週末大阪遠征
この三連休はコンサートに繰り出すことにした。まず初日の土曜日は関西フィルの定期演奏会である。土曜の朝に目覚めると、午前中に家を出る。コンサートは14時からだから焦る必要はないのだが、コンサートの前に途中の神戸で一カ所立ち寄るつもりでいる。実はここは先日、神戸までMETライブビューイングを見に行った帰りに立ち寄るつもりだったんだが、BBプラザ美術館に立ち寄ったところで力尽きてしまって断念したところである。
いつものように週末渋滞の阪神高速を抜けると摩耶出口で一旦降りる。立ち寄ったのは兵庫県立美術館。ここで開催されている金山平三展を見学しておこうという目論見。ただ正直なところ入館料の1600円は高いなと思っていたのだが、今日は「ひょうごプレミアム芸術デー」とかで、特別展とコレクション展のチケットが手渡される。ここはコレクション展を見るのは別料金であることを考えると、これはかなりのラッキー。
「日本洋画の巨匠 金山平三と同時代の画家たち」兵庫県立美術館で7/23まで
以前より兵庫県立美術館がコレクションに力を入れている地元ゆかりの金山平三の作品を、今年が生誕140年(やや中途半端な数字だ)とのことで大規模に展示した大展覧会である。
金山平三は日本を代表する洋画家の一人である。孤高の画家と言われることも多いらしいが、実際に先輩の満谷国四郎と交流があり、また荒井完や柚木久太らと写生旅行に出かけるなどもしていたという。そのような交流関係を示す絵画がまず登場。
ヨーロッパにも渡ったようだが、そうすると渡欧した日本人画家の常として、やはり印象派の洗礼を受けたようだ。元々その傾向があった彼の絵がより顕著に印象派寄りになっている。
ヨーロッパから帰国しても、彼らから刺激を受けて瀬戸内の絵などを描いていたようである。
さらに満谷国四郎と共に中国にも渡った(途中で児島虎次郎が合流)らしい。
装飾的な作品なども手掛けているが、画風が合わなかったか途中で頓挫している。
明治神宮聖徳記念絵画館を飾る壁画制作の依頼を受けて取材のために朝鮮に渡って描いた作品もある。
また芝居に親しんでいた彼は、芝居絵も残しているという。
さらに風景画のイメージが強い金山平三だが、実は静物画も残しているという。
中にはあからさまにセザンヌを思わせる作品も。
また列車を乗り継いでは各地に出かけて風景画を製作していたという。諏訪から日本海側に抜けて、十和田湖の辺りまで行ったそうな。放浪の風景画家という趣だが、あえて鉄道を使用しているあたり、実は単なる乗り鉄だったという気もしないでもない。
以上、金山平三の画業を概観する展覧会であった。金山平三についてはここのコレクション展で作品を見て名前は知っているが、どういう画家かについては極めて印象が薄く、全くイメージが残っていなかった。今回、彼の作品を概観して初めて金山平三という画家を把握した気がするが、私に何の印象も残っていなかった理由も分かった。つまり概ね好ましい絵を描くが、これという強烈な個性も感じないというのが本音なのである。良くも悪くももう少し尖ったところがあれば何らかの印象が残ったのだが(最悪の印象になるかもしれないが)、そういうものがないので流れてしまったようである。
特別展にはNHKのカメラが入っていた。NHK神戸放送局の模様。「日曜美術館」だったらこんな会期末の開催中のところにやって来るのもおかしい(大抵は開幕前か、開幕後なら閉場後に客のいない状態で撮影する)ので、多分ローカルニュース辺りだろう。「今日は兵庫プレミアム芸術デーで、無料観覧になった兵庫県立美術館には大勢の美術ファンが押しかけ・・・」とやるつもりではと思ったが、場内は残念ながらガラガラ。だからでもないだろうが、作品をいくつか撮影して行っていた模様。ちなみに私は兵庫プレミアム芸術デーなんて、兵庫県民にも関わらず今日になって初めて知った。そもそもあまりにPR不足なんじゃないか。
特別展の見学を終えると、せっかくだからコレクション展の方も立ち寄ることにする。考えてみるとここのコレクション展を見学するのは数年ぶりだと思う。コレクション展は2階及び1階で開催されている。2階には金山平三展示室と小磯良平展示室がある。金山平三の方は上でしっかり見てきたところで、展示作品自体は上の方が面白い。小磯良平の方はいかにも彼らしい洒落た絵画が多い。中には小磯記念美術館で見た記憶のある作品も。
1階では現代アート。特徴的な作品が多々ある。まあ個人的に感心するような作品はないが、とりあえず現代アートを一望できる雰囲気でそれなりには面白い。
コレクション展を一回りしたところで美術館を後にする。当初はコレクション展まで回るつもりはなかったことと、朝の阪神高速が予想以上に混雑していたことで予定よりもかなり時間が押している。当初予定では昼食はここから少し歩いたところにある店に立ち寄るつもりだったが、時間がないのでホール方面に移動してから、そちらで昼食を摂ることにする。
昼食は寿司ランチ
大阪までは30分ほど。いつも阪神高速海老江出口から降りてから下道の渋滞で苦しめられるのだが、さすがに平日の夕方と違って土曜の昼時はガラガラである。順調にホール近くに到着、何とか駐車場も見つけることが出来る。
さて車を置いたら昼食である。それにしても暑い。少し歩いただけで目眩がしそうなほどだ。若い頃はこの炎天下をよくキャリーを引きずりながら歩き回ったものだが、今となってはキャリーを引きずっていないにもかかわらず、歩き回る気力はもう私にはない。コロナが落ち着いたらいずれは交通費節約のためにも鉄道利用に戻したいが、果たしてそれに耐える体力があるだろうか。どうもコロナ禍は私の体力をも著しく削いでいる。
昼食に何を食うかだが頭にいろいろなメニューが回る。ただこの炎天下をあまり長く歩いていたら、頭に浮かぶメニューがすべてかき氷かアイスクリームになってしまいそうだ。結局この日の昼食は寿司にすることにする。立ち寄ったのは最近ちょくちょく行っている「元祖ぶっちぎり寿司 魚心」。例によってのランチメニューの「ぶっちぎりセット(1000円)」を注文する。
大ネタの寿司がなかなか美味い。また付属のあら汁も意外に馬鹿に出来ない。CPぶっちぎりとまではいかないが、大阪という場所を考えるとまずまず納得できるレベルのCPである。私としては今後もこの店がご健勝なることを祈るのみ。
昼食を終えるとホールへ。途中でコンビニにクールダウンに立ち寄って時間調整、ホール開場直後に到着するようにタイミング調整する。私がホールに到着した時は、ちょうど目の前で入場が始まったタイミングだった。
その後は毎度のように喫茶でマッタリ。現在この原稿を入力している(笑)。しばしここで時間をつぶしてから、藤岡幸夫のプレトークが始まった頃にホールに入場する。今回のプログラムは藤岡が以前からやりたいと思ってはいたが、なかなか金がかかるために出来なかったとか。特にボーイ・ソプラノが国内では見つからず、はるばる本場のイギリスから呼ぶことになったとのこと。
関西フィルハーモニー管弦楽団 第339回定期演奏会
[指揮]藤岡幸夫
[ボーイ・ソプラノ]マックス・トーマス
[ソプラノ]並河寿美
[テノール]村上敏明
[合唱]関西フィルハーモニー合唱団
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団
エルガー:エニグマ変奏曲 op.36
アンドリュー・ロイド・ウェッバー:レクイエム
前半はエルガーのエニグマ。14型のオケにパイプオルガンを加えた大きい編成での演奏である。この曲はつい最近に下野/PACで聞いたところであるが、下野のガンガンと行く演奏と違って、藤岡はもっとしっとりゆったりと聞かせる印象。そもそも関西フィルの弦楽陣もそういうタイプのカラーになっている。もっともその分、かなり明快だった下野の演奏と異なり、エルガー特有の曖昧模糊とした感覚は強くなる。
藤岡は関西フィルでこの曲を演奏するのは初めてとのことだが、ニムロッドだけはデュメイのアンコールで何度か聞いたことがある。同じ曲でもデュメイはこれでもかと弦楽陣にしっとりネットリとした音色を要求するのに対し、藤岡はもっとあっさりした感じがある。
藤岡は藤岡で結構ノリノリであり、それなりにキレのある演奏ではあったのだが、そもそもエルガーがあまりに得意ではない私の場合、下野の極めて明快でエッジの立った演奏の方が好ましく聞こえたのも本音ではある。
前半が終了したらいつもの倍以上の数のスタッフが出て、ステージの大組み替え作業である。何しろ次の曲はシンセサイザーにピアノ、打楽器類に合唱団にパイプオルガンとかなりの大編成の曲。その一方でヴァイオリンだけは本日はお役御免だそうな。楽器の入れ替えからひな壇の組み上げまでてんやわんや。かなり大変な状況である。
後半のレクイエムはヴァイオリンが全員お休み(その代わりのシンセサイザーらしい)なので、当然ながらコンマスも不在。演奏開始前のチューニングをヴィオラ主席の中島が行ったのがなかなかに珍しい光景。
作曲したウェッバーは「キャッツ」や「オペラ座の怪人」などを手掛けたミュージカルの大家とのことで、その彼があえてオーケストラに向けて作曲したのがこのレクイエムであるという。もっともそこにはやはり一ひねりあり、ヴァイオリンが不在でその代わりにシンセサイザーを用いるとか、多彩な打楽器にピアノなどと言った非常な音色の多彩さが秘められている。
曲自体はミュージカル作曲家だけあって、いわゆる現代音楽の奇々怪々なものではない。単純なクラシックのオマージュではなく、かなり音色的に現代的な部分は多いが、基本的にメロディラインは存在するタイプの音楽である。また時には破壊的な音色を出すこともあるが、概ね荘厳さが保たれるという音楽でもあり、間違いなく「レクイエム」であるということは分かる。
とは言うものの、私には初物の上に分かりにくいところもある音楽であるというのが本音。決して付いていけないものではないが、かと言って好ましいかと言われるとそれも難しい。関西フィル合唱団及び関西フィルの演奏自体は実に良くできていた印象であるが、正直なところこれも比較対象もないので断定的なことは言えない。
いつものように新今宮で宿泊
コンサートが終了するとホテルに移動することにするが、もう駐車場に車を取りに行くだけで暑さにやられるような状況。しかもホテルまでの道は大渋滞でやたらに時間がかかる。何だかんだで予定よりは遅れ気味になるし、体力は底をつくしで、当初考えていたこの後の立ち寄り先は断念することにする。どうも老化による体力低下で昔のように思ったとおりには活動できなくなっている。
予定よりやや遅れてようやくホテルに到着する。ホテルはいつもの定宿「ホテル中央オアシス」。今回はダブルの部屋に振り替えしてくれたとのことで、ベッド幅がいつもより広いが、どうもデスクの幅も広いようである。おかげで仕事環境が余裕を持って構築できる。
エアコンを全開にして火照った体を癒やしたら、やや早めであるが夕食に繰り出すことにする。新世界まで繰り出す体力はないし、そもそも串カツを食べる気もない。となると新今宮界隈で店を探すか。「らいらいけん」を覗いたが、日替わりが今ひとつ私の好みでないので、「南自由軒」を訪問することにする。注文したのは「和牛煮込みハンバーグとオムライスのセット(1020円)」。
牛肉のオムライスがコクがあって非常に美味い。とにかく「オムライスは鶏肉でケチャップ」という思い込みを完全に打破してくれる料理である。人間は往々にして思い込みからの決めつけというのがありがちなので、たまには頭をやわらかくする必要があるということを痛感させるメニューである。さらに和牛煮込みハンバーグが価格柄小ぶりではあるが、なかなかに美味い。これをメインにしてガッツリ白飯を食いたい気分もする。
コンビニに立ち寄って明日の朝食を調達するとホテルに戻る。ホテルに戻って再び冷房で部屋を冷やしてから一息つくと、次にするべきは入浴。そもそもそのためにこの新今宮では高級ランクに入るホテルを予約したのである。このホテルでもユニットバスの部屋ならもう少し宿泊料金が安くなるが、そこはやはりゆったりと風呂に入るためにはセパレートというのは譲れない矜持というものである。
風呂でサッパリと汗を流すと原稿入力作業。しかしどうも頭がクラクラする。かなり意識的にライフライン(ミネラル麦茶)を摂取していたにもかかわらず、軽い脱水状態になったような気がする。
今一つ能率が上がらないが、時々ベッドで横になって一休みしながら人心地ついたら作業再開。結局この日はその調子でグダグダと暮れていくことに。
この遠征の翌日の記事