徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

朝比奈隆指揮大フィルの「英雄」をカーテンコールで

 今日はカーテンコールで公開されている朝比奈指揮大フィルのアーカイブの第二弾である。前回はシューベルトとチャイコフスキーだったが、今回はワーグナーとベートーヴェン。

curtaincall.media

朝比奈隆指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団

ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲(1997.10.26収録)
ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調「英雄」(2000.7.8収録)

 最初のワーグナーは全体的にやや音色が薄いのが気になるところ。弦楽器が錯綜していく重層感が今ひとつ感じられないし、ワーグナーにとって重要である金管楽器に今ひとつ冴えが感じられず、全体的に音色に厚みがない。

 二曲目の英雄は、前回にチャイコフスキー交響曲第5番で感じた、ゴリゴリとした印象がここでも現れている。これはやはり朝比奈隆の芸風と考えるべきなのだろうか。ゴリゴリとして淡々とした印象の演奏である。最近のこの曲の演奏はもっと滑らかにロマンティックに表現するタイプが多いように感じるが、朝比奈の比較的淡々とした表現は、この曲の持つ古典性の方をクローズアップしているようである。少々荒っぽいぐらい感じられるパワーはこの時期の大フィルの持ち味なんだろう。いわゆる洗練とは対極にあるかなり泥臭い演奏に感じられる。

 第二楽章の葬送行進曲にしても、演奏が終始かなり力強いために葬送という雰囲気とはやや異なる。重々しくはあるが、華々しくさえ聞こえる。やはり常に「溺れない」演奏である。結局はそのままドッシリ、ゴリゴリでラストまでという印象。最終楽章はいささかドッシリしすぎて私にはやや退屈。

 やはり今時の演奏とは雰囲気の違う、大時代的な巨匠演奏というところか。良くも悪くも個性のある演奏である。楽団員が総引き上げした後も観客の8割方が拍手をやめず、最終的には朝比奈の一般参賀まであったのは驚いた。


 なおカーテンコールでは6/13のPM7時より山形交響楽団の無観客ライブの配信が行われる模様。ソーシャルディスタンスのせいでステージ上にメンバー全員が並べないことから、金管セクションの演奏、木管セクションの演奏、弦楽セクションの演奏と分けてライブ配信する模様。

www.yamakyo.or.jp