今回は温泉でくつろぎたいと思ってややホテル代は張り込んだ(と言ったら鼻で笑う者もいるだろうが)のだが、それは正解だった。
バスで松本駅まで戻るとレンタカー貸し出しの前に帰りの特急の時間変更をしておく。ニュース等を見ながら諸々検討した結果、当初は6時にレンタカーを返却して帰宅する予定だったのを2時間早めることにした。名古屋までの特急しなのは大丈夫だろうが、恐いのは名古屋からの新幹線。東京方面のダイヤがガタガタになったら、その煽りで名古屋からの西行きの新幹線が大幅に乱れて帰宅したら深夜ということもあり得る。それを避けるための措置である。
特急あずさの運休決定で大混乱しているみどりの窓口で手続きを終えると、レンタカーを借り出す。今回借りる車はノート。私がノート乗りだから、この車なら違和感がないだろうと指名したのだが、貸し出されたのが走行3000キロの最新型ノートなので私の旧型ノートとは諸々が大幅に変わっており、結局は全く知らない車と同じだった。
林大城 武田家に備えるための小笠原氏の防御拠点
今日回るのはこの地域にある小笠原氏ゆかりの城郭。最初に立ち寄るのは林大城。松本市の東、入山辺地区の川沿いの狭隘部の南の山上にある城郭で、そもそもは信濃守護だった小笠原氏の本城であったという。隣接する林小城や北にある桐原城などと共に防御の構えとなっていたようだが、小笠原氏は武田信玄に敗北してこの地を追われることになる。信濃を手に入れた武田信玄には林大城は防御上の必要性がなかったので、その後に廃城になったようである。
山上までは未舗装の狭い道だが車で登れるとのこと。入山辺の橋倉集落のところに案内看板も立っているのでそれに従って進むが、確かに道はあるもののかなり狭い。また未舗装であるうえにところどころにかなり傾斜のきつい部分もあるので、晴天時には問題がないが雨が降るとスリップする危険がありそうである。いつ雨が降り出すか分からない怪しい空模様を見るとこれは急ぐ必要がありそうである。
進んだ先には車を置けるスペースがあり、そこが既に城内である。すぐ上に休憩所のようなものが設置されている曲輪があり、そこが二郭といったところか。
そこからさらに一段上にあるのが主郭だろうか。ここは手前には堀切があり、向こう側は土塁でしっかりと守られている。かつてはかなり厳重に防御されていたのだろうことが覗える。
土塁の向こうには小さな曲輪とさらに尾根沿いにいくつかの小曲輪の連続のような構造が見られるが明確ではない。裏手のこちら側はそう極端に険しいわけではなく、防御の場合の弱点になりそうなので先ほどの主郭はこちらに土塁を築いて防御していたのだろうと思われる。
主郭と二の郭をザクッと見学したところで山を下りてくる。ここはまだまだ何か構造がありそうなので、今度天候に問題がない時に再び見学に来ることにするか。今回は大体の構造を把握したところで置いておく。ただそう大規模な城郭という印象でもなかったので、中世の城郭としては十二分であっても戦国期の要塞としては心許ない。これでは武田信玄の本格的な侵攻にはひとたまりもなかったかもしれない。
桐原城 林大城と連携しての防御の要
隣に林小城もあるとのことだが、そちらは駐車場もなく下から登ることになるようなので、次回に回すことにして今回は北岸の桐原城に向かうことにする。桐原城はここからちょうど北西方向の山上にあるらしい。入山辺郵便局のところに北に登っていく道路があるとのことなのだが、それを見落としてしまったのでもっと西の側から回り込むことになるが、道路はこちらの方が良いようだ。
ずっと北東方向に進んでいったら、山の手前に獣防止用のゲートがあってそこに案内看板が立っている。また案内パンフもあったので頂いておく。
ゲートを開けて中に入ると(進む前にゲートを再び閉めるのを忘れないように)、目の前に舗装道路が伸びているので思わずそっちに進みそうになるが、正解はすぐ右手の斜面を登っていく方向。一見崖の直登に見えてしまうが、実はここが山道である。最初の部分が極端に険しいがそこを抜けると普通の険しい山道になる。
山道に沿って進んでいくと途中で巨大な竪堀をいくつか目にすることになる。それらの竪堀を抜けて進んでいくと標識が立っていてそこで進路を90度左折、本格的に斜面を登っていくことになる。しかし情けないことに既にこの時点で足がかなり悲鳴を上げている。天候も怪しいままだし、これは撤退かという気持ちも頭をよぎる。しかしここで撤退してしまうとこれ以降の人生すべてが逃げに終始してしまうような気がして、もし雨が降り始めたら直ちに撤退するということを決めてとにかく進むことにする。
ただここから道が今ひとつ不明確になる。小曲輪が連なる中を上に向かって登っていくことになる。主郭は左上方向になるが、私は左に進みすぎたせいで竪堀に出くわして進路を阻まれる。そこでこの竪堀に沿って右上に登っていくとようやく竪堀を通過できる場所に出くわす。
二重竪堀を通過して回り込むようにさらに先に進むと、いよいよ主郭手前の石垣が目に入ってくる。細かい石を積み上げたなかり立派なもので、この石垣は武田による改修によるものとの話もある。石垣が見えると現金なもので先ほどまでの疲れが一気に吹き飛んで力が湧いてくる。ここで一旦休憩を取ってから一気に本丸を攻略することにする。
ここからの曲輪はすべて石垣で囲ってあり、そこをいくつも通過していくことになる。登り切ったところが主郭。主郭の背後は土塁で囲ってあるが、この後には尾根筋が続いており、そちら方向が防御の弱点になるからだろう。背後には腰曲輪のようなものがあり、その先は複数の堀切で尾根筋を断ち切ってある。
ようやく目的地に到着、達成感で満たされているが足は既にガタガタである。予定ではもう一カ所山を登るつもりだったが、どう考えてもそれは無理。やはりトレーニングを怠っていた間に情けないほどに足腰が弱っている。
美ヶ原温泉で汗を流す
思い切り汗をかいたのでやはり風呂でサッパリしたいところ。近くにある美ヶ原温泉に立ち寄ることにする。温泉地の駐車場に車を置くとその隣の共同浴場白糸の湯に入館する。
内部は内風呂と露天風呂のシンプルな構成、泉質は浅間温泉と同様のアルカリ単純泉。しっとり感はこちらの方が強い印象。今日は平日の月曜日なのでそれほどでもないが、普段はかなり混雑するとの話である。
汗を流したところで美術館に立ち寄る。