徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

数年ぶりに白鶴美術館に立ち寄ってから、鈴木優人指揮の関西フィルの年末第九へ

関西フィルの年末第九へ

 いよいよ12月となるとクラシック界は第九のシーズンである。そして今日は関西フィル恒例の年末第九に繰り出すこととした。正直なところ年末第九も耳タコな感があるので、パスした年もあるのであるが、今年は鈴木優人指揮とのことであり出かけることにした。

 午前中に家を出ると阪神高速を突っ走る。週末だというのまたも神戸市内で渋滞である。ようやくその渋滞を抜けると摩耶ICで一旦降りる。今日は途中で寄り道の予定があるのが、午前中に家を出た理由。

 摩耶からしばし東に走って川沿いに北上した山の手の住宅街の中に目的地の白鶴美術館はある。かの有名な灘の銘酒白鶴を産み出した白鶴酒造の7代目当主嘉納治兵衛の収集品を展示するために1934年に設立された私立美術館の雄である。7代目嘉納治兵衛は奈良・興福寺の執事を務めていた中村家出身の婿養子だそうで、若い頃から古美術好きであったので、酒造業で成功を収める傍らで古美術の収拾に力を入れたのだという。美術館を設立したのは自分の死後にコレクションが散逸するのを防ぐと共に、一般の人びとの鑑賞及び研究に役立つようにとのことだから、ただの趣味人だけでなく、かなり高い公共意識の持ち主であり、今時の守銭奴経営者とは一線を画している(竹中平蔵などは虚栄心はあっても公共心は微塵もない)。建物は独得の和風洋式建築となっており、これも国登録有形文化財とか。なお1995年に10代目嘉納秀郎が収集した中近東の絨毯などを展示するための新館が南に建設されたが、こちらはコンリート打ちっ放しのいかにも現代建築である。

白鶴美術館

新館はコンクリート造り

 

 

「中国陶磁の植物文-清雅と繁栄の象徴」白鶴美術館で12/10まで

 かなり昔に訪問したことのある美術館であるが、その時は本館のみだった記憶がある。本館では中国陶器の展示、南にある新館ではペルシア絨毯が展示されている。

 本館の展示は植物文を描かれた陶磁器を展示。展示品は鮮やかな唐三彩から渋い青磁まで様々である。やはり青磁などの単色の器は絵柄が見えにくいので、文様に注目するよりもどうしても形態の妙の方に注意を取られるので、文様を楽しめるのは彩色陶磁の方になる。

 それらの陶磁器はなかなかに色鮮やかであり、植物の絵柄云々抜きに見ていて楽しい。まあ黄色や緑色の鮮やかな色彩は、私が好む織部に相通じるところも感じさせる。また併せて狩野探幽の養老之瀧図などの絵画も展示されており、これも興味深いところであった。


 白鶴美術館は中庭を囲むように建っており、奥が展示館になる。中庭中央の巨大な灯籠は東大寺大仏殿の国宝の東大寺金銅製八角燈籠から型どりしたコピーとのこと。

奥が展示室で正面が東大寺の灯籠のコピー

中庭墨のこの茶室も有形文化財らしい

 本館の南にはコンクリート造りの新館があり、こちらでは中近東の絨毯が展示されており、こちらも植物文のものとのことだが、こっちについては私にはとんと分からない(笑)。植物文と言われると植物文なんだろうが・・・。

新館入り口は実にシンプル

 白鶴美術館を後にすると、大阪に向かって走る。この走行は順調だったが、問題はホール近傍に到着してからの駐車場探し。事前に目を付けていた駐車場が悉く満車で、しばし周辺を駐車場探しでウロウロ。空いている駐車場はあるものの、そういうところは悉く1日1000円以上というボッタクリ駐車場(上限さえない恐怖の駐車場もある)。まともな料金の駐車場を探して辺りを何周も。諦めかけてUターンしようかと思った時に、目に飛び込んできたのが全く初めての駐車場。1日料金が最大900円とのことなのでここに決める。

 

 

イレブンは移転してしまっていた

 ようやく車を置いたところで、次は昼食を摂る店を探すことにする。今日の気分はそばではない。そこで「イレブン」を思いついて立ち寄るが、どうも明かりが消えているようだ。土曜は休みではないはずなのだがと入口を覗くと張り紙が。

イレブン移転の案内

移転先はこちらのよう

 どうやら11/28日付で移転が決まったようである。将棋会館のビルもかなり老朽化が進んでいるとの話なのでいよいよ解体か? 将棋会館を高槻に追いかけていくのかと思ったら、移転先は福島の鷺洲とある。ギリで福島圏内だが大分西の方になるのでいささか遠い。これでは今後は余程切実にバターライスや豚珍美人が恋しくならない限りなかなか立ち寄りにくい。これはいよいよ福島地域の新規店舗開拓が必須になってきた。

 

 

やむなく昼食は寿司に

 「イレブン」に振られたので、こうなると次の選択肢は「魚心」ぐらい。「魚心にぎり定食」に後でカンパチにぎりを追加する。この店は今日も私の来店時はガラガラ。正直なところこの店も今後に心配があるのだが・・・。なおにぎりは美味い。特に追加で注文したカンパチがシコシコして実に美味い。以上で支払いは1230円ということでCPも悪くはない。

いつもの魚心

魚心にぎり定食赤出汁付き

追加でカンパチにギリ

 

 

ホールは満員だった

 昼食を終えると開場時刻が近づいてきたのでホールの方へ。開場数分前だが、律儀に行列を作って入口前で待っている日本人の光景。ところでやはり年末第九は観客が多いのか、待ち客もいつもより多め。

日本人の風景

ホール内にはツリーが

 クリスマスイルミネーションのホールに入場すると喫茶に直行する。最近は開演まで喫茶でつぶすのが常になってしまった。私も堕落したものである。なお喫茶にはみるみる行列が出来てあっという間にほぼ満席。やっぱり今日は客が多いようだ。

喫茶で時間をつぶす

 着席前にトイレにと思ったら、ここも大行列だった。今日は観客が多い上に、やはり長丁場だけに事前に備えようという者も多いのだろう。なんとか用を済ませて着席して辺りを見回すと、全体の入りは9割以上。確かに大入りだったのである。

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 「第九」特別演奏会

ステージ上がいささか狭っ苦しい

[指揮]鈴木優人
[ソプラノ]澤江衣里
[カウンターテナー]久保法之
[テノール]櫻田 亮
[バリトン]加耒 徹
[合唱]関西フィルハーモニー合唱団
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 op.125 「合唱付」

 鈴木優人で第九と言えば、昨年に読響を指揮してのものが印象に残っている。その際には古典的でも現代的でもないノンビブとビブラートをケースバイケースで使い分ける自在さと、硬軟自在の非常にダイナミックさに満ちた演奏に圧倒されたのであるが、果たして関西フィルを指揮してどのような演奏をするかが興味深いところである。

 なお声楽ソリスト陣は私には馴染みのない方々ばかりだが、今回はアルトでなくカウンターテナー歌手を用いているのが特徴の1つ。なお読響の公演の際はソリスト及び合唱団は4楽章が始まっても入場せず、出番の直前に合唱団及びソリスト達が入場するというパターンを取ったが、流石に人数の少ないプロ合唱団と違い、関西フィル合唱団は曲の最初から待機という方法を取らざるを得なかったようだが、それでもソリスト陣は4楽章が始まってから入場して、ステージ脇の椅子にスタンバるという方法を取っていた。恐らく3楽章後に入場だとソリスト陣入場の際に拍手が起こって音楽が途切れることを嫌ったと推測する。なおソリスト入場に関しては、以前にアクセルロッドが読響で行った、バリトンが出番直前に「ちょっと待った」とばかりにステージに現れるという演出が非常に面白かった上に理にも叶っていた記憶がある。

 さて演奏の方であるが、基本的には読響の時と同じで、第1、第2楽章はビブラートをあまり使わないノンビブに近いシンプルな演奏。しかし音色はシンプルでも音楽は非常に起伏の大きいダイナミックなものである。ただ悲しいかなどうしても読響と比較すると彼我の実力差はある。関西フィルは読響ほどのパワーがないのでどうしてもこじんまりした感じになってしまうきらいがある(編成も12型と中規模編成であるが)。また緊迫感を持った演奏よりも、デュメイに鍛えられたネットリしっとりというのが関西フィルの持ち味なので、どうしてもやや甘い感じになってしまうのは否定出来ない。

 第3楽章はビブラートも利かせてしっとりと歌う楽章。やはりこういう曲調になると関西フィルの特性が発揮されることになって結構しっくりとくる。

 そして最終楽章。残念ながらここでも合唱団の実力差は如何ともしがたい。関西フィル合唱団も頑張っているが、プロ合唱団との実力差は明確。それがどうしても音楽全体の完成度に影響を及ぼす。

 以上、かなり否定的に聞こえてしまったかもしれないが、それは比較の相手がプロ合唱団を起用しての読響の公演だからというわけであって、決して今日の公演が駄目なわけではない。今日の公演に関して言えばなかなかの熱演であり、怒濤のフィナーレは血湧き肉躍るものがあった。それ故か場内もかなりの盛り上がりとなったのである。