徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

下野指揮大フィルの定期演奏会の前に、美術館を3軒ハシゴする

土曜日は大フィルと美術館

 今日は大阪フィルの定期演奏会である。ただそれだけに大阪まで繰り出すのはしんどいので、合わせ技を用意している。とりあえずこの日は午前中に家を出て大阪に向かう。例によって阪神高速の渋滞はあるが、夕方ほどひどいものではない。むしろ対向車線の方が渋滞はひどそう。

 予定よりも若干早いペースで大阪に到着すると、アキッパで予約しておいた駐車場に車を入れる。まずは近くの美術館からである。それにしても暑い。表を10分以上歩くのは命に関わりそうである。

目的地は中之島キューブ(私はこの建物をこう呼んでいる)

 

 

「民藝」大阪中之島美術館で9/18まで

会場入口までシンプルだ

 柳宗悦が説いた「民藝」思想とは、生活に密着した手仕事の品々に美を見いだすという考えである。そのような民藝思想に基づいて「衣食住」の観点から民藝の品々に注目するという展覧会。

 最初は柳宗光が提案したというテーブルコーディネートを展示。まさに「民藝のある生活」という趣である。肩肘張ってえらそぶった芸術作品でなく、日用の中に潜む用の美というものである。

民藝のある食卓

こういうのは結構好きだな

いかにもの陶器類

 次が衣食住のコーナーとなり、衣はいわゆる着物の類い。日用的な衣類にさりげなく施されている装飾などに注目する。アイヌの衣なども展示されおり、文化の反映でもある。

 食は食器類。いわゆるいかにも格好付けた茶道具などの類いと違って、もっと日常に溶け込んだ普通の器でありながら、何らかの装飾的要素も持った品々である。住についても似たようなもので、日常生活に使われる品々の中の美に注目する。

 

 

 後半になると世界各地の民藝的な品々(いわゆるプリミティブアートにもなる)や、現在も続く工芸の産地などを紹介している。もっともこの中でも小鹿田焼のように無形文化財に指定されたものもあれば、鳥越竹細工などは原料の調達が困難になってきて危機に瀕しているものもあるとか。

 最後にまさに「現代にマッチした民藝コーディネイト」的な展示があるが、正直なところ少々ゴテゴテしすぎのような気もしないでもない。

少々ゴテゴテしすぎのような印象を受ける

床がいささかうるさすぎる

 展示品はシンプルで素朴な品々が多いが、そこから柳宗悦らの「日常の中に美を見いだす」という精神を感じようという展覧会である。確かにじっくりと見ていたら味のある品々が多い。もっとも現代の我々の日常生活は、無味乾燥な大量機械生産品ばかりになってしまっているが・・・。

 

 4階の展示室の見学を終えると、5階の展示室の方も見学する。

 

 

「Parallel Lives 平行人生 — 新宮 晋+レンゾ・ピアノ展」大阪中之島美術館で9/14まで

会場は5階

 共に1937年生まれの芸術家、新宮晋とレンゾ・ピアノの作品を併せて展示する。

 新宮晋と言えば、一連の風で動く彫刻が有名である。それらを展示してある。風を受けて刻々と形態が変化するそれらの彫刻はメカニカルに興味深いところ。

新宮晋「自由の翼」

新宮晋「模型」

展示室の天井には新宮の作品が

手前「月の船」奥「雲の日記」最奥「星空」

新宮晋「平和」

 

 

 一方のレンゾ・ピアノは大胆な建築デザインで知られる。彼は関空のターミナルビルなど様々な建築で新宮晋とコラボした作品を発表している。やたらに空間を感じさせるデザインは新宮作品との相性が良さそうであることは想像が付く。

レンゾ・ピアノ「アトランティス島」

レンゾ・ピアノ「ジェノヴァ港再開発全体模型」

レンゾ・ピアノ「565ブルーム・ソーホー全体模型」

 最後は新宮の地球アトリエプロジェクト関連の作品と、レンゾ・ピアノの東京海上ビルディング。

レンゾ・ピアノの東京海上ビルディング最終スケッチ

東京海上ビルディング模型

新宮晋「地球アトリエプロジェクト関連」

 どちらも芸術としてどうかは微妙なところではあるのだが、センスの良さのようなものを感じるのは明らかである。やはりなかなかに興味深かったりする。


 それにしても展覧会も高くなったものだ、「民藝展」1700円、「新宮展」2400円。私の感覚では1200円と1500円辺りが妥当な相場。アホノミクスがいろいろな点で価格破壊をして、社会のタガをガタガタにしたのを感じる。

 

 

昼食は鳥取飯

 両展覧会の見学を終えた頃にはちょうど昼時、昼食を摂る店探しと次の目的地移動を兼ねてホールの方向に移動。結局昼食はフェスティバルゲート地下の「麒麟のまち」で摂ることにする。鳥取の産直品ショップを兼ねて、鳥取の地場ものを食べられるという食堂である。「きりん御膳(1000円)」を注文する。

鳥取アンテナショップの「麒麟のまち」

 ハタハタ不漁のためにニギスに変更との注意書きがあるが、私は両者の違いが明確に分かるほど魚類には強くない。添えられているミズタコのフライは歯ごたえがあるを通り越して私の歯とあごの力ではかみ切れない。何てことのない内容だが、この年になるとこういう内容が一番ホッとするのも事実。

鳥取メニュー満載の「きりん御膳」

 昼食を終えるとこの上の美術館に立ち寄ることにする。

 

 

「唐ものがたり 画あり遠方より来たる-香雪美術館の中国絵画-」中之島香雪美術館で7/30まで

中之島香雪美術館

 香雪美術館が所蔵する、中国から日本に渡った絵画を展示。最初は布袋や観音図などの人物が、さらに花鳥画に山水画などが展示されている。

吉祥天像

松下布袋図

寒山拾得図

 

 

 なおこれらの渡来の作品は後の日本の画家に大きく影響を与え、模写から贋作まで様々に登場したようである。本展の出展作品の中にも、中国からの渡来品とされているが、画風などから考えるとかなり怪しいという注釈付きの作品も多々出展されている。

魚蟹図

白鷺図

 とりあえずこのような作品に目を通すと、やはり日本の絵画が中国から受けた影響というのは絶大なものであったと言うことを感じさせられる。その辺りの日本文化と中国との関わりなどに思いを致すと興味深いものがある。

四季山水図屏風 左隻 狩野永徳

四季山水図屏風 右隻 狩野元信

 さてこれで今日の展覧会の予定は終了。後は大フィルの定期演奏会だけである。そろそろ開場時刻近いことなのでホールに向かうことにする。

下野竜也登場

 

 

大阪フィル第570回定期演奏会

大フィルは16型大編成

指揮:下野竜也
ピアノ:ヴァルヴァラ

フィンジ/前奏曲 ヘ短調 作品25
モーツァルト/ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595
フランク/交響曲 ニ短調

 ブレトークによると下野の大阪フィル定期演奏会への出演は9年ぶりとのこと。最近進境著しい下野が、縁の強いという大フィルを指揮していかなる演奏を披露するか。

 大フィルは16型の大型編成で望むが、第一曲目は弦楽陣のみが登場で、いかにも珍曲マニア下野らしい全く聞いたことのない曲。しかしなかなかに美しい曲である。大フィル弦楽陣もブイブイとなかなかの盛り上がり。贅沢を言うともう少し色気の欲しいところであるが、その辺りはまたデュトワにでも鍛えてもらうか。

 二曲目はオケを10型まで縮小してのモーツァルト。ピアノのヴァルヴァラはかなりエレガントで上品な演奏という印象である。音色はなかなかに美しく、下品な誇張のないストレートな演奏。もっともそれでいて無機質にはなっていない。

 彼女はアンコールでブラームスの3つの間奏曲より第1曲を披露したが、これもなかなかにして美麗な演奏である。ただ個性を強烈に主張しない分、印象の弱さのような者もあるのは事実。

 さて終盤は下野が好きだというフランクの交響曲。これがまた格好良い。下野は例によって低い身長をそれ以上に使ってかなりブイブイとオケを煽るのだが、それに対して大フィルはかなり迫力のある音色で答える。第1楽章などは緊迫感を保ちつつもグングンと前進していくパワーが圧倒的でなかなかに引き込まれる。

 そして美しい第2楽章を経て、主題が錯綜する最終楽章へ。メリハリの効いた演奏で大盛り上がりである。下野はかなりオケを煽りまくっていた印象があるが、それに答えて大フィルもかなりパワー溢れるサウンドを出していた。このコンビニは是非とも今後も公演願いたいところだ。


 これで今回の予定は終了。帰途につくこととなった。なかなかに充実していたが暑さのせいもあって流石に疲れた。