徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

香雪美術館で茶器を鑑賞後、大阪フィル定期演奏会はホリガーの自作とザ・グレイト

大フィル定期に出かける

 今日は大阪フィルの定期演奏会のために大阪まで出向くことにした。道路が混雑するのが嫌なので早めに家を出る。阪神高速は混みそうもない時に突然混雑していたりするので、とにかく到着時間を読めないのがしんどいところだが、今日は途中で全く渋滞に出くわすことがなく、予定よりもやや早めの昼過ぎに大阪に到着する。

 アキッパ予約で確保しておいた駐車場に車を入れると、まずは昼食を摂ることにする。この界隈はオフィス街なので土日休日の店が多く。目的がなくうろついたらドツボるのは散々経験済み。今回は店は事前に調査済み。近くのビルの地下にある「肥後橋ゆきや」に入店する。

店はビルの地下にある

 店内は座敷一間を区切って個室にする形式。私の入店時には大広間形式になっていた。日本料理の店でやや高級な割烹店というところか。メニューを見ると5000円ぐらいのセットメニューが目立つ。ただ安価なランチメニューの営業もあり、私は当然のようにそちらが目当て(それは事前調査済み)。「百合御膳(1500円)」を注文する。

ランチメニューの百合御膳

 御膳はそばと天丼と天ぷらのセット。いずれも味は良い。流石に和食の店のようである。もっともこの手の高級店の常であるが、ボリュームはやや軽め。安価にガッツリ食いたいという人にはいささか物足りないか。最近は急激に食が細ってきている私でもやや腹に余裕があるところ。働き盛りの男性サラリーマンなら物足りなかろう。

 

 

 昼食を終えたところでフェスティバルホールへ。と言っても開場までにはまだまだ時間がある。元よりホールに入る前に一カ所立ち寄る予定である。西館4階にある中之島香雪美術館に立ち寄る。

フェスティバルホールへ

フェスティバルホールの赤絨毯

 

 

「茶の湯の茶碗ーその歴史と魅力ー」中之島香雪美術館で11/26まで

中之島香雪美術館

 香雪美術館が所蔵する茶碗類を展示した展覧会。日本における茶の湯は最初は渡来の高価な茶碗を使用したものであり、その時期の茶碗は朝鮮・中国などの天目茶碗である。スッキリしていて肉薄の洗練されたデザインであるのが特徴的。

建窯 禾目天目

天目茶碗の需要増加で瀬戸で作られた白天目

 それに大変革が起こるのが桃山時代の利久の佗茶の台頭である。黒楽茶碗に象徴される国内産の肉厚でズッシリとしたシンプルな茶碗に置き換わる。天目茶碗に比べるとむしろ野暮ったい印象もあるが、独自の深い精神性を感じさせる日本人好みの茶碗である。

もろに利休好みの長次郎 黒楽茶碗 銘 楓暮

楽常慶 赤楽茶碗 銘 山居

 それがさらに変化するのが利久切腹後の弟子の古田織部の時代。「へうげもの」とも言われる織部の趣味に合わせてかなり奇想の器が登場することになる。本展展示品にはいかにも織部なアバンギャルドな器は少なかったが、それでもへしゃげた器などはあり、利久趣味にベースを置きながら、そこに織部特有の奇想が加わっているのが覗える。

美濃 織部黒茶碗 銘 深山木

唐津 銹絵文茶碗

 

 

 織部切腹後の江戸時代となると、小堀遠州の時代となる。遠州の「綺麗さび」の趣味に従って、織部時代の突き抜けた奇想は影を潜め、洗練された印象の器が増えてくる。器自体のシルエットもスッキリしてきており、軽快さを感じさせるものになっている。

小堀遠州好みの景徳鎮 染付松竹梅図茶碗

高鳥(福岡) 白釉緑釉流茶碗 銘 巌苔

 最後は村山コレクションから「大正名器鑑」に収蔵された名品について展示をしている。

本阿弥光悦 黒楽茶碗 銘 黒光悦

野々村仁清 色絵忍草文茶碗

 以上、日本における桃山時代前後の茶器の変遷を実感できるなかなか面白い展覧会であった。なお私はかつては茶道具の類いには全く興味がなかったのであるが、この類いに興味が湧き、素人ながらも云々するようになったのはNHKアニメの「へうげもの」の影響であることは今更言うまでもない。我ながら結構影響されやすい人間だと思っている。

 

 

 展覧会を終えると開場直後のホールに入場する。開演までは1時間ほどあるので、喫茶でアイスコーヒーを購入して時間をつぶす(ここは立ち席しかないのがしんどい)。考えてみると、ザ・シンフォニーホールでは最近は喫茶で待つことが多いが、ここの喫茶を利用するのは初めてぐらいかもしれない。私も年を取って堕落してきたものである。

喫茶でマッタリする

本日の催し物

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第571回定期演奏会

一曲目は室内オケ編成の配置

指揮・オーボエ/ハインツ・ホリガー
ハープ/平野花子

ルトスワフスキ:オーボエ、ハープのための二重協奏曲
ホリガー:音のかけら
シューベルト:交響曲 第8番 ハ長調 D.944 「ザ・グレイト」

 室内弦楽オケ+打楽器にオーボエとハープを加えた独得の編成で演奏されるのが一曲目。いきなり弦楽陣が全員バラバラのガチャガチャした騒音を立てるのに驚かされる。その騒音の中で唐突にハープとオーボエのソロが吠える。正直なところソリストに技倆があるのは分かるのだが、曲の方が私には全く理解不能。そもそもメロディラインのない難解な曲なので、最後まで私の耳には騒音にしか聞こえなかった次第。

 なおハーピストの平野は、かなり小柄でどことなく腕も短く感じられたので、果たしてあれで低音弦に届くんだろうかと思ったのだが、どうにか届かしていた模様。ハープはかなり巨大な楽器なので、小柄な女性は大変である。

 二曲目はフル編成のオケにピアノを加えてホリガーの曲を。しかしこの曲もメロディラインのない奇々怪々な現代曲。それだけに演奏も相当に難しいだろうと思うのだが、その辺りは最近富に上り調子の大阪フィルはものともしない。もっとも曲自体は最後まで残念ながら私の理解の外であった。

 休憩後の後半はようやく私でも理解出来るプログラムに。シューベルトのグレートはかなり重々しい演奏をする指揮者も多いのだが、ホリガーの演奏はかなりテンポが速めの躍動感のあるもの。しかも時々急激にテンポを落としたり、逆に上げたりととにかく仕掛けの多い演奏である。

 全体を通してとにかくうねるようなロマンティックな音楽に圧倒された次第。シューベルトも古典的アプローチと現代的アプローチがあるが、後者の最たるものと言えるだろう。また大阪フィルのアンサンブルも冴えまくっており、大阪フィルってこんなに上手かったんだと感心することしきりであった。