徒然草枕

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ベルリンフィル新年度開始をデジタルコンサートホールで堪能

ヨーロッパでは普通にコンサートが行われているようだ

 夏休みもそろそろ終わりだが、日本ではコロナの蔓延で夏休みどころではなかったところである。私も今年はそもそも夏休みと言えるものが存在しなかった。どこかに出かけることも出来るような状態ではなく、この週末もひたすらお籠もりの日々で鬱々としているところである。

 一方、ヨーロッパの方では既に観客を入れてのコンサートも開催されている。長い夏休みを終えて、ベルリンフィルも新年度を開始することとなったようである。本日の20時からベルリンフィルデジタルコンサートホールで時間差ライブ中継があったのでそれを視聴することにした。

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久しぶりのベルリンフィルデジタルコンサートホールである

 

ベルリンフィル2021/2022年シーズン開幕演奏会

指揮:キリル・ペトレンコ

ウェーバー 「オベロン」序曲
ヒンデミット ウェーバーの主題による交響的変容
シューベルト 交響曲第8番ハ長調「グレート」

 一曲目は華々しくウェーバーの「オベロン」序曲。ウェーバーらしく非常に華やかな曲調であり、ペトレンコもその曲を開幕演奏会らしく祝祭ムードで盛り上げた。ここぞとなると華やかで煌びやかな音色を出せるのは流石にベルリンフィル。

 二曲目のヒンデミットはやや曲想にまとまりがない感があるが、金管がバリバリと出てくる賑やかな曲。ブラスバンド曲かと思うぐらい管楽器が前に出てくる。しかしさすがのベルリンフィルの管楽陣は安定感抜群、堂々たるファンファーレと言った演奏である。ペトレンコも難しいことは抜きにして、祝祭的な雰囲気を前面に出している感がある。この辺りは明らかに先の「オベロン」の流れを受けている。

 休憩の後のメインはシューベルトのグレート。最初からなかなかに躍動感溢れる演奏である。ペトレンコの指揮は弱音と強音の変化をかなり強調気味につけるメリハリの強いものである。テンポはやや早めでガンガンと行く。

 第二楽章はややシニカルな響きの中に悲哀のようなものが滲む曲調であるのだが、ペトレンコの演奏は鬱に沈むことはない。メランコリックな部分はやや抑えて、むしろ純粋な美しさの方が前面に出る。

 軽快かつ楽天的なスケルツォの第三楽章を経て、怒濤のフィナーレはペトレンコはいきなりグイグイと突っ走るが、それで単調に終わらせないのはさすがのペトレンコ。しっかりとメリハリを効かせつつ雑にならない演奏を繰り広げる。軽妙でどことなく洒落っ気も垣間見える。そして軽快なる音楽でこの楽章を締める。

 開幕コンサートということもあってか、全体的に祝祭的ムードに溢れた演奏であった。グレートにしても哀愁を感じさせるよりもブイブイと行った雰囲気。オケメンもノリノリだったが、観客もかなり盛り上がっており、ホール中がスタオベ状態でペトレンコが何度も行ったり来たり。まあその気持ちは良く分かる。