徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

レナルト指揮のプラハ放送交響楽団で定番の「新世界」

 早めに寝過ぎたせいか、夜中の3時頃に一度目が覚め、その次には6時頃にもう一度覚醒、それでも意地で8時過ぎまで寝込む。昨日十分に体をほぐしたせいか、幸いにして脚の痛みとか腰の痛みなどはない。ただ全身にはかなりの疲労感がある。当初の予定では今日は大阪市内の美術館2カ所に立ち寄ってからザ・シンフォニーホールに向かうつもりだったが、それを最寄りの1カ所だけに減らして、ホテルのチェックアウト時刻の11時近くまでグダグダすることにする。

 ホテルをチェックアウトすると地下鉄で淀屋橋まで、目的の美術館はここから少し歩いたところにある。

 

 

「黄金時代の茶道具-17世紀の唐物」大阪市立東洋陶磁美術館で6/28まで

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 室町時代には「唐物」と呼ばれる中国の美術品が珍重されたが、室町末期から戦国時代にかけて珠光の佗茶の概念などが登場するにつれ、美意識の変化が見られることになる。16世紀末からは千利休、古田織部などの茶人の台頭で茶の湯の世界は大きく変化していくことになる。そのような時代の茶道具などを展示。

 室町時代には油滴天目などのような豪壮華麗な茶碗が好まれたようだが、それが利久以降は急速に渋いものに変わっていく、そこに織部で奇想が加わってというように、時代の変遷が露骨に現れているのが興味深いところ。また茶器の流行は権力者の志向も反映しており、茶の湯と政治は不可分のものであったことも覗える。器の好みを見ていると、その人物の人柄も見えてくるようなところに面白味がある。

 この美術館を訪問するのは久しぶりだが、相変わらずなかなかに見応えのある逸品が多い。ただ個人的には中国・朝鮮の陶磁器よりも、日本国内の焼き物の方が興味がある。

 

 

昼食は将棋会館の「イレブン」で

 美術館の見学を終えるとホールに向かうことにする。京阪と環状線を乗り継いで福島へ。コンサートの前に昼食を福島周辺で摂っておく。入店したのは以前通りかかった時に気になっていた洋食店「レストランイレブン」「タンシチュー(2150円)」にご飯をつけて頂く。

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レストランイレブン

 コクのあるデミグラスソースがなかなかにうまい。結構本格的なタンシチューである。なおここでは保温のために鉄板に乗って料理が出てきているが、確かにこれは冷めにくいかもしれないが、時間が経つとソースが煮詰まってくる弊害もあるので、私としては皿に盛った方が良いような気がする。タンシチューと言うからにはソースも頂きたいところである。

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サラダと

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タンシチュー

 昼食を終えるとコンサート会場へ。そこそこの知名度があるオケの割には入場券が比較的安価であるためか、会場内はほぼ満席。さらに補助席も出ている模様である。

 

 

プラハ放送交響楽団

[指揮]オンドレイ・レナルト
[管弦楽]プラハ放送交響楽団

スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より 「モルダウ」
ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 op.92
ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 「新世界より」 op.95

 チェコの名門オケが十八番中の十八番をひっさげての来日公演である。

 もう一曲目の「モルダウ」は冒頭からゾワゾワするほどの演奏。弦の響きが上手い下手などを超越して「ああ、これがチェコの響きなんだな」という渋さ。目の前にモルダウの流れが浮かぶかのようである。いかにも十八番らしく、オケに余裕が感じられるような演奏である。

 一方、ベートーベンになるとやや粗さも目立つ。基本的にこのオケはブイブイ鳴らしたがる傾向があるようだが、管が無闇に出てきた挙げ句に音程が怪しかったりなんて部分も散見される。

 ところがさすがに十八番と言うべきか、新世界になるとこれがアンサンブルの精度が数段上がる。オケのメンバーもノリノリなのが演奏に現れている。また新世界と言いつつ、舞台はアメリカではなくて明らかにスラブの舞踏的要素が入った曲であるという側面がもろに正面に出てきた演奏でもある。十八番の余裕で少々リズムを振ろうが何をしようがアンサンブルは乱れない。恐らくこの曲なら、目をつぶっていても演奏できるのだろう。オンドレイ・レナルトの指揮も、ツーカーのオケとの間で完璧に意思疎通させながらのもの。オケの鳴らしたい方向に鳴らさせながら、ところどころ手綱を締めている雰囲気である。

 アンコールはお約束通りというかドボルザークのスラブ舞曲の第8番と第15番が来た。もうここまでくるとオケは楽しみまくっているという印象で、アンドレイ・レナルトも指揮をすると言うよりも指揮台の上で踊っているような状態。ノリノリの大盛り上がりのまま終了と相成った。

 十八番の強みというか、スメタナとドボルザークになると演奏のレベルが桁違いに上がるという極端さが非常に印象に残った。会場の盛り上がりもかなりのもので、最後に楽団員が引き上げる時まで拍手が続いた。

 

 なおこのコンサートはヒガシマルがスポンサーとのことで、コンサート参加者にはちょっとどんぶりと瓶入り出汁がお土産に配布されたのである。ヒガシマルとプラハの関連がちょっと浮かばない。

 これで今回の遠征は終了。今回も満足度の高いコンサートを堪能できたのである。なお今回の公演で日本センチュリーに対する認識を少々改めたことから、それを確認するために秋のいずみホールでのハイドンのチケットを入手したのであった。