徒然草枕

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白鷺館アニメ棟

岡山・広島地区の展覧会を駆け回る

美術館巡り開始

 翌朝は7時に起床する。布団がやや薄いので肩が痛いせいで寝返りが打ちにくく、眠りが浅かったようだ。とりあえずやや重い体を朝風呂で目覚めさせる。

 朝食は大広間で8時から。オーソドックスな和定食なのだが、これがなかなか豪華だしうまい。この宿で夕食を摂っても良かったかもなということが頭をよぎる。

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かなり豪華な上に美味い朝食

 夕食を終えると8時半頃にはチェックアウトする。設備的にはやや老朽化も見えるホテルだったが、飯はうまかったし風呂も良かった。そして宿泊料は4000円以下という格安プラン。私が東京で定宿にしているホテルNEO東京が、ほとんどベッドで一杯の部屋に風呂トイレ共同の朝食なしで3700円(最近になってジリジリと宿泊料が上がっている)であることを考えると、CPで見ると驚異的と言える。また岡山方面に来ることがあれば利用しても良いが、問題はその時までこのホテルが健在だろうか?

 さて今日の予定だが、これから広島に移動してそこで宿泊するつもりだ。ただし広島に直行する前に複数の美術館に立ち寄る予定である。まず最初は一番近くの行きつけの美術館へ。

 

 

「菊池契月展」笠岡市立竹喬美術館で3/15まで

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 日本画の大家である菊池契月の展覧会。

 若き頃は西洋絵画の研究も行っていたということで、若い頃の作品は精緻で日本画にもかかわらず洋画的な立体表現が行われているようなものが多い。

 その後も彼は技法の研究を続けていったようだが、晩年になってくるといかにも日本画的な描線を用いた平面的な表現になっていくのだが、これを支えているのは実に自在で巧みな描線の技術である。この頃の絵画にはかつてはなかった軽快さが現れてくる。

 若年期の絵画はその精緻さで唸らせ、晩年期の絵画はその変化自在な描線で唸らせる。とにかく「圧倒的」という印象を受けた。なかなかに堪能できた。

 

 竹喬美術館を後にすると次は福山まで走る。ここの美術館は久しぶりの訪問である。

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福山城がそこに見える美術館

 

 

「夜の画家たち-蝋燭の光とテネブリスム-」ふくやま美術館で3/22まで

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 17世紀のバロック美術の時代、ヨーロッパで流行したのがジョルジュ・ド・ラ・トゥールやレンブラントのような闇の中に蝋燭などの一条の光で人物などが浮かび上がるという表現の絵画だ。これらの表現はテネブリウムと呼ばれ、カラヴァッジョ派の画家などが積極的に用いたことでさらに広がった。しかしこの後の時代にはさらに異なる表現が登場することで、テネブリウムも過去のものとなっていった。

 時代はかなり下ること近代の日本、西洋から輸入された絵画のこの光の表現を見て驚き感動したのが日本の画家たち。それまでの日本の絵画には全くない光の表現だった。そのような画家の一人である山本芳翠は早速その表現を研究した絵画を制作し、他の画家たちも次々とこの新しい表現に挑戦していくことになる。こうして一躍日本でテネブリウムブームが巻き起こるのである。本展ではそのような絵画を集めて展示している。

 山本芳翠の作品などはラ・トゥールなどの影響をもろに受けていることが感じられ、この時代の日本の画家たちがいかに熱心に西洋の技術を取り入れようとしていたかが伺われる。これらの作品の中にはかなり巧妙な光の表現を駆使した作品も見られ、日本の初期洋画のレベルアップに貢献したようである。

 ただこの後にすぐ黒田らによる外光派が台頭してきて、日本のテネブリウムはヨーロッパ以上に短命に終わる。急速に進化をしようとする日本の中で一種の時代の徒花となったような感もあるのだが、それでも輝きを放っていたことは事実である。

 

 この後は広島に移動の予定だったが、広島の廿日市市のはつかいち美術ギャラリーでウッドワン美術館の収蔵品展を実施しているとの情報を得たので、広島を通り越してまず廿日市に立ち寄る。ウッドワン美術館はとにかくド辺鄙にあって立ち寄りにくいので、その収蔵品を近くで見られるのはありがたい。はつかいち美術ギャラリーはホールなども入った複合施設の一角にある。

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ホールもある複合施設の一角に展示室がある

 

 

「ウッドワン美術館収蔵作品展 広島ゆかりの作家展」はつかいち美術ギャラリーで2/22まで

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 広島ゆかりの奥田元宋、児玉希望、平山郁夫、靉光、南薫造などの作品が20点ほど展示されている。

 奥田元宋の作品はいかにも「赤の元宋」らしき紅葉の絵画で、見るからに美しい絵画。児玉希望や平山郁夫の作品もいかにも彼ららしい作品である。靉光についてはシュルレアリスム的傾向がまだ露骨に現れる前の比較的見やすい作品。また絵画以外に平櫛田中の人形も一体展示されていた。

 展覧会としての規模はかなり小規模だが、結構レベルの高い楽しめる作品が展示されていたのでなかなか面白かった。

 

 

広島のホテルに入ると近くで昼食

 廿日市を後にするとようやく広島市内に入る。広島市内を移動するとなると車はむしろ邪魔になるので、広島に到着したところでホテルに車を預けてしまうことにする。今日の宿泊ホテルはアークホテル広島。ルートイン系列のホテルで大浴場完備という私好みのホテル。

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ルートイン系列のアークホテル広島

 ホテルの駐車場に車を預けると、チェックイン手続きをして荷物を預けてから市内を回ることにする。ただその前にまず昼食である。もう遙か前に昼食時を過ぎてしまっているのでとにかく空腹である。広島といえばやはり牡蠣だろう。広島駅まで歩いていくとそこの「ASSEかなわ」「牡蠣づくし(¥3240)」を頂くことにする。

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駅前ビル内の「ASSEかなわ」

 牡蠣フライ、焼き牡蠣、牡蠣の佃煮、牡蠣ご飯などまさに牡蠣のフルコースである。やはり広島と言えばこれ。タップリと頂く。

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昼食には豪華すぎる牡蠣尽くし膳

 

 

路面電車で広島を移動

 昼食を堪能して元気百倍になったところで今日の本題に戻る。路面電車の一日フリーパスを購入するとこれから美術館に移動である。まず最初はここも私の行きつけの美術館へ。

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広島の路面電車パターン1

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これはかなり新鋭車輌

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若干レトロな車輌

 それにしても久しぶりの広島である。マンホールの蓋がカープのキャラクターになっているところが広島に来たなと実感させるが、さらにデパートには「お帰りなさい黒田投手」の垂れ幕が。そう言えば同じく広島に戻った新井はどうなった?

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カープ王国のマンホール

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新井さんはどこに行った?

 

 

「日本洋画珠玉のコレクション」ひろしま美術館で2/22まで

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 ひろしま美術館が所蔵する日本洋画のコレクションを展示。黒田清輝や浅井忠、岸田劉生などの大家の作品から現代に近い辺りの作品まで展示されている。

 黒田を初めとして、いかにも「らしい」絵画が多かったので楽しめる。私的にはやはり岡田三郎助辺りが好み。

 

 さらに近くの美術館に移動。広島に来たらこの二館を路面電車ではしごするのが通例となっている。

 

 

「ジャパン・ビューティー-描かれた日本美人-」広島県立美術館で2/15まで

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 日本人画家による近代美人画の名品を集めた展覧会。時代的には明治から昭和初期にかけてで、鏑木清方や上村松園などの名品もあり。

 展示品は明治の頃の浮世絵の影響を受けた作品から、大正から昭和にかけてのより現代的な作品まで含むが、やはり私的には上村松園や池田蕉園、伊藤小坡などの女流画家の作品が性に合う。また鏑木清方なども品があって良い。個人的には北野恒富の浮世絵的な作品ではなくて、もっとモダン系の作品も見たかったりしたのだが、それがなかったのが残念。

 今回の展示作はプライベート・コレクションによるものとのことなので、明らかに嗜好が一貫していることが感じられた。日本伝統の浮世絵テイストの作品が多く、例えば展示作の中に含まれていた高畠華宵の作品は彼らしいイラスト的作品でなく、彼にしては珍しく古風な印象を抱かされるような作品であった。北野恒富の作品の件も恐らく収集者の好みが反映しているのだろう。

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この美術館の看板でもある伊万里柿右衛門様式色絵馬その1

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その2

 見学後には作品の人気投票などもあった。AKBの総選挙じゃあるまいし・・・。なお投票者には抽選で商品が。展覧会図録は良いにしても、広島放送提供の「カープファン垂涎の名場面集DVD」なんてカープファンでない者はどうしたらいいんでしょうか? 広島に来る者はみんなカープファンという前提なんだろうか?

 私はひねくれ者なので、押しつけられたら反発したくなる。関西人なら阪神ファンのはずだという押しつけが大嫌いなせいでアンチタイガースになってしまったぐらいである。ちなみにネットの一部にある「日本人なら日本のことはすべて肯定するべきだ」という考えの押し付けは一番嫌いである。

 これで今日はもうタイムアップである。ホテルに一旦戻ることにする。とりあえず部屋に入ると着替えてしばしマッタリした後、入浴することにする。ここは最上階に大浴場がある。湯船でゆったりと温まると、バイブラで疲れた体をほぐす。

 

 

繁華街の飲食店で夕食

 風呂から上がったところで改めて夕食に繰り出すことにする。さて夕食に何を食べるかだが特に決めていない。昼にカキをしこたま食べたので、後は広島と言えばお好み焼きかとも思うのだが、夕食に食べる気もしないし、そもそも炭水化物の固まりのようなメニューは今の私にはまずい。とりあえず無難に和食というところか。

 店は決めないまま、とにかく飲食店があるだろうと思われる銀山町まで路面で移動する。この界隈はいかにも猥雑な繁華街で、こういう雰囲気の町ではおいしいものが食べられるというのが私の経験則である。とりあえず自分の勘を頼りにウロウロ。最初に見つけた緑提灯の店は残念ながら満席。そこで次に見つけた店「瀬戸内彩食いづみ」に入店。

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瀬戸内彩食いづみ

 店名から想像できるように魚料理が中心のようだ。まずは「カワハギの薄造り」と「温玉のせシーザーサラダ」「カキフライ」を注文する。

 ウーロン茶を注文して待っているとお通しが出てくるが、これがなかなかうまい。これは期待できそうだ。厨房を見ると板前がキビキビと動いている。こういう店にはハズレはないものである。

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お通しから美味い

 出てきた料理は期待通り。やはりカワハギはうまい。肝のうっとりするようなうまさに薄切りにされても歯ごたえのある白身。これはテッサをも凌ぐ美味である。また後の二品も期待に反しない内容。

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うっとりするカワハギの刺身

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シーザーサラダもGood!

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牡蠣フライも美味い

 これだけ頂いたところで、締めに海鮮茶漬けを追加。これがまたうまい。だし汁に入った魚の旨味がたまらない。まさに絶品。

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〆の海鮮茶漬け

 以上で支払いは5720円。やや食い過ぎた気がするが、まあ妥当なところだろう。なかなかにうまいものを堪能できて満足である。特に久しぶりのカワハギの刺身は涙が出るほどうまかった。

 少々食い過ぎ気味なので、腹ごなしを兼ねて停留所一つを歩きながらついでにセブンイレブンでお茶とフルーツゼリーを購入。コンビニデザートでカロリー100キロカリー前後のものと言えばこれかわらび餅ぐらいしかない。軽く300キロカロリーを越えてくるようなコンビニデザートは今の私に御法度である。本当はエクレアとかが食べたいところであるが・・・。

 ホテルに戻ってくるとしばらくは原稿書きやテレビで時間をつぶす。夜も更けてきたところでもう一度入浴してからお茶の時間。こうしてこの夜は過ぎていく。

 

 

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