徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

「吉田博展」「不染鉄展」「アルチンボルト展」in 東京

体調悪化のため、大フィル定期は無念のキャンセル

 この週末は金曜日の大フィルコンサートに参加してから東京に移動、東京地区の美術館を攻略してから二期会の薔薇の騎士を聴くという予定であった。しかしその予定は直前で大崩壊する。

 そもそも最近の私は、公私共に押し寄せるストレスで少々体調に変調を来していた。現在はありとあらゆる逆境が一気に押し寄せてきている状況。一体私がどんな悪いことをしたというのだと言いたい状態。世の中には他者に悪意に満ちた多大な迷惑をかけつつのうのうと生きているばかりか、今現在もさらに迷惑をかけ続けている輩もいるというのに。今一度「天道是か非か」と叫びたくなる心境であった。

 その上に強烈な夏バテが追い打ちをかけ、ここ最近は以前から私の弱点であった胃腸の不調を感じていた。そしてそれがとうとう金曜日の仕事中に爆発。鳩尾辺りの締め付けられるような激しい痛みに仕事中に悶絶する羽目になってしまったのである。

 この症状は10年以上前に数度経験したことがある。この時も仕事がキツい時(その原因は当時の上司の能力にあった)で、救急車で病院にかつぎ込まれて胃カメラを受けたところ、「胃がかなり荒れているからストレスを持たないように」という有り難くも役に立たない診断を受けたのである。それ以来、胃の荒れは半ば慢性化している。ほぼ間違いなくそれが悪化したのだろう。

 結局この日は悶絶しながら帰宅、残念ながら大フィルのコンサートに出かけるなどという状況ではなくなってしまったのである。インバルのマーラーだけに名演は確実で、一年前から楽しみにしていたのに痛恨の極みである。

 

翌日、体調回復?で急遽東京に向かうことに

 この日は一日胃の締め付けに苦しんだが、幸いにして一晩横になっていると翌朝には痛みは9割方退いた。こうなるとこれからどうしようかということを考えることになる。既に楽しみにしていたインバルのマーラーをキャンセルしたことと大阪でのホテル代を無駄にしたことは私にとって多大な精神的ダメージを与えている。この上に東京でのチケットとホテル代を無駄にしたらもうそのダメージは計り知れないものになりそうだ。そこで私は自身の軟弱な胃腸に対して悪態をつきつつ東京に向かうことにする。

 土曜の朝に諸々の用事を片づけると昼前に新幹線に飛び乗る。新幹線の中で昼食に弁当を食い、後はキンドルで「聖☆おにいさん」を読みながら過ごす。

 東京に到着したのは3時過ぎ。早速行動開始である。まずは定石通りに一番遠くの美術館へ。しかし現地に到着すると60人ぐらいがエレベーターを待っている状態。しかもそこから上に上がっても、さらに券売所で行列。一体何が起こったんだ。

 

「生誕140年 吉田博展 山と水の風景」東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で8/27まで

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 風景版画が有名な吉田博であるが、元々は普通の画家として水彩画や油絵も描いていた。その吉田博の画業を振り返る展覧会。

 初期の作品は水彩画が多いのだが、ぼかしを生かした空気感の表現のうまさが光る。渡欧してから油絵も手がけるようになったが、初期の作品はご多分に漏れず印象派調である。しかしやがて彼の自身の水彩画の手法も混ざってきて独自の塗り分けを生かした画風が確立されてくる。この時期の作品を見ると、後の木版画につながる表現が多々見えており興味深い。

 そして有名な木版画制作時代になる。彫り師から摺り師まで自ら抱え込んで工房を成していたという彼の作品は、とにかく摺りの技術の細かさが目につく。本来はぼかしや階調などの表現が難しい木版画で、非常に奥深さを感じさせる表現を行っている。これは絵画としてのセンスの問題だけでなく、版画の技術もかなり高度なものを駆使しているのが作品から覗える。技術と精神が渾然一体となった独自の世界である。

 

 確かに美しい絵なのだが、吉田博がそこまで人気があるとは予想外だった。おかげで入場までに無駄に貴重な時間を費やしてしまい、この後の予定が狂うことに。もう既に残り時間は少ないので駅に一番近い美術館に駆け込む。

 

「没後40年 幻の画家 不染鉄展」東京ステーションギャラリーで8/27まで

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 将来を嘱望されながらも、戦後には画壇から距離を置いて創作に活動を行っていたために知名度が低く、今まで個展もほとんど行われていないという幻の画家である不染鉄を紹介。

 とにかくクセのある画家である。画題が非常に限られており、晩年の作品などは富士山と伊豆の島と薬師寺の東塔ばかり。しかしこのありふれた富士山の絵が極めて独特。クローズアップと鳥瞰、写生と幻想が入り交じった奇妙な世界となっている。しかしその奇妙さにも関わらず、不自然さや不快感は抱かせない。なんとも奇っ怪な画家である。

 

 これで6時を回ってしまい、通常の美術館はもう閉館時刻。しかしまだ土曜日に夜間開館している美術館がある。実際は次の美術館訪問が元々は今回の東京訪問の主目的。

 上野に移動するが、この頃から本格的に雨が降り始める。嫌な天候だ。

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上野に雨が降る

 

「アルチンボルド展」国立西洋美術館で

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 野菜などで顔を作っただまし絵的な作品で有名なアルチンボルドであるが、本展ではアルチンボルドの代表作である「四季」「四大元素」の連作を中心に展示すると共に、同時代の画家の作品や彼の影響を受けている作品なども併せて展示。

 アルチンボルドの作品を見ると、単にトリッキーな絵画というのではなく、一つ一つの対象物をかなり正確に描いており、いわゆる博物絵のジャンルの作品として考えることができるとのこと。そう言われると確かに納得させられる。

 ただ最後までよく分からなかったのは、なぜそれらを用いて顔を描く必要があったのか。アルチンボルド流のユーモアなのか、それとも何らかの寓意を秘めているものなのか。何やらその辺りがどうにも謎である。

 なおアルチンボルド流の作品の中には、人間を組み合わせて顔にしている作品などもあったが、これなどはどちらかと言えばアルチンボルドよりは歌川国芳に見えたりしたんであるが。国芳はアルチンボルドの作品を目にしたことがあるんだろうか?

 

上野の黒船亭で夕食

 これで今日の美術館の予定はすべて終了。後は夕食を摂るだけ。夕食を摂る店は上野近辺で目を付けているところがあったのだが、問題は先ほどから降り始めていた雨がとんでもない豪雨になってしまったこと。しばし美術館の軒先で雨宿りしていたが一向に雨が弱まる様子がないので、意を決して雨の中に繰り出したが傘が全く役に立たない状態で全身ずぶ濡れになる。

 入店したのは上野の「黒船亭」。下町の洋食屋としての歴史のある洋食店とのこと。入店時にはすでに待ち客がいる状態で、しばし待たされることになる。どうやら人気もある店のようである。

 数分後にようやく座席に通される。落ち着いた雰囲気の店内は歴史を感じさせる。この店はじっくりと煮込んだデミグラスソースが売りと聞いているので、ビーフシチューを注文することにする。

 苦みのない甘めのデミグラスソースが実に私好み。煮込んだ牛肉はトロトロで柔らかい。実に美味なビーフシチューである。価格がやや高めなのがいかにも東京だが、味には申し分がない。やはり東京でうまいものを食べようと思うと、財布の中身を気にしてはダメなようだ。

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デミグラスソースが美味いビーフシチュー

 夕食のついでにデザートとアイスコーヒーを追加注文。こちらも中々。以上で支払いは5000円近くになってしまったが、夕食を堪能したのである。

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デザートを追加注文

 東京の飲食店の平均レベルは著しく低いが、店を吟味して金に糸目をつけなければそれなりにうまいものも食えるということは最近になって分かってきた。つまりはやはり東京で生活するにはやたらと金がかかるということになるらしい。

 

ホテルに戻る途中、隅田川の花火大会に遭遇

 夕食を終えるとホテルに向かうことにする。宿泊ホテルは定宿・ホテルNEO東京。8時に南千住に到着した頃にはようやく雨はパラパラの小降りになっていた。それにしても今日は雨だというのにやけに浴衣の女性を見かけるなと思っていたら、遠くからドンドンと高射砲のような音が聞こえてくる。南千住の陸橋に上がるとスカイツリーもある東の空に花火が上がっている。後で調べたところによると隅田川の花火大会だったらしい。まだ小雨がぱらついていたのだが、こんなコンディションでも花火を打ち上げられるんだと驚き。他の観客と一緒に小雨の中を30分ほど花火見学。

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小雨の中、花火が遠くに見える

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次々上がる花火

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華やかである

 花火が終わるとホテルにチェックインする。しかし豪雨の中をトランクを引きずって移動したのが災いして、トランクの中まで雨がしみこんで着替えがビショビショになって全滅している。仕方ないので衣類を全部乾燥機に放り込むと、冷えた体は大浴場で暖める。衣類はこれで良いとしても機械類が心配である。

 何だかんだでこの日の就寝は12時前。調べ物をしすぎたか。