ロイヤルオペラのために大阪の劇場へ
さて日曜日であるが、今日は映画のダブルヘッダーをすることにした。最初は映画と言ってもヘビー級でロイヤルオペラの「ラインの黄金」。ロイヤルオペラではこれから4年をかけてリングの4部作を上演するとか。かなり力の入った企画である。もう一つの映画はスタジオポノックの新作「屋根裏のラジャー」である。こちらはアニメ製作部を解散したジブリのメンバーが集まって作った製作会社になる。先に米林宏昌監督で「メアリと魔女の花」を制作公開している。
ただダブルヘッダーとなるとロイヤルオペラの方は上映館と時間が限定されているのでスケジュール調整が結構大変である。その上にラジャーの方は私はイオンシネマだと1000円鑑賞が可能なので、イオンシネマに行きたいとなるとイオンシネマ明石か加古川。ロイヤルオペラの上映館は近いところではTOHOシネマズ西宮と大阪ステーションシティシネマぐらい。最初は近いTOHOシネマズの方を考えていたのだが、どうも上映時間が中途半端で移動時間を考えると難しい。結局は西宮まで出るなら大阪でも大して変わらないと読んで、大阪ステーションシティシネマに行くことにした。移動だが、正直なところ車だと駐車場確保からして大変な上に移動時間が読めない。渋滞一発ですべてのスケジュールが崩壊してしまう危険が高いということから、腹を括って数年ぶりにJRで移動することにした。今まではコロナの流行を理由にしてJRでの長距離移動は拒否してきたが、来年辺りからついに出張などを強制されることになりそうであるし、そろそろ腹を括る必要に迫られていた。
大阪ステーションシティシネマでの上映は11時からなので午前中に家を出ると最寄りのJR駅へ。ここ数年JRを利用していなかったのでこの駅に来るのも久方ぶり。おかげで乗車ホームを間違えて逆方向に行きかけるという失態まで演じてしまったが、どうにか予定通りに大阪に到着する。
館内は結構混雑している。上映まで30分ほどあるしホットドックでも買うかと思ったが、売店には長蛇の列。これを並んで超低CPのホットドックを購入する気にもならず、一旦劇場を出てからローソンでサンライズを購入してこれをかじることに。
ようやく入場。観客は30人程度でやはりそこそこ多い(この手の演目にしたらである)。これから3時間、休憩なしの長丁場である。
ロイヤルオペラハウスシネマシーズン ワーグナー「ラインの黄金」
【指揮】アントニオ・パッパーノ
【演出】バリー・コスキー
【美術】ルーフス・デイドヴィスス
【衣装】ヴィクトリア・ベーア
【照明】アレッサンドロ・カルレッティ
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
【出演】ヴォータン:クリストファー・モルトマン
アルベリヒ:クリストファー・パーヴェス
ローゲ:ショーン・パニッカー
フリッカ:マリーナ・プルデンスカヤ
フライア:キアンドラ・ハワース
エルダ(の声):ウィープケ・レームクール
ドンナー:コスタス・スモリギナス
フロー:ロドリック・ディクソン
ミーメ:ブレントン・ライアン
ファーゾルト:インスン・シム
ファーフナー:ソロマン・ハワード
ヴォークリンデ:カタリナ・コンラディ
ヴェルグンデ:ニアフ・オサリバン
フロスヒルデ:マーヴィック・モンレアル
エルダ(俳優):ローズ・ノックス=ピーブルス
ワーグナーの大作の新演出による上演である。演出を手がけるバリー・コスキーは大胆な演出で物議を醸す鬼才らしいが、本公演でもかなり大胆な演出をしている。
ワーグナーの作品の現代翻案自体は珍しくないのだが、本作は元々が神話ということがあって、現代翻案といっても出演者の服装が現代的になるだけで、完全に現代の物語にはなりきらない。本作では舞台中央に不気味な枯れた巨木が据えられ、それを中心に劇が繰り広げられる。
一番特徴的な演出は大地の女神エルダが常にステージ上に登場していることだが、そのエルダは俳優によって演じられた全裸の老女であり、その痩せこけて醜悪な姿はまさに死にかけている世界の象徴のように感じられる。この辺りは今日的な問題を象徴的に現しているようでもある。
そしてそこに繰り広げられる欲と愛憎の入り交じったドラマは、古今東西変わらぬ人間の愚かさと傲慢さをあぶり出すことになる(登場キャラに人間は1人もいないにも関わらず)。まあこの辺りがワーグナー作品が時代を超える所以ではあるが。
本作の演出はエルダの表現からも覗えるように、終始センセーショナルでグロテスクでもある。私が象徴的にも感じたのは、ヴォータンがアルベリヒから指輪を奪い取るシーンでは、ヴォータンがアルベリヒの指を切り落として血まみれになりながら指ごと指輪を奪い取っている。後のファフナーがファーゾルトを打ち殺すシーンにしても、血みどろしーんとして描いている。そしてラストの神々の入城シーンも、本来なら華々しく描かれる場合が多いのであるが、本作では闇の中で不気味ささえも感じられ、後の彼らの破滅を暗示するかのようなものとなっている。
出演者の力量は見事なものである。堂々とした神と言うよりも、姑息で卑怯者であるヴォータン、トリックスターとして1人だけ少し異なる空気を纏っているローゲ。そして陰険で邪悪であるアルベルヒなど一癖も二癖もあるキャラを見事に演じきっているのは立派。またどう見てもヤンキーそのものの巨人兄弟も存在感ありありである。
どちらかと言えば通向けかなという印象も受けたのが本作。まあクセが強くていささか下品さに溢れる演出は好き嫌いが分かれるところであろう。私は衝撃的で計算され尽くした考えられた演出であることは認めるが、正直なところあまり好きではない。
さすがに長丁場は疲れたというのが本音。それと上で述べたように、あまり私の好みに合致した演出でない(私は現代翻案自体があまり好きでない)ので、次回以降はどうするかは判断に迷うところ。
次はイオンシネマ明石へ
上映が終了すると直ちにJRで明石に移動する。こういう時にこの劇場は便利ではある。またイオン明石もJR大久保駅から直接接続しているので移動は楽。とりあえず上映開始までに時間があるのでかなり遅めの昼食を摂ろうとフードコートに向かったが、休日のせいか大勢が押しかけていて満席。仕方ないのでレストラン街の方を覗くが、毎度のことながらここのレストラン街には今ひとつ食欲をそそる店がない。面倒臭いので「十六穀米オムライスと炭焼きハンバーグ専門店 おむらいす亭」に入店する。
ハンバーグとエビフライのセットを注文。ここは全メニューにサラダバーが付属しているとのことなので、サラダとカレーを最初に頂く。サラダは貧弱(キャベツにコーンにブロッコリーぐらいしかない)だし、カレーは典型的な業務用量産型(と言っても、意外に私の貧乏舌には合うのだが)。
やがてメインの料理が来るが・・・まあ最初から期待してはいなかったが、いかにもそれなり。しかしハンバーグ専門店を名乗っていて、この切ったらボロボロになるハンバーグは頂けない。映画割りで10%引きにはなったが、それでも1600円という価格はあからさまにCPの悪さを感じさせる。どうもここのレストラン街は立ち寄るごとに次に行く店がなくなっていく・・・。何となくフードコートの方が混雑する理由が頷ける。
とりあえずの昼食を終えると劇場へ。なお昼食の物足りなさか何か口寂しさを感じるので、大阪と違ってほとんど待ち客のない売店でプレミアムポップコーンを購入。ピーナッツキャラメルコーンなるものを購入したが、どうやらこれはSPY×FAMILYタイアップメニューの模様。こっちの上映は来週である。なお味は悪くないが、ピーナッツのクセがあるので、アーニャならぬ私には1カップぐらいの量がちょうど限界。
なお映画の内容の方は「白鷺館アニメ棟」の方に掲載することにする。
映画を終えると直ちに大久保駅にとって返して帰宅することに相成ったのである。