ドイツのオケのライブ配信を視聴する
世界のオーケストラライブ配信巡りですが、今回は前からチェックしているミュンヘンフィルのライブに、さらに新たにバイエルン放送交響楽団のライブから。共に若手の指揮者による溌剌とした演奏です。
ミュンヘンフィルライブ配信(2020.6.27収録)
指揮:クラウス・マケラ
ラヴェル 「マ・メール・ロワ」
メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」
ラヴェルは実に色彩的でキラキラとした演奏。いかにもラヴェルらしい曲調をマケラは遺憾なく披露している。色彩的かつノリが良い演奏である。この曲にピッタリの実に軽妙で洒落っ気にとんだ演奏を繰り広げている。
さて後半のメンデルスゾーンであるが、これが実にクセの強い演奏。まず弦楽陣を最小限に絞って管楽器を前に出したようなバランス構成になっており、通常聞くこの曲とはやや印象が変わる。特に第一楽章などでは今まで正面には出てこなかったような旋律が正面に浮かび上がってきて、この曲が意外と複雑な構成になっていることを感じさせる。また演奏自身もメリハリが強く、さらにマケラが時々かなり極端な変動をかけるので実に変化に富んだ演奏である。正直なところ変化が激しすぎていささか落ち着かなかった気もする。
若き俊英クラウス・マケラのその若さがまさに正面に現れた演奏である。表現意欲に満ちたその振幅の激しい演奏は興味深くはあるが、正直なところ悪趣味と紙一重である。ラヴェルの場合はそれは魅力として発揮させるのであるが、古典的要素を引きずっているメンデルスゾーンの場合にはあまりに表現が極端という印象を受けた。
フィンランドの若手指揮者といえばサントゥ=マティアス・ロウヴァリがいるが、彼もかなり個性的なテンポ設定の演奏をする指揮者で、以前にフィンランド・タンペレ・フィルを率いて来日した時には、私にはいささか悪趣味に聞こえた。マケラは彼よりもさらに10才下の世代になるのだが、こういうやや極端なアプローチが今のフィンランドの潮流なんだろうか。
バイエルン放送交響楽団ライブ(2021.2.5収録)
指揮:ロビン・ティチアーティ
バリトン:クリスティアン・ゲルハーヘル
バイエルン放送交響楽団
シューベルト 「アドラスト」から葬送行進曲
マーラー 「亡き子をしのぶ歌」
ブラームス セレナーデ第1番
シューベルトの葬送行進曲は、確かに旋律にもの悲しさを感じさせるが、金管が華々しくて力強さもある一種奇妙な曲である。金管の厚さはさすがにバイエルン。
亡き子をしのぶ歌はゲルハーヘルの圧倒的な表現力に尽きる。哀愁漂う情感タップリの歌唱であり、それでいて弱々しさはない。さすがにこれだけの表現力のある歌手にかかるとこの曲も全く退屈する余地がない。
ラストのブラームスは、交響曲などで想像するいかめしいブラームスではなく、もう少し軽妙で洒落っ気のあるブラームスである。随所に旋律の美しさと溌剌とした生命力のようなものが感じさせる曲であるが、それを若きティチアーティはまさに若さ溢れる演奏を繰り広げる。オケも抜群の安定感があるだけになかなかに聞かせる演奏であった。
先ほどの若さがやや暴走気味のマケラと違い、30代のティチアーノはもっとドッシリした安定感を感じさせるところ。やはりこの辺りのバランスというのも経験が物を言ってくるのであろうか。