徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

読響の第九公演は今年もなかなかに驚かされる演奏であった

連日の大阪遠征

 昨日大阪まで往復したところだが、今日もまた大阪である。今日は読響の大阪公演がある。昨日はJRで往復したが、今日は車を使うことにする。ただその際に問題となるのは、例年年末が近づいたこの時期になると、道路が異常に渋滞することがあること。公演に遅刻するという一昨年の悪夢を避けたい私としては、今日は通常よりもさらに早めに仕事を切り上げて出発することにする。

 しかしいつも魔物が潜んでいるのが阪神高速である。今回も阪神高速の魔物は牙をむいた・・・正反対の方向で。こんな時に限って京橋周辺での若干の滞留はあったものの、渋滞と言うべき渋滞はないままにスムーズに大阪に到着してしまったのである。

 とりあえず駐車場はアキッパ予約で1日確保しているから時間待ちの必要がないのが幸い。車はさっさと駐車場に入れてしまうが、この時点でまだ17時前と開演までに2時間以上をつぶす必要に迫られてしまったのである。

 

 

 まずは夕食を考える必要があるが、これだけ時間があったら今日は平日でもあるし、わざわざフェスティバルゲート地下で摂る必要もない。肥後橋界隈まで出向くことにする。ただいざそちらに行ってみると計算違いがあることに気付く。どうも17時というのは勤め人の夜には早すぎる中途半端な時間らしく、意外と開いている店が少ない。しかもオフィス街だけに夜は飲みが主体の店が多く、私のニーズに合致する店が少ない。結局はほぼ入口に近い位置にあるラーメン屋「肥後橋ラーめん亭」に入店することになる。

肥後橋飲食店街の入口にある「肥後橋ラーめん亭」

 注文したのはチャーシューメン(1100円)。チャーシューは柔らかくて美味い。ラーメン自体はあっさりとんこつと名乗っているだけあって、思いの外あっさりした味わい。ニンニクをアクセントとして加えてある(量については注文時に聞かれるので、私は「ちょい」)。まあこの手のラーメンが好みにジャストミートする者もいると思うんだが、私としてはいささか味がしょっぱめなのが気になる。またコクを加えるためのニンニクはそこにさらに辛味を加えることになるので、やや尖った味という印象。もう少しまろやかでコクのあるラーメンが好みの私には、いささか口には合わないラーメンであった。

チャーシューメン

麺はオーソドックスなもの

 

 

 夕食を終えたところでまだ開場までに時間の余裕があるが、行くところもないし(この時間になると地下のプロントまでが飲み屋にチェンジしてしまう)、ホール周辺でブラブラと無為に時間をつぶして、18時の開場と同時にホール入りしてしまう。それにしてもやはり観客が多い。大フィル定期の時の倍はいる印象。

夜のフェスティバルホール

赤絨毯の脇にはクリスマスツリー

 ホール入りすると、ホットコーヒー(さすがにこの寒さだとアイスコーヒーは断念した)とサンドイッチを頂きつつ、この原稿を入力している。毎度の事ながら、私もとことん堕落して、かつての質実剛健最小費用でという気力はなくなっている。それにしてもここの喫茶は、ザ・シンフォニーホールよりコーヒーも高いのに、なぜ立ち席だけなんだ。先程まで周辺をウロウロしていた私には、正直なところこれはなんの罰ゲームだという感覚。

コーヒーは悪くないが、足が痛い

 

 

読売日本交響楽団 第36回大阪定期演奏会

オケも合唱団もややコンパクト

指揮/ヤン=ウィレム・デ・フリーント
ソプラノ/森谷真理 メゾ・ソプラノ/山下裕賀
テノール/アルヴァロ・ザンブラーノ バス/加藤宏隆
合唱/新国立劇場合唱団(合唱指揮/三澤洋史)

曲目/ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」

 デ・フリーントの演奏はノンビブのピリオド奏法を使用しているようだ。またオケは12型2管編成という読響にしてはコンパクトな構成。こう聞くとここからは古典派的な整然とした端正な演奏が予想出来るのであるが、実際に飛び出してきた音楽には度肝を抜かれる。

 もう一楽章の初っ端から、かなりのアップテンポでまさに叩きつけるような激しい演奏。ノンビブの弦楽陣の音色が、さらにシャープさを増してバシバシと斬りつけてくるような印象の激しさ。デ・フリーントは指揮台を使わずに巨躯を左右に激しく動かしてのまるで戦うような指揮ぶり。まさに迫り来る運命との闘いとはかくやと思わせるかのような情念たぎるハイテンションな演奏である。

 第二楽章のスケルッツオも予想出来るようにそのままの調子で疾風怒濤に暴れまくる印象。こうなるとノンビブ奏法は刃物の切れ味を増すためのもののようにさえ思われる。つまりはスタイルは古典派でありながら、その音楽の中身は超ロマン派なのである。

 それにしてもデ・フリーントがこれだけ暴れ回っても乱れず、さらにはノンビブであっても音色が痩せることがない読響の演奏陣はさすがである。やはり関西のオケと比べると1グレードレベルが上であることは否定出来ない。

 なお最近はソリスト陣の入場タイミングに様々な工夫をするコンサートも増えてきているが、今回はオーソドックスに二楽章終了後にソリストと打楽器増援がゾロゾロと入場する。軽い拍手が起こって少し中断。

 

 

 第三楽章はそれまでノンビブだった鈴木優人などもビブラート奏法に変える楽章だが、デ・フリーントはオーソドックスにノンビブで通す。タップリ歌わせる鈴木などとは違って、淡々とした印象の運びである。必要以上に歌わせないクールさが特徴でもある。ここは攻め寄せる楽章ではないので、初めて少々落ち着いて聞こえた楽章となる。

 そして中休みなしで最終楽章へと続く。ここでもやはりノンビブでガシガシと攻めるデ・フリーント。それに対してソリスト陣は特にバスの加藤などは芝居ッ気タップリでアクセントをつけるインパクトの強い歌唱。ソリスト陣の歌唱は意外に印象の強い濃いもの。さらにやはり合唱団が新国立劇場合唱団というプロであることは大きい。関西フィル合唱団などと比べるとコンパクトな編成にも関わらず、合唱自体のパワーは明らかに超えており安定感も抜群、さらに表現力も高い。

 デ・フリーントはこの優秀な声楽陣の能力をフル活用して、オケと一体化した巨大な音楽空間を構築していく。結構芝居ッ気があるにも関わらず、全体を通すと端正で整然とした秩序がある。そして音楽を段々と盛り上げて比類無い感動のクライマックスへという印象。

 正直なところ圧巻だったと言うしかない。非常に個性が強いアクのある演奏なのであるが、説得力は十二分で、強引に音楽に巻き込まれたというのが本音。かなりの熱演に知らず知らずに引き込まれてしまった。これはまたとんでもない演奏だなと呆気にとられたのである。