徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

灼熱地獄の大阪へ大阪フィルの定期公演を聴きに行く。帰りには宇治金時ドーピング。

灼熱地獄の大阪へ繰り出す

 暑い中いささか夏バテ気味であるが、この土曜日は大阪フィルの定期演奏会のために大阪に出向くことにした。ただ今回は指揮者が予定されていたマルクス・ポシュナーから、急遽ロベルト・フォレス・ベセスに変更になったとの葉書が昨日に届いていた。体調不良によるドクターストップとのことだが、前回のデュトワといい、大フィルはどうなってるんだ? どうも先月のデュトワはコロナっぽかったが、またコロナだろうか? 新進気鋭のドイツ人指揮者によるガチガチのドイツプログラムのはずが、ラテン系指揮者によるドイツプログラムという変化球になってしまった。この時点でかなりモチベーションが落ちるが、払い戻しの案内が出ていない以上、キャンセルしたらチケットが無駄になるだけ。まあロベルト・フォレス・ベセスという指揮者も初体験になるし、どういう演奏になるかを確認してみるかということで出向くことにした次第。

 それにしても外の灼熱地獄はかなりのもの。正直なところ、少し外を歩いただけでも全身が汗ばんでしまう。しかも移動のJRで乗車した車輌が弱冷車だったために身体が冷えず、大阪到着時に既にバテバテである。

 大阪に到着した時には昼をとっくに過ぎていたので昼食を摂る必要があるのだが、イマイチ食欲が湧かない。そこで「つる家茶房」にでも立ち寄ってわらび餅でも腹に入れていこうかと考えたが、店の前には複数のグループが並んでいる状況。とても待っていられないのでホールに移動することにする。

 

 

 フェスティバルゲート地下を物色するが、カレーを食べる気にもならず、ラーメンは問題外、辛うじて寿司なら食べられるかというわけでたまたま空きがあった「寿司魚河岸日本一」に入店する。

立ち食い寿司屋

 立ち食い寿司って形態は回転率重視ということか。ただ疲れている私にはいささかツラくはある。ランチ用の12貫コースの「葵(1100円」を注文する。

最初は4貫に

5貫追加されて

最後に3貫

 寿司は順次追加されていって最終的に12貫。寿司自体は特に可もなく不可もなくなんだが、私の方がバテがひどいせいか味があまりしない。元々の寿司自体もあまり濃い味付けをしていないんだろう。本来ならそれはむしろ好ましい方向なんだが(味付けが濃すぎて胸が悪くなる店が多い)、夏場の汗ダラダラという状況には向いていないかも。

 とりあえずのランチを終えるとホールへ。するとホールの前に指揮者交代の張り紙が出ている。ここに来て初めて指揮者交代を知った客もいるかもしれない。

 開演までは若干の時間があるが、立ってアイスコーヒーを飲む気力もなく、早めに席に着いて開演を待つことにする。

 

 

大阪フィル第580回定期演奏会

最初は12型編成

指揮:ロベルト・フォレス・ベセス
クラリネット:ダニエル・オッテンザマー

ベートーヴェン/「コリオラン」序曲 作品62
ウェーバー/クラリネット協奏曲 第2番 変ホ長調 作品74
ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 作品68

 前半2曲はやや小編成気味の12型で演奏される。コリオランについてはベセスの指揮はロマンティックよりではあるが、情念を叩きつけるというよりは軽妙で流麗なタイプの演奏。ただそのためかベートーヴェンらしい硬質さがあまりないという印象。また大阪フィルのアンサンブルもやや甘め。というわけで何となく全体的にぬるさが感じられ、メリハリの強いテンション系の演奏を好む私の趣味にはシックリこない。

 二曲目のウェーバーは先週の姫路交響楽団でのファゴット協奏曲を連想する曲調。やはりオペラ作曲家としてウェーバーの特性が出ており、ソロ楽器についてオペラの独唱者のように扱うところがある。短いがやや仰々しいオペラ的な冒頭といい、全体的にオペラ臭さが感じられる。

 ただクラリネットという楽器の特性上、どうしてもフルートなどのような音色の輝きがなくくぐもった感じの音色になるので、曲自体が地味に聞こえる。さらにオッテンザマーの演奏もことさらに技巧を誇る感もない。曲調は美しくはあるが変化に乏しく、この辺りはどんな協奏曲でもしっかりと聞かせどころを作ってくるモーツァルトの天才ぶりを改めて痛感するようなところがあった。

 

 休憩後の後半は16型に拡大してのブラームス。交響曲第1番はベートーヴェン交響曲第10番などと揶揄されることもあるぐらい、ブラームスがベートーヴェンを意識して大交響曲作家たろうとかなり肩に力を入れた曲であり、曲の随所にガチガチに肩肘張ったところがある。それを重厚かついかに精妙にロマン派的情緒も織り込んで演奏するかがこの曲の聞かせどころと私などは感じるところであるが、ベセスの演奏はそのロマン派的情緒は確かにあるが、ガチガチに角張った部分がことごとく丸まってしまっている印象で、重厚さは見受けられず、一言で言って極めて軽い演奏である。

 結局はそのことが聞いているこっちとしては肩透かしになってしまう。確かに重たいだけの演奏だと聞いていてしんどすぎるが、それが皆無だとブラームスではなくなってしまう。まだこの演奏がブラームスの2番ならありかもしれないが、1番でこれはないだろうというのが正直な感想。またコリオランでも感じられた大フィルのアンサンブルの甘さというのがこちらでも耳に付く。結局は一曲目と同様に私には「非常にヌルい演奏」という印象だけが残った。

 結論としてはロベスのことを悪い指揮者だとは思わないが、この曲を振る指揮者ではないだろうというのが一番の感想。恐らく全く異なるプログラムだったら、魅力的な演奏をしてくれたと思われるのだが、ここまでドイツ正統派のプログラムを振るにはラテン指揮者とは肌合いが違いすぎたのではと感じる。まあ彼もさらにキャリアを重ねることで、この手の曲にも彼独自の魅力を加えての名演をやってくれるようになる可能性はあるが、今回はまだそれにはいろいろな意味で時間が不足していたか。

 結局のところ残念ながら先月に続いて「代演は所詮代演」という結果になってしまった感がある。なかなか「代演で予想を超えた名演登場」とは物語の世界ならともかく、現実には難しいところである。私の経験の中では、デュメイの代演で魅力的なシューマンを演奏し、私が一躍注目することになったカーチュン・ウォンぐらいか。

 

 

暑さに耐えきれずに宇治金時ドーピング

 コンサートを終えると帰宅であるが、その道すがらに往路でパスした「つる家茶房」を覗いてみると待ち客がいない状態。とりあえず一息つきたいので入店する。

つる家茶房に立ち寄る

 生憎とわらび餅は売り切れの模様なので、「宇治金時(1320円)」を注文する。とにかく身体に暑気が入ってしまっているので、こういう時は宇治金時ドーピングに限る。

最初に登場するのは山盛りの白氷

 大量の白氷と抹茶シロップが別になって登場。これに好みでシロップをかけて頂くという本格派である。これがなかなかに美味い。流石である。

これに抹茶シロップをかける

 こうしてようやく身体をクールダウンすると帰途についたのである。しかしこの暑さによるへばりは想像以上に身体のダメージとなっており、結局はこの日は家に帰り着いたものの何をする気力もなくダウンしてしまった次第。