徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

最終日は京都でルーヴル展の後にハンブルク交響楽団の公演

最終日は灼熱の京都へ

 翌朝は目覚ましで8時に起床。昨日購入していた朝食(いなり寿司)を手早く腹に入れると、まずは朝シャワー。体が温まったところで手早くチェックアウト準備をする。

 今日の予定は京都で開催されるハンブルク響のコンサート。その前に京セラ美術館でのルーヴル展を覗いていくつもりである。ただこの時期の京都には注意ポイントが2つある。まず一つは異様な暑さ。とにかく夏の京都は表に出たら殺意を感じるような暑さで、その暑さ(よりも「熱さ」と書くべきか)は大阪の比ではない。気をつけないと熱中症で命を落としかねない。

 もう一つの注意ポイントは祇園祭。疫病封じの祭りが今年も大コロナ感染祭りになるのではと懸念されており、とにかく近づかないことが肝要。さらに困るのは京都中心が大規模な交通規制がかかるので、一つ間違うと身動き取れなくなること。これらも考え合わせると柔軟な行動が要求されることになる。

 とりあえずまずは京セラ美術館を目指すが、安全策を取ってかなり早めにホテルをチェックアウト。京都南出口で名神を降りるコースでなく、京都東出口で降りて東側から回り込むルートを選択する。途中で渋滞もあったが、非常にタイミング良く展覧会開場直前の京セラ美術館に到着する。駐車場に車を置いて美術館に入館すると、既に券売所には長蛇の行列が出来ている。やはりルーヴルのネームバリューは強い。

10時前に京セラ美術館に到着

券売所には行列が

 

 

「ルーヴル美術館展 愛を描く」京都市京セラ美術館で9/24まで

テーマは「愛」

 ルーヴルの収蔵作品から「愛の風景」を描いた作品を展示。まずはいわゆる神話を題材にした作品から。神話で愛となるとやはりヴィーナスなどが定番となる。もっともヴィーナスとなると浮気の話も多い。

 これが第2コーナーになると、キリスト教の愛ということで、神の愛の象徴たるマリア像などの話になってくる。そして昔から人気のあるのはマグダラのマリア。娼婦から改悛したということで宗教題材にかこつけて妖艶な絵も描けるからだろうか。

 第3コーナーの人の愛となると、市井の人々の日常を描いたオランダ絵画等が中心。中には下世話なものもあり「家政婦は見ていた」という趣のものも。

 最終コーナーが撮影可能エリアで、作品は結構ごった煮である。それにしても画家の名前や作品の名前がやたらに長いのばかりはなぜだ?

最後の展示室のみが撮影可

アンヌ=ルイ・ジロデ・ド・ルシー=トリオゾン「エンデュミオンの眠り」

クロード=マリー・デュビュッフ「アポロンとキュパリッソス」

アリ・シェフェール「ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊」

 

 

 辛うじて名前を聞いたことがあるのはドラクロワとシャセリオーぐらいか。

テオドール・シャセリオー「ロミオとジュリエット」

ウジェーヌ・ドラクロワ「アビドスの花嫁」

フランソワ・ジェラール「アモルとプシュケ、またはアモルの最初のキスを受けるプシュケ」

 テーマがあるようなないようなで今ひとつテーマ性は薄い。またそのテーマから美麗な絵は多いが、ティントレットなどの有名どころがなく、美麗であるが印象に残らない作品が大半というところ。夏の一服の清涼剤には良いが、芸術作品を堪能すると言うのとは少し違うか。

 

 

昼食は東洋亭で

 1時間弱で展覧会の鑑賞を終えると車を回収してホール方向を目指す。幸いにしてこの辺りは渋滞もなく、予定通りにアキッパで確保しておいた駐車場に到着する。ちょうど時間が11時直前だったことから、11時にオープンする「東洋亭」に立ち寄って、まずは昼食を摂っておくことにする。

東洋亭は営業開始直後

 東洋亭は既に待ち客が行列を作っているが、幸いにして第一陣で着席できそうである。ただそれでもこの店は客あしらいが非常に上品であるために、着席まで15分ほど待たされることになる。ようやく席に着くと注文したのは「ビフカツのランチ」。暑さのせいで疲れてグダグダなので、この際は少し奮発する。

 まずいつもなぜか無性に美味い謎トマトのサラダ。今回は北海道のトマトとのことだが、発汗でミネラルが失われているのかひときわ美味い。

謎のトマトサラダ、謎の美味さ

 次にメインのビフカツが到着。ここのはレアカツで柔らかさが売りのタイプ。朝食が軽すぎて既にガス欠気味だったこともあってやはり美味い。

メインのビフカツ・・・生き返る

 メイン終了後はデザートとドリンク。デザートはお約束の百年プリン。このシッカリとした舌触りのプリンが実に私好みである。今時流行のクリームプリンと対極にある。ドリンクの方はこの暑さであるから、アイスミルクティーを注文。ただアイスティーはやはりアールグレイ系のようで、私の好みにピッタリと合致するものではない。そう言えば今まで「これは」というアイスティーに出会った経験がない。

百年プリンとアイスミルクティー

 

 

 昼食が終わった頃には13時をやや回るかというところ。さてこれからの予定だが、当初は地下鉄で烏丸御池に戻って京都文化博物館に立ち寄るということも考えていた。しかし昼食をややゆっくりと取ったことと、何よりも実際に京都に来て殺人的な暑さを痛感したことで、これからどこかに出向くという意思は木っ端微塵に粉砕された。結局は早めに冷房の効いたホールに入って、グダグダと自堕落に過ごすことに。

痛いような暑さの中をさっさとホールに逃げ込む

 しばし原稿入力などでウダウダした後、ようやく入場時刻が来たのでゾロゾロ入場。入りは2階席、3階席に空席が結構あり、7~8割というところか。やはり高い席の悪い席が売れ残るというよくあるパターンである。

 

 

ハンブルク交響楽団

12型編成の中規模オケ

[指揮]シルヴァン・カンブルラン  
[ピアノ] マルティン・ガルシア・ガルシア 

ベートーヴェン:序曲、「エグモント」作品84 より
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92 

 ハンブルク交響楽団は12型の中型クラス編成。シットリとした弦楽陣はなかなか良い音を出す。また管楽陣は名手揃いとは思わないが、全体として非常にまとまりの良いオケ。日本では関西フィルのイメージと被る。

 さてカンブルランの指揮だが、ベートーヴェンを演奏する時は「ベートーヴェンが聞いたであろう音を再現する」というピリオドアプローチと、性能もアップした現代楽器をフルに駆使するというモダンアプローチの両者があるが、カンブルランはもろに後者の方である。それも「ベートーヴェンが聞いた音と言ったって、そもそもその頃にはベートーヴェンはほとんど聞こえてないでしょ」と言わんばかりに、抑揚強調気味のかなりドラマチックな表現で、超モダンアプローチとでも言うべきもの。そもそも最初からベートーヴェンの曲の中ではドラマチックな部類のエグモントは、まさに映画音楽並のドラマチックさである。カンブルランは躍動感に満ちた指揮でオケを煽りまくる。

 二曲目はショパンであるからなおのこと、初っ端からオケがブイブイとかなりロマンチックな音色を立てる。これは受けるピアノの方も大変だなと思っていたら、どうしてどうしてガルシアはなかなか色男ピアノである(ピアニストが色男なのでなく、あくまでピアノの音色が色男)。しかもこの色男、単なる優男でなく、ここというところではパシッと野性味も見せる濃い系の色男。背後のオケと丁々発止で掛け合う演奏はなかなかにスリリングにしてロマンチック。これはまたとんでもないのが登場したなと驚く次第。

 ガルシアの名演に場内は大盛り上がりで、結局彼はアンコールを2曲演奏してほぼ強引に引き揚げた。アクロバチックにしてロマンチック、なかなかに優れた演奏であった。

 後半のベートーヴェンの7番は、もうエグモントから予想できるとおりの演奏。とにかく超ロマンチックである。よく聞いているとテンポから音色までカンブルランは様々な仕掛けを駆使して表現してくるのだが、それに対して的確に反応するハンブルク響の演奏は見事の一言。なかなか最後まで「魂の熱くなるようなベートーヴェン」であった。

 アンコールはスラヴ舞曲だったのだが、アンコールということでかカンブルラン節がさらに露骨に発揮され、引っ張ったり急にテンポを上げたりとかなり激しい演奏。おかげでオケが崩れそうになる局面もあったのはご愛敬。舞曲と言いながら、合わせて踊っていたら蹴躓いてコケそうな感じの曲である(笑)。

 カンブルランの指揮については今回が初めてではないはずなのだが、ここまで極端にロマンティックな指揮者という認識はなかった。以前に京響に客演した時の記事を改めて目を通すと「現代アプローチのハイドン」との記述があるので、やはり今回の演奏と同じような印象を受けていたようではある。なおハンブルク響に関西フィルに通じる雰囲気を感じていたことから、カンブルランに1度関西フィルでの客演を願いたいなどと感じた次第。デュメイが鍛えたネットリシットリした関西フィルを「躍動するカンブルラン」が振ったら、どういう音楽が登場するかを考えると興味深い。


 これでこの週末の三連休遠征も終了となった。それにしても特に京都の殺人的な暑さ(熱さ)にはまいった。おかげで予定の半分ぐらいはこなすことが出来なくなってしまった。京都は暑いことが分かっているから、事前に大阪でライフライン(ミネラル麦茶)の凍結ボトルを買い込んで乗り込んだのだが、それが帰りには見事にヌル茶になっていたのには呆れる次第。こんな中での野外活動は命取りである。

 

 

この遠征の前日の記事

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